企業・個人を問わず、毎日何十人もの新人がデビューしていくVTuberの世界。一方、すでに業界内には多くの才能が存在しているため、今の「推し」の動画・配信を追うだけで精一杯、新人まで気が回らないというVTuberファンも多いはず。そんな方に向けて送るのが本連載「データで見る、ツイ伸び新人VTuber」です。
分析・執筆は、Twitterのリストから随時2万人以上のVTuberのデータを収集して分析しているmyrmecoleonさんが担当。直近の7日間でTwitterのフォロワー数が急増したVTuberを数名紹介します。
こんにちは。myrmecoleonと申します。前回に引き続き、今回も最近勢いのあるVTuberを紹介していきます。以下は直近にTwitterのフォロワー数が急増したVTuberを並べたグラフです。今回はここから、いずれもフォロワーが20%以上増加した夢乃(ゆめの)リリスさん、雲母(きらら)ミミさん、Miori Celesta(ミオリ・セレスタ)さんの3名をピックアップ。伸びた原因も推測しつつ、プロフィールをまとめました。
夢乃リリス
- Twitter:https://twitter.com/yumenolilith
- YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCH11P1Hq4PXdznyw1Hhr3qw
夢乃リリスさんはちょうど1月16日に初配信したばかりのサキュバスJKの新人VTuber。犬山たまきさんで知られる漫画家・佃煮のりおさんがプロデュースするVTuber事務所「のりプロ」の二期生です。まだデビューして3日ほどですがチャンネル登録数がすでに4万を越え、非常に注目されています。
キャラクターデザインが伊東ライフさん、先行するTwitterや自己紹介動画でも下ネタを連発するなどそうした傾向は予想されていましたが、初配信では、隠せてない規制音・「くるみぽんちお」を歌い出す・初配信でなく初体験の生々しい感想を話し出すなど、むしろBANされなかったのが不思議なほどの予想を上回る大暴れっぷりで、佃煮のりおさんや伊東ライフさん、のりプロの先輩たちや視聴者を困惑させました。
下ネタ以外も、物怖じせず堂々とした話しっぷり、常に話題が途切れないテンポ、ころころと変わる表情、効果音やBGM変更を多様する、歌う曲はともかく歌は上手いなど、新人ながら配信が濃密で飽きさせない工夫がされており、初配信以降も安定した面白さがあります。
今回の7日間ではデビュー直後にも関わらず4000名以上のフォロワーが増えました(それ以前から23%増)。この7日間に増加したフォロワーの傾向(該当アカウント群から300名超を無作為抽出の上フォローしているアカウントを集計。以下同じ)を見ると、9割以上が佃煮のりお/犬山たまきさんからのフォロワー、白雪みしろさんや愛宮みるくさん、姫咲ゆずるさんなどのりプロ先輩からのフォロワーも多く、今のところは事務所の箱としてのフォロー傾向が強いようです。のりプロ以外では犬山たまきさんとの交流の深いホロライブや774 inc.のメンバーなどのフォロワーが多いほか、キャラクターデザインの伊東ライフさんや同じ伊東ライフさんデザインのにじさんじの愛園愛美さんのフォロワーも目立ちました。
のりプロは2019年末からの始動ですが安定して人気の高いメンバーを輩出しており、昨年末からデビューの始まった2期生も注目されています。今回のグラフには同じくのりプロ2期生の鬼灯わらべさんも見え、今後もほか2名のデビューが予定されており、引き続き注目されるところです。
雲母ミミ
- Twitter:https://twitter.com/Kirara_Mimi
- YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCfol9ZU2HpEajyBDj-EbiOQ
雲母ミミさんは2020年2月デビューのジャンガリアンハムスターの女の子。当初は動画中心でしたが4月の初配信以降は朝活企画や視聴者参加型のゲーム実況など配信中心で活動しています。個人で活動するVTuberながら積極的に個人・企業のVTuberともコラボしており、着実に視聴者を増やしてきました。
今回の7日間では27%増の1600名以上のフォロワーが増え、またYouTubeのチャンネル登録数に至っては2万6200名から8万4800名へと劇的に拡大しました。今回彼女が大きく伸びた背景としては、チャンネル登録400万人を超えるブラジルの有名な男性YouTuber・Goularteさんとの対談動画が14日投稿されたことが挙げられます。これ以降Twitter・YouTubeとも急激に増加しました。
この背景としては、雲母ミミさんが初期から英語学習などの企画配信をしていたこと、7月末にGoularteさんが日本のVTuberを紹介する動画を投稿した関係で8月以降ブラジルからのリスナーが個人VTuber全体に増加したこと、これに応じて雲母ミミさんがポルトガル語(ブラジルの公用語)など各国の言語を勉強したり、チャットを日本語・英語・ポルトガル語・スペイン語相互に機械翻訳する機能を導入した配信を始めたことが挙げられます。
