中国の動画共有サービス「bilibili」(ビリビリ)とは? VTuberにとっての魅力を知ろう【PR】

LINEで送る
Pocket

今や日本のネット発のエンターテインメントとして、連日話題に事欠かないVTuber。その人気は日本を飛び出し、中には海外でも火がついて「外貨」を稼いでいるという日本人VTuberも少なくない。

そんな中から、今回は中国の動画共有サービス「bilibili」(ビリビリ)をピックアップ。bilibiliは現状、サービスが日本語に対応していないため、「中国語だけって……なんとなく難しそう」と思われがちだが、案外日本語のまま配信しているVTuberも多い。本記事では、そうしたbilibili自体と、bilibiliにおけるVTuberの状況をまとめていこう。

結論としては、実はbilibiliで生配信できるのはVTuberのみというアドバンテージがあることと、どのプラットフォームで何が受けるかわからないため、企業・個人として生き残るために色々チャレンジするのが大切……という話になる。


日本のオタクコンテンツを中国で広める一大サービス

まずはbilibili自体について。サービスが開始したのは2009年で、YouTubeが2005年、ニコニコ動画が2006年なので案外古い動画共有サービスになる。

特徴といえば、日本のニコニコ動画に影響を受けた、画面の上をコメントが流れるという仕組みにある。文化的にもニコニコ動画に影響を受けており、アニメ、ゲーム、コミック(中国ではまとめてAGCという)が好きな中国の若者に圧倒的に支持され、中国の経済成長に合わせて大躍進してきた。

bilibiliのスマホアプリで動画を再生したところ

ユーザーからの動画や生放送の投稿を受け付けるだけでなく、アニメや映画、ゲームでも自社コンテンツを制作。さらにネットだけでなくオフラインイベントも盛んで、2013年よりライブイベント「Bilibili Macro Link」、2017年より展示イベント「Bilibili World」をそれぞれ実施してきた。

筆者も2018年に両イベントを上海で取材したことがある。幕張メッセ規模の展示会場に日本のアニメやゲームの会社がブースを大量に出展していたり、武道館レベルのライブ会場のステージに日本のネットタレントが出演して大喝采を浴びたりと、本邦のコンテンツに中国各地から大勢集まった若者が熱狂している光景に驚いた。さらに2022年には、日本でも「BILIBILI MACRO LINK – STAR PHASE 2022」を幕張メッセにて初めて開催している。

2018年に上海で行われたBilibili Worldを取材した際の写真。会場はアニメ、ゲーム、コミック、ネットなど日本発のコンテンツがそこかしこにブースを構えていた
2018年はキズナアイがVTuberとして初出展。本人の生出演や物販などを用意し、多くの中国ファンが笑顔でブースに集まっていた
Bilibili Macro Linkはメルセデスベンツアリーナで開催
こちらも中国の有名ユーザーだけでなく、日本から招聘されたネット発のタレントたちが中国ファンを沸かせていた

そんな勢いに乗りまくり、2018年には米株取引市場NASDAQ、2021年には香港取引所にそれぞれ上場し、さらに資金を集めて今なおサービスを拡充している。2023年3月2日発表の決算資料(PDF)によれば、2022年通期の売上高は218億9000万元(約4300億円)、前年比で13%増。2022年第四四半期におけるDAUは9280万人(前年同期比で29%増)、MAUは3億2600万人(同20%増)、MPU(月額課金ユーザー)は2810万人(同15%増)と、いまだに数値を伸ばしている状況だ。

この成長の背景には、中国では「金盾」(きんじゅん、通称「グレートファイアウォール」)が存在しており、YouTubeなどの海外サービスが中国国内から基本的には接続できないという状況がある。なので、VTuberが中国向けに活動をしようと考えた場合、bilibiliをはじめとする中国のサービスを使う必要があるのだ。

一見、言語などの壁があるように感じられるbilibiliだが、実は日本のコンテンツはかなり親しまれており、例えば、声優の花澤香菜さん、シンガーソングライターであるYOASOBIのAyaseさん、歌い手やシンガーソングライターのまふまふさんなど、普通に日本の企業や個人もアカウントを開設している。執筆時点での「粉丝数」(ファン数、登録者数)を見ると、239.3万、74.3万、82.2万と、中国国内だけにも関わらず数十万、数百万という膨大な数ということがわかる。

bilibiliのユーザーは日本のコンテンツが好きでいてくれて、潜在的にVTuberのファンになってくれる可能性も高い。せっかく色々準備してVTuberとしてデビューし、自身やチームの活動を大きく跳ねさせたいと願うなら、まず試してみないのはもったいないという話だ。


個人・企業を問わず魅力あるVTuberを支持してくれる土壌

さて、肝心のbilibiliにおけるVTuberだが、割と初期から本人がチャンネルを開設していなくても、ファンが「推し」を広めたいという熱意で動画や切り抜きを転載している状況があった。

