【詳報】「にじさんじ甲子園」、優勝は椎名監督「にじさんじ高校」に決定 19万人が燃えた逆転劇

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VTuber/バーチャルライバーグループ「にじさんじ」は14〜16日、野球ゲーム「パワフルプロ野球2020」を利用したコラボ企画「にじさんじ甲子園〜2020・夏〜」の本戦を開催中だ。6チームが出場し、14日はAリーグ3チーム、15日はBリーグ3チームがリーグ戦でぶつかりあい、16日に1、3、5位決定戦を行った。

16日には5位、3位、優勝決定戦を開催。優勝決定戦では、椎名監督の「にじさんじ高校」が樋口監督率いる「VR関西圏立高校」を8対6で下し、見事、栄冠を掴んだ。YouTube Liveの同時接続数も19万を超えるVTuber業界で記録的な数値となった。

椎名監督は「途中負けなっちゃうかなと思ったけど、みんなのおかげで勝てました。最強です!」とコメント。樋口監督は「ここぞというときにテッペンを見せれんかったから悔しいけど、みんながんばってってくれました。ありがとうございました」と語っていた。

5位決定戦123456789
王ヘル1000001013121
横須賀流星000103004121
3位決定戦123456789
聖シャ0011100003100
にじ農 100000214130
優勝決定戦123456789
にじ高0000220318160
VR関西3110100006110

「にじさんじ甲子園」、Aリーグは「VR関西圏立高校」が1位通過! 同接15万人が見守った奇跡の逆転劇
「にじさんじ甲子園」、Bリーグは椎名監督・にじさんじ高校が1位 打線爆発&夢追好投が勝利に


16日の3試合はどれも僅差を争う名勝負で、見ていた誰もが手に汗を握っていた。終わってみれば、普段スポーツ中継に馴染みのない方々も「最高の夏だった」と感動を覚えていた素晴らしい企画だった。

本日も舞元啓介さんの「(ッスー)やきうの時間だー!」でスタート。対戦カードはこちら。実況は、スペシャルアンバサダー・天開司さんが担当。
ルールはリーグ戦までは7回(コールドなし、延長なし)だったが、決勝戦は9回(コールドなし、延長あり、タイブレーク制)を採用。


5位決定戦:涙の初勝利を掴んだ社築監督「横須賀流星高校」

5位決定戦は、Aリーグ・リゼ・ヘルエスタ監督の「王立ヘルエスタ高校」とBリーグ・社築監督の「横須賀流星高校」の対戦となった。

スターティングオーダーはこちら。

開幕後、好調だったのは王ヘルだ。1回表にいきなり打線が火を吹いて、1番・夜見がセンター前ゴロで出塁し、盗塁で2塁へ。そこに2番・戌亥がタイムリーヒットを放ち、1点を奪取する。

投げては先発・アンジュが好調で、三振を量産していたものの、4回裏に転機が訪れて、横須賀流星の5番・轟がノーアウトで出塁。6番・緑仙がバントで轟を2塁に進めたうえで、7番・空星がセンター前にタイムリーヒットを放って同点に追いつかれる。

さらに6回裏、横須賀流星の6番・緑仙、7番・空星とヒットで出塁を許したうえで、アンジュが8番・エリーにフォアボールを出してしまい満塁のピンチに。社築監督はこの好機を見逃さず、代打・ベルモンドを指示。リゼ監督も「アンジュ、ここ抑えるしかねぇ」と気概を見せたものの、5球目のストレートを二塁手の頭を越える強烈なセンター前ヒットで返されて、2者生還、2点差を付けられてしまう。これには社築監督もたまらず「よう食いしばった!」と絶叫。リゼ監督は「ちょっと厳しいですね」と涙を飲みながら投手をまちゅかい(魔使)に変えるものの、1番・加賀美のライト前タイムリーが続き、さらに1点を奪われて横須賀流星が3点差をつけた。

王ヘルは7回に1点を返して、2点差という射程圏内で9回表を迎える。8番・竜胆尊がノーアウトで出塁。リゼ監督はここぞとばかりに竜胆尊を代走・はかちぇに、9番まちゅかいを代打・ジョー・力一(りきいち)に変えて最後の戦いに賭ける。

結果、はかちぇが2塁盗塁を成功させた上、ジョー・力一がセンター前のタイムリーを放って1点を返し、1点差まで詰め寄った。その後も1番・夜見がバントで出塁した上、盗塁を成功させて「その時」に備える。しかし、無念にも3番・小野町が打ち取られてスリーアウト、ゲームセットとなった。

