KAMITSUBAKI STUDIOに所属する理芽(りめ)は9月15日、TOKYO DOME CITY HALLにて3rdワンマンライブ「NEUROMANCE III」を開催する(配信チケット、現地チケットは完売)。
リアル会場ライブシリーズ「KAMITSUBAKI WARS 2024」の第三弾「KAMITSUBAKI WARS 2024 神椿後楽園戦線 IN TOKYO DOME CITY HALL」における公演のひとつで、前日の9月14日にはDAY-1として同じKAMITSUBAKI STUDIOに花譜(かふ)との2マンライブ「花譜・理芽 『Singularity Live Vol.3』」を実施。DAY-2に前述した初の有観客となる自身のワンマンを迎える形だ。
2019年10月、KAMITSUBAKI STUDIOの発足とともに活動をスタート。2作のオリジナルアルバムを出し、2度のワンマンライブ開催に、アメリカへの語学留学などを経て、約5年で今回の大舞台に挑む彼女は、今自分のことをどうとらえているのか。連載「Pop Up Virtual Music」特別編としてインタビューを実施した。
自身の人生や音楽的なバックボーン、自身の楽曲とV.W.Pのメンバーへの想い、ライブにかける意気込みなどを彼女らしい明るさとともに語っていただいたが、中でも印象に残ったのは、「自分自身は自分をVTuberやバーチャルシンガーとは考えていない」「あたしは音楽にしか目がいっていないタイプ」という話だ。本記事を読めば、もっと彼女の歌が好きになるはずだ。
「ネットカルチャーとは無縁のところにいた」
──PANORAとして初のインタビューで最初の質問がこういうのもおかしいのですが、外に出たりアウトドアのアクティビティーはお好きなのでしょうか?
理芽 好きですね。車の運転が好きで、今の時期(編註:インタビューは8月に実施)は湾岸のほうにいきます。あとはキャンプをしたり、サウナに行ったり、温泉も好きなのでよく行きます。もともとバスケをやっていたというのもあって、外に出て遊ぶことには抵抗がないんです。体を動かすのが好きで、週末にスポッチャ(レジャー施設「ラウンドワン」にある施設)にいったり、バスケをしたり、ヒマがあればどこかにいきたいなと思います。
──それはすごいですね。
理芽 なので逆に家にいることが少ないですね。映画館に行ったりはしますが、ゲームとかはあまりしないですね。ケータイにゲームを入れることもしないくらいです。
──2019年に理芽さんはバーチャルシンガーとしてデビューをされましたが、ひとつ手前のお話として、そもそもネットカルチャーに通じているタイプではなかった?
理芽 そうなんですよ。ボカロも当時は知らないくらいで、アニメとかオタクといわれるようなシーン、ネットカルチャーとは無縁のところにいた人間でした。ただひたすらにスポーツをやってきたタイプだったんです。
──そんな理芽さんがデビューするきっかけになったのは?
理芽 部活をしていたころに息抜きとして歌を唄って、アプリを通して投稿していたんです。アプリの中で歌の友達が結構できて交流してたんですけど、PIEDPIPERさん(編註:KAMITSUBAKI STUDIOの統括プロデューサー)がたまたま聞いてくださっていたみたいで、長文DMでオファーが来たんです。最初来たときは「なんだこれ?」と思って……怪しいDMがきたと思ってそっとしておくタイプなんですが。
──これは一般論ではありますが、見知らぬ人から怪しいDMがきたら基本的には反応はしないですよね(笑)
理芽 そうですよね(笑)。このときはたまたまポンッ!とメッセージを開いてしまって、長文を読んでみたんです。実は同じタイミングで音楽イベントやライブへの出演依頼みたいなメールも届いてた時期で、「このDMも同じような内容だろう」と思っていました。
書かれている名前を調べて「実際に存在する会社なんだな」と思いつつ、そのDMに色々と返信をしていたら、あれよあれよと話が進んでいきました。もちろん家族には相談していて、最初は「会社に来てほしい」というお誘いだったので、家族みんなで「怪しすぎる」と思って断ろうとしていたところ、「ではご実家まで足を運びます!」と返信がきて、九州の実家まで来てくださって色々と話しを聞くことになったんです。
バーチャルの話や花譜ちゃんの話とか色々と聞いて、家族としては「大丈夫なのか?」と不安があったと思うんですけど、あたし自身は唄うことが好きという感覚が間違いなくあったので、「音楽活動ができる環境があればやってみたい」「結果はどうであれチャレンジしてみよう」と思い、理芽としてデビューすることになりました。
──自身が活動をスタートする前、活動している現在問わずに、自身が憧れていたり参考にしているミュージシャンやシンガーはいますか?
