「VTuberとは、アニメルックなビジュアルを用いて、インターネットを中心に活動するYouTuber・配信者・ストリーマーである」
2024年におけるVTuberの大体のイメージを言葉にしてみると、このような表現に大枠収まるだろう。YouTubeやTwitchといった配信サイトをつうじ、ゲームをプレイし、雑談をし、歌を唄う。「VTuberといえば？」というイメージもなんとなく固定化したと思わなくもない。
だがそういった固定的・定番化したイメージとは一線を画す活動をしている面々もいる。「バーチャル化したYouTuber」という語義通り、YouTuberらしい活動をそのままバーチャルなビジュアルで行なっていこうとする、チャレンジングな面々が昔も今も活動を続けてきた。
そのなかでもおめがシスターズの活動は、その初期のころから、そして現在にあっても、無視できない強い光を発しているといえる。8回目を迎える「Pop Up Virtual Music」では、歴戦の猛者であるおめがシスターズについて、最後に楽曲「モンスターカミング」について触れようと思う。
おめがシスターズは、おめがレイ・おめがリオ姉妹による2人組ユニットだ。青髪・ショートカットの姉・おめがレイ、ピンク髪・ツインテールの妹・おめがリオの2人は、サブカルにつよい姉とそこまで興味はない妹、企画屋としてセッティングする姉にその中で自由に楽しみまくる妹、そんな好対照な構図で多くのファンに親しまれてきた。
2018年3月上旬に活動を本格的にスタートさせ、同年にはActiv8株式会社が運営していたプロジェクト・upd8に参加、当時から様々なおもしろ動画・ひねったアイディアの企画でファンを集め続けていた。
アップテンポな動画内容に多くのファンが引き込まれたわけだが、シーンに大きな衝撃を与えたモーメントはいくつかある。2020年11月19日におめがレイが出産を発表したのは、いの一番にあたるだろう。
直前にあたる11月5日に投稿した動画にて「すこし休みます」とファンに報告。初めての長期休みとして1週間の活動休止をしていたのだが、なんとこの期間に入院・出産していたというのだ。
配信者やYouTuberが使いがちな「史上最大のお知らせ」という言葉は、多くの場合はどこか予定調和な色合いが強く、スケール感が多少小さくなってしまうことが多いのだが、「VTuberが子供を出産した」というニュースはまさに言葉通り”史上最大のお知らせ”であったといえよう。
2022年3月7日には、「顔は3Dビジュアル、それよりも下は実写」という”2.5次元ビジュアル”を生み出すことになった。
これより半年前になる2021年9月には旧衣装から衣装を新調しており、そもそもこの動画自体はコロナに罹患していたリオが復帰する内容が主。そんななかで、おめシス流”2.5次元ビジュアル”がしれっとお披露目され、後日この変化に気づき、静かに驚いたファンもいただろう。
2.5次元ビジュアルの導入は、外ロケやVlog的な動画も多かった彼女らの活動に大きな影響を与え、いまでは「おめシスといえば半分実写だよね」と認識しているファンもかなり多くいそうだ。
実際彼女らの人気動画のいくつかは、この「半アニメ・半現実」な2.5次元ビジュアルとなって以降の約2年ほどの間で制作されたものが多く、東海オンエア・てつや、にじさんじ・える、あおぎり高校・大代真白とのコラボ動画は、以前までの彼女たちでは達成できなかった内容といえるかもしれない。
こうして振り返る中で見過ごすことができないのは、その活動初期には多くの歌ってみた・カバー歌唱動画を投稿しており、人気を集めていたという点だろう。
現在は公開が停止してしまった動画、他VTuberのチャンネルで公開されている動画も含めると、活動開始してから約1年ほどで25曲もの動画を投稿。月1どころか月に3つもの歌動画を投稿しており、現在のVTuberとは比較にならないほどの驚異的なペースだった。
いくつかの歌動画のなかでは、普段のユーモアあふれる部分が隠しきれないようで、ちょくちょくボケに走っているのも印象的だ
2019年3月6日には自身の活動1周年を祝うように初オリジナル曲「シンクロニティ」を発表後は、音楽方面の動きはグっと縮小していったわけだが、そんな彼女らが2023年11月5日に発表したのが「モンスターカミング」だった。
2023年8月19日～20日に催された甲賀流忍者ぽんぽこ・ピーナッツくんによる生放送企画第7回「ぽんぽこ24」内にて初お披露目された同曲は、11月5日にオフィシャル動画が、12月30日にはEPの1曲として正式リリースされたのだ。
その後、7年目にして初のリアルライブ「モンスターカミング」を開催した際には、ぽんぽこ、ピーナッツくんに加え、富士葵、キクノジョーといった面々に加え、サンリオピューロランドでの開催とのことでシークレットゲストにキティちゃんも登場（！）とサプライズもあった（ライブレポート）。
そもそもぽこぴーの2人が着ぐるみで出る一方、おめシスの2人はフェイスマスクでステージに現れたというのも面白いのだが、ほんわかバンドと称して生バンドで楽曲を披露したのも見過ごせない。
楽曲「モンスターカミング」も作詞・作曲・編曲を堀江晶太、白神真志朗とバンド活動・アンサンブルにこだわりを持つ2人。ギター・ベースは堀江と白神、ドラムスにはヒトリエ・ゆーまおと、彼らからすれば”いつメン”での楽曲が生まれている。
堀江晶太らしいパンチあるロックサウンドは、おめがシスターズのアップテンポ＆ポップなムードにとてもマッチしている曲である。動画のシュール＆ユーモアな内容もあいまって、型破りな彼女らしさを見つけることは造作もない。
これはおそらくの話だが、この曲・ライブをしたからといって、おめシスが音楽の方面へアクセル全開で突っ込んでいくわけではないだろう。とはいえ、自身のファンとの交流・繋がりのなかに音楽というハブ・エンタメを置いたことは、とても嬉しくもあり、感慨深いともいえる。
（TEXT by 草野虹）
＊連載一覧はこちら → Pop Up Virtual Music
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・おめがシスターズ（YouTube）
・おめがレイ（X）
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