「私と一緒に青春してくれて、ありがとー」にじさんじ WORLD TOUR 2025、福岡公演ライブレポート

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人気バーチャルライバーグループ「にじさんじ」、史上最大規模のライブツアー、第6公演目となる「にじさんじ WORLD TOUR 2025 Singin’ in the Rainbow!」 福岡公演が、9月13日(土)に福岡サンパレス ホテル&ホールで開催された。鷹宮リオンさん夢追翔さん星川サラさん不破湊さんオリバー・エバンスさん倉持めるとさんの6人が、超満員の観客を沸かせた約2時間、全21曲のライブをレポートする。

今回のレポートは、ニコニコ生放送での配信(タイムシフトは9月29日(月)まで公開)を元に制作。記事中の画像は、現地会場で撮影されたオフィシャル写真と、配信のスクリーンショットを使用している。

【ライブ本編】にじさんじ WORLD TOUR 2025 Singin’ in the Rainbow!福岡公演 / 無料パート #SitR福岡


初ライブの倉持が最強のソロステージを披露

6人の仲の良さが伝わってくる影ナレから数分後、予定時間通りに福岡公演がスタート。お馴染みの曲が流れるオープニング映像に続いて、通常衣装姿の6人が登場し、ゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク」に登場するユニット「Vivid BAD SQUAD」の曲「Beyond the way」を歌い始める。

この6人がどのようなステージを繰り広げるのか具体的にイメージできていたわけではないが、ストリート系のおしゃれな曲からのスタートには少し意表を付かれた。1番のサビを前に全員が光に包まれて、にじさんじ共通衣装に変身し、大きな歓声が上がる。鷹宮さん、オリバーさん、倉持さんの共通衣装は、この公演で初お披露目だ。

2曲目は、三者三様にタイプの違う3人のギャルによる「G4L(ギャル)」。Gigaによるクールな曲で3人の歌い方も曲調にマッチしているのだが、全員、隠しきれない可愛さも滲み出ている。3人の声質の違いも心地良い。

暗転したステージが明るくなると、床に座った男性陣がボカロ曲「偽物人間40号」を歌い始める。床に座った状態からのパフォーマンスは、ありそうであまりない。3人は、最初の間奏から客席を煽り、ライブの熱量を一気に上げていく。1曲目でステージに現れた時から感じていたが、男性陣だけで並んでもオリバーさんの高身長は一際、目立つ。特に腕を振り上げた時の存在感は絶大だ。

最初のMCでは、6人全員がトーク。一人ずつ自己紹介や客席とのコール&レスポンスをした後、共通衣装初お披露目の3人がデザインのこだわりポイントを解説。オリバーさん、倉持さんに続いて最後に答えた鷹宮さんは、腰に手を当てて仁王立ちしながら「悪のプリキュア」とアピールして会場を沸かせる。たしかに、可愛いだけでなく、存在感もある衣装からは、ダークヒロインオーラも感じた。

夢追さんと不破さんは、衣装は既存のものだが、髪型が変わっている事をアピール。星川さんだけ衣装も髪型も変わっていなかったが、その分、この後のパフォーマンスで新しい何かが披露される可能性は高まった。

MC後の4曲目は、今回が初めてのライブ出演となる倉持さんのターン。まずは、他の5人が自己紹介と併せて観客とのコーレスをする中、「あとで」と温存していた「倉持はー?」「最強ー!」のコーレスを敢行し、「知ってるー」と子供のように大はしゃぎ。しかし、「サラマンダー(TAKU INOUE 3-Minutes Remix)」が始まると雰囲気が一変。手足の先端までコントロールされている切れ切れのダンスと、低音から高音までをカバーする歌声。そして、ラストには、再び子供のような満面の笑顔を見せる。デビュー直後に公開した歌動画が注目を集め、同期を始めとした他のライバーの振り付けも担当するなど、3Dデビュー前から歌とダンスに定評のあったにじさんじ最強の陽キャギャルは、観客の前で圧巻のソロパフォーマンスを披露した。