横須賀流星の社築監督は、Bリーグ2敗で、今回初めて勝利して5位となったことについて、「本当になかなかね、今までチャンスで点が入らなかったりした。今日は打ってくれて、いい守備も投打活躍してくれて、エリーがピンチを乗り切ってくれて、すべてが重なった上での勝利。選手にありがとうと言いたい」と、息を切らせながら語っていた。


3位決定戦:2点差を返して見事勝利した舞元監督「にじさんじ農業高校」

3位決定戦は、Aリーグ・舞元啓介監督率いる「にじさんじ農業高校」と、Bリーグ・剣持刀也監督の「聖シャープネス学院」が火花を散らし、1点差の3対4でにじ農が勝利を掴んだ。

スターティングオーダーはこちら。

先に動きを見せたのは、にじ農だった。1回裏、聖シャの先発・笹木を相手に1番・叶がヒットで出塁。2番・鈴原、3番・センシティブ雨森は打ち取られてツーアウトになったものの、4番・葛葉がセンター前ヒットを放ち、「ChroNoiR」コンビで1、2塁に並ぶ。このチャンスに続く5番・レヴィが左中間にタイムリーを放って1点を先制した。

聖シャのエンジンがかかってきたのは中盤だ。3回表、9番・野良猫の出塁に1番・夕陽が左中間のタイムリーで続いて、野良猫が1塁から一気にホームイン。1対1の同点とする。さらに4回表、一塁線を鋭く攻める2塁打で3番・森中が出塁。4番・ギルザレンのセンターフライで3塁に進み、5番・しばのセンター前ゴロで生還して1点追加。5回表には、剣持監督が「さすリリ」とほめる夕陽選手がツーアウトから安打。2番・鈴鹿詩子が右中間に強烈な一撃を放って1点を奪取し、3対1の2点差に広げた。

にじ農もそう簡単には負けられない。7回裏、6番・ニュイがセンター前ヒットで出塁。ここで舞元監督は長打を期待して代打・赤羽を起用するも、まさかの謎バントを仕掛け、「なんでだよー!違うじゃーん!」と憤慨するハプニングもあった。しかし、そのおかげで2塁に進んだニュイを1番・叶が三遊間を抜けるヒットで3塁に進ませ、3番・センシティブ雨森がセンター前タイムリーでつないで1点を返す。続く4番・葛葉が左中間に2塁打を放って1点を追加し、3対3の同点に持ち込んだ。これには舞元監督も「ッシャ!」と満面の笑み。

8回裏、にじ農は6番・ロアがレフト前ヒットでノーアウト1塁。7番・葉山がバントで確実にロアを2塁に送り、8番・ニュイがバウンドで三塁の頭を越えるヒットを放ち、ロアを生還させて見事逆転する。

9回表、後がない聖シャは7番・フミが三遊間を抜けるヒットで1塁に出て望みをつなぐものの、8番・ピッチャーりりむの代打で起用した家長が謎バントでキャッチャーフライを打ち上げて、無念の2アウト。ラストは今回、ノリに乗っていた9番・野良猫をピッチャー・星川が見逃し三振できっちり抑えて、にじ農が接戦を制した。

勝った舞元監督は、「マジで聖シャープがめちゃくちゃ強くて、何点取られてもおかしくなかったし、こっちが正直いいチャンスを作れていなかった。本当に(たまたまつかんだ)ワンチャンスを葛葉くん(のおかげ)で同点に追いついて、ニュイがしっかりつないでくれたのがデカかった。あと不破が7回投げてくれたのも大きかった。それも踏まえて代打などで余裕が出たので、(追加の)1点が取れた」と冷静に振り返っていた。


優勝決定戦:にじさんじパワプロ企画の立役者・椎名監督「にじさんじ高校」

本日の大一番、優勝決定戦は、Aリーグ・樋口楓監督率いる「VR関西圏立高校」と、Bリーグ・椎名唯華監督の「にじさんじ高校」が激突。両者ともリーグ戦では打線が爆発していたため打撃戦が予想されたが、やはりその通りの展開で、かつコラボ企画の最後となる決勝にふさわしい逆転劇もみせて、最終的に8対6でにじ高が栄冠をつかんだ。

スターティングオーダー。

序盤を圧倒したのはVR関西だ。打てば3回までに4点を取る猛攻、守ればエース・月ノが4回まで被安打3と、にじ高の「スク水打線」(註:にじ高のユニフォームはスクール水着)をきっちり抑え、試合を見守る人々に「これはVR関西しか勝たん」「にじ高は運が悪かった」と確信させていた。

VR関西は1回裏、2番・ましろがライト前ゴロで出塁し、そのまま盗塁で2塁に進む。続く3番・えるがヒットを放って1、3塁としたあと、4番・ギバラが三遊間と左中間を抜く強烈なツーベースヒットで1点。さらに5番・明那がレフト前に2者生還のタイムリーヒットを放ち、1回から3点を先制した。

