VRで見るABEMAのワールドカップ(W杯)配信 コート全体やゴール脇など迫力のアングルが伝える「現地感」がスゴい

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日本時間14日の4時から実施し、アルゼンチンが3対0でクロアチアを下したFIFA ワールドカップ 2022 カタール大会の準決勝。今回、全64試合を中継しているABEMAでは、この準決勝と決勝のみ、VRで配信するという試みを行なっている(関連ニュース)。対応機種は、PICO 4とPICO Neo3 Linkだ。

実際にリアルタイムで視聴したが、通常のABEMAの配信とはまた違ったサッカー観戦のよさを感じたので、簡単にレポートしていきたい。執筆時点で、このアルゼンチン対クロアチア戦がアーカイブとして視聴可能になっているので、すでにPICO製品を持っていて興味を持った方もぜひ体験してほしい。


バーチャルVIP席に座っての観戦

まず、VRというとゴーグルをかぶったことがない人は想像しにくいかもしれないが、視界前方に大きなスクリーンが現れるのではなく、360度すべてが映像に包まれるという体験になる。

今回のABEMAのVRアプリでいえば、ユーザーは石造りの床や壁でえんじ色のソファーがあるVIPルームに座っている。上を向くと天井にはダウンライトがあり、後ろを向くと壁にユニフォームやテレビが飾られている。右後方には、外光が差し込むベランダがあって、CGの世界に自分がいることがわかる。

そしてコントローラーの先から伸びるビームを目の前に浮かぶパネルやボタンに合わせ、人差し指のトリガーを引いて決定して視聴をスタートすると、前方180度ほどが実写映像に切り替わる。


観客の盛り上がりも体感できる

VRでのサッカー視聴で一番いいと感じたのは絶妙なアングルだ。VR向けのカメラとしては、

・スタジアムの側面上方
・両サイドのゴール脇
・センターライン脇

という4ヵ所を用意。さらにスタジアムの側面上方から映しているシーンでは、通常の配信で流している映像をワイプで左右の空中に浮かべていた。


例えば、スタジアムの側面上方からの引きのアングルでいえば、ボールを持っている選手だけでなく、ほかのメンバーがどう動いているのか、フォーメーションがどうなっているのかを把握できた。まさにスタジアムの上の方の席で観戦するのと同じ体験だ。もちろん肉眼と同様、選手は米粒ぐらいなサイズなのだが、細部を見たければ、同じ空間に浮いているワイプ映像に目を向ければいいわけで、まったく不満を感じなかった。

観客の盛り上がりが俯瞰できるのも、とても「現地感」を煽ってくれる。引きのアングルでは、コート手前の左側にアルゼンチン、右側にクロアチアの観客が陣取っており、応援するチームの選手がいいプレーをすると、にわかに立ち上がって興奮しているのが見てとれた。後半、アルゼンチンが3点目を決めてから、観客のムードが左右で如実に違っていたのも伝わってきた。

さらにいえば、両応援団の間、VRでは真下の位置にある来賓席(?)に、中東の民族衣装を着た方々が座っていおり、途中、握手を交わしていたり、ハーフタイムには離席していたりする様子も見てとれた。ほかにも、審判やボールパーソン、ハーフタイムに芝を整備するスタッフ、空中を行き来するスパイダーカムなど、通常の配信ではあまり映し出されてないところも目に入ってきた。現地で見る醍醐味の何割かでも味わえた感じがとてもよかった。

 
迫力で言えば、両サイドのゴール脇のアングルが秀逸だ。ボールがゴールに迫ると、俯瞰からカメラが切り替わり、選手に近い目線でゴールポスト間際のせめぎ合いを見られる。特にコーナーキックでは、最初にコーナーを見ておいて、蹴られたボールの動きに合わせて首を振りながら目で追うことになる。ボールのスピード感、せめぎ合いの表情からわかる緊張感など、カメラのズームではなく、自分の目でさまざまなところを追えるからこそ伝わってくることが多い。余談だがクロアチアのキーパー、リバコビッチ選手は188cmらしく、その身長の高さも見てとれた。

これにスローインなどで使われるセンター脇のアングルが加わり、上手いタイミングで切り替えてくれることで、飽きさせない映像を実現していた。しかも今回、空間上には点数などのテロップは一切表示されておらず、シンプルに映像のみだった。最初はVRでちょっと見て、あとはテレビの大画面で楽しむかと思っていた筆者だったが、気づけば最後までVRで見てしまうほどいい体験だった。

なお今回、ほかにPCもスマホもつながずに単体で動作する一体型のVRゴーグル「PICO 4」で視聴していたのだが、残念ながら充電が80%ほどだったせいか残り10分でバッテリーが切れてしまい、Type-Cのケーブルを刺して充電しながら見ることになった。それでも視聴中は「若干ファンが回ってるかな」程度の静かさで、前後の重量バランスが取れていて首も疲れることがなかった。


W杯という世界のトップが集う機会で、新しいスポーツ視聴の可能性を感じられた今回の配信。PICO 4は家電量販店でも取り扱っており、4万9000円からという値段になる。手元でざっと調べたところ、今の時期でもドーハ往復の航空券が9〜15万円というところで、それに滞在費が加わるのを考えると随分と安い……かも(それでも現地の興奮のほうが上でしょうが)?

まだ12月19日0時スタートの決勝まで時間がある。今までVRにまったく興味がなかったというサッカーファンこそ、ぜひ機器をゲットしてVR観戦を体験してほしい。

 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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