
2025年7月25日から27日にかけて、にじさんじの超大型企画である「にじさんじ甲子園2025」が開催される。
にじさんじの舞元啓介と天開司の2人が主催を務める同企画も今年で6年目を迎え、これまで多くのタレントが同企画に出演してきており、その栄冠を獲得してきた。
そんな中で、今大会は出演者全員が3Dビジュアルで対戦を行なうという3D形式となっており、さらに10人の出演者全員が過去に「にじさんじ甲子園」に出場した経験があるという、ハイレベルな様相かつ華やかな本大会が予定されている。
筆者も多くの配信を観て楽しませてもらったが、特に注目したのはレオス・ヴィンセントの配信である。
彼のプロフィールやこれまでを振り返りつつ、今企画においてレオスが作り上げたチームと配信そのものについて、振り返ってみようと思う。

レオス・ヴィンセントと「パワプロ」について簡単に
にじさんじの中でも存在感を発揮しているレオス・ヴィンセントだが、今大会との関わりにも触れながら、彼のこれまでを軽く触れてみよう。
レオス・ヴィンセントは、2021年7月22日にデビューしたにじさんじのメンバーで、エンタメへの感度の高さ・理解の深さもあいまって配信上のみならず、さまざまな3D企画で存在感を発揮してきた。、誰の目にもわかるようなボケと大げさなリアクションなどで注目を大いにあつめつつ、先輩・後輩に関わらず交流を図っていく温かさを持った彼には、多くのファンが集まるようになった。
そんな彼にも得意ゲームがいくつかあり、その1つが「実況パワフルプロ野球」シリーズである。
基本的に1人プレイが多いこのゲームだが、レオスはデビュー前、自身でオリジナル球団を8球団作ってリーグ戦を開催し、2ヵ月ほどのシーズンを回してノートに記録をつけ、ドラフトやFAといったオリジナルのプロ野球運営をも行なっていたという。超本格派なパワプロプレイヤーであった。
彼がデビューした2021年夏の「にじさんじ甲子園」では、いち選手として参加。笹木咲率いる高校「ヴィラン連合」の選手として参加したが、とある配信において笹木(同席していた椎名)のプレイングに異を唱える長文を送り、2人から「こういうコメントがあったらイヤやけどな」と一蹴。後日、レオスと笹木は「栄冠ナイン」モードで2人3脚でゲームを楽しむこととなった。
ちなみにレオスがさくゆいの2人にこの長文を送ったのは、デビューしてわずか数週ほどのこと。ある意味では豪胆かつ大胆、ある意味では命知らず。さくゆいの2人にイジられることになるわけだが、こういった段階やコミュニケーションをへてレオスはイジられ役として、さらにはお笑い適正の高いタレントとして知られていくことになった。
実際この一件で彼を知ったというにじさんじのファンは多かったはずで、その後レオス&笹木の2人は「汚いレレササ」としてコンビを組み、にじさんじ内外のコラボ配信や公式企画へと参加するようになる。縁や運命の趣深さを勝手ながら感じてしまうところだ。
さて、そんな「パワプロ」好きなレオスだが、「にじさんじ甲子園」には2022年23年と2年連続で出演しており、特に「にじさんじ甲子園2023」では小野町春香&東堂コハクによる二遊間を中心に、走力と守備力に優れたチームをつくりあげて大会を盛り上げたが、他チームに競り負けての大会4位となっており、雪辱を期す3度目の出場となった。

注目されたドラフトピック 帰宅後に第一回配信を即スタート
6月15日に開催されたドラフト会議。笹木、椎名を初め、樋口楓、叶、葛葉、リゼ・ヘルエスタ、エクス・アルビオ、加賀美ハヤト、イブラヒムとともに出席したレオス。緊迫したスタートのタイミングに、先頭として登場して樋口がハカを踊りだして場の”ハードル”をあげると、袖で待っていた他の面々や天開&舞元すら困惑しながら笑ってしまう状況に。
レオスは歩こうとして思いっきり転けるというボケで対抗、さすがの切り返しをみせて場を盛り上げていた(参考:にじさんじ甲子園2025 6月16日から約1ヶ月の育成期間が開始にドラフト会議に約25万人の視聴者集まる)。
