2人のエルフがKアリーナの空を舞う!にじさんじ WORLD TOUR 2025、横浜公演ライブレポート

LINEで送る
Pocket

人気バーチャルライバーグループ「にじさんじ」7周年記念ライブツアー「にじさんじ WORLD TOUR 2025 Singin’ in the Rainbow!」横浜公演が、7月21日(祝)に、Kアリーナ横浜で開催された。仙台名古屋上海に続くツアー第4公演目には、えるさん叶さんドーラさん花畑チャイカさん社築さん本間ひまわりさん葛葉さんが出演。7名全21曲を披露した約2時間45分のライブをレポートする。

記事中の画像は、現地で撮影されたオフィシャル写真と配信(ニコニコ生放送タイムシフトは、8月6日(水)まで公開中)のスクリーンショットとなっている。


3人のライバーが共通衣装を初披露

仙台公演は2710席で、名古屋公演は2480席。そして、横浜公演は2万33席(すべて会場の公式収容人数)と、会場が一気に大きくなり、前日の「ROF-MAO 2nd LIVE」と同じくにじさんじ史上最大会場でのライブとなった本公演。それでも入場券は完売で、左右に長くて広いアリーナ席と3層のスタンドを持つ世界最大級の音楽特化型アリーナは、にじさんじファンでぎっしりと埋まっている。

リアル会場のステージ上には、バーチャルライバーにとってのステージとなる大きく横長なメインモニターが設置。モニターの上にはライブロゴが飾られ、その上と左右にサブモニターが設置されているのが分かる。開演時間直前、ステージ奥の方向からマイクを通さない気合い入れの声が聞こえてきて、客席が期待に満ちた声でざわめいた。

出演者7人の中で最も後に活動を始めた「後輩」が、2018年7月デビューのひまわりさんという経験豊富な顔ぶれだが、意外にもまだ、にじさんじ共通衣装を持っていなかったメンバーが3人。ドーラさん、チャイカさん、ひまわりさんの共通衣装の初披露は、本公演の見どころの一つだった。

仙台公演では、1曲目の途中で一人ずつ共通衣装に変身。名古屋公演では、1曲目の途中で全員揃って変身と、異なるパターンで新たな共通衣装がお披露目されたため、筆者と同じく「どっちのパターンだ?」と思っていたファンも多かったはず。しかし、通常衣装で登場した7人は、浮き輪、ビーチボール、タオルなど、にじさんじの夏曲「Summer and Peace!」に合わせた小道具は持っていたが、衣装はそのままでハイテンションに歌い切った。

最初のMCから、7人が順番に客席とコーレス。ステージ上から「今日い~ぱい可愛くおめかししてきた女の子―!」(ひまわりさん)、「いっぱい、私のためにおめかししてきた男の子―!」(チャイカさん)などと順番に呼びかけていく中、「マジで意味分かんないことやっていいですか?」と前置きした叶さんは、「『海開きー』って言ったら、『パッカーン!』って言ってもらっていいですか?」と本当に謎のリクエスト。2万人が「パッカーン」と叫ぶ光景は非常にユーモラス。冒頭から7人のテンションは高く、観客と同様にこのライブが楽しみで待ちきれなかったことが伝わってくる。

最初のMCから自由に盛り上がり過ぎてスタッフから巻きの指示が入ったのか、顔ぶれ的に間違いなく本日の仕切り役であるドーラさんが、周りのメンバーを舞台袖に追い立て、次の曲へと進行する。ステージに一人で残り、この日、最初のソロを担当したのは、どんな時も明るい笑顔と純粋かつ真っ直ぐな言動で周囲を温かく照らす「にじさんじの太陽」、ひまわりさん

「みんなの元気と、たくさんの可愛いをひまに、い~ぱっい届けてください」

客席にそう呼びかけたひまわりさんは、大ヒットゲーム「学園アイドルマスター」で、黄色がイメージカラーのアイドル藤田ことねが歌う「世界一可愛い私」を歌い始める。そして、サビの直前、光に包まれると、いつもの制服から共通衣装へと早着替え。歓声のボリュームはさらに上昇していった。ひまわり畑のように真っ黄色に染まったKアリーナで、世界一可愛いパフォーマンスを披露するひまわりさん。MCからの移行時に見せていた緊張感は、いっさい感じさせない堂々としたステージだった。

暗転を挟み、流れるメロディと同様、ハイテンションに登場したのは、エルフコンビのえるさんチャイカさん。いきなり強い既視感に襲われたが、少しして、その正体に気づく。「にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow!」難波公演で、アニメ「日常」の後期オープニング「ヒャダインのじょーじょーゆーじょー」を歌った二人が、今度は後期オープニングの「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C」を歌っているのだ。この二人に対する日頃のイメージも後押しするのか、登場した瞬間から楽しさが止まらない。

