宗谷いちか、2ndワンマンライブレポート 渋谷のスクランブル交差点や電車の中もステージに変えた!

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VTuberグループ「有閑喫茶あにまーれ」の創設メンバーの一人で、ボーカリストとしての評価も高い宗谷いちかさんが2年ぶりのソロイベントを開催。11月20日に「Ichika Souya 2nd Q Re:18:2」が「SPWN」で配信された。バーチャルの渋谷や電車の車内をライブステージへと変えた約80分、全12曲のオンライン限定ライブをレポートする。なお、アーカイブ映像はSPWNにて5500円で販売中だ。

1曲目は渋谷のスクランブル交差点で熱唱

開演後、最初に画面に映ったのは渋谷のスクランブル交差点。まったくの無人ではあるが、ひと目でここが渋谷とわかる再現度だ。カメラが交差点を見下ろすビルの屋上に切り替わると、ボディーラインがはっきりと浮かび上がるタイトなSF風スーツ姿の宗谷さんが登場。普段の配信とは違うセクシーな雰囲気に驚きながら、オープニング映像が始まったのかと思っていると、曲が流れ出しReolさんの「第六感」を歌い始める宗谷さん。そのまま屋上から飛び降りてスクランブル交差点に着地し、交差点の真ん中で歌い続ける。

間奏では、普段の宗谷さんのように笑顔で「みなさ~ん。はじまりました。『2nd Q』だ~!どんどん盛り上がっていくぜー!」と配信を見守っているファンを煽るが、歌い始めると表情も歌声もダンスもクールに変貌。雑談などをしているときと、歌っているときのギャップの大きさは宗谷さんの魅力の一つだが、今回は、セクシーな衣装の力も相まって、振れ幅がいつも以上に大きい。

2曲目はYOASOBIの「怪物」。過去の歌配信で披露したこともある曲で、宗谷さんの力強い歌声は低音でも透明感を残したまま綺麗に響いていく。全身真っ白だったスーツの右肩や左太ももは何かの侵蝕を受けたように黒くなり、その部分だけが街のネオンのようにさまざまな色に変化。また、周囲のビルのLEDビジョンには、巨大な宗谷さんのシルエットが映り、まるで「怪物」のようだ。曲のイメージに合わせて、渋谷の街は少し不穏な空気が漂うステージとなっていた。

MCではいつもの陽気な宗谷さんに戻り、リハーサル中の怪我によりライブ日程が延期になったことへの謝罪と、心配してくれたことへの感謝を伝えた後、うれしげにステージである「私の渋谷」とスーツを自慢。「怪物」でのスーツの一部が光る演出も再度披露した際には、「ゲーミング宗谷」というコメントを見つけて思わず吹き出していた。久々のワンマンライブが楽しくてたまらないといった様子の宗谷さんは、「みんな盛り上がってるかー? 行くぞー! ついてこい私のテンションに!」とハイテンションに煽った後、3曲目はまさに盛り上がれる曲、AliAの「かくれんぼ」と紹介。

イントロが始まると、衣装が「あにまーれ」メンバーお揃いのアイドル衣装に変化。ここまでの2曲とはガラリと変わりポジティブで疾走感のある曲に合わせて、宗谷さんらしいパワフルなボーカルを響かせていく。曲や歌声に合わせて、街の光やLEDの映像も変化し、さっきまでのどこか妖しさのある渋谷が、綺麗な夜景の渋谷になっていた。

続けて、Adoの「夜のピエロ」の最初のフレーズを歌ったところで、宗谷さんの後ろに2つの人影が現れた。全身がシルエットで、某少年探偵漫画の犯人のようなビジュアルの二人は、力強いダンスで宗谷さんのパフォーマンスを盛り上げる。関節部が緑と紫に光っており、バックダンサーでありながら照明演出の一部にもなっているのが面白い。サビに入ると色違いのダンサーが4人出現し、さらに間奏では宗谷さんの影法師のような女性ダンサーも現れて一緒に踊り始める。黒い宗谷さんは、全身真っ黒だが耳だけが明るく光っているのもかわいい。総勢7人のダンサーを従えて踊る本物の宗谷さん。美しい歌声はもちろん、キレのあるダンスにも惹きつけられる。