理芽 シンプルに好きな方はかなりいますね。デビューするタイミングだと弾き語りをするタイプのシンガーが好きで、泣き虫。さんやYUIさんを聞いてましたね。あとはYo-Seaさん、XGさん、ちゃんみなさん、SIRUPさんを聴いてますね。
あとはデビューする前から洋楽を聴くことが多くて、海外のアーティストも大好きです。Justin Bieber、Ariana Grande、One Direction、Why Don’t Meとか……
──初期のころにかなり歌われてましたよね?
理芽 そうですね。Taylor Swift、Chalie Puth、Billie Eilish、Katy Perry、ほかにもたくさんいますね。
──ここまで洋楽にハマる女性も最近では中々いないと思うんですが、幼い頃から聞いていたんでしょうか?
理芽 幼い頃に親が家でCarpentersを聞いていたり、幼稚園のお勉強で英語でなにかをするのが楽しかったんですよね。リズムとか言語がそもそも違うし、日本語にはないかっこよさみたいなのを当時から感じてたんです。
小学2年生のころから塾に行って英語を勉強するようになって、洋画や洋楽を見たり聞いたりするようになってましたし、そうするとつぎは「唄えるようになりたい」と思って、歌詞を頑張って訳したり、発音を気にしたり、小中のころにそんなことをしてましたね。
──最近心に残った・ハマった作品はありますか?
理芽 韓流ドラマですね。みんなに「ペントハウス」を薦めてるんですけど、もう100話くらいあるので、みんな「ううん……そうか……」って萎縮しちゃうんですよ(笑)。あとは映画の「TOKYO MER ~走る緊急救命室~」とか感動しました。外に出て遊ぶことが多いせいで映像作品を見ることは少ないかもしれません。
──2022年7月から2023年4月までアメリカへ語学留学へ行っていましたが、海外志向が強いからこそ留学したんだなとお話を伺ってとても感じました。留学先で心に残った出来事や学んだことはありますか?
理芽 いっぱいありますよ。自分のYouTubeの配信で話したこともあるんですが、銃を持った人に絡まれて逃げた話ですね、初めて死を覚悟しました。あとはアメリカの国内旅行をしたときに色々あったりとか、ある日自転車を盗まれたりとか。そういうことを経験できたので、「人生、意外とどうにかなるもんなんだな」と楽観できるようになりましたね。
──海外のお友達はできました?
理芽 できました。色んなところから留学生が来ていたので、アメリカ人だけじゃなくて、ドイツやフランスの人とも友達になれました。基本的には英語でコミュニケーションしてて、今でもよく連絡を取っています。聞き取りは今でもできますが、やっぱり実際話さないと話すほうは衰えちゃうなぁと最近思うようになりましたね。
笹川真生の音楽は「いい意味で変態だなぁ」
──これまで洋楽の歌ってみた動画も多く出していますが、チョイスする基準は明確にありますか?
理芽 基準というのはないですね。マネージャーさんなどがオススメしてもらった曲で「いい曲だな」と思ったものや、元々好きな曲を歌ってみようと思ったり、自然と選んで投稿している感じです。
──ちょうど「SUMMER SONIC 2024」が始まるぞ!というタイミングでTyla「Water」やMÅNESKIN「I WANNA BE YOUR SLAVE」などを投稿していて、ちょっと驚きました。意識されていたのかな?と。
理芽 これはちょっと関係ない話からつなげて話したいんですけど、自分で自分のことを”運が良い”と思っていて。ある日のレコーディングで、時間が余ったので何かカバーを録ろうとなって、その場で中学時代に聴いてた西野カナさんを歌いたい!となってやって、投稿目前で西野カナさんが活動再開を発表されたり、そういうタイミングが奇跡的に合うことが多いんです。TylaやMÅNESKINの曲を投稿したのも、全部たまたまタイミングが合っちゃった感じなんです(笑)。「いいなぁ」と思ってすぐに録音してもらって動画にして投稿しようと思ったら、どちらも「SUMMER SONIC 2024」の時期に被った感じですね。
──さらに理芽さんの音楽について触れていきたいのですが、これまで笹川真生さんと二人三脚で楽曲を制作してきました。改めて「笹川真生の音楽」をどのように感じていますか?
