「ホロライブ」のカバー、北米拠点を7月より営業開始 狙いはグッズ販売をより伸ばすため

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VTuber事務所「ホロライブ プロダクション」を手がけるカバーは12日、2023年4月に設立した北米拠点・COVER USAを2024年7月に営業開始する予定ということを明らかにした。所在地はカリフォルニア州で、資本金は99万1150.44⽶ドル。

日本でVTuber事業を手掛けている少人数メンバーでスタートし、ライセンス営業や商品企画(MD)が得意な現地人材を採用して、ECにおける海外比率を日本と同程度に高めていくことを目指す。

 
現在、ホロライブプロダクションに所属するタレント86名のうち、海外IPは女性タレントで英語圏向けの「hololive English」(EN)、女性タレントでインドネシア向けの「hololive Indonesia」(ID)、男性タレントで英語圏の「HOLOSTARS English」など33名となっている。

2024年2月29日における全VTuberにおけるYouTubeのチャンネル登録者数で見ると、ホロライブプロダクションがトップ10中8つを占めており、ENのGawr Guraが444万人でトップ、同じくENのMori Calliopeが234万人で6位、IDのKobo Kanaeruが233万人で7位と3名がランクインしている。

2023年12月時点における地域別のチャンネル登録者では、日本が5321万人、海外が2902万人と海外比率が35.3%。さらに海外内訳を見てみると、英語圏が1951万人、インドネシアが951万人となっている。ちなみに前年同月比では、日本が+17.6%、海外が+21.4%、うち英語圏が+24.3%、インドネシアが+15.9%と英語圏が一番伸びていることがわかる。

カバーとしても、2023年度のQ3までで26件の海外アニメ/コミックイベントに出展してグッズを販売したり、アニメイトの海外店舗で限定グッズを流通させたり、、OMOCATにライセンスアウトしたりと海外に販路を広げてきた。

ホロライブファンなら、Anime Expo 2023の会場に「YAGOO」の愛称で知られるカバーの代表取締役社長・谷郷氏が現れて、集まっていたファンが熱狂していたことを記憶している人もいるはず。

そして世界のIPビジネスにおいてトップ10タイトルのうち、9つが日本とアメリカのコンテンツで、過去にグローバルで成功してきた日本のキャラクターIP(知的財産)ビジネスにおいて、まず熱狂をつくった上で、MDやライセンスの分野で売上を立ててきた実績がある。

そうした前例にならって、カバーもVTuber事業を立ち上げてきた少数精鋭を現地法人に送り込み、現地の商慣習や流通、好まれるグッズの勘所がわかった人材やパートナーを巻き込んで、海外に販路を広げていく狙いだ。


記者会見でプレゼンを担当した谷郷氏は、質疑応答でアメリカにおけるVTuberコンテンツの肌感について以下のように語った。

「日本というのはオタク層というのがより一般化してきているように思います。例えばボーカロイドみたいなコンテンツも昔はサブカル性が強いものだと思っていましたが、今は特に若年層においてメインカルチャーになってきている認識です。

一方で海外に関して、北米においては男性が多く、特に若い層がアニメやVTuberといったコンテンツのファンになっているという認識がありますが、まだまだ一般層には広まっていません。

そのアニメ・ゲームファンにおいても、「原神」のようなアニメルックなゲーム、VTuberなどでファンを共有しているような状況で、米国などを中心にしっかりVTuberを打ち出していかないと、すぐに埋もれてしまう可能性があると危機感を感じていて、それがわれわれ積極的に展開していきたいと思っている背景です」

 
もうひとつの狙いとしては、Englishメンバーの活動サポートがあるようだ。谷郷氏は質疑応答で、同社の取引形態として、企業が消費者を直で対象にした「BtoC」ではなく、消費者を対象とするタレントを相手にする「BtoBtoC」とコメント。日本におけるタレントのメリットを聞かれた際、以下のように答えている。

「タレントさんのメリットしては、主にEnglishの英語で活動しているタレントのメリットを第一に置いています。というのも、日本のタレントさんに対しては、例えばソロライブや配信以外でのコラボレーションなどの露出を増やすようなメリットを実現できています、アメリカにおいてはまだEnglishの全体ライブを一回行っただけの状況で、日本における2020年1月、つまり4年前ぐらいの状況だと捉えています。

現地に拠点ができることで、より現地パートナーと交渉がやりやすくなると考えておりまして、例えばEnglishのタレントさんのソロライブだったりを実現していきたいと考えています」

一般的に、グッズの売上はライブなどのイベント時に大きく伸びる傾向にあり、個別タレントのイベント支援は先に出たMDを伸ばすという話にもつながっていきそうだ。

 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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