そして、2番終わりの間奏、「せっかく、こんなに広いしさ、えるたちもエルフらしく飛んじゃおうよ」と急に言い出したえるさんは、戸惑うチャイカさんの目の前で共通衣装に早着替え。デビュー当時には常に生えていた背中の羽も復活しており、あっと言う間に空中へと浮き上がっていった。客席からの驚きの声が大音量で響く中、「俺には飛べないよ。だって羽が無いんだから」と嘆き、膝を着いたままソロパートを静かに歌うチャイカさん。夜空となった空中では、えるさんが左右に飛びながら、客席に手を振っている。

しかし、スッと立ったチャイカさんは、くるりとターンして共通衣装に着替えると、背中から翼を生やし、えるさんが飛ぶ上空へ一気に垂直上昇。ド派手な共通衣装のお披露目だ。空中を左右に移動し、時に踊りながら歌いきった二人。大はしゃぎして飛び回る中、二人が接触すると、チャイカさんだけが墜落。仰向けになって倒れたところで、ステージが暗転し、笑い声と共に、エルフコンビのステージが終わった。


ロングヘアー姿の披露で観客が絶叫!

MCを挟んだ4曲目は、煮ル果実のボカロ曲「トラフィック・ジャム」。不穏でお洒落なイントロが流れる中、紗幕に映る4つのシルエット。「プシュッ」という音とともに紗幕が落ちると、共通衣装姿のえるさんドーラさんチャイカさん葛葉さんが立っていた。ドーラさんの共通衣装は、曲の頭からいきなりお披露目だ。共通衣装初お披露目時の定番演出である早着替えはしないのだなと思ったが、後に、あえての演出だったことに気がついた。

ますます安定感を増した社さんのボーカルと、「あ~あ~あ~」というひまわりさんの可愛すぎるコーラスのハモリが心地良い5曲目「ちがう!!!」の後は、ソロが2連発。まずは、6曲目で社さんじんのボカロ曲「BLUE BACK」をカバー。澄んだ高音から急転してのがなりや、音圧も増した低音など幅広い表現力を見せる。ライブなどで、社さんの歌声を聴くと、毎回、「前に聴いた時よりもレベルアップしている」ことに驚かされる。「もう同じ景色は2度と見れねえかも知れねえから。もっと! もっと! もっと青く染めてくれ!」という叫びでも会場をさらに熱くした。

MCを挟んだ7曲目は、ドーラさんのオリジナル曲「レッド・ルーラー」。観客と軽くコールの練習をした後、人気クリエイターsasakure.UKが手掛けた曲を歌い始めるドーラさん。ステージ前面には火柱が上がり、背後には噴火する火山という熱すぎるステージで力の限り熱唱していく。最後には、光に包まれながら、ドレイクらしい初期衣装の姿に変身。熱いステージをデビュー当時の姿で締めくくった。きっと、早着替えはここに残していたのだろう。

8曲目は、チャイカさん葛葉さんという普段の配信などでは、あまり見ないペアがUVERworld「ナノ・セカンド」をカバー。ステージ前方に置かれた踏み台も使いながら、相性抜群でロックなステージを披露した。続く9曲目では、雰囲気が一変。ウォルピスカーターのボカロ曲「泥中に咲く」のメロディが流れ出すと、暗転していたステージが明るくなり、椅子に座っているえるさん叶さんドーラさん社さんが見えてくる。時折、会場に大音量の黄色い歓声が響きだしたため、何事かと思っていると、この日、共通衣装に着替えてからは初登場だった叶さんの髪型が以前とは変わり、三つ編みのロングヘアーになっていたのだ。

雨降る中、傘を持って立ち上がり、しっとりと歌い続ける4人。その後も、カメラが叶さんをアップで捉える度に歓声が上がっていた。また、この曲では、ステージの左右に、LEDで光る傘を持ったダンサーが登場。以降の曲でも、何度も登場し、会場の広さをカバーするステージ演出の一環として非常に効果的だった。

7人全員揃ってのMCでは、叶さんの髪の長さなどで盛り上がる。多くのファンを魅了した三つ編みは、ドーラさんの尻尾の先と同じくらいまで伸びる超ロングヘアーだった。さらに、葛葉さんの「髪、切った?」という社さんへの問いかけから、実は社さんも新髪型だったことも判明。「髪、切った?」の流れから、ドーラさんが「みんな、この後も楽しんでくれるかな?」と問いかけると、平均年齢が若そうな客席からは「いえーい!」という大きな返事が返ってくる。記者席に座っていたため、声には出せなかったが、筆者は心の中で「いいともー!」と叫んでいたよ、ドーラさん。