大きな頭の2頭身キャラに変身

曲が終わるとともに、6人のダンサーは消失。渋谷の街には、宗谷さんと黒い宗谷さんだけが残された。黒い宗谷さんは、カメラに勢い良く手を振ってアピールした後、手のひらから見えない何かを放ち、宗谷さんを攻撃。宗谷さんはノイズとともに渋谷の街から消えて、カメラも真っ暗になってしまった。

気絶していた宗谷さんが目覚めたのは、彩度高めな色合いの建物が並ぶファンシーな街の中。目線の高さに違和感を感じた宗谷さんが自分の状況を確かめると、マスコットのようなかわいい二頭身のデフォルメキャラになっていた。その姿のまま、ポップで楽しいボカロ曲「drop pop candy」を歌いながら街を走り出す宗谷さん。画面は横スクロールゲームのように流れる街並みも映していく。時折、宗谷さんが足を止めると、カメラが寄り気味に切り替わり、普通のライブ映像のような画面になるが、映っているのはマスコットのようなルックスの宗谷さん。渋谷の街で始まったライブ冒頭からずっと、開演前にイメージしていた「ライブ」とはまったく異なるシチュエーションが続き、楽しい驚きの連続だ。

MCでは、初披露のミニボディーについての感想をリスナーに尋ねるが、「かわいい? ねえ、かわい~い?」とカメラに迫る圧の強さは、身体が小さくなっても普段のまま。さらに、大きな身体に戻るためのエネルギー源として「かわいいよ」「愛してる」「好きだ」などの褒め言葉を要求。戸惑いながらもコメント欄が絶賛の言葉で埋まると、宗谷さんは元のアイドル衣装姿に戻ると同時に、同じ街の中にある屋外ステージにテレポートした。

屋外ステージで披露したのは、小倉唯さんの「Honey♡Come!!」。曲、衣装、ステージのすべてがアイドル仕様なのに合わせて、宗谷さんの歌声やダンスもかわいさに全振り。コメント欄も青いハートと「かわいいー」という声で埋まっていく。宗谷さんのアイドル曲メインの歌枠配信などを観たこともあるが、ここまでかわいさを前面に押し出したパフォーマンスをライブで観たのは初めてだった。

電車の中や路地裏、高層ビルの屋上もステージに

かわいさ全開のアイドルソングを歌い終えた宗谷さんは、ぴょんぴょんと跳ねながらうれしそうに手を振っている。そんな表情をアップで捉えていたカメラが少しずつズームアウトすると、その映像を映しているのが電車内の液晶ビジョンに自然と切り替わり、横の席には初期衣装(通称・初号機)姿の宗谷さんが座っている。そして、7曲目を静かに歌い始めると、液晶ビジョンの映像は歌詞へと切り替わり、「アストロノーツ」という曲名が表示された。

車内をゆっくりと歩き、時には座りながら切ないバラードを歌う宗谷さん。静かなメロディーだが、歌声は強くしっかり響きぶれる気配もない。透明感があってパワフルという相反しそうな歌声の魅力が際立つ選曲だった。その光景をさまざまな角度から追いかけるカメラワークも巧み。カメラと宗谷さんの間にわざと座席の手すりを写し込むなど、ライブというよりMVを観ているような感覚だった。

駅に到着し、電車を降りる宗谷さん。宗谷さんが訪れたのは、レトロな居酒屋やスナックが並ぶ繁華街の路地裏。哀愁も漂う裏通りを歩きながら歌うのは、命をテーマにしたカンザキイオリさんの「死ぬとき死ねばいい」。何かに訴えかけるような宗谷さんの歌声は、ますます力強い。

曲が終わり、カメラが夜空を見上げると、高層ビルの明かりが見える。そして、カメラが切り替わった後、空撮のようなアングルから捉えたのは、高層ビルの屋上に作られた八角形のステージと、そこにテレポートしてきた宗谷さんの姿。9曲目の「それがあなたの幸せだとしても」も切ない歌詞のバラードだが、スポットライトやビルの明かりに照らされ、360度見渡せる開放感抜群のステージというロケーションのせいもあるのか、宗谷さんの歌声には、温かみや優しさをより強く感じた。

