Vシンガー・拠鳥きまゆ、1stワンマン「PENGUIN A LIVE」レポート 現地で証明された存在とフロアの熱量

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Vシンガーの拠鳥きまゆ(よるどきまゆ)が10月7日、赤坂navey floorでファーストワンマンライブ「PENGUIN A LIVE」を開催した。シンガーとして活動3周年を迎えるというタイミングということもあり、現地では満員のファンが詰めかけ、まさに集大成と呼べるほどの大ボリュームのライブとなった。彼女を語る上では外せない力強いロックナンバーが詰め込まれ、大いに観客を熱狂させた現地の様子をお届けする。

開演前の時点で、ライブハウス特有の高揚感が漂っていた。入場BGMである「I breathe here.」が流れ出すのと同時に、控えめな青のライトが点灯。バンドメンバーがステージ上に現れると、フロアからは大歓声があがった。音楽が激しくなったタイミングで、ステージ中央のスクリーンにこの日の主役である拠鳥きまゆが姿を現す。

神妙な雰囲気を漂わせながら記念すべき1曲目には「Say,」を披露。メロウなメロディが特徴的なバンドサウンドで、ジリジリと高揚感を煽っていく。

続け様に「イキガイショウタイム」がスタート。拠鳥きまゆの楽曲の中でも抜群にライブハウス映えするキラーチューンだろう。スピード感あるギターのサウンドがフロアに充満していく。

楽曲の中でコールアンドレスポンスが巻き起こる光景は、まだまだ開演したばかりであることを思わず忘れてしまいそうになる。

休憩の余地は与えないかのように、1st Album「Say,」から「Film」を披露。サウンド自体は激しめではあるが、メッセージ性が強く、Aメロからサビで感情的になる表現が、ライブではさらに強調されて伝わってくる。

「新しいお洋服作ってもらっちゃったー!」とサプライズを発表するなど、改めてこの日は初めて尽くしであること、そして、特別な日であることを最初のMCの時間で半興奮気味に伝えていく姿が印象的だった。共鳴するように、オーディエンスからは大歓声が飛び交い、程よい助走が着いた状態から「MORE SO,KICK YOU CORE!!!!」を披露。手拍子が鳴り響く空間の中、拠鳥きまゆは淡々とメロディを刻んでいく。どこか懐かしいバンドサウンドが、ライブハウス特有のノスタルジーを演出し、サビではオーディエンスとのユニゾンも垣間見れた。

息つく暇もないまま「(un)forgettable」のイントロが流れ出し、拠鳥きまゆのがなり混じりのフローが飛び交う。「今のも全部妄想だよな!」と思わぬアクシデントがありながらも冷静に声を出してフロアの熱量をキープさせていく。一瞬の静寂を挟んで披露された「Monologue」では、ところどころでエッジの効いた歌声を使い、メロディックなサビとのメリハリをつけていくパフォーマンスが光っていた。

「君たちと一緒にこのライブを作れてることが本当に嬉しくてたまらないよ!」とオーディエンスに投げかける。ライブを通して、ストレートでシンプルなメッセージが多いのが印象的。楽曲とMCで感謝の言葉をとにかく重ねていく。「背中を預けられる僕も届けたくて…」とライブが始まってここまで全速力で駆け抜けてきたが、「Skymellia」でライブに緩急をつけていく。楽曲の特徴として爽快なロックナンバーな印象が強いが、声質や聴き取りやすさ、シンガーとしての色んな要素をふまえるとバラードナンバーとの親和性がある意味1番破壊力が高かったりもする。

続け様に「Lonely Rainy」では、少しだけギアをあげて、ピースフルな雰囲気に。オーディエンスも、体を小刻みに揺らしたり、首を振ったり、様々な楽しみ方でまさにライブハウスと言わんばかりの光景が広がっていた。そして前半戦の最後を飾った「うたかたとかして」は、「Lonely Rainy」の雰囲気を継承するかのようにゆったりとしたサウンドが鳴り響く。拠鳥きまゆの人気ナンバーであり、先ほど言ったバラードソングとの親和性の要素が詰め込まれた作品。雰囲気的にはピースフルではあるが、切ないメッセージ性とのギャップがこの楽曲の妙だろう。

「一緒に歌おう?」と後半戦の幕開けをパワフルな「CUTE AGGRESSION!!!!」で飾った。ライブ構成のメリハリに情緒を乱されたオーディエンスが、解放されたかのように踊り狂う。再びメロウなサウンドで、フロアの一体感を助長していった「KANATA」では、拠鳥きまゆの叫び声にも似た力強い歌声が響き渡る。本楽曲はは、シンガーソングライターユニット「カクレゴ」の天野ドウジが作曲、座敷乃てまりが作詞を手がけた楽曲で、ファンの思い入れが強い楽曲となっている。

「僕に星空を見せてくれませんか?」とスマホのライトを掲げるように呼びかけ、絶好の雰囲気の中で「レオニズの降る夜に」を披露。この日最高潮と言っていいほどのエモーショナルなパフォーマンスが展開されていた。続けて「Penguin Nova」では、アカペラアレンジで冒頭から没入感をグッと上げていく。ライブならではのアレンジは、オリジナルが好きな人には最高のファクターでもあり、この日が特別であることを再認識させてくれる。そしてちょうど2周年のタイミングでリリースされた「PENGUIN REALISE」を続けて披露。これまで積み重ねてきた楽曲もそうだが、メモリアルな楽曲を初のワンマンライブで体感できるスペシャルな時間が後半はとくに多く見られた。

「ぼくの存在証明…」と銘打ったのは新曲の「PENGUIN ALIVE」。初のワンマンライブを行うことができたシンガーの拠鳥きまゆがこれからを提示した楽曲は、ある意味では原点回帰、同時に音楽への野心を加速的に感じさせるような楽章だと感じた。本人も語っていたが、時間の感覚が狂ってしまうほど、一瞬でライブ終了の時間が迫っていた。

アンコール前最後の楽曲は「BLOOMING PAINTERS」。再びピースフルな空間が演出され、オーディエンスとの掛け合いも見られ、大合唱が巻き起こる。

アンコールでは、「ライブハウスって超楽しくないか?」と1曲目「カラの鼓動はソラになる」を披露した。ここまで15曲を超える楽曲をほぼ休憩なしで歌い続けている事実を疑ってしまうほど、バイタリティ溢れるパフォーマンスをアンコールでも炸裂させていた。「衝動を与えられるように…」と語っていた通り、オーディエンスも全く疲れを見せずに音に酔いしれている。腕を大きく振り上げ、拠鳥きまゆにパワーを送るかのような光景が印象的だった。


そして本当に最後の最後、特別な初のワンマンライブのトリに選んだのは「Savior」。最後に披露された曲ではあるが、前進的なメッセージ性の強い楽曲だろう。ここで止まることはないという意思表示であり、ファンに対してこれからも共に歩んでほしいという願いが込められた選曲だと個人的には感じた。

今回はライブハウスで行ったワンマンライブで、披露した楽曲全てがライブハウスという空間に適応させるようなパフォーマンスが垣間見れた。同時に、どんな場所で歌っても、その場に順応できるような表現者なんだろうなと拠鳥きまゆというシンガーに対して可能性を感じさせるライブだった。


(TEXT by 森山ド・ロ

 
 
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