注目されるドラフト1位指名では、「にじさんじスーパーじゃんけん大会」や「にじさんじGTA」での繋がりを経て仲良くなったフレン・E・ルスタリオを指名。2位には、過去2大会通じて直接対決することとなったニュイ・ソシエールを直々に選手指名し、3位には宇在美………宇佐美リトではなくを選んだ(レオスが誤って佐を在と書いてしまった)。
つづいてウェーバー方式へと進んだドラフトでは、魁星、酒寄颯馬、七瀬すず菜とデビューしたばかりの面々を選び、最後には自身が主催した「にじさんじスーパーじゃんけん大会」の優勝者である空星きらめをチョイス。直近数年で自身と縁近い人物を選びつつ、デビューして間もないフレッシュな面々をチョイスは、他の監督陣との趣向の違いが現れていた。

またこの企画では「栄冠ナイン」と呼ばれるモードを使用するのだが、47都道府県のいずれを選び、そこで育成していくことになる。都道府県によっては対戦する高校のレベルや数、出現する選手やOBなども変わってくるため非常に重要になるわけだが、レオスは激戦地区と名高い愛知県をチョイス。
ここは初出場となった3年前の「にじ甲」で選んだ県だが、当時はうまく活かすことができないまま悔しい想いをさせられた場所だ。それでも今回はリベンジという意味で”あえて”選んだとのこと。この日のドラフト会議の楽屋で「愛知県を取ります」と宣言していたようだ。
そんなドラフト会議を終えてわずか数時間後、これまで2度に渡る「にじ甲」と同じくレオスは育成配信の第1回目を即スタートさせた。
「にじ甲」の第1回目配信は、もしかするともっとも緊張し、もっとも視聴者数を集める配信になる。なぜなら、ゲーム開始とともに新入生がやってくる、つまりその後3年間にわたって育成する選手が決まるからだ。
ここでいい選手が引けなければ、ゲームリセットしてやり直し(いわゆる”ガチャ”)することになる。昨年からの大きな違いとして、3回目以降は転生プロ・OB選手が出るまで何回でもリセット可能(出た時点で終了)となり、昨年までは3回目のやり直しで即終了だったことを考えれば、より強力な選手を引き当てられるようになったわけだ。
そんななかでレオスは、1度目のスタート(新入生ガチャ)から元OB選手を迎えるものの、他選手がいい能力でなかったため、2回目の新入生ガチャへ。リスタートした2回目でも元OB選手を引いてくるが「使うとしたらファーストだろうね……」と冷静に分析し、「これで転生投手だったらいってたなぁ~!」と本音を漏らすも、マネージャーキャラが男だったことを見ると「あ!!! いかない!!!」と即断し、リスタートへと移ったのだ(註:「栄冠ナイン」では毎年選手とともにマネージャーがやってくる。そのマネージャーにも能力差があり、男性マネージャーは能力があまり良くないと言われている)。
ここまで転生プロ・OB選手を引いても彼が渋るのには、自身がチョイスした都道府県が「愛知県」であることが理由になる。
先に書いたように、新入生として入ってくる選手には現役プロ・OB選手が入部してくるパターンがある。実はこの現役プロやOB選手が入部してくるのに「選手の出身地」「高校時代に在籍していた高校の本拠地」などが関係しており、愛知県に由来する現役選手やOB選手がかなり多いのだ。
レオスが選んだ愛知県で言えば、世界の安打製造機ことイチローを筆頭に、巨人・国鉄で活躍した最強左腕・金田正一、中日を支えてきたストッパー・岩瀬仁紀と浅尾拓也の2人、現在中日で活躍する高橋宏斗、阪神のレッドスター・赤星憲広、ヤクルトと日本ハムで活躍した稲葉篤紀、西武・ダイエー・巨人時代に活躍した左腕・工藤公康、現在メジャーリーグで活躍する千賀滉大と、転生選手・OB選手を見ても日本プロ野球のレジェンド選手が並ぶ。
