BΣretta Crossrain(ベレッタクロスレイン)さんは、歌を中心に活動しているVTuberだ。しっとりと落ち着いた話し声と、伸びのある高音でさまざまなタイプの曲を歌い上げる歌唱力が魅力の彼女は、2020年5月にBΣretta X’ Rain名義でデビューし、YouTubeでカバー曲やオリジナル曲を次々と発表してきた。すべての動画がベレッタさん自身が登場するMV仕立てとなっている点も特徴だ。
以前からを追いかけている人はお気づきのとおり、最近になってベレッタさんに大きな変化が起こった。2021年2月、彼女はキャラクターのルックを刷新するとともに、名義を現在のものに変更してリスタートを切った。4月に発表した新曲「迷宮ロンリネス」(上掲)が、新生ベレッタとしてのファーストリリースだ。今後は活動の場を広げ、歌い手としてだけでなくDJやASMRなどにも積極的に挑戦していくという。
ベレッタさんの再出発にはどんな意味が込められているのだろうか。VTuberとしてデビューする前、デビューしてからこれまで、そして今後の活動に懸ける想いを聞いた。
*本インタビューは、PANORA主催のオンラインイベント「ネットおしゃべりフェス #3」において、ファンより贈られた「進化ギフト」の報酬となります。
「歌ってみた」動画に勇気をもらった
──VTuber活動を始めたきっかけは何ですか?
ベレッタ 以前は別のサークルに入っていたんですけれど、そちらで声をかけていただいて現在の形になりました。同じサークルに設立当初から活動している子がいて、その子の活動に憧れて本格的に始めたという感じです。
──フレアちゃんへの憧れでスタートしたんですね。音楽活動自体はそれ以前から?
ベレッタ そうですね。昔から歌うことはすごく好きで、いつかどこかに所属して、もっと多くの人に自分の歌声を聞いてほしいという想いは持っていました。でも実は、小さい頃はどちらかというと音痴だって言われていて……。
──そうなんですか? 意外!
ベレッタ はい、小学校ぐらいまではそう言われていました。当時からピアノとかフルートをやっていて、音楽は好きだったんですよ。でも歌はうまく歌えないからそれほど興味もなかったんです。
でも、中学生のときに本当に落ち込むことがあって、ネットの「歌ってみた」文化を知って、すごく素敵な歌う方の動画を見て、歌ってすごいなって思ったんです。最初は独学で始めて、本当に下手だったんですけど色々練習してるうちにやっと人に聴かせられるくらいにはなったかなという感じですね。
──めちゃくちゃ良い話じゃないですか。誰かの歌に勇気をもらって、今度は自分が歌で誰かに想いを届ける立場になったわけですよね。同じように、ベレッタさんの歌に勇気づけられて、いつかは自分もと思っている人もいると思いますよ。
ベレッタ 私もそういう存在になれたらいいなとは思っています。
──歌い手さんとかで憧れている方はいますか?
ベレッタ 花たんさんが大好きで、CD全部持ってるんですよ。ライブもほとんど行ってます。
──花たんこそバーチャルアイドルの先駆け的な存在というか、彼女も生身は出さないけど「中に魂がある人」ですよね。言われてみればベレッタさんにも共通するものを感じます。歌い方にも影響されたりしましたか?
ベレッタ そうですね。表現力とかビブラートがすごい感じとかは取り入れたいと思っていた頃もありましたが、やっぱり自分の声質とは違うなと感じるようになって。私の声質に合った歌い方があるはずだと思うようになりました。
もし自分が花たんさんみたいなパワフル系のボイスだったら、ゴリゴリのロックなんかも歌いたいなとは思いますね。でも、好きであることと自分に合っているかどうかは別だと気づいて、それからは自分が素敵だと感じるいろんな方の歌い方を参考にして歌うようになりました。
──歌についてはどんなトレーニングをしてきたんですか? 自分が成長したと感じたエピソードなどあれば聞かせてください。
ベレッタ 私、ボイトレとかはほとんど行ってなくて独学だったんですけど……。スマホのボイスメモに自分の歌を毎日毎日録っていきました。録音したものを聴くと、だいたいここがダメなんだなっていうのがわかるので、昨日に比べてここができたなとかって確認しながら、少しずつできるようになっていった感じですね。録音して客観的に聴くっていうのが大事だった気がします。あとは、小さい頃からピアノやフルートをやっていたので、音感があったのはプラスになったと思います。
──突然才能に目覚めたわけではなく、地道に努力してきたことが今につながっているわけですね。
ベレッタ そうですね。地道にやってきました。
リアルではけっこうポカをやらかす
──ベレッタさんの人となりにも迫りたいのですが、周囲からどんな人だって言われますか?