10曲目は、叶さんドーラさんサカナクション「怪獣」をカバー。向き合って立つ二人の歌声に、最初のフレーズからグッと引き込まれていった。天体を映した背景も美しい。筆者は、ただただ二人の歌唱力に感動していたが、後のMCでのトークによると、叶さんが普段の配信で何度もふざけながら口ずさんでいた曲だったため、ファンにとっては「本気で歌うんだ!?」という驚きも含んだ選曲だったらしい。いつから、どこまで意識的だったのかは分からないが、ちょっとした仕掛けでファンの楽しさをバフするのは、クレバーな叶さんらしい気もする。

11曲目は、バットを片手に登場した葛葉さんが、なとり「絶対零度」をカバー。チャイカさんとの「ナノ・セカンド」に続き、ロックな曲が本当によく似合う。熱い魂は感じながらも、どこか力の抜けたラフさも感じるステージング。当然、本気のはずだが、余裕も感じる立ち振る舞いが格好良さに繋がっているのだろうか。途中からはバットを捨てて、「KUZUHA」印のメガホンでも熱唱。火柱の上がる熱いステージを、自らのパフォーマンスでもさらに熱くした。


久々の 「ド葛本社」 のステージに、ほんひまが涙

12曲目、えるさん叶さんチャイカさん社さんひまわりさん「世界を照らすテトラッド」の後は、またソロステージが連発。まずは、叶さん内緒のピアスのボカロ曲「プロポーズ」をカバーした。叶さんが登場した瞬間は、高く大きな歓声も聞こえたが、荘厳なメロディに乗せて熱く重いラブソングを歌い上げていくと、誰もが聴き入っているような空気へと変わっていった。最後、絶望するように跪く姿も印象的だ。

暗転後、会場のざわめきが完全に静まりきる前、ステージに明かりが付くと、ステージの中央少し下手寄りに現れたDJテーブルの前に通常衣装姿のチャイカさんが立っている。さらに、下手から共通衣装姿のチャイカさんも登場。まさかのダブルチャイカによるソロステージが始まった。Creepy Nuts「かつて天才だった俺たちへ」で、リズミカルに巧みなラップを披露する共通衣装チャイカさん。歌声は美声かつパワフルで体格は大きく、動きの一つ一つもダイナミックと、大きな会場にピッタリのエンターテイナーだ。ラストは、上部と左右のサブモニターに巨大なチャイカさんの頭部と掌が映り、巨大チャイカさんが会場を見下ろす状態になった後、10人の共通衣装チャイカさんが登場し、バラバラに踊り始める。高熱にうなされた時に観る夢のような光景のステージとなった。

続いては、大人気疑似家族ユニット「ド葛本社」ドーラさん社さんひまわりさん葛葉さんのステージ。筆者が横浜公演の出演者リストを見た時、最初に思ったことは「ド葛本社、揃ったな」。おそらく、同じ感想を持った人も多いだろう。ステージに明かりが付いた時の歓声は、この日、最大級のボリューム。まさに、満を持しての登場だ。

4人が歌った15曲目は、Orangestarのボカロ曲「アスノヨゾラ哨戒班」。ド葛本社が生まれた2019年に4人で歌ってみた動画を投稿した思い出の曲で、ノスタルジックだが温かいメロディは、このステージにもぴったりの選曲だ。ステージの左右では、ダンサーがミニサイズの光る傘を操り、まるで銀河を走る鉄道のような光景を作り出している。

歌い終えた後、ドーラさんと社さんが客席に「待たせたなー」「お待たせー」と声をかけ、葛葉さんが急に「ド葛本社!」と叫んで盛り上げる中、感極まって泣き出してしまうひまわりさん。「だって、みんなと一緒に並びたかったんだもん。みんな好きだから」という言葉に、貰い泣きしそうになる。

他の3人も登場し7人全員でのMC後、最後のソロステージを披露したのは、元・1期生のえるさん。ものまねと雑談が上手すぎる面白エルフというイメージのせいで時々、忘れそうにもなってしまうが、実は、歌唱力抜群の歌ウマ系エルフ。にじさんじに限らずVTuber界全体で見ても、高い実力を持った歌い手だ。ナナホシ管弦楽団のボカロ曲「抜錨」のカバーで、その細い体からは想像できない深みと強さを持った歌声を響かせていく。サビのロングトーンもとにかく伸びやかで美しい。ダンスも切れ切れだ。

