身体を拡張するアバターや時間軸があると、メタバースはもっと面白くなる バーチャルキャスト1万字インタビュー【PR】

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FacebookがMetaに社名変更するなど、ここ数ヵ月でにわかに盛り上がってきているメタバース界隈。オンライン上でのコミュニケーションというと、SNSやMMORPGなど既存の手段もあるが、XRの技術を活用することで、アバターを自分の体として直感的に動かして、身振り手振りを交えて、目の前に人の存在を感じながら対話できるのが新しい。

そんなメタバースはすでに夢物語ではなく、VR業界では数年前から「ソーシャルVR」のジャンルとして同種のサービスがいくつも登場しており、ユーザーが根付いて独自の文化が芽吹いている。バーチャルキャストもその中のひとつ。メタバースサービスの提供だけでなく、人型3Dアバターの規格「VRM」の開発・普及など、業界全体を活性化させる活動にも尽力してきた。

そんな「メタバース元年」とも呼べる今、バーチャルキャストが積み上げてきた歴史について、CVO(チーフバーチャルオフィサー)のみゅみゅ氏、CTO・MIRO氏、メタバース推進部 空間コミュニケーション企画セクション セクションマネージャーのせこいあ氏に語っていただいた(上記写真左より。以下、敬称略)。


*バーチャルキャストでは、マネージャー候補、エンジニア、プランナー/企画/広報、バックオフィス、アルバイトで人材を募集中。リクルートページから応募可能だ。


創業時からメタバースに取り組んできた

──最近、「メタバース」という言葉を一般のニュースなどでも見聞きするようになっています。以前からこの分野に注力しているバーチャルキャストとしては、この状況をどう捉えていますか?

MIRO いいと思います。何がいいってMeta社が「インターオペラビリティー」とか言い出したのがポイントで、これは向かいたい未来への一歩前進だと思うんですよね。我々としては、メタバースには以前から取り組んでますよという話なんですが、Meta社が言い出したことによって今まで無関係だった人たちも巻き込んで盛り上がっている。その流れにもきちんと乗っかりたいと考えています。

みゅみゅ もともとは、「ソーシャルVR」とか「VR SNS」みたいに呼ばれてたジャンルですけど、今の勢いで「メタバース」という言葉に置き換えられそうな感じはありますね。

せこいあ 我々も社内では普通に「メタバース」という単語を使っていて、2018年頃のSlackのログでも確認できます。ただ、公の場で使ってこなかったせいで、「メタバース関連企業」みたいな言葉で検索して「バーチャルキャスト」の社名が引っかからないという現状があって……。11月頭に社内の組織改編をやったんですが、バーチャルキャストを開発する部署は「メタバース推進部」という部署名に変えました(笑)。


──つい最近の組織変更なんですね。

せこいあ 部署名が変わってもやっていることは同じなんですけどね。我々も今の時代の流れに乗っかるというか、社会に向けて「メタバースの会社です」って言わないといけないなと。

MIRO バーチャルキャストの大きな流れとしては、最初は生配信ツールから入って、その後コミュニケーションを軸としたソーシャルVR/VRSNSに徐々に軸足を移していったわけです。ただ、配信の時代からVRMというオープンな3Dアバターの形式を作って、「ここ(バーチャルキャスト)は閉じた世界ではなくて色んな世界とつながっていくんだ」みたいなことをずっと言ってきました。当初からメタバースを意識して設計していたわけです。

インターオペラビリティーっていうのはそういうことで、アバターだけじゃなくて相互にリソースを接続して、互いに流通させるという考え。全部リソースがつながっていくっていう概念は、3Dデータ共有サービスの「THE SEED ONLINE」とか、3Dアイテムのデータ形式のVCIにしても全部、通底しているんですよね。

みゅみゅ いろんな会社がメタバースのプラットフォームを立ち上げるだろう、そのとき、メタバース同士をつなぐ仕組みが必要になるだろうと。そういう一歩先を見据えて、バーチャルキャストはずっと取り組んできています。

せこいあ 見ているもの自体は昔からずっと変わっていなくて、どこから作っていくかという話と、時代によって見え方が変わっているだけです。

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リアルの拡張としてのアバターはつまらない?

──今日聞きたかったテーマの1つはアバターの在り方についてです。大別すると「リアルの身体の延長」と「自分とはまったく切り離された別の人生」という2種類あると思っていて、それぞれでユーザーの意識が違う気がします。日本のアバター文化は後者が主流で、バーチャルキャストさんもそういう文化を育てる中核を担っている思うのですが、そのあたりどうお考えですか?