同時に、高校野球のなかでも屈指の強豪ひしめく地区であるため選手数が多く、彼らを引けない可能性も当然高い。そんななかで二連続で転生選手を引くのもおかしな話だが、3度目となった選手ガチャでレオスはOB投手の杉浦忠を呼び寄せることに成功したのだ。
「パワプロ」シリーズをあまりプレイしたことない人やプロ野球を知らない人には聞き馴染みのない選手名だとおもうが、杉浦忠はまごうことなく昭和を代表する名ピッチャーの1人。そのステータスは下の写真を見ていただいた通りだ。
思わずレオス自身も「よっしゃああ!!!」と絶叫し、拍手して迎える。「クイックGだから走られ放題にはなる。ただ! 個性がある! アンダースローで球が速い!」と興奮混じりに選手を解説する姿に、盛り上がりすぎても我を忘れないようにと努めている一面が伝わってくる。
こうしてレオスは、意気揚々と育成へと進んでいくことになったのだ。

レオスの育成方針は”スモールベースボール”
「栄冠ナイン」は、詰まるところカード選びゲームといえるところがある。
監督となったプレイヤーが複数枚ある練習カードのうち好ましいカードを選んでスケジュールを進行させ、さまざまなイベントなどを通じて選手を育てていく。試合中にも流し打ち・バントといった打撃指示、内角攻め・打たせて取れといった投球指示をシチュエーションを迎えるたびに選択し、チームを勝利へ導いていくことが求められる。
他にもさまざまな選択肢があるが、あくまでカード選び(選択肢選び)が重要であることは変わらない。打撃をあげたいところで守備練習のカードがこない、右打ちさせたいところで右打ちのカードが弱い、逆に投手を育てたいタイミングで投手向けの練習カードが立て続けにきたりなど、CPUによるランダム選出に対してプレイヤーは最善の一手を打つことが求められるのだ。
こういった判断の部分は、プレイヤーの思惑や狙いが大いに関係してくる。レオスに限らず、同作・同モードをプレイしたことある人ならば「ああぁ、これは……」と考えてしまうシチュエーションに何度となく出会ったことだろう。

そのため、見ている視聴者側でも選択はバラバラになる。そういったリスナー各々の考えや知識ががコメントとして書かれることにより、かなり活気のあるコメント欄になる。「◯◯はしたほうがいい」「△△しなくていいの?」「練習コマンドで3-4とマスをすすめば■■でイベントが起こる」といったコメントが大量に書き込まれていくのだ。
こうして生まれる溢れんばかりのコメントは、同企画にとって”いつもの光景”といえる。そんななかで、リスナーをピシャリと諌めたり、あえてリスナーにアイディアを求めてコメントを促したり、監督陣によってリアクションは様々だ。
レオスの場合、自身のやりたい野球に基づいて一貫した育成をこなしつつ、一瞬の間をおいて急にトボけたりふざけてみたりと、クールさとユーモアを混ぜながら育成をこなしていった。
レオスが目指す野球とは、ずばり”スモールベースボール”だ。強いピッチャーをもってバッターを抑え込み、打撃の面では走力(足の速さ)を使ってバントや犠牲フライなどで得点を狙っていく。仮に打たれても足の速さにプラスして、鍛え抜いた守備力で守り抜く。
その反面、打撃面ではホームランなどの長打を狙おうとすることは一切なく、逆に相手ピッチャーを打ち崩せないシチュエーションになりがちだ。スモールベースボールを志向するチーム同士の場合、強力なピッチャー同士での投げ合いでバッターが打ち崩せず、いわゆるロースコアゲームになりやすいというのが想像しやすいと思う。

初年度から2年目までのレオスはまずは何よりも、ピッチャー・杉浦を継承したフレンの能力をあげていくこと、守備力や走力をあげていくこと、これらに注力していった。
1年目夏から地方大会で上位まで食い込み、秋大会や練習試合でも翌年以降に期待が持てそうな試合をみせるだけじゃなく、特殊能力をゲットできるイベントでも、優先したのは投手に関係したり、走力や守備力にまつわるものを狙い続け、チーム強化を進めていった。