その後Goularteさんは上述の動画がVTuberコミュニティに悪影響を与えたと動画で謝罪しましたが、雲母ミミさんは配信の中で彼へのメッセージをリスナーの助けを借りながら作成して動画にコメント。こうしたやり取りが縁で今回の対談が投稿されたものです。Goularteさんとの交流は続いており、今後もコラボの予定があるとのこと。
7日間の新規フォロワーの傾向などを見ると、戌神ころねさん、白上フブキさん、Gawr Guraさんなど英語圏で人気の高いVTuberをフォローしていた人もそれぞれ2割程度いるものの、ほとんどがVTuberをフォローしたことのないアカウントのようです。その他目立って多かったのでは今回の伸びの要因となったgoularteさんや、それ以外でもブラジルの有名YouTuberのcellbitさんやalanzokaさんのフォロワーが挙げられます。
ちなみに雲母ミミさんをフォローしたアカウントがその後にフォローしたアカウントを見ると、やはり海外人気の高いホロライブメンバーなどに交じって、ポルトガル語の話せる日本のVTuberのあやぱんさんやじゃじゃみさん、ブラジルのVTuberのBatataComPepinoさんなどをフォローしている動きが若干見られました。今回の動きをきっかけにVTuber自体に関心を持った方も多そうです。雲母ミミさんの今回のチャンネル登録の伸びも考えると、今回のgoularteさんとの交流はかなりの規模の新たなVTuberのファンを開拓したと思われます。
雲母ミミさんはブラジル以外にもメキシコのVTuberとのコラボなどもしています。雲母ミミさんも語学が堪能だったわけでありませんが、海外リスナーが増える中で各国のリスナーを公平に受け入れて外国語も学んでいく姿勢が好感を呼び、また継続して活動してきたことが長い時間をかけて今回のコラボや伸びにつながったものと思われます。国内VTuberの国際展開に関して非常に良い例と言えるでしょう。
Miori Celesta
- Twitter:https://twitter.com/mioricelesta
- YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCyKsg-57XC9pyHbP7v3kCPQ
Miori CelestaさんはMyHolo TV所属の異世界から来た冒険者の新人VTuber。MyHolo TVはマレーシアを拠点とするVTuber事務所で、2020年6月にデビューしたLiliana Vampaiaさんから活動を開始。Miori CelestaさんはMarica Belleroseさん、Manaka UmioさんとともにMyHolo TVの2期生として12月にデビューしました。
活動は配信中心で、配信内容としては主にゲーム実況。MyHolo TV内やマレーシア、米国の個人VTuberとのコラボもしています。なおMyHolo TVはマレーシアが拠点ですが、Miori Celestaさんは本人のFacebookによれば米国在住とのこと。初配信によれば英語と韓国語が話せ、日本語を勉強中のようです。
デビューまもないこともあり同期3人とも比較的勢いがあるものの、彼女はこれまで比較的伸びが弱かったところ、今回の7日間では500名以上のフォロワー(以前の27%)が増加、YouTubeもよく伸びており二人にだいぶ追いつきました。
要因としては14日にTwitterに投稿したテレキャスタービーボーイの歌ってみたがヒットしており、この影響でフォロワーが増えたものと思われます。サビのがなりなど素晴らしく、それ以前に歌っていた曲とだいぶ印象が違うことから新しいファンがついたのでしょう。YouTubeでの歌ってみた動画はまだ投稿していませんが今後が期待されます。
7日間の彼女の新規フォロワーの傾向を見ると内8割ほどがMori CalliopeさんやGawr GuraさんなどホロライブEnglishメンバーのフォロワーでした。以下ホロライブメンバーや、Frootさんやnyatasha nyannersさんなどVShojoメンバーのフォロワーも見え、上述のツイートをきっかけに英語圏のVTuberファンが反応した動きが伺えます。もともとLiliana VampaiaさんなどMyHolo TVメンバーのフォロワーだった層は1/4程度です。これらの英語圏VTuberファンの一部は、Miori Celestaさんを経由して他のMyHolo TVメンバーもフォローしています。
最近は海外でも彼女のように可愛いデザインのVTuberやグループがよくデビューしており、注目を集める例もあります。世界中のさまざまな才能がVTuberとして世に出ており、国の垣根を超えて交流する例も見られます。彼女もそうした一例と言えるでしょう。
(TEXT by myrmecoleon)
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