理芽 真生くんの音楽ですか? んん~……変態だなぁと思います。良い意味ですよ?
──もちろん伝わっています。
理芽 人と違う味が出すぎてるんですよね。「ここなら普通はこうなるよな?」「でもなんでここ半音下げているんだ?」みたいなところや、転調や音使いの一つ一つに聞き入っちゃうんですよね。入り方・締め方もそう、いつも裏切られる感じがします。
──「NEW ROMANCER 2」の1曲目「おしえてかみさま」がすでにそうですよね。テーレーっと鳴っているシンセっぽいサウンドが、「普通に鳴らせばいい感じのハーモニーだろうな」というメロディなのに、半音下げているのか音色をそういう風にしているかはわからないですけど、気味悪い感じになっているんですよね。
理芽 そうそう! それです! 気味が悪くて不気味な感じ。
──「アルバムの冒頭を飾る曲でこの不気味な感じかぁ」というパンチがすでに笹川真生さんらしい、でも唄い始めると理芽さんの音楽になるという。
理芽 ありがとうございます。不気味でひねくれてて、でもバランスが整っている。改めて思うと、音楽として不思議だなぁと思ったりします。
笹川さんが作る曲の特徴だと思うんですけど、タイトルと曲の感じが違うことが多くて。「狂えない」も歌詞を読むとちょっと狂っているような感じですし、「えろいむ」はホラー映画のタイアップ曲に選ばれていて、普通に考えたら「怖い感じ」にしなくちゃいけないと思いがちですけど、あたしのボーカルやメロディがカワイイ感じに仕上がってる。音と歌詞、タイトルと実際の楽曲、そこの落差みたいなのがいいなぁって思ってます。
──「NEW ROMANCER」「NEW ROMANCER 2」と聞いてみると、サウンドがかなり変わったなという印象がまず大きいのですが、今振り返ってみて理芽さんはこの2作をどう捉えていますか?
理芽 写真を撮って思い出として残したアルバムとしてみると、ファーストアルバムに関しては生まれて間もない状態を写真に収めてもらっている感じですね。今のあたしからは想像もつかないような声で歌っていて、「こんな声だったんだ」って忘れちゃってるくらい。声が幼く感じられて違和感があります。
──そういった部分は致し方ないですよね。その瞬間の自分のベストを出したわけで、しょうがないところもある。
理芽 そうですね、このときのベストを出してこうだった。そしてこういうボーカルだったからこそのよさもある。今はそもそも声の出し方や発声がぜんぜん違うので、その点は成長できている部分だとは思いますし、とても初々しさが残っている作品だと思います。
──そこからセカンドアルバムはどのように変わりましたか?
理芽 そこから成長して小学生や中学生になったような感じですね。真生くんに作ってもらっていたファーストアルバムの頃というと、あたしは「お姉さんキャラでおとなしい」「謎めいている不思議な女の子」と思われていて、しゃべり方もあまり方言を出さないように気をつけていました。
そこから段々と「理芽ってハッチャけるタイプなんだ!」とファンの方たちにも浸透していったので、真生くんも「素の理芽」にだんだんと合わせて楽曲を作っていったと思います。ファーストの頃は低いキーでカッコよく歌っていく曲が多かったんですけど、セカンドアルバムを聞いてみるとキーが高いものが多いですね。
──ミドルテンポな楽曲やシティポップな曲も増えましたしね。
理芽 そうですね。新しいジャンルの楽曲も増えました。ファーストアルバムはオルタナっぽくてバンド調でクール、セカンドアルバムではかわいい曲やフワフワとした曲が増えたので、あたしは「オルタナかわいい」と呼んでます。
──ほかにもGuianoさんとのコラボアルバム「imagine」もリリースしていますが、理芽さんの中で「お気に入りの理芽曲」を挙げるとどれになりますか?
