2025年1月9〜11日、東京ビックサイトにて行われた展示会「TOKYO DIGICONX」(トウキョウ デジコンクス)。今回で2回目となるイベントで、XR・メタバース・AIなどをテーマに、大手企業から個人クリエイターまで幅広い出展者が150以上集まり、国内の最新動向を体感できた。
9、10日のビジネスデーは主にXRやAIの業界関係者、11日のパブリックデーは本分野への興味関心が強い一般客が参加し、ブースを歩き回って熱心に説明を聞いていた。また、ステージも会場内に2ヵ所用意し、セミナーやピッチコンテストなどを実施。10日夜にはネットワーキングナイトを開催するなど、知識と人脈の交流も促進していた。


XR・メタバースとAIは必ずしも近い領域とは言えないので、既存の展示会イベントや学会と比べると、展示範囲が広いと思われるかもしれないが、出展者側に話をうかがうと「意義ある商談ができた」「横繋がりができた」など、ポジティブな反応が多く聞かれた。
ブース出展していたPANORAのスタッフに率直な感想を聞くと、「来場者のほとんどがこの分野に興味のある人で、『XRとは〜』とか『VTuberとは〜』という初心者向けの説明をほとんどなしに、いきなりビジネスの話に入れたのがとてもよかった」と語っていた(編集註:実際、DIGICONX出展で出会いがあり、数件の新規プロジェクトが立ち上がりました)。

興味のあるプロダクトを直接体験できたりするだけでなく、個人クリエイターの展示物や、大丸松坂屋百貨店×Vのブースで配布されたトラストレベルバッジなど(関連記事)、情報感度の高い方は楽しめたはずだ。
安価な出展料にも驚かされた。大規模な会議場で行われるビジネス展示会を考えると出展料は2桁万円は下らないことが多いが、DIGICONXなら個人クリエイターは1万6500円から、小規模企業では5万5000円と激安。出展料のハードルは低いものの、ブースサイズは個人クリエイターは幅2×1.5m、企業は3×3mと十分なスペースが用意されていた。
参加者のお財布にも優しく、登録することで無料で入場可能だ。XR・メタバース領域では有料の展示会イベントが多くある中で考えると、ハードルはかなり低いといえる。
それだけに、主催の東京都がXR・メタバース・AIといった先端領域を、より盛り上げていきたいという意図を感じた。本記事ではその魅力をまとめていこう。
TOKYO DIGICONXのハイライト


開会式では当イベントの公式アンバサダーでもあるせきぐちあいみによるライブパフォーマンスが行われ、さのみきひと、岩田 桃楠による生演奏に合わせて、Apple Vision Proを用いたライブペイントで会場を盛り上げた。


その後は、XR・メタバース、AIなど業界の最新動向や、新たな事業の創出への期待を込めたピッチコンテストを実施した。

ブースを見ていくと、XR・メタバース関連では、実際に体験できるコンテンツが目立っていた。VRコンテンツは実際にかぶらないとわからないこともあるため、そうした場の重要性を再確認した。
例えば、VRで労働災害を疑似体験できる明電システムソリューションによる「3軸VRシミュレータ」は、まさに体験することでそのよさを体感できるコンテンツだった。
これは、その職種でないとなかなか馴染みのない工場系の事故から、電球を取り換えるために脚立に乗るといったありえそうな失敗まで、あらゆるインシデントをVRで体験できるという内容で、主に工場等での安全教育に用いられており、まず事故をVRで体験した後で正しいやり方を見るというもの。
家庭用のVR機器では体験が難しい大がかりな装置や、工業用のVRコンテンツを体験できる事は、普段はPCVRで遊んでいる筆者にとって、ゲーム以外のVRの可能性が広がることを実感した。



会場内でひときわ目立っていたのが「バンジーVR」。VRゴーグルと専用器具で、都庁の上からバンジージャンプをする感覚を再現する体験は、実際に半回転して逆さまになるという鮮烈な体験から、ほとんどの体験者が叫んだり、恐怖から笑ってしまうというのが印象的だった。
制作者はバンジージャンプの経験者であり、リアルなバンジー体験を求めて「バンジーVR」を制作したというだけあり、本当に飛び降りている感覚が楽しい体験だった。


X LIVEではXR Kaigi Award「ツール・基盤技術部門」を受賞したMawariの技術を使って実施されたVTuberとのリアル対話型イベントが体験できたり、Gugenkaの新製品「ホロモデリンク」を実際に見て取れるなど、担当者に直接話を聞けたり、大がかりな装置やフリーローム型のコンテンツなども体験できるなど、リアルの展示会ならではの魅力的な体験が多数あった。


個人のクリエイターにもスポットが当てられる

大手企業から小規模事業者まで、さまざまな領域、事業形態の出展者によるサービスやプロダクトの展示がメインだったが、個人のクリエイターエリアもあった。ゲームクリエイターやイラストレーター等が自分のアウトプットを出展しており、この一角だけを見るとクリエイターEXPOなどと近い雰囲気を感じた。


この展示会ならではの面白い意図を感じたのが「V×大丸松坂屋」による「VRChatクリエイターズコーナー」だ。
ここには、VRChatで活動する個人のクリエイターや団体のポスターが掲出されており、来場者はVRChatでメッセージを残すように、用意されているポストイットでコメントを書き残すことができたのが印象的だった。

一般デーがあるとはいえ基本的にはビジネスマッチングがメインとなる中で、一般来場者とクリエイターのコミュニケーションになるような展示になっていた事や、大丸松坂屋百貨店×VのブースではiOS版VRChatの試遊コーナーが設けられ、体験後トラストレベルのバッジも配布されるなど、VRChatユーザー達がXR・メタバース領域において大きな存在感を放つと感じさせられた。
東京都はなぜTOKYO DIGICONXを開催するのか


TOKYO DIGICONXは東京都主催の展示会なだけあり、東京都が主催する「Tokyo Social Innovation Tech Award 2024」の表彰式も同時に行われた。このアワードは東京都が抱える社会課題解決を先端技術を用いて行うというものだ。
受賞した事業者・プロダクトはTOKYO DIGICONXへの出展など、様々な形で事業をサポートするという。お話をうかがったところ、大賞の「Holoeyes」が医療系プロダクトで、他の応募者も遠隔医療や匂いのAI解析など、主に学会等での発表が多く、多業種にわたる展示会イベントに出ること自体が新しい出会いの創出となり、シナジーが期待されると語っていた。
繰り返しになるが、DIGICONXは、ターゲットが先端分野に絞られており、出展側も来場者側も参加ハードルが低いということが特徴になる。それだけ東京都がこの領域の醸成、機会創出に本気ということであり、出展者側の費用対効果も高かったはずだ。来年の開催も待ち遠しい。
●イベント概要
・名称:TOKYO DIGICONX(第2回TOKYO XR・メタバース&コンテンツ ビジネスワールド)
・開催日時:1月9、10日(ビジネスデー)11日(パブリックデー) 全日10〜18時
・会場:東京ビッグサイト 南3・4ホール(東京都江東区有明3-11-1)
・入場料:無料
・主催:XR・メタバース等産業展実行委員会(東京都、XRコンソーシアム、Metaverse Japan、東京商工会議所)
(TEXT by ササニシキ、Edited by Minoru Hirota)
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