言葉は通じなくても、見た目や声が可愛い、動きが面白いといった部分で人気を博す。さらに「字幕組」という善意で翻訳を手伝ってくれるユーザーたちが、中国語は話せないけどbilibiliに進出したVTuberの活動を支えてくれた状況もあった。そうして日本のVTuberたちが海を渡って配信を始め、「虚拟主播」「虚拟UP主」というカテゴリーやタグが賑わっていく(投稿者=「UP主」という呼び方にならって「VUP」とも呼ぶ)。

例えば、「バーチャルYouTube」という言葉を生み出し、初期から国内外で業界を引っ張ってきたあるキズナアイ(中国語で「绊爱」)さんは、2017年から中国のSNS「微博」で活動を始め、2018年の夏には「BILIBILI WORLD」に単独ブースを構え、2019年には中国向け「爱哥」(アイガー)の活動をスタートさせるなど、積極的な中国展開を見せてきた。

企業ではない個人でも、先の「すでにファンがいてくれる」「翻訳を手伝ってくれる」といった追い風を受けて、bilibiliで人気が鰻登りになったVTuberも多い。神楽めあさん、花園セレナさん、緋赤(ひせき)エリオさんなど、例を出していくときりがない(この記事でも詳しく解説している)。

この3人は、2021年に「バーチャルシンデレラプロジェクト」(VCP)のメンバーとして選ばれ、バーチャルアイドルグループ「NHOT BOT」としてもデビューした。しかも、bilibiliとソニー・ミュージックエンタテインメントが手がけ、楽曲を指原莉乃さんがプロデュースするという豪華布陣だ。

過去に行われたファンミーティングでのライブの様子

バーチャルアイドル「NHOT BOT」1stファンミーティングレポート 現場だから感じられた6人の魅力的な個性

NHOT BOTは最初から1年間と活動期間を区切って活動をスタートし、いよいよ3月31日にラストライブを迎える。こちらのURLで無料で視聴できるので、ぜひbilibiliに興味を持ったらチェックしておくといい

神楽めあさんや緋赤エリオさんは、先に挙げたライブイベント「Bilibili Macro Link」の大舞台に出演したこともある。いずれもbilibiliでの活動を始めて、中国のファンが支えてくれたからこそ得られたチャンスだろう。

2023年時点でフォロワー数が多いのは、カグラナナさん(204.9万)、鹿乃さん(197.3万)、キズナアイさん(187.8万)といった感じ。最近、数字を伸ばしてきているVTuberでいえば、にじさんじENのVOX Akumaさん(142.6万)になる。

海外からだけでなく、中国出身のVTuberも定着してきている。2019年には、bilibiliとANYCOLORが共同で「VirtuaReal」というグループをスタートさせた。2023年1月にも新人3人がデビューするなど今なお継続して人数を増やしており、40名以上が所属する大所帯として中国のVTuberファンにお馴染みの存在となっている。


bilibiliにおけるVTuberの人気がわかるのが、「大航海」と呼ばれるメンバーシップの数だ。生放送のギフト欄に並ぶ「大航海」から加入できるが有料で、「舰长」(艦長)が198元(約3800円)、「提督」が1998元(約3万8000円)、「总督」(総督)が1万9998元(約38万円)と3段階に分かれている。集まったメンバーは「舰队」(艦隊)と呼ばれ、その人数(艦隊数)がお金を払ってでもその配信者を応援したいファンを表している。

この艦隊数は料金が若干高いこともあり、記念日がある月だけお祝いのために加入するなど、かなり数値が変動する。ただ、100人加入してくれただけでも、数十万円が動くという計算だ。過去に達成した艦隊数を記録している「航海名人堂」のページを見て、VTuberの「虚拟主播」で絞り込むと、「万人」が6人、「千人」が90人近く、「百人」1100人以上となっている。この絞り込みを解除すると、bilibiliにおける生身の配信者よりVTuberの方が多い印象だ。

航海名人堂のスクリーンショット。艦隊数は大きく変動するため、過去に達成した記録がこうして残されている

現状、bilibiliにおいて海外のユーザーで生配信できるのはVTuberのみという制約がある。bilibiliによれば、そうした事情もあって2022年の生配信において海外ユーザーは全体のわずか2%しかいないという。一方で、売上で見ると、海外ユーザーで12%という数値とのことで、高いパフォーマンスを出している。

もちろん視聴者と距離が近い配信者なのでトラブルが起こることもあるが、それは国内のネットで活動していても同じ話だ。数々の日本出身VTuberが脚光を浴び、今なお魅力的な才能を押し上げてくれる土壌があるbilibili。VTuberとしてデビューしているなら、ぜひ進出を考えてみてはいかがだろう。

次の記事では、実際のユーザー登録のやり方についてまとめていこう。


(TEXT by Minoru Hirota)

 
 
●関連リンク
NHOT BOT 無料ラストライブ
NHOT BOT公式サイト
bilibili