これがプレッシャーとなったのか、前日のリーグ戦は絶好調だったにじ高の先発・夢追がスイッチが入ったVR関西に打ち込まれてしまう。2回裏はツーアウトで迎えたのち、1番・静凛と2番・ましろから続けてツーベースヒットを浴びて、さらに1点を失う。

対するVR関西の先発・月ノは絶好調。3回表、9番・夢追をライトフライ、1番・チャイカを見逃し三振でアウトを取り、続く2番・ハジキに2塁打を浴びたものの、3番のユードリックをしっかり打ち取りスリーアウト。にじ高の強打者をものともしない月ノに驚きの声が上がる。しかもこの裏、VR関西は先頭打者の4番・ギバラがレフトスタンドにダメ押しのソロホームランを叩き込み、点差を5点に広げた。

決勝でのホームランに、「入るか?入るか? 入ったーーーー!」と解説の天開さんも大興奮。

 
しかし人生には、負けられない戦いが何度かある。

にじさんじでパワプロ企画といえば誰か? 2019年、天開司さんと一緒に「パワフルクズ野球」(パワクズ)のコラボ企画を始め、「VTuber甲子園」にも出演し、2020年の「にじさんじパワプロ王決定戦」でも優勝したVTuberの名前は? そう、椎名唯華さんだ。

試合前、椎名監督は「こいつら全員を勝たせたい。こいつらめっちゃカッケーんだって。だから優勝します」と宣言していた。その想いに応えるように、5回表からにじ高ナインが反撃の狼煙を上げる。

5回表、にじ高の攻撃では、センター前ゴロで7番・甲斐田が出塁。さらに9番・夢追が三遊間を抜いて1アウト1、2塁のチャンスを掴む。下位打線でも油断できない、にじ高の実力が戻ってきた。さらに1番・チャイカがセンター前ヒットを放って満塁。2番・ハジキのライト前ヒットで1点、3番・ユードリックの内野ゴロで1点と2点を戻して、「スク水打線」の復活を高らかに宣言。

守備でも火がついてきたのか、5回裏は1点を失ったものの、4番・ギバラが放ったセンター前ギリギリのフライをチャイカがスライドキャッチするなど好プレーも飛び出す。

6回表もにじ高が魅せた。5番・愛園がライト前ヒットで出塁し、6番・瀬戸でゲッツーで2アウトになったものの、この逆境からスタミナが尽きて先発・月ノから交代したVR関西のウヅコウを隙なく追い込む。7番・甲斐田、8番・春崎が2、3塁に出た上で、9番・夢追の代打でバッターボックスに入ったえま☆おーがすとが1塁線を攻める2点タイムリーで4対6の2点差に迫る。6回裏はにじ高の先発・夢追のあとを受け継いだグェミング(グウェル)が1被安打に抑えて、「逆転」の2文字が見えてきた。

7回は両チームの気迫がぶつかり合った。表ではVR関西のリリーフ・ウヅコウが2番・ハジキ、3番・ユードリック、4番・金魚坂を三者凡退に打ち取ったと思いきや、裏でもにじ高のリリーフ・グェミングが3番・える、4番・ギバラ、5番・明那の3人を連続アウトで抑えた。

だが、勝利の女神はにじ高に微笑みつつあった。8回表、にじ高の5番・愛園、6番・瀬戸が連続ヒットで1、2塁に出塁。7番・甲斐田の内野ゴロで2、3塁とした上で、8番・春崎がレフト前にタイムリーヒットを放って2者生還。続く9番・グェミングはアウトになるものの、スタミナが尽きつつあるウヅコウを1番・チャイカが問答無用で攻略し、3塁線を抜ける強烈なあたりで1点追加。ついに7対6と、前半あんなに遠かったVR関西の背中を追い越した。守備でもグェミングが好投を観せて、6番・ちひろ、7番・シェリン、8番・奈羅花と3者でスリーアウトをとっていく。

もはやにじ高「スク水打線」は止められない。9回表、ワンアウトで4番・金魚坂が出塁したのち、5番・愛園の内野ゴロで2塁に進めて、6番・瀬戸がセンター前にタイムリーを放ち1点追加。8対6と2点リードにした。

最後の守備となる9回裏もグェミングが仕事をやり遂げる。9番の先頭バッターでVR関西、樋口監督は「最後かも知れんから、楽しもう」とラトナプティから代打・あみゃみゃ(天宮)をバッターボックスに入れたものの、内野ゴロで凡退。安打製造機の1番・静凛も見逃し三振、2番・ましろもセンター前フライと三者凡退に追い込み、見事、にじ高を勝利に導いた。「マジで!? やったー!」と喜ぶ椎名監督に、生放送でも惜しみない拍手が送られていた。

