100人以上の人気VTuber(バーチャルライバー)が参加して、10月1、2日に開催された「にじさんじフェス2022」。会場の幕張メッセでは、「文化祭」というテーマに沿ったさまざまな展示やライバー参加型企画のほか、ステージイベントやライブも実施。両日ともに多くのファンが現地会場や配信で、にじさんじ史上最大のイベントを楽しんだ。
本記事では、リゼ・ヘルエスタさん、アンジュ・カトリーナさん、戌亥とこさんによる仲良し同期ユニット「さんばか」が出演した、10月1日の「さんばかステージ」の模様をレポートする。ちなみに、「さんばかステージ」などメインステージの公演と、今年1月に中止となった「にじさんじ 4th Anniversary LIVE『FANTASIA』」の振替公演であるナイトステージは、ニコニコ生放送で有料配信していた(一部無料パートあり)。
クラスTシャツ姿の「さんばか」が登場!
開演時間の5分前、アンジュさんによる影ナレが始まった。本気の美声で真面目にライブ中の注意事項などを読み上げていくのだが、過去のライブや配信ライブの影ナレでもアンジュさんが噛みまくったことを思い出し、少しテンポが遅くなるだけで聴いている側にも緊張が走る。一緒に開演を待っているはずの同期二人も同じ気持ちなのか、途中からはクスクスという笑い声も一緒に聴こえてきた。アンジュさんがナレーションを終えると会場から大きな拍手が起こり、リゼさん、戌亥さんの影ナレが続く。
影ナレを終えた数分後、メインスクリーンにオープニング映像が流れ、「さんばかステージ」が開幕。にじさんじフェスのグッズで、入場券購入者にも配布されたクラスTシャツ姿の3人がステージに現れる。満員の客席を見て、思わず「めっちゃいる!」と驚きの声を上げるリゼさん。アンジュさんと戌亥さんも「人間~!」「人間共~!」と大興奮だ。
順番に自己紹介を終えると、にじさんじフェスのために用意された新衣装Tシャツの話題に。このフェスでは、参加する全118人のライバーを7つのクラスに分けており、クラスごとにTシャツの色は異なる。アンジュさんと戌亥さんのTシャツは同じグリーンだが、一人だけリゼさんはバイオレット。一人だけ仲間外れで「今日、帰るわ……」と言い出すリゼさんを、アンジュさんと戌亥さんが「休み時間のご飯は一緒に食べようや」となんとかなだめる。クラス変え直後あるあるのトークが楽しい。
ステージ上でくるりとターンして、クラスT姿を改めて披露した後、重大なトラブルが発覚。イベントの中ではライブも予定されており、そのときにはTシャツからライブ用衣装に着替えるはずだったのだが、スタッフが特殊な箱に衣装をしまい、箱が開かなくなっていたのだ。その箱は、一定以上の重さがかからないと開かないという謎仕様。さらに、会場の観客と協力して「良い感じの絆」が発生すると、上から「重み」が降ってくるらしい。3人は、ライブ衣装を箱から取り出してライブを成功させるべく、観客と協力して「いい感じの絆」を生むための試練に挑戦することになった。
ステージ衣装を着るために3つの試練に挑戦
一つ目の試練「愛まで導け、迷える花々」は、一人ずつ順番に頭上から落ちてくる風船のような「愛」を拾うゲーム。ステージ上の3人には「愛」が見えないため、「愛」が落ちてくる場所の前方にいる観客がペンライトや手を振って伝えるのだが、説明を聞くだけでかなり難しそう。ところが、3人はシャトルランのようにステージを左右に行ったり来たりしながら、15個の「愛」を拾って目標の10個をクリアー。見事に最初の試練を突破した。上から落ちてくる風船を拾うという内容だけ聞くと昭和のバラエティ番組感も漂うレトロなゲームのようだが、バーチャルライバーのイベントでリアルタイムにこんなゲームができる技術の進化に改めて驚かされる。そして、試練をクリアーした報酬として上から降ってきたのは、アンジュさんが3Dお披露目配信のときに錬成した巨大な彼氏だった。
二つ目の試練「ヘルエスタ国勢調査」は、ニコニコ生放送のアンケート機能を使ったゲーム。最初に挑戦したアンジュさんは失敗したが、その後、空気を読んだ視聴者の投票にも助けられ、最終的には試練をクリアー。空からは、ダイマックスした巨大なセバス(リゼさんの執事が操るヒヨコ)が降ってきた。
三つ目の試練「新感覚クイズ★ケルベロス」は、会場の観客が回答者となる三択クイズ。3問出題されたがすべて正解で、この試練もクリアー。戌亥さんのメインビジュアルにも描かれている職場の看板メニュークリームソーダが降ってきた。ところが三つの試練で召喚した重みだけでは足りなかったのか、箱のフタが開かない。