重要となりそうな選択シーンではいちど間を置き、自身の考えや今後のことを語り、有用そうな内容やアイディアが書かれたコメントを見つけると、「いや今回はこのあとに◯×△があるから~~」と自身の考えを返したり、「あぁ!それいいね。それもアリだね。」と逆に取り入れたりと、コメント欄(ひいてはリスナー)の意見や声を取り込みつつ、育成を進めていったのだ。
そんな育成が花開くのは、育成2年目を迎えた夏大会。
彼は「にじさんじ甲子園」という企画史上初めてのことを成し遂げることになる。
この2年目の夏から快進撃をスタートさせていくことになるわけだが、この2年目を迎えたタイミングでやってきた新入生が、一つの転機となった。
新入生スカウトで見初めた捕手が「キャッチャーB」というピッチャーを強化できる特殊能力持ちであり、他選手も高いステータスと強い特殊能力持ちが揃ったことで、スタメンであるはずの3年生を押しのけるほどの新入生が揃い、戦力の底上げに成功したのだ。
書き忘れてしまっていたが、ドラフトしてきたにじさんじの面々を、育成選手として作成することが企画上義務付けられている。選手として作成していないにじさんじのメンバーがいれば、当然この2年目新入生のタイミングで作成すべきなのだが、まだまだいるなかで「謎ノ」を作りはじめたのだ。
強力な新入生が揃ったなかでレオスは新入生を「謎ノ美兎」として作成し、リスナーから笑いを生むことになった。流れとしては面白いのだが、主催である舞元からしっかりと”ご指摘”の連絡をもらったようで、4回目の配信冒頭でお詫びの挨拶からスタートすることになった。やはりこの男、何かしらでボケなければやっていられない所があるのだろう。
そういったなかであったが、2年目夏大会では明確に上位と目されるチームにスモールベースボールで対抗。バントと盗塁を絡ませつつ細かく点をを取り、ピッチャーのフレンと守備陣によって相手チームを少ない失点で抑え込んでいくというレオスの狙い通りの野球を遂行し、地方大会を突破したのだ。
さらに夏の甲子園では、自チームよりも強いチームが相手となって現れるが、焦ることなく手堅い試合運びで勝機を手繰り寄せ、先行を許しても逆転に持ち込み、後は守りきっていく粘り強い野球をつづけていった。
バントや盗塁を絡めた攻撃では、確実に1点を取っていく戦法だが、リードを生み出しづらく、いつ点が取られてもおかしくないストレスやプレッシャーを常に感じながら試合を続けなければいけない。
そういった状況でチャンスシーンを迎えると打席でのカード選択画面が訪れれば、すぐにでも得点が欲しくてリターンが高そうな選択を選びがちになるはず。つまり、緊張感が高まれば高まるほど、そこから解放されたくなり、博打やギャンブルに近しい選択を取ってしまいそうになるのだ。
試合状況や自身の精神状況にも追い詰められながら、しかも2万人から3万人という視聴者が見守れ、「◯◯じゃないか?」「△△のほうがいい」といったコメントを横目にしながらカード選択をしつづけていく。このプレッシャーは半端なものじゃないだろう。
そのなかで、「確実に1点を取っていく」ために、バントや盗塁をブレることなく続け、チャンスと見切って選択し続けていく胆力や冷静さは目を見張るものがある。それも、選択肢を選ぶ度に一呼吸おき、戦況をしっかり把握して、狙いを口にして選んでいくので、見ているリスナーやファンも違和感を強く覚えたり、納得したうえで見守ることができた。
だがそういった顔だけでなく、点を奪ったり失点を抑えたりすると「よおおおおおおおおおし!!! うっひょおおおお!!!!」と奇声をあげたり、駄々っ子のような声で「そんなんじゃだぁめぇーーー!!」と相手を煽り、勝利した後に流れる校歌を普段よりも高くフニャフニャした声で歌ったりなど、シリアスな表情を見せた直後にフザけた言動を差し込むという繰り返しが生まれていたのだ。
