公立小学校の特別支援学級で初のVR授業、公開実証を実施 コミュニケーションスキル高群の75%が改善へ

LINEで送る
Pocket

株式会社ジョリーグッド

 株式会社ジョリーグッド(東京都中央区、代表取締役:上路健介、以下 ジョリーグッド)と、市川市立新浜小学校(千葉県市川市、校長:堀切宏、以下 新浜小学校)は、ジョリーグッドが提供するソーシャルスキルトレーニングVR「emou」(エモウ)を活用して、特別支援学級の3年生以上の生徒16名を対象に実証を行いました。公立の小学校の特別支援学級でVRを使用した実証を行うのは、これが全国初となります。
 本実証は、新型コロナウイルスの対策下でも、子どもたちの学びを止めない新しい学習のカタチを実現することを目的としています。

<背景> 
今まで新浜小学校では、知的障害学級の児童にソーシャルスキルトレーニングを行う場合、ロールプレイや絵カードを活用して実施していました。児童の中には、知的障害による課題(想像力・社会性の欠如)から、学習場面を日常生活に置き換えたり、学習したスキルを日常的に発揮することが難しい児童が多くみられていました。今後、コロナウイルスの感染状況によって休校になった場合、対面でも場面の置き換えなどが困難な特別支援学級の児童は教育がさらに難しくなる懸念があります。VRを活用したソーシャルスキルトレーニングを活用することで、児童は自宅でVRゴーグルを装着するだけで場面を疑似体験することができるため、児童の社会スキルを学ぶ機会を止めず、よりリアルに近い場面で反復練習ができ、適切な行動の般化を目指すことが可能になります。

<実証の様子>
 今回の研究では、障害特性として他者の顔に注目することが難しく、上手く他者に思いを伝えられないケースが多くあるため、VRによるソーシャルスキルトレーニングを行うことで、他者と関わる際に顔を一定時間注視することができるようになることを目指し効果実証を行いました。
 本実証は、児童16名を「コミュニケーションスキル高群」と「コミュニケーションスキル低群」の2グループに分け実施。日常生活のコミュニケーションにおいて、対象の注視を継続しやすい傾向にある児童を高群、その逆の注視が継続しにくい傾向の児童を低群としました。
 まずはクラスで自己紹介をするVRコンテンツを活用し、バーチャル空間の中でクラスメイトの前での自己紹介を体験練習します。発話し練習している様子や児童のバーチャル空間での視点の動きをリアルタイムで解析し、しっかりと対象を注視できているか、良かった点などをすぐに児童にフィードバックを行いました。

▲VRで教室での自己紹介を疑似体験。実際に発話して、自己紹介の練習をします。
▲VRで教室での自己紹介を疑似体験。実際に発話して、自己紹介の練習をします。

▲バーチャル空間では、クラスメイトの自己紹介を聞き、自らも自己紹介をする。
▲バーチャル空間では、クラスメイトの自己紹介を聞き、自らも自己紹介をする。

▲児童1人1人に評価を伝える。コミュニケーションが苦手な児童にはより丁寧に評価を伝えた。
▲児童1人1人に評価を伝える。コミュニケーションが苦手な児童にはより丁寧に評価を伝えた。

<結果:コミュニケーション高群の75%に改善が見られた>
 児童へ評価を伝えたあとは、VRでの練習やフィードバックを踏まえてロールプレイを行いました。実証では、VR視聴前後で「対象を注視する継続時間」を測定し比較しました。結果は、高群の8名の児童の内6名に改善が見られました。低群の児童にも今回37%の改善が見られた。低群の児童には、授業デザインの工夫や適正なVRコンテンツの選定などを行いながら、引き続き効果的なソーシャルスキルトレーニングを実施していきます。

▲VR空間内で練習した自己紹介を実践。コミュニケーション高群の児童の多くに練習の成果が見えた。
▲VR空間内で練習した自己紹介を実践。コミュニケーション高群の児童の多くに練習の成果が見えた。

▲VRの授業は楽しかったか?の問いに、多くの児童が楽しかったと答えました。
▲VRの授業は楽しかったか?の問いに、多くの児童が楽しかったと答えました。

■VRは、ただ楽しいだけではなく体験になる

市川市立新浜小学校 特別支援学級 学年主任 伊勢太惇先生
「VRをツールに、行動の般化を目指した授業デザインをしました。絵カードなどでは理解をするのが難しいことも、VRなら視聴ではなく体験になるので、場面を想像するのが難しい子たちへのアプローチが一番できる。またVR体験中の視線データをリアルタイムで私たちが分析したあと、すぐに子供たちに良かった点、悪かった点をフィードバックすることで、次のロールプレイの実践に活かすことができると感じました。」

■VRでのSSTを重ねることで、児童の表情や目線に変化があった

市川市立新浜小学校 特別支援学級 講師 谷口克樹先生
「知らない人たちの前で話すということは、特別学級の児童たちにとってはどれだけ大変かと考えると、VRを使ったソーシャルスキルトレーニングの回数を重ねることで子供たちは伸びていると感じています。人に対して伝えたい、僕の話を聞いてくれ、という表情も目線も日常生活の中でとても増えてきました。短い時間の中でも伸び代があったと思います。」

 本実証では、児童達が通う地域の放課後等デイサービスの先生で公認心理師・臨床心理士でもある外川先生にも協力いただき、授業の組み立てから体験後のフォローまでを組み立てました。学校と施設が連携しながら療育を行う新しい「地域療育連携」を進めながら、引き続き今年度の検証を行う予定です。

 emouは、今後も消費生活トラブル編や異性との関わり方、乗り物に乗っての外出体験など、様々なコンテンツを開発予定し、誰ひとり取り残さない未来の実現を目指します。
 ジョリーグッドと一緒に発達障害をもつ方の“はじめて”や “好きなこと”、“将来の夢”を見つけるコンテンツの開発や、実証に協力していただけるパートナーを募集しています。
お問い合わせはこちら:https://emou.jp/contact-personal/

■発達障害支援施設向けVRプログラム「emou」(https://emou.jp/
 emouは、全国の発達障害支援施設に向けて、VRによるソーシャルスキルトレーニングを提供しています。2020年1月に開催された、経産省「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2020」にて優秀賞を受賞しました。emouは、対人関係や集団行動を上手に営んでいくための技能を獲得するソーシャルスキルトレーニングを、専門医の監修のもとVRプログラム化。VRによって、場面の再現が簡単にでき、コンテンツ毎のセッション進行マニュアルをセットで提供しているため、経験の浅い支援スタッフでも受講者に良質なトレーニングを行うことができます。また、一対多のオンラインリモートVR授業の機能によって、新型コロナウイルスの影響や、施設が遠い方、様々な理由で外出が困難な方を対象にオンラインのソーシャルスキルトレーニングVRをお届けします。

■株式会社ジョリーグッドについて(https://jollygood.co.jp/
 ジョリーグッドは、高精度な“プロフェッショナルVRソリューション”と、VR空間のユーザー行動を解析するAI エンジンなどを開発するテクノロジーカンパニーです。医療教育、障害者支援など、成長を加速し生きがいを支援するVR・AIサービスを開発、提供しています。

企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