続いて登場した鷹宮さんと不破さんは、「Vivid BAD SQUAD」の「ULTRA C」を披露。普段の配信などでは、あまり絡みを見た記憶がなく不思議な組み合わせに感じたのだが、要所でシンクロダンスを見せるなど息ぴったり。鷹宮さんの低音と不破さんの高音が特に印象に残るのも面白い。

6曲目では、鷹宮さん、夢追さん、星川さん、オリバーさんが通常衣装に着替えて登場し、ボカロ曲「Alice in N.Y.」を歌う。ここまで、ステージ専用衣装でのパフォーマンスを観てきたせいか、日常服で歌う4人からは謎のドラマ性を感じる。星川さん&夢追さんの親子ユニット(?)「夢星家」が含まれているせいだろうか。ラスサビでは、そろって共通衣装に変身。ワールドツアーも終盤だからか、序盤の公演よりも共通衣装を使った演出のバリエーションが広がっている気がする。


5年目の新人オリバーは「命に嫌われている。」を熱唱

7曲目は、星川さんが共通衣装で登場。最近は立派な型月オタクに成長中だが、アイドルVTuberとしてのポテンシャルが高く、KT Zepp Yokohamaでのソロライブという大舞台も経験しているにじさんじの「一番星」は、ソロステージの楽曲にキュートなボカロ曲「ラヴィ」を選択。最初のフレーズで光に包まれると、髪型は細いツインテールに変わり、共通衣装の背中には可愛いコウモリ羽が生えている。ブロンドの美少女悪魔の甘くとろけるような歌声と可愛いダンスで、多くの観客がワンパンされたことだろう。

「5年目の新人」オリバーさんと、「3年目の新人」倉持さんが大きなフラッグを力強く振りながらカッコ良く歌った可不の「GURU」の後は、「6年目のベテランの先輩」星川さんと不破さんが合流し4人でMC。後輩2人の退場後は、「ほぼ同期」の二人が、不破さん主導で過去に共演したライブなどの思い出を語る。トークが一段落したところで、髪型が変わったことをアピールする星川さん。不破さんが「めっちゃ可愛いね」と言うと、「え?」と聞き返し、もう一度「可愛い」と言わせる小悪魔ムーブを3回繰り返したが、星川さんのリアクションを見ると、本当に聴き取れなかっただけのようだ。星川さんと不破さんの「ホシミナイト」が歌う9曲目は、ボカロ曲の「シネマ」。MCでの雰囲気から一変、美しい高音のハーモニーも印象的な、お洒落で大人なステージを披露した。

暗転したステージに直上からのスポットライトが差すと、そこに立つオリバーさんの姿が見えた。190㎝の長身で姿勢も良いため、スタンドマイクの前にスッと立つだけでも絵になっている。歌うのは、ボカロ曲の「命に嫌われている。」。一時期、「VTuber」という存在自体のアンセムのように、多くのVTuberがカバーしていた名曲だ。初めて出演するライブの貴重なソロのステージで、この曲を選んだことに、時に体調不良に悩まされながらも精力的な活動を続けるオリバーさんのVTuber活動に対する思いを感じる。

ここまでの曲でもセリフ調のフレーズを担当することが多く、そのイケボで客席を沸かせてきたが、誰かに語りかけるように進行するこの曲では、さらに魂がこもっており、サビからは熱量も声量も一気にギアが上がった。アウトロに入ると、観客に向かって深々と一礼。長い手を左右に大きく広げた後、顔の前で祈るように手を組み、目を閉じる。命を感じ、神聖な空気さえ感じるステージだった。

11曲目は、夢追さんと不破さんによる「CITRUS」。男性ボーカルユニットDa-iCEによるヒット曲を二人でスイッチしながら歌っていく。ある意味、同じ曲のソロステージを2人分観られているようなもので、ファンにとってはラッキーな演出かも。そして、大サビに入る直前、ワンフレーズだけ向かい合って目を見つめ合いながら、声を重ねる。二人のハーモニーのレア度をさらに高める歌詞割りが印象的だった。

12曲目は、女性陣3人+オリバーさんという少し不思議な組み合わせながら、声の重なりも、ステージ上で4人が踊る姿も妙にマッチしていたNOMELON NOLEMONの「どうにかなっちゃいそう!」。オリバーさん、可愛い系もいけるのか?

