Flamersは、メタバースを出会いの場所として活用したマッチングサービス、恋愛メタバース「Memoria」(メモリア)を4月19日に正式リリースした(関連記事)。
従来のマッチングアプリといえば、外見や年収といった分かりやすい指標から入ることも多いが、そうしたやり方が合わなくて疲れてしまうという方もいるはず。一方、Memoriaでは、アバターで交流することで内面から関係をスタートできるというのが大きなメリットだ。先行してサービス提供していたβ版では、これまでに20組のカップルが生まれ、内2組が婚約に至ったそうだ。
今回の正式版に先立って、PC版もリリース。純粋にMemoriaというメタバース空間で真剣に交際・結婚を考えている人とつながれるという安心感が生まれて、それが女性ユーザーの増加につながったという。
当初、VRを介したコミュニケーションを男女の出会いに活かす取り組みに興味があって取材に行ったのだが、フタを開けてみればむしろ、VRの外にこそ価値のあるサービスだと感じた。そのコンセプトと実際に試してわかった魅力をまとめていこう。
MemoriaはVRChat内の恋愛から生まれた
体験にあたって今回、Memoriaを開発したFlamersの代表・佐藤氏にお話をうかがえたのだが、すぐさま「VRChat」という単語が出てきたことに、いちVRChatユーザーとして嬉しくなってしまった。
そもそもMemoriaが生まれたのも、佐藤氏が個人的な趣味としてVRにハマっていた中でVRChat上で恋人ができ、「顔が見えなくて内面から始まる恋愛が本質的でよかった」という体験にルーツがある。また、佐藤氏自身が一般的なマッチングアプリを利用したときに、外見や勤め先といったラベルで瞬時に判断されるところに苦手意識を感じたが、メタバースでは趣味の話で盛り上がれたり、話していて楽しいといった経験があった。
その従来のマッチングアプリとは真逆の価値観があることに希望を感じて、VRChat上で「VRCお見合い会」をスタート(関連記事)。初回で160人の応募者が集まったこともあり、メタバース内お見合いへの需要を感じた。さらに何度か開催したところ、実際に交際に発展したカップルが生まれたことから、事業として本気でやってみようという流れになったという。
とにかくこだわったのは話しやすさ
そんなVRChatでの自身の体験からスタートしたMemoriaが大切にしているのは、参加者が「話しやすい仕組み」だという。
Memoriaのユーザーは従来のマッチングアプリが苦手な層が多く、当初は「緊張する」「話が続くか不安」という声があったという。そこで名前や出身地、好きなもの等が書かれているプロフィールカードや、ランダムに話題を出せるサイコロを用意するなど、会話が途切れないギミックを用意。実際にVRゴーグルの「PICO 4」をかぶってMemoriaのVR空間を回ってみると、ユーザーに「しんどいな」「ハードルが高い」という思わせないために工夫しているなと感じた。
面白いと思ったのは、「二人きりの空間が気まずい」という意見から、空間内にドラゴンのキャラクターを配置したという話。確かに普通のマッチングアプリきっかけで飲食店で現実に会うとしても、店員や他のお客さんがいるように完全に二人きりというわけではない。バーチャルでもそうしたパブリックな場に近づいた印象だ。
ワールドの入口にいるドラゴンの近くには「呼び方」「出身地」といった、初めて会う人と会話する際に確認するようなトピックのメッセージが表示されており、会話の糸口になるようになっている。
ほかにも触れるギミックが多かったり、地下や上の階にもフロアが広がっているなど、VRの体験としても純粋に楽しかった。
とはいえ、使用できるアバターが決まっていたりフルボディトラッキングに対応していなど、メタバースとしての自由度からいえばVRChatと比べると機能面で物足りなさを感じる方もいるかもしれない。
しかし、Memoriaならではの最大の利点は恋人を探している人が集まっていること。そもそもVRChatなどのメタバースは恋人探しを目的にプレイするものではないため、友達から恋愛関係に進んでいく過程で気まずさを感じることもある。そうしたことを気にせずに内面から恋愛をスタートできるのが、Memoriaの面白い点だ。
Memoriaのデートの流れ
Memoriaのマッチング自体は、登録内容をもとにAIが自動でユーザーのペアをつくり、初回デートを行う仕組みだ。マッチングアプリに登録したけれどもそもそもマッチングしなかったと……ということが起こらないのは、精神的ハードルがかなり低いと感じる。
実際の初回デートでは前述の通り、ワールドの入り口エリアには会話の糸口となる質問を用意している。初見の方でも、だいたいは入り口エリアの質問を答えていくことで最初の挨拶は問題なく行われているという。
中に入ると、落ち着いたカフェといった雰囲気のワールドだ。入口付近はカウンターにコーヒーがあったり、プロフィールカードが配置されていたりする。写真でお伝えできないのが残念なのだが、個人的にはコーヒーのギミックでコーヒーをペーパーフィルターで淹れられることが、かなり細かくできていて感動を覚えた。VRで日頃から遊んでいるユーザー同士なら、このコーヒーだけでもかなり会話が弾むのではないだろうか。
実際には、プロフィールカードを見ながら会話することが多いという。このプロフィールカードはウェブから入力できる個人のカードで、好きな物事を細かく記入できるものだ。手に取れるので、お互いのカードを持ちながら会話することも可能だ。
デートには30分の制限時間があり、残り時間が空間にリアルタイムで表示されている。初めて話して人となりを判断するのに30分は短いような気もしてしまうが、気軽さもあってちょうどいい時間だという。確かに、相手がどうしても合わない人だったとして1時間くらい一緒にいなければならなかったら少し嫌かもしれないと感じた。
デート時間の延長はできないが、デートの後のアンケートでお互いがもう一度会いたいと答えた場合に、二度目以降のデートが可能になるという。30分が短いからもっとお話したかった! と感じたらもう一度会いたいと答えて、二度目のデートを待つ時間は片思いに近いのかもしれない。
Memoriaを利用するのにかかる費用は男性のみ、月額3900円。あくまで紹介料であり、マッチした相手と2回目以降のデート費用はなく、回数制限もないとのこと。何度もメタバースでデートすることで、相手の内面を好きになっていって実際に会うことになったら、もうすでにほとんど好きになっているのではないだろうか。
マッチングしてすぐに直接会うのではなく、メタバース上でデートを繰り返すMemoria。VRでもPCでも、アバター越しのコミュニケーションを通じて共通の趣味や、話しぶりに興味・関心を持って交流することで内面から好きになるという本質的な恋愛をはじめてみませんか?
(TEXT by ササニシキ)
●関連リンク
・Memoria official site