後日各チームをまとめる配信をしていた舞元や天開が「どういうテンション?」「どういう感情?」とツッコんでいたほどで、その落差の激しい二面性がレオスの育成配信で笑いどころとなっていた。ニュイ・ソシエールのマネをしながら校歌を歌ったこともあるが、御本人にしっかりと捕捉されていた。
2年目夏大会から3年目夏大会 公式戦全勝無敗の足跡
結果、ゲームスタートから2年目の夏大会で甲子園大会を優勝を果たし、連戦連勝を重ねたことで選手育成へとつながった。
そもそも強力なステータスであったフレンはさらに強化され、チャンスAという特殊能力をもっていた空星きらめや、威圧感という特殊能力をもっていた月ノ美兎らは、チームの中核候補としてその打棒をより強くしていくことになった。2年目の秋大会以降は、空星と月ノはチャンスの場面で得点をうみだすクラッチヒッターへと変貌し、長打が出づらかった打線においてヒットと打点を量産する中心バッターへと成長した。
また、勝利を積み重ねたことで貯めたポイントを使い、オリジナル変化球習得ボールをゲットし、フレンに与えることにした。これはプレイヤーがさまざまな変化球をベースにしつつ、変化量・速度感・球質にエフェクトも加えてオリジナルの変化球を制作・投げさせることができるというものだ。
事前にフレン本人にリスニングを聞いたところ、彼女が大好きな「黒子のバスケ」 の火神大我の必殺技「流星のダンク」(読み:メテオジャム)と、彼女が以前「にじさんじ甲子園」に監督して出場した際の高校名「帝国立ふれんず学園高校」をあわせた「ふれんず❤︎じゃむ」を制作、パワプロ内の投手・フレンへ習得させることとなった。
注目すべきは、このボールの軌道だ。
レオスいわく、「超スローボール(イーファス・ピッチ)をベースにして作った」といい、アンダースローから投げられたボールは山なりの軌道で浮いて球速落下していく。ただこのボール、元々の超スローボールとはまったく違い、ストレートと同じ程度の球速で投げ込まれてくるのだ。
「ふれんず❤︎じゃむ」を習得した頃のフレンは、アンダースローから155キロ以上のストレートを投げ込んでくるというトンデモないピッチャーだったのだが、山なり軌道を描く「ふれんず❤︎じゃむ」がストレートとほぼ変わらない球速で投げ込まれてくるわけだ。
そのインパクトは、見ているこちらからすれば「打てそうにない」感がぷんぷんする。 バスケボールをぐいっと持ち上げて投げ込むようにリングへ叩き込む「流星のダンク」に見えなくもない。

初見で見たリスナーからは驚きのコメントで溢れかえり、おなじく配信を見ていた主催の舞元からは「クソキモい魔球、開発されてて草」と連絡がきたほど。
アンダースローの投球フォームから160キロのストレートを連発するなかで、160キロ近い球速で上へグイっと上がったあとにギュンッ!と落ちてくる。しかもキラキラとしたエフェクトを帯びながらバッターへと襲いかかっていく。
現実世界では絶対に起こり得ない、物理法則を無視したかのようなボールを作り、実際に投げることが出来る。ゲームという創作性を十二分に活かし、コミカルでありつつ打てそうにない魔球というバランス感覚で生まれたボールといえそうだ。
そんな魔球「ふれんず?じゃむ」を習得したフレンを中心に、レオス率いる青春まめねこ学園はより盤石の実力を誇示していくことになる。粘り強く得点を重ね、相手を抑え込んでいった青春まめねこ学園は、2年目の秋大会・春大会でも優勝を果たしたあと、最終年を迎える3年目夏大会でも甲子園を優勝。
なんと2年目夏の地方大会から3年目夏大会の甲子園決勝まで、チームは公式戦全勝無敗という記録を残したのだ。


この間に、育成方針を大きく転換して育成するようなことはなく、一貫したチーム作りを続けていった。守備力と走力を重視した育成は怠らず、ステータスを育成するときの目安として走力もしくは守備力に重きを置き、「打撃に手を出すのは守備と走力がある程度の目安を超えてから」という言葉を何度も口にしていた。