13曲目は、シンガーソングライター夢追さんのソロ。真っ暗な会場、前方のスクリーンにパソコンのメモ帳が開かれ、キーボードの打鍵音と共に文字が書き込まれていく。

 夢追翔
 福岡ライブにむけた新曲
 草案
 「僕にピアノは弾けないけれど」

メモ帳が消えたステージの上手にはグランドピアノが置かれ、ピアノの前の椅子には、通常衣装姿の夢追さんが座っている。ピアノに背を向けたまま歌い始めた夢追さんは、下手に置かれたパソコンの前に移動して、何かを書き始める。楽器が苦手な夢追さんの曲は、ピアノの前ではなく、パソコンの前で生まれるということだろう。曲作りからスタンドマイクを立てての宅録まで、ファンが見ることはできない自宅での創作作業中の姿をまるでMVのように見せながら、初披露の新曲 「僕にピアノは弾けないけれど」 を歌っていく。ラストは、華やかな共通衣装に着替えて、産み出した曲を観客の前でお披露目するような情景だ。夢追さんのオリジナル曲は、人生観が深く刻み込まれた曲だらけだが、この新曲のパフォーマンスも、ソロライブのクライマックスのように作り込まれたステージだった。

夢追さんの熱いステージの後、通常衣装姿の鷹宮さんも登場。「ほぼ同期」に向かって「良い曲だった」とストレートな賛辞を送った直後、「私はピアノ弾けるよ」と謎にマウントを取る関係性が面白い。2人でのMCに続いては、鷹宮さんのソロ。

「今日は私がみんなに伝えたい気持ちにリンクしたこの曲を歌いたいと思います」というメッセージから歌い始めたのは、緑黄色社会の「恥ずかしいか青春は」。鷹宮さんらしい奇麗で芯がある凜とした歌声を高音まで響かせていく。背景が白い入道雲と青空から、放課後の学校、燃えるような夕焼けへと切り替わると、「みんなー私と一緒に青春してくれて、ありがとー」と満面の笑顔で叫ぶ。そして、再び青空へと変わった中、光の粒子と共に共通衣装に変身した鷹宮さん。最後は、満開のひまわり畑の前で「私は、今日という1日を絶対に忘れません。本当に、本当に、みんな大好きだよー!」と満員の観客への愛を叫び、深々とお辞儀をする。しかし、「鷹宮リオン」のパフォーマンスにこんなにも「青春」を感じられるとは、少し意外だった。私立帝華高校2年生の17歳なのだから、そこまで驚くことでは無いのかもしれないが……。


バーチャルホストが福岡の夜を「一旦ステイ」

15曲目は、夢追さんと星川さんの「夢星家」によるボカロ曲「GETCHA!」。並んだときのビジュアルのバランスも声の相性も良い二人を見ながら、きっと、この曲を選んだのは星川さんで、優しい夢追パパは何も言わずに受け入れたのかな、などと妄想してしまう。

続いて、ハンドメガホンを持った鷹宮さんと倉持さんが、「ここからも良いところ見せちゃうよーうちらにメロがっていこー!」と、完全に陽キャのテンションで登場。トップハムハット狂 の「Mister Jewel Box」で、格好いいラップとダンスを披露した。

