期待の一体型VRゴーグル「PICO 4」インプレション 考えられた重量バランスで抜群の装着感など、優れたハードを実感

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Pico Technology Japanが10月7日発売する一体型VRゴーグル「PICO 4」(ニュース記事)。円安という逆風の中、税込で4万9000円からという価格でVRファンに大きなインパクトを与えたわけだが、実機の使い勝手はどうなのか? レビュー機が届いたため、1時間ほど触ったそのインプレッションをお届けしていこう。


結論からいうと、一番印象に残ったのが本体の軽さだった。

PICO 4は、ストラップなしで295gという本体重量をウリの一つにしている(ニュース記事)。編集部で実測してみたところ、ストラップ入りの重量は585gとなった。

同じ一体型VRゴーグルであるMetaの「Quest 2」は標準で実測504g、オプションのバッテリーなしのEliteストラップは実測626gだった。

一見、Quest 2のストラップありとそう変わらない重量だが、実はPICO 4は後頭部にバッテリーが置かれており、HMDがある前部が約300g、後部が約285gと前後のバランスが取れている。HMD部の奥行きが短いことも、このバランスに貢献していると思われる。

Quest 2ユーザーならわかると思うが、Quest 2のHMDはストラップなしで約450gで、長時間装着しているとどうしても前側に引っ張られて、人によっては首の疲れを感じてしまう。なるべく疲れないように、ストラップをキツく締めるのもやはり頭部に負担がかかる感じだ。

数人の知り合いのVRユーザーにも軽く触ってもらったが、一番多かったのがこの軽さのバランスに驚く声だった。ネオプレーンと思われるフェイスカバーの素材が柔らかく顔にフィットすることも相まって、重量以上に軽い印象だ。例えば、動きが激しそうなエクササイズや、長時間のログインが可が得られるソーシャルVRなど、用途によってその効果を実感できるだろう。

VRは体験しないとその価値が分からないため、おそらく用意されるであろう店頭の展示機に触れる機会があったらぜひ試してほしい。


カラーでのパススルー表示も見逃せない。

パススルーはカメラを使って外部を見られる機能で、Quest 2ならガーディアンを設定する際などに現れるものの、こちらはモノクロだ。PICO 4では、HMD前面のちょうど中央にある単眼カメラで目の前の光景をカラーで映している。

実際体験してみると、視覚がカラー化されるだけで物の把握がより直感的になることが驚きだった。具体的には、視界がパススルーに切り替わった際、リアルにある障害物を認識する速度がカラーの方が早いと実感した。

カラーでのパススルーというと、MRコンテンツも期待できそうだが、複眼でないためより精密な距離感が必要になるビジネス向けよりも、よりライトなゲームなどに向いていそうだと感じた。

 

メガネユーザーに対する配慮も語っておきたいところ。

付属品として、フェイスカバーに付け足して使う厚さ4、5mmほどのメガネ用スペーサーを用意。さらにフェイスカバーの左右上に切り欠きがあるため、フロントが大きめのメガネでも入れやすい。筆者はコンタクトだが、メガネをかけているQuest 2ユーザーに使ってみてもらったところ、標準でも入ることに感動していた人もいた。

PICO 4(左)とQuest 2(右)のフェイスカバー
付属品
余談だが、メガネスペーサーには磁石がついており……
カチっとハマるのが気持ちいい
メガネスペーサーを追加した上でHMDに装着したところ

目のつながりで言えば、62〜72mmの間で0.5mmずつ瞳孔間距離(IPD)を調整できる点も嬉しい。目と目の間は人によって大きく異なり、Quest 2が調整できる3段階ではうまく見え方が合わないという方もいたはず。ちなみにレンズ自体を手で物理的に動かすのではなく、初期設定時やPICO OSの設定から調節するスタイルだ。

 
コントローラーでは、スクリーンショットボタンを独立で用意しているのが今風のニーズを捉えていると感じた。また、PICO 4ではコントローラーの位置を認識するための円が斜めになっており、この円が横方向のQuest 2では難しい両手を合わせるようなハンドサインがしやすいと感じた(逆にコントローラーを机に置くときに、ぐらぐらしがちになってしまうが)。

右手側の一番右カメラアイコンのキャプチャーボタンがある
同じ位置の左手側にはメニューボタン。なお両手にある「○」はホームボタンになる
PICO 4(左)とQuest 2(右)のコントローラー

なおコントローラーの重量としては、乾電池を2個つかうPICO 4のほうが25gほど重かった。

これもまだ余談だが、ボタンを引き下げて電池をシャコっと取り出すのが……
銃の弾倉を彷彿とさせる手触りで気持ちい!

 
ハードの筋のよさがわかったところでソフトウェア面だが、Quest 2をよく研究したインターフェースだと感じた。メニューの位置や階層構造なども似てるので、既存のQuest 2ユーザーなら直感的に使えるはずだ。実際、説明なしに既存のVRユーザーに渡しても、自由にアプリを立ち上げて遊んでいたりしたのが印象に残っている。

アプリについては、専用の「PICO Store」からダウンロードする。現状はどうしてもQuest 2のストアに比べると数が少ない印象を受けてしまうものの、発表会にもあったように、VR魔法アクションRPG「RUINSMAGUS 〜ルインズメイガス〜」やVRアクションアドベンチャーゲーム「オノゴロ物語 〜The Tale of Onogoro〜」といった国内タイトルもリリースしていく予定だ。

箱の裏側にはストアに用意したタイトルが並んでいる

動画視聴端末としての用途も意識していそうだ。同様に発表会で、UUUMとコラボレーションしたインフルエンサーのVRチャンネルを用意するという話があったが、標準のアプリとしてYouTubeにならんでDMMのフォルダーがあり、開くとDMM.comがブラウザーで開く仕様になっていたのは興味深かった。


ざっとまとめると、Quest 2が発売されてからもうすぐ2年というタイミングで、よりブラッシュアップしてきた一体型VRゴーグルが登場したという印象だ。

繰り返しになるが、スペインで発表した際の価格は429ユーロからで、現在のレートで約6万円になるところ、4万9000円に抑えてQuest 2を約1万円も下回る価格に設定したというのも驚きだ。より詳細なレポートはのちほどお届けするので、継続して注目してほしい。

 
(TEXT by Minoru Hirota


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