みゅみゅ おっしゃる通りですね。だって、リアルの延長線上のバーチャルってつまんないじゃないですか……って言っちゃった(笑)。でも間違いなく根底にある考えはそれです。リアルのスキルがそのまま仮想空間に反映されても面白くない。リアルで音痴な人がバーチャルでも音痴とか、リアルで人づきあいが苦手な人はバーチャルでもぼっちとか、Meta社が目指しているのはそっちかもしれないですけど、我々はそんな世界観はあんまり目指したくない。

MIRO 今の話をもうちょっとマイルドに言い換えると、今のメタバースでは自分の動きをアバターの動きに変換して、VRの世界でコミュニケーションをするっていう、要はフィジカルな身体とアバターの動きが1対1の関係なんですけど、これって初期の姿でしかなくて、実はアバターってもっと可能性があるんです。


──と言うと?

MIRO アバターって仮想空間内での自分の身体なんですけど、これって自分の動きをコピーするだけじゃなくて、自分の身体を編集可能になるんですね。複製とか拡張とかいろんな加工ができる。編集というのは例えば歌がうまくなるとか、饒舌になるとか。別に変身願望とかじゃなくて、自分の身体をもっと便利にするとか、表現したいことをうまく表現するためのツールとしてのアバターっていう使い方が絶対あるはず。

その中のいち要素として容姿があるわけです。よりかっこよくなるとか、美少女化するとかも含めて、色々な可能性がある。一方で、Meta社が示している姿っていうのは今のところ自分のコピーでしかない。そうじゃなくて、メタバースにはまだまだいろんな可能性があると。身体をデジタルの上に載せるにあたって、さまざまカスタマイズが可能で、自分の可能性を拡張できる。そういうのがメタバースの真の価値だと思うんですよね。


──なるほど! 選択肢として、リアルの身体とは別の利便性をアバターで提示するみたいなことでしょうか。スマホもPCも同じことができるけど、仕事をするなら処理も速いし画面も大きいPCがよくて、ゴロ寝でコンテンツを楽しむとかであればスマホを使うみたいな。身体も同じで、アバターのほうが都合が良いことがあればそっちを使うみたいな?

MIRO そうですね。アバターは身体を便利にするための手段なんですよ。そこがまだ理解されにくいというか。アバターって色々とできないことが多いし不便だから使わないよってみんな言うんですけど、実はその先に便利があるんです。ただ、まだその便利をあまり作れていないだけなんですよ。だから、「遠距離でもコミュニケーションできる」とかっていうシンプルな利点しか提示されていなくて。でもこれってアバターが実現する便利のごく一部なんですよ。まだまだ発掘する価値があるというか、みんな色々と想定していることはあるはずなんだけど、まだそこまで実装できていない。


──今はそういうのに向けて、徐々に色々な機能を実装していってる状況ですか?

MIRO その用途とか便利とかをどこか1社ですべて作り切るのは不可能なので、そのために必要なのがインターオペラビリティー。アバターなら、用途別にいちいち作っていたら大変だから、共通化しようというのがVRMなんです。見た目がアニメチックかフォトリアルかっていうのは本質ではなくて、何をアバターで実現するかが重要。


──面白い。VRMは、ゲームでもVRMアバターのデータを読み込ませてキャラクターとして使えるようになったりとか、活用シーンが広がってきていますね。


人の活動の「痕跡」が残るメタバース

せこいあ 先ほどのアバターで身体の拡張ができます、ここがデジタルの便利な部分ですという話の続きで、体験そのものもデジタルだからこそ便利になるケースも出てくると思います。例えば今、リアル世界でスマートスピーカーなどを利用して声で音楽をかけたり家電を操作しているように、デジタル上でもできることがどんどん増えている。バーチャルキャストでは、誰かが自分の部屋に来た場合、いつ誰が来て、何をしていったかというのを記録して後で確認できたりします。


──人の動きをログとして残すようなことですか?

せこいあ 単純にログを残すだけじゃなくて、ログから他の人をたどれるっていうところですね。例えば誰かが部屋にお土産を置いてきましたっていうときに、置いていった人をデータ上から確認して、この人が置いていったのねって確認するだけじゃなくて、その人にフレンドの申請やメッセージを送れる。そうしたデジタル上の体験だからこそ、拡張できるというシーンがたくさんあると思っています。

例えば「MIKULAND」というイベントでは、みんながワールド上で撮った写真を飾るメモリアルルームを作りました。みんなが撮った写真をアイテムにして、運営が用意した場所に各自で飾ってもらうのですが、そこで後から来た人が「この写真誰が撮ったんだろう?」って気になったら、データを見てその人とコンタクトしてつながれるんです。

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──すごい。現実だと、作品に感動して「これを作ったのは誰なんだ」ってなったときに、モノ自体からクリエイターを検索することは不可能ですが、デジタルなら簡単にたどれる。

