4月29、30の2日間、千葉県千葉市美浜区にあるコンベンションホール・幕張メッセにてインターネットコンテンツの祭典「ニコニコ超会議2022」が開催された。今年は2019年開催以来実に3年ぶりのリアル開催ということもあり、多くのユーザーが参加するとともに出展ブースもその方向性を変えていた。
今回は、その中でも精華町公認のVTuberである「京町セイカ」さんをPRする「超 京町セイカ@精華町」ブースをピックアップ。VTuberといえばネットでの動画投稿や生配信が中心だが、彼女は漫画のキャラクター、VOICEROID、VTuberといくつかのシーンをまたいできたのがユニークな経歴だ。本記事では単なるブース紹介だけでなく、そんな誕生秘話もまとめた。
戦後から続く街並みと京町セイカの成り立ち
京都府相良郡にある町として、1955年から町制を施行されたのが精華町である。地理的には京都の南部でありながら、奈良北部とも接し、大阪とのアクセスも比較的容易な山間地に存在する。2019年時点で人口3万5000人程の比較的小さな町でありながら、第二次産業として工場を中核とした研究・開発施設が多く存在する。また、けいはんなプラザという、ホテルとレンタルラボが合体したユニークな施設を運営していることでも着目されている。
そんな同町が、若年層をターゲットとし広報目的でとあるキャラクターを生み出した。それがご当地キャラクターとして定着している京町セイカさんである。
漫画作成ソフト「コミPo!」を地方自治体の広報向けソフトとして初めて採用した同町は、制作した漫画上に女性の姿のキャラクターを登場させる。その後、そのキャラクターに対し愛称が公募された結果、京町セイカという名前が付けられたのである。この京町セイカさんはコミPo!で自由に利用できる3Dデータが新たに作られ、同町の様々なコンテンツでその姿を見かけることができるようになった。彼女をモチーフとした歩数計も開発されるなど、そのグッズ展開は多岐に渡る。
ここまでではまだ、地方自治体の1キャラクターという立ち位置であった。しかしここで精華町はとある大きな決定をし、それが京町セイカというキャラクターの人気を大きく押し上げる事となるのである。
みんなで支える京町セイカ
昨今有名となったクラウドファンディングという言葉に聞き覚えのある方は多いだろう。多くの有志が一つのプロジェクトに対し資金を募り、そのプロジェクトを結実させリターンを受け取るというタイプのインキュベーション手法である。
精華町は京町セイカというキャラクターを押し上げる為、2015年にとあるクラウドファンディングを行った。それが「VOICEROID 京町セイカ」開発プロジェクトである。
これはAH-Softwareが手掛ける音声合成ソフト「VOICEROID」の1ソフトとして京町セイカを打ち出すというものであった。ご存知の通り、現在では「VOICEROID+ 京町セイカ EX」として音声合成ソフトが存在する。このクラウドファンディングの成功により販売されたソフトウェアを用いて有志が動画を作成、動画投稿サイトへ様々な動画を投稿することで「京町セイカというキャラクター」の知名度が一気に上昇する事となる。
2020年7月には精華町公式のVTuberとしても活動をスタートさせ、2022年1月には歌唱音源であるSynthesizer Vを用いた「Synthesizer V AI 京町セイカ コンプリート」を発売。VTuberとしては元々の音声合成ソフトウェアと同じ声優の立花理香氏が演者を担当している。
歴史を振り返った上でようやく超会議の「超 京町セイカ@精華町」ブースという流れになるのだが、担当者に話を聞いたところ、ブース上の広報資料として使用しているグッズのほとんどどが有志の手によるものであるという。
例えば、今回会場で配布した精華町発行の公式ガイドブックである「京町セイカオフィシャルガイドブック」は、発行こそ精華町だが、編集や校正、コンテンツ作成などはすべて有志が担当した。そのため彼女の活動費は諸々の広報系の内容も含めて、地方自治体が負担する割合がとんでもなく低いという懐事情に配慮してもらった状態であるとのことだ。
VTuberとして、VOICEROIDとして、歌唱音源として、更には漫画のキャラクターやユーザーが使用可能な3Dモデルとして様々な方面でマルチに活躍し知名度を上げていく京町セイカさん。まさに多くの人の手によって広報活動を行う稀有な存在として、これからも注目を集め続けて行くだろう。
●関連リンク
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・ニコニコ超会議2022