すると、追加の重みとして、客席の前方に「ダヨー」と呼ばれて大人気な3人の着ぐるみが登場。3体とも可愛いがたしかに重そうだ。こうして十分な重さが集まったことにより、無事に衣装の入った箱のフタが開き、ライブが開催できることに。3人が声を揃えて「さんばかによるみんなのためのさんばかが贈るライブ、略して『さんばかライブ』スタート!」と叫ぶと、いったん会場が真っ暗になり、ライブが開幕した。
ライブでは、3パターンのデュエット曲も披露
ステージ上のメインスクリーンに映った大きな扉が左右に開くと、ボカロ曲「Happy Halloween」のイントロが流れる中、戌亥さんが登場。衣装は、今年3月の配信ライブ「さんばか 3rd Anniversary LIVE みつぼしパレード」で初披露したアイドル衣装。しかも、頭には小さな魔女帽子を被っているハロウィン仕様だ。続いてアンジュさんとリゼさんもお揃いの衣装姿で現れると、3人は、教室に変わったステージで机の上に座って歌い始める。ソロでリレーのように歌い繋いでいくのだが、歌っている一人の姿だけがはっきり見えて、他の二人は完全なシルエットになる演出も面白い。サビでは3人で歌声を重ねながら、可愛いダンスも披露した。
ライブ最初のMCでは、初披露だった魔女帽子を紹介。そして、リゼさんが「ちょっと疲れちゃった」と言いながら退場すると同時に、アンジュさんと戌亥さんがデュエットの立ち位置に立つ。歌うのは、超人気曲同士をマッシュアップした「エンヴィーベイビー」×「KING」。にじさんじの女性ライバーの中でも、歌声のカッコ良さではトップクラスの二人のデュエットにピッタリの曲だ。
アンジュさんと入れ替わりでリゼさんが再び登場。戌亥さんと二人で歌うのは、一転して可愛いアイドルソング、乃木坂46の「せっかちなかたつむり」だ。スタンドマイクの前に立ち、手ぶりメインの振り付けで歌う二人の姿は、歌声と同様にキュート。後ろのスクリーンに映る映像も楽曲に合わせてポップな色合いで、二人のステージの可愛さをさらに引き立たせる。後のMCで明かされるのだが、曲中のコールは、人気ユニット「ROF-MAO」の加賀美ハヤトさん、剣持刀也さん、不破湊さん、甲斐田晴さんが協力していたそうだ。
デュエットコーナー最後の曲は、リゼさんとアンジュさんの歌う「ジャックポットサッドガール」。リゼさんの透明感がありながらも少しハスキー気味な歌声と、アンジュさんの華があって低音から高音まで音圧も強い歌声は相性抜群。少しダークな世界観の楽曲に合わせたステージや照明の演出も驚くほどマッチしている。歌い終えた二人が舞台袖に声をかけると、戌亥さんが全力ダッシュで登場。再び「さんばか」の3人がステージ上に揃った。
「みつぼしパレード」もファンの前で初披露
MCでデュエットコーナーの曲を振り返った後、次の曲のポジションに着く3人。戌亥さんをセンターに歌い始めたのは、和風だがアップテンポなメロディで人気の「神のまにまに」。3人が揃ったときの歌声は、デュエットのときとはまた違う魅力も感じる。デビュー当初から本当に仲が良く、コラボ配信などでも常に相性の良さを感じさせる3人だが、バラバラな個性を持った歌声の相性まで良いのが面白い。
続けて歌ったのは、3月の3周年ライブで初披露した「さんばか」の2ndオリジナル曲「みつぼしパレード」。ライブのフィナーレを飾るのにぴったりの涙腺を刺激しくるようなエモーショナルな曲だ。リアル会場のライブで披露されるのは今回が初めてなので、筆者も当然、ライブ会場でこの曲のパフォーマンスを観るのは初めて。振り付けも細かく、配信で観たとき以上にステージ映えする曲だった。ここまでのすべての曲に共通することだが、曲の世界観を広げてパフォーマンスの魅力を底上げするステージ演出も素晴らしい。
歌い終えると、リゼさんの「本日は本当に」という言葉に続いて、3人で「ありがとうございましたー」と大きな声で挨拶。3人ともバイバイと手を大きく振りながら退場した。それを見送った大きな拍手は、ほとんど途切れることなく、アンコールを求める拍手へとリズムチェンジ。すると、すぐに「さんばか」の3人が声をあげながら登場し、アンコールが始まった。
