ニコニコ超会議2022・岩手県ブース「岩手さちこ」レポート 自治体の魅力発信を担うVTuberの背景

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4月29、30日の2日間、千葉県千葉市美浜区にあるコンベンションホールである幕張メッセにてインターネットコンテンツの祭典「ニコニコ超会議2022」が開催された。今年は2019年開催以来実に3年ぶりのリアル開催ということもあり、多くのユーザーが参加するとともに出展ブースもその方向性を変えていた。

今回は、その中でも岩手県公認のVTuberである「岩手さちこ」さんを擁する岩手県ブースを紹介していく。実は東京に本社がある企業が立ち上げ、現在は地元のテレビ局が運営するなど、意外な背景を持っているのが興味深い。


広がりつつある自治体格差と魅力発信

昨今、地方自治体にとって重要になっているのが、観光地や特産品などの自己アピールだ。

ここ数年の新型コロナウイルス感染症による旅行の抑制などにより、国内での人流は以前と比べ大きく損なわれているものの、いつかはネットやテレビなどで見かけた観光地に個人や友人、家族で訪れたいという方も多いはず。また、ふるさと納税はもちろんのこと、自治体のアンテナショップや通販サイトなど、遠隔地からでもご当地の情報を欲する動きもある。まったく知らない場所よりも、事前に旅行先や名産がどういうものか想像できるところの方が、行きたい、欲しいという欲求が高くなるはずだ。


そうした地元の魅力を発信して、知名度をより高める目的で、2018年頃から勃興したVTuberを宣伝担当に起用する自治体も増えてきている。

自治体初の公認VTuberとして活躍している茨城県の茨ひよりさんや、埼玉バーチャル観光大使を務めている春日部つくしさんなどの活躍を元に、自治体でもバーチャルYouTuberと二人三脚で歩むプロモーション活動の重要性が検討されている。

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そんな中、2年前から活動を始めたのが、岩手県公認バーチャルYouTuberの岩手さちこさんである。


大事なのは若年層へのアピール

岩手さちこさんがYouTubeへの動画投稿を始めたのは2020年3月13日。SNSアカウントはYouTube以外にもTwitterInstagramを揃え、ファンアートやご当地グルメに観光地といろいろなものを取り上げている。この3月で2周年を迎えており、記事執筆時点では昨年12月に全線開通した三陸沿岸道路がテーマの動画が最新投稿だ。

ご当地VTuberであるからといってもトークは標準語であるため、岩手県の方言に詳しくないユーザーであっても安心して視聴できる。VTuberとしてのキャラクター性を持たせつつ、その演者についてもきちんと公式サイトで掲載している。担当しているのは岩手県盛岡市出身で、「探偵オペラ ミルキィホームズ」や「けものフレンズ」などのアニメにも出演している声優の佐々木未来さんである。


そんな岩手さちこさんはYouTubeだけでなく漫画でも情報発信しており、銀杏社という企業が発行している。この会社は漫画編集や企画を主要業務とする企業であり、本社は東京都文京区に存在する。一見、岩手県とは全く関係がなさそうだが、実は岩手県のご当地の魅力を漫画にして発信する「いわてマンガプロジェクト」に銀杏社が携わっている。正確にはその中のオムニバスコミックである「コミックいわて」を3巻以降共同出版している。なお同コミックは達増拓也岩手県知事監修の元発行されている、れっきとした公式のお墨付きコミックとなっている。

会場内では、担当者に岩手さちこさんが産まれた経緯についてお話を聞けた。

県としては、岩手県の魅力を配信する媒体として、これまでコミックいわての発行など若年層に向けてのアプローチを積極的に行ってきた。そんな中、次に魅力を伝える手段としてVTuberという存在が適しているのではないかという話になり、実際にプロジェクトを立ち上げたという。まだまだ魅力を伝えていく範囲は途上ではあるというものの、ぜひとも今後の活躍に期待をして欲しいと述べていた。


新型コロナウイルス感染症の流行下、旅行を楽しみにしつつまだまだ家から出られないという人も多いだろう。自治体公認バーチャルYouTuberが、是非ともご当地の魅力を新しい形でアピールし、将来の旅先を若人に見せつけていって頂きたいものである。


*初出時、運営会社に誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます(2022年5月24日13時43分訂正)
 
●関連リンク
岩手さちこ(Twitter)
岩手さちこ(YouTube)
ニコニコ超会議2022