理芽 難しい……どの曲も好きですよ。「やさしくしないで」はあたしを等身大で歌っている曲で、あたしが住んでいる街や自分の性格面を踏まえて作ってくれたんです。楽曲を作るときは真生くんから聞き込みをするような感じでミーティングをするんですけど、このときは「何色が好きですか?」みたいなベタな質問からくだらない質問までいろいろ受け答えして作ったんです。当時のあたしのことについて歌ってますね。
理芽 「フロム天国」はあたしが大好きなDUSTCELLのEMAちゃんと一緒に歌えたのでお気に入りで、最後に収録されている「狂えない」という曲も好きですね。この曲は山田悠介さんの「サブスクの子と呼ばれて」という小説のテーマソングでお気に入りです。
──「気味が悪い感じ」「不気味でひねくれてる」笹川さんの曲を理芽さんが歌うという時、どういったことを意識していますか?
理芽 実は収録するときには、真生くんの頭の中を知った上で唄うことが多いんですよね。曲のイメージとか、どういう気持ちで作ったかとか、「なるほど」と思って聞いてて。その中で「この部分は感情を出さないで歌ってほしい」とオーダーされて唄うこともありますし、自分がニュアンスとして「ここは感情を出して歌いたい」「ここは淡々とリズムよく歌おう」と狙う部分はもちろんあります。
──以前の他メディアのインタビューで「無感情で歌ってほしい」と笹川さんから提案されて歌ったという話を読みました。自分は理芽さんの曲とボーカルを聞いていて、ある意味での力感の無さみたいなのを感じることが多いんです。ロウソクの灯火が揺らめいていて、フッと息を吹きかけたら消えちゃうのか?と思いきや、絶対に消えない。そんなイメージを受けます。
理芽 そういう風に言ってもらうのは初めてです、ありがとうございます。
V.W.Pのステージは「5人で歌うことに価値がある」
──これまでソロ公演含めて何度もライブ出演をされていますが、ご自身が出演した中で思い出深いステージがあれば教えてください。
理芽 やっぱり今年の代々木ですね(「神椿代々木決戦2024 IN 代々木第一体育館」のこと)。初日にV.W.Pとしての2ndワンマンライブ「現象II -魔女拡成-」があったんですけど、あたしが立ったステージで過去イチで大きくて、そもそも会場のスケール感がスゴかったんですよ。見ている景色、来てくださったファンのみなさんの声援、V.W.Pの5人として大舞台に立つという色んな重みがあって、かなり刺激を受けましたし、思い出深いです。
今回の3rdワンマンライブがソロとして初めて観客を入れてやるライブで、ソロライブの中でやりきった!みたいな感覚は味わえていないわけですけど、5人で不安をともにしながらあの場を味わえたのは、やっぱり大きいですね。
──花譜さん、ヰ世界情緒さん、春猿火さん、幸祜さんの4人とは数年以上活動を共にしていますが、出会った当時から今にかけて印象は変わりましたか?
理芽 だいぶ違いますね。デビューした当初はまだ今ほど仲がいいわけではなかったので、「仕事上での関わる人たち」という感じだったんですけど、4人と実際に会って連絡先を交換してからは、かなり印象が変わりました。今では関わる機会も増えて、一緒に活動する仲間でもあり、クラスの友達みたいな感覚です。
花譜ちゃんはすでにデビューしていて輝いている存在でどぎまぎしてましたけど、今では妹・末っ子・年下みたいな感じに思ってて、5人でいるときでもそういう感じに落ち着いてるなと思います。情緒は意外と自分とノリが合うし、話していても盛り上がる部分や笑うツボが一緒だなと感じることが多いですね。ついこの間も一緒に食事をしたんですけど、2人で延々しゃべりつづけてたくらいです。相談事があれば相談しあえてますね。
──なるほど。春猿火さんと幸祜さんは?
