VRアイドル「えのぐ」の重大報告配信レポート 事務所廃業後も「目標を追うため」合同会社設立

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「【ご報告】事務所の倒産と今後の活動について」配信のサムネイル

2023年11月6日、VRアイドルタレント専門のマネジメント事務所、岩本町芸能社2024年3月での廃業を発表。続いて、岩本町芸能社に所属するVRアイドルグループ「えのぐ」のメンバー鈴木あんずさんがXアカウントで、岩本町芸能社の廃業後も「えのぐ」は活動を継続すると表明し、同日20時から「えのぐ」公式YouTubeチャンネルで生配信を実施することも報告した。
本記事では、「えのぐ」のメンバーである鈴木さん白藤環さん日向奈央さんの3人により行われた約1時間の報告配信、「【ご報告】事務所の倒産と今後の活動について」で発表された内容の一部を紹介する。


2023年1月にメンバー3人で合同会社を設立

普段のライブや配信などでお馴染み3人の挨拶兼自己紹介から始まった「えのぐ」の報告配信。

最初に、日向さんから「この場で、岩本町芸能社の廃業に関する詳細を私たちから報告することは控えさせていただきますが、タレントを継続的にマネジメントしていくことが困難になったということになります」と説明。加えて、「誤解の無いようにお伝えすると、会社が何か悪いことをしたとか、私たちタレントとの信頼関係を損なうようなできごとがあったわけではないです」と、岩本町芸能社のスタッフへの信頼と感謝を語った。

【ご報告】事務所の倒産と今後の活動について

その後、白藤さんが「世界一のVRアイドルになること」など、「えのぐ」が目指し続けてきた目標を改めて語り、その目標を追いかけ続けるための決断が3人から発表された。

2023年12月31日で、鈴木あんず、白藤環、日向奈央は、岩本町芸能社を退社。
2024年1月より、3人で新しい合同会社を設立。
・3人の活動拠点を新会社に移し、岩本町芸能社が所有している「えのぐ」関連の権利は、新会社へ移管。新会社で「えのぐ」の活動を継続する。
・現在発表されているライブ、イベント、グッズ、リリースなど年内の活動は、すべて予定通り実施。
・12月30日(土)に開催されるワンマンライブ「大絶響祭 2023 WINTER -ONE DAY MORE-」が岩本町芸能社所属として行われる最後のライブ。
「えのぐ」がプロデュースしているバーチャルライブイベント「VRide」は、新会社と現在も主催を務める「REAL VIRTUAL LIVE 推進委員会」で制作・運営を継続し、来年以降も月1で開催予定。

Virtual Artist Fes「VRide!」Vol.3 @赤羽ReNY alpha 定点カメラ映像

このように、「所属事務所が廃業」というニュースを目にした瞬間、多くのファンが想像したであろう悲しい結末は、現時点では回避できていることが明らかになった。


約45分も続いたリスナーとの質疑応答

しかし、当然、「これまで通りとはいかない活動もたくさんあります」と白藤さん。説明によると、これまで技術と資金の両面でパルス株式会社からの支援を受けて活動してきたが、その支援はすぐにではないが終了の見込み。来年以降は、既存の活動を縮小する可能性もあるらしい。また、ライブ開催に関するクラウドファンディングの実施も視野に入れて検討しているとのこと。会社を運営するため、アイドル活動以外の事業についても構想しているそうだ。

報告の最後に、改めて現在の心境を1人ずつ語った3人。岩本町芸能社への感謝の思いと、不安はありながらも、挑戦を続けられることに前向きな気持ちというのは全員一緒で、さすが「えのぐ」と思わされた。

3人からの報告が終わったのは配信開始から約15分後。その後は、配信のコメント欄で質問を募集し、3人が答えていく質疑応答が約45分間も続けられた。冒頭で鈴木さんは「可能な限りすべて真実でお話しします」と宣言。実際に「そこまで話すのか」と驚くこともあった質疑応答の内容に関して、いくつかの回答をピックアップして紹介する。

・基本的に、現在、岩本町芸能社で働いているスタッフは新会社には参加しない。しかし、最初の頃は委託という形でサポートを受ける予定。
・合同会社の運営は基本的に3人で行う。しかし、経理など一部の業務は、最初は委託予定。
・2022年12月にアイドル活動を引退後、岩本町芸能社の非常勤社員として「えのぐ」をサポートしてきた夏目ハルさんは、新会社でも非常勤スタッフとして活動。

・音源、衣装、YouTubeチャンネル、各SNSなどの権利も新会社に移管。
・今のところ、新メンバーや新しいタレントを増やす予定はない。
・活動継続のために新規事業を計画しているが、ただ利益が上がれば良いということではなく、ファンも自分たちも楽しいことを目指している。
資金的な問題から新会社はすぐ終わるかもしれないし、続くかもしれない。それはメンバーの努力次第。しかし、できたらファンにも協力して欲しい。
今後も3人の活動の軸はアイドル活動。レッスンなどを疎かにするつもりはない。
・活動頻度を減らす予定はない。むしろ、できたら増やしたい。
・廃業決定について聞いたのは今年の夏のワンマンライブ後。しかし、厳しい状況を知ったのは今年の初めで、自分たちの思いを後輩に託したいという気持ちが「VRide」開催の大きな理由だった。

また、多くの人がまず思ったであろう「事務所移籍の話などはなかったのか?」という質問もあったが、ライブ主体という「えのぐ」の活動方針は、VTuberのトレンドとは違うため、夢を追う今の活動方針を継続させるためには独立が一番という決断に至ったらしい。

新会社の名前などが発表されるのは、来年予定とのこと。恐らく、新事業などの詳細が明らかになっていくのも来年に入ってからだろう。
岩本町芸能社所属としてのラストライブ「大絶響祭 2023 WINTER -ONE DAY MORE-」チケットはオフィシャル一次先行抽選受付中)で、事務所に恩返しをしたいとも語っていた3人。えのぐワンマン史上最大規模の会場である立川ステージガーデンで最高のライブを実現し、胸を張って新体制での挑戦へと歩みを進めて欲しい。

ちなみに、難しい話題ながらも「えのぐ」らしい明るさは終始失わなかったこの配信で、最もほっこりしたのが、「ファンからえのぐさんに協力できることをすべて教えて欲しい」という質問に対する鈴木さんの回答(41分30秒頃から)。「ワンマンは絶対に来て欲しい。でも、遠い人は配信でも……」から始まるさまざまなお願いを申し訳なさそうに早口気味で列挙した後、力強く「1日3回は、#えのぐ でポストして欲しい」とリクエスト。具体的かつ細かすぎる要望に、白藤さんと日向さんも爆笑していた。

今後は#えのぐをトレンドで見る機会が増えることを願いたい。


(TEXT by Daisuke Marumoto

●関連リンク
えのぐ(公式サイト)
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岩本町芸能社