リスナーからいくつものコメントが届いたが、答えやすいコメントから難しいコメントまで拾い、リスナーと対話しながら進行していったのが記憶に残っている。
もっとも記憶に残る一戦をあげるならば、2年目春の甲子園大会決勝だろう。
この試合に勝てば「2年生時に出場した公式戦全勝」というメモリアルな一戦だったわけだが、注目選手にピッチャーとして活躍するフレンが登場した。「にじ甲の記録を建てたいならマリアなんだけど……」と悩むレオス、ここで注目選手にフレンを選ぶと、ピッチャーとして毎回守備機会が訪れ、全投球をレオスが指示し、無事に抑えきれば多くの経験点がもらえるのだ。
「レオスのやりたいようにやろう」「レオスの好きなように」とレオスの判断を何よりも尊重して楽しもうというコメント、自身のアイディアを書いたコメントが次々に送られるなかで、彼は大声でこう切り出したのだ。
「ヤバイ、ヤバイよみんな。否定派の言葉が強すぎて、私の天邪鬼心がぐんぐん上昇中だよ!」
「否定派の言葉が強すぎて! 逆張り心が! 僕の反骨心が増幅されてる!!」
かくしてレオスは、あえてフレンを注目選手にし、「目にもの見せてやる!!」と気合を入れて決勝戦へと望んだのだ。

すべての投球に指示を送るのみならず、打線にもキビキビと指示を送ったレオス。先制されてしまうが、その後逆転し、差を広げたまま2-10で試合を締めてみせ、春の甲子園を優勝を果たしたのだ。ラストバッターを三振させ、勝利を上げた瞬間に
「見たかぁー! 二度とこの俺に指図するんじゃねぇぞぉー!!」
雄叫びをあげたのだった。いわゆる指示コメント・指示厨を結果で黙らせ、その後の夏甲子園でも危なげなく勝利を重ねていった。自身の考えをハッキリと明示しつつ、そのなかでリスナーのコメントの取捨選択をつづけ、これ以上ない結果でリスナーを喜ばせ、自身のプレイングを誇示する。
レオス・ヴィンセントによる「にじさんじ甲子園2025」育成配信を象徴するワンシーンだったと筆者は思う。
リスナーとの意見交換や勇気づけられて残せた大記録 そして本大会へ
最後の育成配信、最終盤で彼はこのようにリスナーへ感謝を伝えた。
「皆さんのおかげでここまで育成できた、ありがとう。いっぱい喋って采配をするタイプだったわたしだったからこそ、いっぱい喋って、意見提言して、自分の意見を伝えて、いろいろと采配を固められた部分があった。本当に良かった」
始まりから終わりまでテンション高めでしゃべり続けるレオスではあるが、采配や育成方針に関しては、確固たる狙いはありながらもそれを通す自信や確信がどうしても持てなかった瞬間があった。
そんなときに、あえて自身の考えを声に出してリスナーへと伝え、さまざまなリアクションを見ていくうちに心のなかで確信を持てるようになる。そういうサイクルを繰り返したことで、同企画でも類を見ない達成を果たしたのだ。
本戦は昨年までと違い、リーグ戦ではなくトーナメント戦、しかもダブルエリミネーション方式で進む。しかも対戦チームがどのように組み上がるかは、前日特番配信のなかで決定するため、どのチームと戦うかはまったくわからない。
どの対戦であっても楽しく見られると思うが、筆者が見てみたい対戦としては、加賀美ハヤト率いる決闘学院をあげたい。決闘学院は打撃型のチームとして育成されており、守備型のチームであるレオスの青春まめねこ学園とは対極的だ。
そのうえ、フレンと同格以上である強力なピッチャーとして社築を育成しており、フレンvs社という強力なピッチャーが投げ合い、打ち崩すか、守りきりかというジリジリとした戦いが目に見えてくる。
レギュレーションを変更によってこれまでよりも良い選手が制作しやすくなったことで、各監督ともより高校(チーム)が作成され、過去大会とは比べ物にならないくらいハイレベルな戦いであるとなることが予想される。予想のつかないドラマティックな展開が訪れそうだ。
●関連事項
・にじさんじ 公式X
・にじさんじ 公式YouTube