ベレッタ 初対面だとクールと言われることが多いんですけど。
──声から受けるイメージもそんな感じですよね。
ベレッタ お嬢様系のキャラなので上品とか言っていただけることが多いんですけど、本当は部屋はめちゃくちゃ汚いですし、けっこうポカをやることも多くて、大切なツイートを誤字したりするんですよね。ツッコまれることは多いです。
──良いですね、ギャップが。
ベレッタ だから多分、第一印象からは段々離れていくだろうなって思います。この前もチャンネル登録が1万人いった時に「チャンネル登録者数1000人ありがとうございます」って間違えてツイートしちゃって。
──そこ間違えちゃった(笑)。ベレッタさんの歌声って凜とした魅力があると思うんですが、そのイメージは普段のベレッタさんはちょっと違うわけですね。
ベレッタ かなり違うかもしれません。
──見た目の麗しさも魅力のひとつだと思います。自分でここが好きだったり、チャームポイントですよという部分はありますか?
ベレッタ 2つあって、ひとつが「目」ですね。目の色にすごいこだわりがあって。濃いピンク色の目なんですけど、その色合いが好きで、ずっとチャームポイントだと言ってます。
もうひとつがリボンです。リボンやカチューシャは私の身体の一部で、着けていないと「誰?」みたいな感じに思われそうなので、今後新衣装が出るとしてもまたいずれかを着けたいですね。
──カチューシャモチーフのグッズとかもできそうですね。
ベレッタ いいですね、楽しそうです!
新曲に込められた新ベレッタの方向性
──話は変わって、VTuberとしての活動で、今いちばん注力してることって何でしょうか?
ベレッタ すごい世界観のある音楽をずっとやりたかったんです。4月17日に、この記事のトップにある「迷宮ロンリネス」というオリジナル楽曲のMVを出させていただいたんですが、作詞も私がやっていて、まさに「こういうのがやりたい」っていうのを込めた1曲になっています。
ずっと歌一本でやっているというのは一緒なんですけど、私、2021年の2月に名前(旧名義:BΣretta X’ Rain)と姿を変えて再始動してるんですよ。それまでの楽曲を0thっていう扱いにして、「迷宮ロンリネス」がファーストっていう扱いになったので、新生ベレッタクロスレインのオリジナル音楽はここから新しく始まっていく感じになると思います。
──なるほど。ベレッタさんがやりたかったことがこれからより強く反映されていくんですね。どういう世界観を目指しますか?
ベレッタ ゴシック系の音楽が昔から好きで。ALI PROJECTさんとか、妖精帝國さんみたいな感じとか。ありがたいことに、私の声はそういう曲に合っていると言ってもらえることが多かったので。
まわりのバーチャルシンガーさんを見ていて、その人の色があるというか、その人ならではの曲調とか音楽性がある方って素敵だなと思っていたので、私もそうなりたいなって。じゃあ私には何が合うんだろうって考えたときに、ゴシックでやっていきたいと思うようになりました。
──この作曲家と組んで曲を出していきたいといった構想はありますか? あるいは、キャラクターのルックスをゴシック調に寄せるとか、世界観作りの具体的なイメージがあれば。
ベレッタ ゴシックな雰囲気のある楽曲を歌っていきたいと思っていますが、作曲を特定の一人にお願いすることは今のところ考えていないですね。今の衣装は、VMWT(びむをた)さんという絵師の方にデザインしてもらうときに、「ゴシックな曲を中心に歌っていきたい」というお話をして作っていただきました。
──生まれ変わる時にゼロから全部やらなきゃいけないわけですよね。でも、そんな大変な思いをしてもVTuberを続けたかったということですよね。
ベレッタ そうですね。そこでいったんおしまいにして、別の存在として始めてもよかったと思うんですけど、やっぱりベレッタでいたかったので。ベレッタとして今後活動するときに、何が核になるのかを考え直したという感じですね。今は完全に個人勢なので、全部セルフプロデュースでやっています。
──それはすごい。単に役割だけ与えられてVTuberやってますみたいなのではなくて、自分でベレッタというキャラを確立したわけですよね。なかなかできる話じゃないと思います。
ベレッタ ありがとうございます!
──芯があるというか、そこが強みなのかなと、お話を聞いていて思いました。そういう芯がないと、どうしても誰かに依存したり、他人のせいにしたりして、不満を募らせて結局破綻してしまうパターンもよくあるので。
DJやASMRにも挑戦、ゆくゆくは海外進出も?
──さらに未来についてお聞かせください。歌以外に、こういう方面に活動を広げていきたいというプランはありますか?
ベレッタ 頑張りたいなって思うことは色々あるんですけど……。ひとつはDJですね。あとASMR。それから、個人的には英語の勉強をしたいと思っています。
──英語、めちゃくちゃ重要だと思います。海外の人にも知ってもらうためには必須ですよね。
ベレッタ ですよね! 頑張りたいです。
──今はコロナで難しいですけど、海外に行ったりとかはされているんですか?