MCでは、今歌った「それがあなたの幸せだとしても」の歌詞には思い入れがあると語り、それだけですでに泣きそうになって慌てる宗谷さん。涙をごまかすように話を変えた後、「私にとって、当たり前な日々が幸せなんだなって気づける、ちょっと温かくなるような歌」と紹介した最後の曲は、平井大さんの「題名のない今日」。その言葉通り、心を癒してくれるような優しい歌声を響かせる「あにまーれ」の歌姫。夜空の下、鮮やかな色の光で輝く摩天楼もそのパフォーマンスをさらに美しく演出する。満面の笑顔での「ありがとうございました」という言葉でライブは終了。しかし、当然、コメント欄にはアンコールの声が大量に流れていった。

アンコールではオリジナル曲などを披露

カメラが摩天楼の風景を映し続ける中、影ナレのように聴こえてくる宗谷さんの声。

「皆さま、アンコールのほど、ありがとうございます。事前に『アンコール、絶対してね』って言った話は絶対に言わないでください(笑)」。オンラインライブのため、リスナーからアンコールをしてもらえるか不安になり、前日の配信で、「みんな、頼むからアンコールして」とリスナーに根回しをしていたことを告白。コメント欄を笑わせる。

アイドル衣装で屋上ステージに再登場した宗谷さんは、ライブ本編は真面目にしたくて我慢していたことをやりたいと宣言。なぜか観客にパンツの色を尋ねた後、綺麗なブリッジを披露した。宗谷さんらしい謎の行動で、ライブ本編の感動的な空気を綺麗に消し去った後、アンコールの1曲目を発表。自身で作詞も手掛けているオリジナル曲「君と未来」だ。曲名を発表した途端、数分前までの自由奔放な振る舞いも忘れて、急に緊張し始めるのも不思議だがかわいい。

しかし、歌い始めた瞬間、空気は一変。聴く人の背中を後押しするようなエールのこもった優しい歌声の力で、アンコール前の雰囲気がすぐに戻って来た。屋上のステージも、さまざまな色の光を放ち、宗谷さんを華やかに照らす。

最後のMCではファンの「最高」「素敵」といった大絶賛のコメントを見て、満面の笑顔を見せる。「練習期間は長かったのに、本番は一瞬」と驚きつつ、次が最後の曲だと告げる姿は本当に名残惜しそう。そして、1stライブのときは最後にファンへの手紙を読んで、号泣してしまったことを懐かしそうに思い返した後、今回は最後の曲を「私からみんなへのお手紙」として歌うと話す。

歌ったのは、YOASOBIの「ラブレター」。MCの時点で涙腺が決壊しそうな素振りを見せていた宗谷さんは、必死に涙を堪えながら熱唱。いつも安定感抜群の歌声も少し震え気味になるが、歌声と涙の両方にこもった思いが伝わってくる。宗谷さんの周りにきらめく光の粒も最後のパフォーマンスを幻想的に彩っていく。

歌い終えて「泣いちゃいました。ごめんなさい。カッコ良く歌いたかったんですけど」と話した後、さらに湧き出てくる涙を堪えながら、改めて自分を支えてくれるファンへの感謝の思いを自分の言葉で伝えていく宗谷さん。

「みんなが辛いとき、支えられる存在でいられるように今後も頑張っていきますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。今日はこんな素敵なステージに連れてきてくれて、どうもありがとうございました。『3rd Q』は、あるかはわからないですけど。また、そこでお会いしましょう」

2年前の1stライブ「Souya Ichika 1st Q. Re : 72 : 7 」」を現地会場で観て以来、開催を心待ちにしていた宗谷さんの2ndライブ。オンライン限定開催と発表されたときには、少し残念に思う気持ちもあったが、バーチャル空間のさまざまな場所をステージにするというオンライン限定だからこそのライブに驚いた「2nd Q」の後では、さらに進化した宗谷さんのオンラインライブを観たい気持ちも芽生えてきた。そんなに遠くない将来、「3rd Q」の開催が発表されるときには、開催形式を問わず、心の底から喜べることを確信している。

(TEXT by Daisuke Marumoto

 
 
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