みゅみゅ 今世の中で言われているメタバースって、バーチャル空間に集まって、コミュニケーションとってワイワイガヤガヤして終わり、みたいな揮発的な世界観ですけど、我々が目指しているのはそこにいた痕跡、さっきまでそこにその人が居たんだと感じられるような世界観です。それこそ本物のメタバースなのかなと思っています。


身体性を持ったデジタルのコミュニケーション

──今のお話で思ったのは、ここ20年ほどでインターネットが登場して、ブログとかSNSとかが普及して、オンライン上に痕跡が残って、そこから人がつながっていくっていう習慣が定着してきたわけですよね。そこに今、身体性を持ったメタバースというものが登場したことで、リアルとバーチャルが交錯する世界みたいなものが出来つつあるのかなと思いました。

せこいあ そうですね。これまでのネット上の体験っていうのが、どんどん身体性を持って、仮想空間の中で行われていくことになる。例えば誰が来たかっていう話だと、ウェブサイトのアクセスカウンターとか、SNSの「あしあと」みたいな機能が、ただの文字列じゃなくて、これからは空間上のオブジェクトとしてどんどん表現されていくんです。


──なるほど。そういう意味で言うと、これから先、まだまだ実現していきたいサービスがバーチャルキャストにはあるということでしょうか。

MIRO そうですね。他社と比較してどうこうとかではなくて、バーチャルキャストとしてやりたいのが、さっき話が出た人の痕跡が残る機能。なので今、バーチャルキャストではルームにモノを置いたらそこに残るし、置いたのは誰かが参照して、そこからフレンドにもなれる。それを10月のアップデートで実現しました。スクリプトの動きなども含めて、そこで何があったのかという情報が消えないんですね。インスタンスを作って解散したらおしまい、じゃないところで新しいコミュニケーションが生まれるのではないかという思いがあって、結構力を入れています。


──ニコニコ動画のコメントにおける非同期コミュニケーションと同じものを感じます。

MIRO 録画・再生とは違って、バーチャルキャストの場合、あくまで残るのはそこで何があったのかっていう痕跡ですね。その場のものや状況は常に変化するんだけれども、そこで何が起きたのかという情報がずっと残るっていう感じです。

みゅみゅ メタバースの世界にも時間軸があるんです。世界が作られたなら時間軸が発生していて、誰もいなくなったらその時間軸がゼロに戻る……っていうのはおかしいだろうっていう。世界が存在するのであれば、その世界の時間軸もずっと続くわけです。それが真のバーチャルが目指す世界観。現状だと時間軸っていう概念は希薄だと思うんですが。


──確かにそうかもしれない。

せこいあ ある場所に1回行った際、「次来ても同じものしか見られないのなら、もう行かなくていいか」になりますけど、訪問する度に体験が違うってなったらやっぱり何度も行きたくなると思うんです。ゲームセンターに行って、ハマってるゲームのランキングが行く度に更新されてるとか。「こないだ俺が1位になったのに、またあいつに追い越された!」みたいな。それって同じ場所で同じことをしているのに、来たタイミングで体験が違っている。

みゅみゅ 最終的には、自分のルームから出てしばらくして戻って来たら、なんとなく「このアイテムの落ち方は、◯◯さんが居たっぽいな」みたいな、気配が伝わるようなものを目指しています。


──オッサンなのでなんとなく「PostPet」*1を思い出してしまいました。

MIRO ポスペ! 若い人には伝わらないかも(笑)。

みゅみゅ ポスペのたとえはひとまず置いといて(笑)。何が起きるかわからないワクワク感って大事だと思っています。時間軸が規定されていれば、同じ空間でも1秒後には別の世界が展開されているみたいな。


──確かにそれ重要かも。FacebookでもTwitterでも、誰かが投稿して更新されてるからみんなそこに見に行きますよね。それと一緒でソーシャルのつながり自体が時間・空間でどう表現されるかも大切。現実の時間軸とリンクしているから起こることは変化していくし、すでに起こったことは痕跡として残る。これまでのソーシャルVRは、そういうのがあまり考慮されてなかった。

せこいあ そうですね。その場、その場の体験で終わってしまう。

*1シリーズ第一弾が1997年リリースのメールソフト。メッセージを送ると、ピンクのクマ「モモ」をはじめとする自分のペットが相手の部屋まで運んでくれて、相手が来たペットをかまえるという遊び心あふれた作りで話題になった(公式サイト)。


時間軸がある世界こそが真のメタバース

──そうすると、バーチャルキャストさんがやろうとしていることって、世界で起きていることのすべてを記録するということですよね。それってすごく大変なことなのでは?