ベレッタ 4回ぐらいですね。ちょっとだけイギリス留学経験があります。
──なんと! 海外でどういう刺激を受けましたか?
ベレッタ 文化の違いとかももちろんですけど、英語でしゃべるって教科書通りに勉強してるだけじゃダメで。むしろパッションというか、気持ちを通わせる努力というか、そういうのが大事だったりするんだなって。自分が思ってること何としても伝えようという気合いというか。コミュニケーションってそういうことなんだなって思いました。
──確かに気合いは大事ですね。日本と違う文化に対して自分を発信していくことの大切さとか、大変さを感じることはありますか?
ベレッタ 最近海外の方のコメントも少しずつ増えてきていて、その人たちにレスするときに、ある程度はできるんですけど自分が伝えたいことを100%英語で伝えることはまだできないので、そういう能力を上げていけたらなって思ってます。
──ゆくゆくは英語圏に進出して、英語でイベントに出るとか。
ベレッタ そうですね。そういうのもすごく憧れるし夢ですね。
──日本国内の市場は先細りで、だから海外に出ていかなきゃいけないみたいな現状があって、VTuberってその状況を象徴していると思うんですよね。アニメやゲームが国境を越えたみたいに、次はVTuberが出ていこうとしている。そういうビックウェーブに乗りたいみたいな考えもありますか?
ベレッタ あります。中高生のときはいちばん好きな教科が英語だったし、英会話も10年以上やっていて、いつか英語を使うような職業に就きたいなってふんわり考えてました。その頃はVTuberになるなんて思ってもいませんでしたけど、今のこういう活動にも、もしかしたら当時の想いが繋がっているんじゃないかなと思います。ワクワクして勉強しようって思ってるところです。
──DJとかASMRでこういうことをやっていきたいみたいな構想はありますか?
ベレッタ DJはずっとやりたいなとはずっと思ってはいたんですけど、ハードルが高いイメージがあって。一歩が踏み出せないところで、イベントのオファーを初めてもらって、自分なりに練習したりとか、人に聞いたりしてやってみたらすごいたくさんの人に良かったよって言ってもらえたんです。それでもっと頑張りたいなっていう気持ちになりました。世の中には素敵な音楽がたくさんあるので、それを知るキッカケになれたらと思いますし、DJ活動のベースにあるのは自分が好きなものを布教したいっていうオタクの心理ですね。
ASMRに関しては、昔からリスナーさんにリクエストをいただいたりもしていたんですが、本格的にやるってなるとちょっと恥ずかしいって気持ちがあって。それでこっちもなかなか踏み出せなかったんですけど、新しい身体になって新しい活動を色々やっていこうって考えたときにASMRもやろうと思って。今でも恥ずかしい気持ちはあるんですけど、ASMRの勉強をしてる時にこれよく眠れるなって思ったんですよ。聴いているうちに寝ちゃうみたいなことがけっこうあって。私は寝付きが悪いほうで、なかなか眠れない時の苦しさというか夜の寂しさみたいなのを知ってるんで、それを少しでも解消できるお手伝いができるなら恥ずかしくても頑張ろうと思って。
──勉強熱心ですよね。やると決めたからには適当じゃなくて、どういうものがあるのかってちゃんとリサーチするんですね。
ベレッタ 何かやるときには、中途半端にはならないように頑張ってます。
──ASMRは結構ニーズはあるのかもしれないですね。
ベレッタ そうですね。配信を始めて、需要が高いのはなんとなくわかりました。
──それでは最後に、近々で予定していることやお知らせなどあれば。
ベレッタ 「山葵音楽学校」っていう、VTuberをサポートするプロジェクトがあって、そこに先日、私を含めて5人くらいVTuberが加入しました。今までと大きく変わることはないんですけど、今後は音楽活動とかで山葵音楽学校さんに手伝っていただくようになるかなっていうのがひとつですね。
山葵音楽学校って企業ではなくサークルとか学校という感じで、生バンドをやったりとか、バーチャルとリアルをつなげるっていうところに重きを置いた団体です。メンバーで一緒に音楽活動をやっていこうみたいな話になっております。
──最後にファンの方々に向けてひと言お願いします。
ベレッタ ベレッタの輪(ベレッタさんファン)の皆様にいつも支えられてるから私がいるんだと思っています。かなり脳筋なので暴走してどんどん一人で突き進んでいってしまうところがありますし、振り回しますけど、後悔はさせないのでこれからもついてきてくださるとうれしいです。そして、この記事をきっかけに私を知ってくださった方も、ちょっとでも興味を持ってくださったら、TwitterやYouTubeなどをのぞいてくださるととてもうれしいです。いつでもお待ちしております。
(Reported by Minoru Hirota、Edited by moro)