17曲目は、男性陣3人と倉持さんによる「Vivid BAD SQUAD」の「ファイアダンス」。統一テーマの無いライブで、同じユニットの曲が3曲もカバーされるのは珍しい。それだけ、メンバー6人の作りたいライブと、「Vivid BAD SQUAD」の曲や世界観がマッチしていたということだろう。ステージ前に火柱が上がるだけではなく、ステージの上も完全に炎に包まれる中、歌い続ける4人。これもバーチャルライバーのライブだからこそ可能な演出だ。倉持さんの奇麗な高音の後、負けじと奇麗に伸びていった夢追さんの高音も特に印象的だった。

バーチャルホスト不破さんの「ご指名ありがとうございます」というセリフと共に、暗転していた会場に妖しいパープルの照明が灯り、観客席のペンライトも一斉にパープルに変わる。そして、ステージ中央のポップアップでスーツ姿の不破さんが登場。歌うのは、大人気のオリジナル曲「一旦ステイ TONIGHT」だ。「福岡の皆さま、一緒に歌ってくれますかー」と叫んだ時点で、客席のボルテージはすでに最高潮。コーレスも完璧だ。

ここまでの17曲の中にも会場のテンションを盛り上げる曲は数多く披露されてきたが、観客を盛り上げる要素だけで構成されているかのようなこの楽曲は、飛び道具級の破壊力。シャンパンタワーやミラーボールも登場したステージ上を左右に動きながら、さらに会場を煽っていく。そして、大サビの後には、不破さんの衣装が共通衣装に変わると同時に、共通衣装姿の5人がステージに登場。ダンサーとして、不破さんのパフォーマンスをさらに盛り上げていく。「帰りの馬車は~」の手をぐるぐる回すダンスは、6人バージョンになるとさらに楽しい。

夢追さんの「次で最後の曲なんです」という言葉に、観客と同じくらい残念そうな反応を見せる5人。ライブ本編最後の曲は、「にじさんじ」7周年記念プロジェクト楽曲「Arc goes oN」。各公演ごとに誰がどこのパートを歌うのか気になる落ちサビからは、星川さん、倉持さん、オリバーさん、夢追さん、不破さん、鷹宮さんと繋いでいく。大サビでの男女に分かれてのハーモニーも心地良い。6人がステージを去ると、すぐにファンからのアンコールが始まる。

アンコールの1曲目は、秋をコンセプトにしたにじさんじの全体曲「ヨナガオルケスタ」。お洒落でお祭り感も強くアンコールの1曲目にはぴったりの楽曲で、会場のテンションはすぐ最高潮に戻った。そして、様々な告知と、ARカメラでの記念撮影の後、6人は順番に感想を語っていく。福岡公演のメンバーを最初に聞いた時に「正直、どういうメンバーなんだろう?」と思ったという不破さんが「練習をして、ライブをさせていただいて、この6人で良かったなって」と語った瞬間、夢追さんと鷹宮さんが食い気味に「ウチらのこと好き?」と質問。ノータイムで「好き」と応えると、客席からは大きな歓声が上がった。

そして、最後を飾る曲は、もちろん「Virtual to LIVE」。6人によるにじさんじの「国歌斉唱」で、福岡公演の幕は閉じた。「Virtual to LIVE」を終えた後、全員、ステージを去るのが本当に名残惜しそう。舞台袖に下がるギリギリまで、みんな手を振り続けていた。

通常衣装と共通衣装の切り替えが多く、ソロでのパフォーマンスに他のメンバーがダンサーとして出演するなど、これまでの公演では無かった演出も楽しめた福岡公演。残り2公演では、どのような新鮮な驚きを体験できるのか、ますます楽しみだ。

(C)ANYCOLOR, Inc.


(TEXT by Daisuke Marumoto

●関連リンク
「にじさんじ WORLD TOUR 2025 Singin’ in the Rainbow!」公式サイト
福岡公演演配信ページ(ニコニコ生放送)
にじさんじ(X)
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