17曲目は、元にじさんじゲーマーズの3人、叶さんひまわりさん葛葉さん「青と夏」。曲に合わせて勢いも色も変化する噴水の前で、Mrs. GREEN APPLEによる青春感あふれる大ヒット曲をカバーした。3人が右手を突き上げて並ぶラスト、嬉しそうに客席に手を振っていたひまわりさんが立ち位置への移動を忘れてしまい、2人がツッコむ様子も微笑ましい。

全員でのMCを終えた後、ライブ本編ラストの18曲目は、「にじさんじ」7周年記念プロジェクト楽曲「Arc goes oN」。歌詞割りが絶妙で、ソロで聴かせるパートと、声を重ねてハモリやユニゾンで聴かせるパートのバランスが素晴らしい。名残惜しそうに7人が退場すると、即座に観客たちのアンコールを求める声が始まった。


全員での「Virtual to LIVE」でフィナーレ!

アンコールのトップバッターは、女性陣の3人。えるさんドーラさんひまわりさんが、夏代孝明のボカロ曲「キラー」をカバー。ひまわりさんのソロ以来となる可愛さ全振りのステージだった。

続いて、叶さんチャイカさん社さん葛葉さんが登場。大歓声に迎えられると、アンコールへの感謝と共に客席をさらに煽り、Da-Ice「スターマイン」を歌う。女性陣は可愛さに全振りだったが、男性陣は格好良さの中に時折、男のセクシーさも見せていく。

観客と一緒に女性陣を呼び込んだ後は、7人で最後のMC。えるさんがライブグッズなどの告知を読んでいる間に、「買ってくれたの? ありがと」と、ファンサの投げキッスをして周りに突っ込まれるチャイカさん。「こっちはライブ、4年ぶりなんだ! 全然、呼ばれないから!」と開き直り気味に主張すると、全員が「じゃあ、仕方ないか」という空気になった。

にじさんじライブ恒例のARカメラによる記念撮影の後は、一人ずつ感想を語っていく。公演への思いやファンへの感謝のこもったメッセージが語られていく中、客席から特に大きなリアクションを引き出したのは、叶さん。

「今日、僕、『プロポーズ』っていう曲を歌わせてもらったんですけど、まだ、みんなからの返事を頂いてない……」

ここまで語ると、言葉の続きが聴き取れないほど大きな黄色い歓声が響く。横に並ぶライバーたちも謎にテンション高く騒いでいるのが面白い。叶さんの「僕のこと愛してますか?」という問いかけに、いったい何人のファンが愛を叫んだのだろうか?

最後の21曲目は、もちろん「Virtual to LIVE」。まずは、えるさんとチャイカさん、ドーラさんと葛葉さん、叶さんと社さんとひまわりさんの3組に分かれて、歌って行くが、組み合わせは次々に変更。様々なペアやトリオでのハーモニーを聴ける複雑な歌詞割りで、最後の最後までファンを楽しませていく。「にじさんじの国歌」で20000人収容の会場はさらに一体となりライブは終了。7人が去った後のステージには、メッセージと8月の神戸公演のキービジュアルが映し出されていた。

横浜公演の出演者は、ド葛本社、ChroNoiR(叶さん&葛葉さん)という超人気ユニットを含むメンバーだったため、どのような構成になるのか注目していたのだが、終わってみれば、ド葛本社が1曲歌っただけで、ChroNoiRでのパフォーマンスはなし。既存のユニットより、この公演の出演者全員による今回限りの組み合わせを大事にしたセットリストとなっていた。その上で、関係性の近さや深さを感じる場面も多く、より幅広いにじさんじファンが楽しめる公演になっていたと言えるだろう。

会場規模が大幅にスケールアップしたことで、豪快なフライングやダンサーの起用など、これまでの公演には無かった演出も楽しめた「にじさんじ WORLD TOUR 2025 Singin’ in the Rainbow! 横浜公演」。次の神戸公演は、仙台、名古屋と同規模の会場での開催となるが、当然、神戸公演だけのメンバーが、神戸公演ならではの魅力に満ちたライブを観せてくれるはず。今からすでに楽しみだ。

(C)ANYCOLOR, Inc.

(TEXT by Daisuke Marumoto

●関連リンク
「にじさんじ WORLD TOUR 2025 Singin’ in the Rainbow!」公式サイト
横浜公演配信ページ(ニコニコ生放送)
にじさんじ(X)
にじさんじ(YouTube)