理芽 春ちゃんは「理芽大好き人間」なんですよ。隙あらばあたしの写真をパシャパシャ撮ってたり、春ちゃんが作った「#メチ観測日記」というハッシュタグがあるんですけど、現場で一緒になったりプライベートで遊んでいるときに「りめち、今観測日記に載せたから」って言ってくるんです(笑)。あたしは面白いことをした自覚もないので、「ええぇ? どこを……? 何を載せたの?」ってなっちゃう。もちろんあたしだけじゃなく、メンバー全員に愛がある人だなと思いますね。
幸祜さんとあたしは西日本組なんですけど、幸祜さんは関西人なノリでとても楽しませてくれるし、MBTI診断も一緒だったりして分かりあえる部分が多いですね。このあいだXを遡って昔の投稿を見ていて、そもそも呼び方とかぜんぜん違うことに気づいたんです。文章もよそよそしいし、文章の最後に「。」がついてたりして。今では「めち、うれしい」って返信がきたり、実際話していても扱い方が違う。全然変わったんだなってしみじみ思いました。
──今、理芽さんにとって「V.W.Pの5人で唄うこと」はどういうものをもたらしているでしょう?
理芽 ソロで歌うというのは、言ってしまうと自分がしたいようにすればいいし、自分1人の表現で成り立つものですよね。それが5人だとバランスが重要になってきて、メインを支えたり際立たせるハモり役になったり、逆に自分がメインとなったときはより前にバァーンと出ようとか、5人でいろいろ試行錯誤してます。1人では生みだせない音楽の表現や趣きが出せるのが気持ちいいんですよね。
──スポーツでいうと、個人競技と団体競技の違いみたいなところでしょうか。
理芽 確かにそういう感覚ですね。チーム戦なのに個人でズバズバいっても勝てないし、いい試合にはならないから。みんなで一つの技や戦略を考えて、こういうしようああしようと話し合って、実際の試合でそれがうまくいったらみんなで喜びをわかちあえる。
それと一緒で、「この曲のこのタイミングはこういう声を出してみる」「ここでは自分は引いて歌ってみる」とか、あとは「ここでこういう風に煽ってみよう」「振り付けはこうしてみる」とか色々と話し合って、本番のステージでバッチリ決まったら嬉しい。しかもこれはソロではなく、やっぱり5人でやるV.W.Pだからこそ生まれるものだと思います。
昔、V.W.Pでライブをしたときは、動きがぎこちなかったり、MCでうまくしゃべれなかったりしていたんですけど、その意味で代々木でのセカンドライブは素で楽しかったんです。「音楽って最高だな。5人で歌えるのは楽しい」って思ったし、「あたしのソロとして、そして5人でこういう大きな舞台に立ちたい」とも思いました。
5人で歌う意味というより、5人で歌うことに価値がある。それをお客さんたちにも感じてほしいと思ってますね。
──理芽さんは「Singularity Live Vol.3」にも出演されます。お相手が花譜さんですが、「シンガー・花譜」について理芽さんはどのような印象を持っていますか?
理芽 あの人は天才だと思ってます。歌が上手いというよりも先に、個性が強いというのが印象深いです。いまの世の中だとカラオケに採点機能があって、それに準じて上手いと言われちゃいがちですけど、花譜ちゃんの場合は「人を惹きつける声」をしていて、誰にも真似できようない魅力を持ったシンガーだと思います。
──「理芽と花譜とツーマンでライブをする」というのは、KAMITSUBAKIファン待望だったと思うんですが、理芽さんはどう思っていますか?
理芽 もちろん嬉しいです。デビュー当初からこれまで「姉妹」のように見られてきたわけで、声の相性としてもちょっと似ている部分があるし、いい感じのハーモニーになりつつ、ちゃんと2人の個性も残る。
長年やってきましたが、ライブの途中で2人で唄うパートはあっても、2人でコラボした楽曲は「魔的」「まほう」以外ないんです。今からどんなライブ内容になるかあたし自身も楽しみです。
「理芽という存在を音楽から入って知ってもらえると嬉しい」
──もう一つのライブは、先ほどから話題に上がっている「NEUROMANCE Ⅲ」。有感客ライブが初めてとなるサードワンマンですが、こちらはいかがでしょう?