試合後、にじ高の椎名監督は「途中負けなっちゃうかなと思ったけど、みんなのおかげで勝てました。最強です!」と感謝の言葉を口にする。VR関西の樋口監督は「ここぞというときにテッペンを見せれんかったから悔しいけど、みんな頑張ってくれました。ありがとうございました」と語っていた。

椎名さんには、優勝商品として、パワプロ2020の登場モーション、アクションボイス、ウグイス嬢音声の追加、という豪華商品が送られた。

MVPを送りたい舞元啓介としてのドラマ

全試合を終えて、エンディングで印象に残ったのは、実況の天開さんの言葉だ。

「本当に名勝負だらけで、決勝戦素晴らしかったです。実は(にじさんじ甲子園は)パワクズという企画が元で、VTuber甲子園もやらせていただいて、もうこれを越えるのは無理だろうと思いまして、今年はもうちょっとやれないなと思っているところで、この男、舞元啓介からにじさんじでやらせてくれという話をもらいました。まぁにじさんじならいいかなと預けましたところ、正解でしたね」

 
続けて、中心となって企画を進めた舞元さんも感謝を伝える。

「本当に楽しい夏になったのは、にじさんじメンバーのみなさんと協力いただいた方々のおかげです。企画立ち上げたのは3、4ヵ月前だったのですが、いろいろな方々が動いてくれて、営業の方も走ってくれたし、司に連絡をしたときに、正直、他の人の企画をこういう形で譲り受けるのはよくないとも思ったし、上手く活かせるかもわからなかった。今回の企画を成功させられたのはみなさんのおかげです」

さらに今後、「6つのチームができたわけですけど、正直まだ足りない」とエキシビジョンを行う可能性を示唆した。

 
今回の企画は、VTuber業界でおそらく過去最高となる19万の同接数を記録した。東京ドームを野球で使用する場合、4万6000人がキャパなので、最大で約4杯分という恐ろしい数の観戦者を集めたことになる。

この一大記録は、6人の監督のほか、100人を超えるにじさんじメンバーをドラフトした上で選手の名前として巻き込み、そのファンも連れてきて、監督などとの関係性を楽しむという遊び方が支えたはずだ。そこに表裏ですぐにひっくり返る野球の「魔物が住む」ドラマが重なるわけで、エンターテインメントとして楽しくならないわけがない。そんな数々のドラマを想像してファンが二次創作イラストを描き、「#にじさんじアルプススタンド」のハッシュタグをつけてTwitterに大量に投稿している。

ゲームとしては、高校野球部の監督になる「栄冠ナイン」モードで育てたチームをCPU同士で戦わせるだけなのに、ここまで盛り上がったという背景には、素直ににじさんじメンバーが積み上げてきた一人一人の歴史があるのだ。今までeスポーツ大会といえばプレイヤーが鍔迫り合いを見せるのが主流だったが、今回のにじさんじ甲子園は本人がプレーしなくても観客を十分楽しませられるというひとつの可能性を見せた。


そして伝えておかなければいけないのは、何よりこのドラマには、舞元啓介という男の生き様も重なっていることだ。「にじさんじSEEDs」の2期生として活動をスタートした2018年8月は、業界にほぼ男性ファンしかおらず、そもそも男性VTuber自体がそこまで求められていなかった。サッカーや野球など自分が好きなスポーツな話をしたいけど、逆境の中でどこまで受け入れられるのか──。

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そこで発揮したのが、コラボ力だ。当時としては難しかった女性VTuber、しかも「箱」をまたいでの「ホロライブ」大空スバルさんとの「舞スバ」で配信し、「おじおじ」として男性ファンにも受け入れられ、イラストレーターのしぐれういさんを加えた「大空家」にまで発展した。元SEEDs2期生のジョー・力一さんと始めた深夜ラジオ「舞元・力一」も今となっては大人気の名企画だ。

そのコラボ力の集大成が今回のにじさんじ甲子園で、いわばここ一番の大勝負で満塁ホームランを打ち込んで同接という結果を出したわけだ。「戦友」である元SEEDs2期生の仲間、飛鳥ひなさんのツイートに涙を浮かべたファンも多いはず。MVPは、舞元啓介さんに送られるべきではないだろうか。

業界の最高記録が女性VTuberではなく、男性VTuberが中心の企画で達成されたというのは新しい風を吹かせるかもしれない。

舞元さんは、最後に「にじさんじもっともっと盛り上げていきます。バーチャル界隈をもっともっと楽しくしていきますので、みなさまこれからもにじさんじ、VTuberをよろしくお願いいたします」と感謝を伝えて番組を終えていた。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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