実は、「さんばかステージ」で、筆者が密かに注目していたポイントの一つが、どのようにアンコールを始めるのか。2月の3周年ライブでは、「みつぼしパレード」を歌った後、アンコールがあると思っていなかったリスナーたちが感謝と感動のコメントを大量に投稿。アンコールを求めるコメントはほとんど投稿されず、アンコールの準備をしていた3人がなかなか再登場できないという予想外のアクシデントがあったのだ。しかし、その状況を観ていたファンが多かったのか、あるいは、まだ歌われるはずの曲が残っているからか、過去に聞いたことがないくらいの早さで見送る拍手がアンコールの拍手に変わり、それを聞いた3人が登場するまでの時間も非常に早かった。
アンジュさんの誕生日をサプライズでお祝い
無事にアンコールのトラウマを乗り越えた3人は、会場のファンに感謝した後、3人で歌った「神のまにまに」と「みつぼしパレード」を振り返る。「神のまにまに」の一部の振り付けには、人気音楽ゲーム「プロジェクトセカイ」での振り付け採用しているらしい。また、「みつぼしパレード」を歌っている途中、戌亥さんと目があったリゼさんは思わず泣きそうになったそうだ。
そして、最後のアンコールの曲が始まると思ったタイミングで、リゼさんと戌亥さんが突然「ハッピーバースデー」と叫び、スクリーンには「アンジュ お誕生日おめでとう」の文字が浮かぶ。イベント前日の9月30日は、アンジュさんの誕生日だったのだ。「Happy birthday to you」のメロディも流れる中、客席からも大きな拍手が響く。「マジでびっくりした!」「リハと違うじゃん!」と驚きの声を上げながらも、サプライズでのお祝いがとても嬉しそうなアンジュさんは、思わず涙。それに気づいた戌亥さんは、なぜか大喜びで「泣いてる!泣いてる!」とはしゃぎながらアンジュさんを指差し、リゼさんから「止めてあげなさい(笑)」とたしなめられる。アンジュさんのイメージカラーの赤色の光に染まった客席からは、改めて祝福の気持ちがこもった大きな拍手が起こり、さらにアンジュさんを感動させていた。
「やっぱり、これをやらなきゃ『さんばか』じゃないでしょ」というリゼさんの紹介に続いて披露された最後の曲は、「さんばか」最初のオリジナル曲「3倍!Sun Shine!カーニバル!」。歌詞もメロディも楽しさ全開で、非常にライブ映えのする楽曲だ。再び3体のダヨーもステージの前に登場し、会場を盛り上げる。声出し禁止ながら、観客のテンションは最高潮。会場全体から「さんばか」というユニット名の由来である(と本人たちが主張している)「サンバカーニバル」のような熱気を感じた。
サビ前の「いぬいどんどんすきになる」「リゼがどんどんすきになる」「アンジュどんどんすきになる」と続くパートでは、他のライバーによるコールも入っていた。ところが、戌亥さんとリゼさんのパートのコールは輪唱のように歌と同じ歌詞だったのに対し、アンジュさんパートのコールだけは、「あ~」というやる気のない声が響く。曲の途中ながら「今のおかしかったよな!」とアンジュさんは突っ込み、リゼさんと戌亥さんは笑うのを我慢しながら歌い続けた。
曲が終わり、このままイベントもフィナーレかと思ったが、アンジュさんの歌声へのコールについて話し始める3人。コールの声の主は、ナイトステージの「FANTASIA」の出演メンバーで、リハーサルのときはアンジュさんの歌にも普通のコールが付いていたらしく、リゼさんと戌亥さんにとってもサプライズだったそうだ。最後まで笑顔全開だった3人は、大きな声で会場に感謝を告げながら退場。その後の影ナレでもアンジュさんが爆笑を巻き起こして、「さんばかステージ」は終了した。
戌亥さんのソロライブ「Inui Toko 1st Solo Live “who i am”」と、「にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow!東京リベンジ公演」でも一緒にステージに立っている3人だが、3人だけのイベントは今回が初めて。デビューから約3年半でついに実現した同期イベントは、ゲーム、ライブ、トークと「さんばか」の魅力が全部盛りで、ファンにとっては忘れられない90分となった。
●セットリスト
M1. Happy Halloween
M2. エンヴィーベイビー×KING
M3. せっかちなかたつむり
M4. ジャックポットサッドガール
M5. 神のまにまに
M6. みつぼしパレード
EN. 3倍!Sun Shine!カーニバル!
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(Text by Daisuke Marumoto)
●関連リンク
・にじさんじフェス2022公式サイト
・有料配信チケット販売ページ