理芽 ライブがあるというだけでもテンション高くなるのに、実際にファンのみんなを見て「みんながいる!」と余計に上がっちゃって、とんでもなくハイテンションになっちゃうかもしれないです。
──テンションが上がりすぎて今まで見たことのないような理芽さんが見れたり?(笑)
理芽 かもしれないです(笑)。セトリも演出も結構練っていて、きっと会場は盛り上がってくれるだろうと想像してリハーサルやトレーニングをしているところです。あたし自身どうなるんだろう? とワクワクしてます。
──すこしディープな話題に入ります。今回のインタビューでも度々触れていますが、「自分と花譜は姉妹のような形でデビューした」と長く語られてきました。実際にPALOW.さんが手掛けたビジュアルで理芽さんはデビューされましたが、デビュー当時はご自身はどう感じていましたか?
理芽 あたし自身も花譜ちゃんの歌声を聴いたときに「自分に似ているな」と思ったし、声が似ているからこそあたしを見つけてくれたとも思うんです。顔が似ているひとはこの世に三人いると言いますけど、歌声や唄い方がここまで似ている人も多くない。それに、可愛くて歌が上手い子に似ていると言われて、シンプルに嬉しかったですね。
ただ同じく、「花譜と似ているだけなら花譜だけでいいじゃん」という手厳しいコメントもあって、「じゃああたしって何だろうな?」と考えるようになりました。そこからファーストアルバムのクール路線へと繋がったし、今の音楽に繋がっていきましたね。
──「VTuber」「バーチャルシンガー」といった存在が徐々に認知され、受け入れられている状況となっていると思います。ご自身は自分のこれまでの活動を通してどのように捉えてますか?
理芽 正直そこまで深く考えていなかったですね。確かに「VTuber」「バーチャルシンガー」という形でやらせてもらっているけども、自分自身をそこまで強く「VTuber」「バーチャルシンガー」と考えてはいないかもです。
──強く気負ったりすることなく自然に活動してこられたわけですね。
理芽 色々タイプがあるとは思っていて、配信でめちゃくちゃおしゃべりする方、ゲームをたくさんやられる方と沢山いる中で、あたしをタイプ別に分けるなら「音楽にしか目がいっていない」タイプなんだと思います。
これはあたしの感覚ですけど、アニメらしいキャラクターデザインをバーチャルとして借りて歌手をやっているという感覚でこれまで活動してきたし、しっかりと姿を明らかにしている音楽家や歌手の人たちと、その点以外では全然変わりないですね。実際の活動内容や音楽性も、特段変わっているというわけではないですし。
──これが黎明期の頃だったら「いやいやそんなこと言って……」などと言われていたかもしれないですが、ここ最近では逆にそういった声の方が減りつつあると思っています。
理芽 いろいろな方々に聴いてもらったり見てもらうことがあるので、「なんでバーチャルな姿で活動しているのに、なぜMVでは本人が出ていないの?」とか「イラスト1枚だけで動かないってどういうこと?」みたいな厳しめなコメントは、今でもありますし、「こういう歌を唄うのか。VTuberって意外とありかも」という反応もあります。おっしゃるように、ちょっとずつ世の中に浸透してきているんだなという手ごたえは、動画のコメントやSNSでの反応などを見ていても確かに感じています。
またあたしの感覚の話しになっちゃうんですけど、理芽という存在を音楽から入って知ってもらえると嬉しいです。VTuberとして理芽を好きになって、音楽をついでに好きになってもらうのももちろん嬉しい。でも、音楽を入り口にしてあたしのことを知ってもらって「この人ってバーチャルシンガーなの!?」となるほうが、実はいちばん嬉しい流れ。それくらいあたしは「バーチャル」であることを意識していないんです。
じつはあたしの周りにはオタクカルチャーにそこまで詳しくない方も多くて、「アニメみたいな見た目でキャッキャやっているだけなんでしょう?」という印象を持っている方もまだまだ多いんですよね。そういうイメージがあって、入りづらくなって手を付けないという方が周りにいるので、そういうイメージを覆したい、ある意味でシーンに改革を起こしたいとも思っています。
(TEXT by 草野虹)
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