MIRO それはもちろん、限界はあるので記録するもの・しないものを分ける必要はありますが、目指しているのはそういう世界です。先ほどから挙がっているVR空間ならではのモノを介した人とのつながりとか、非同期でコミュニケーションができて新たな人のつながりが発生するようなことですね。


──バーチャルキャストにおける非同期のコミュニケーションの具体例が知りたいです。

みゅみゅ 非同期という話ならユーザーが「Vキャスマーケット」を開催しています。例えばVRChatのイベントのひとつである「バーチャルマーケット」でブース出展するとなると「入稿」2が必要ですが、バーチャルキャストはワールドに対して時間軸があるので入稿という概念がなくて、本当にリアルのイベントと一緒で、みんなが自分の出展したいものを持ち込んで、その場で設営するんです。

2 事前の期限までに出展ブースのデータを提出すること。

──その場で!

MIRO 開催期間中も、一角には自由にアイテムを置いて販売してもいいですよというブースがあって、売り買いしたいものがリアルタイムで反映されていくという、そういう世界観です。前に訪れたときと違うものが売られているみたいな。


──時間軸があるとメタバースがより面白くなるというわかりやすい話だと思います。

みゅみゅ ほかにはジグソーパズルの部屋が面白かったです。画像のアイテムを組み合わせて並べるのですが、全部のピースの場所が保存されるので、みんなで少しずつ完成させていくみたいなことができる。

MIRO ほかには自分の部屋を作っておくと、誰かがお土産を置いていくとか。突然、おまんじゅうが置いてあったりとかですね。


いち早く非同期コミュニケーションを実装できた理由

──メタバースに時間軸を持ち込むというのは今後、業界のスタンダードになっていく気がします

せこいあ 今のソーシャルVRってほとんど同期的なコミュニケーションしかないんで、それがある程度行き詰まってきたら、非同期的なコミュニケーションも広がってくるのかなって思ってます。


──ちなみに、この非同期体験って、ほかのメタバースで見かけないのはなぜですか?

MIRO 限定的なことだったらできると思うんですけど……。どうなんだろう?

みゅみゅ Unityのパッケージに乗っかってる限りは難しいと思うんですけどね。

MIRO バーチャルキャストはアイテムなどが全部別管理だからできるのかもしれない。バーチャルキャストはモノはモノとして個別に管理して、全部サーバー側で記憶してるんです。これがワールドという形式でモノもワールドとセットで作り込まれている仕様だと、そのワールド側に保存・再生の機能を持たせないと、状態を保存できない。

みゅみゅ 自分が観測した限り、概念自体に馴染みがなくて、使いこなすのが難しいと思うんです。バーチャルキャストでも一部の人が使っている状況で、有効な使い方が出てくるのはこれからです。我々も、こういう風に写真を置いたら残るよとか、提案はしているんですが、やっぱりユーザーさんの自由な発想から生まれるもののほうが面白い。さっきのジクソーパズルも、言われたら確かにできるって思うんですけど、初めて見たときに「その発想はなかった」と思いましたし。

せこいあ その場にいる人同士で協力するっていうのはわかりやすいんですけど、その場にいない人同士で時間をまたいで協力するとなると、なかなか自分からは思いつけない。別の制作者さんが作ったものでは、1枚1枚壁とか床を配置していって建物を作って、またそこに来ると建物が継ぎ足されているみたいな、時間をまたいだ「マインクラフト」みたいなものもありました。


──考えてみたら、人間が住んで活動してるんだから、街ってどんどん風景が変わっていくのは当然の話ですよね。でも今のメタバースってRPGみたいに、街から出ました、もう1回街に入りました、ゼロに戻ってますみたいな感じで、やっぱり変ですよね。

みゅみゅ 変なんですけど、今までそういう下地で育ってしまったので、逆にドラクエとかで入るたびに街並みが変わっていたらそのほうが違和感を感じる人のほうが多いんじゃないですかね。でも、村に入ったら村人Aが必ずこの場所にいないとおかしいっていう、その世界観のほうが違うでしょと。そこはちゃんと言いたい。


国産のソーシャルVRであることの優位性

──また少し話が変わりますけが、バーチャルキャストって「国産」のメタバースっていうのが1つキーワードだと思います。国産ならではの優位性とかって感じる部分はありますか?

せこいあ シンプルに、UI (ユーザーインターフェース)が日本語だから日本人に親しみやすいというのはあると思いますね。日本の企業さんとも連携が取りやすい。


──先ほどのMIKULANDの初音ミクもそうですね。

せこいあ はい。やっぱり世界的に見ても日本のIPって強いので、そこと連携とりやすいっていうのは優位性があると思います。

MIRO トラブルとかの対応も普通に日本語でサポートに投げていただければ日本人が対応するのも強みです。アバターの文化も含めて、バーチャルキャストでは我々が作りたい世界を作っているんですけども、それは必然的に日本人が馴染みやすいものになると思います。


──ユーザーの要望なんかも吸い上げやすい?

MIRO そうですね。定期的にサービス開発進捗報告会っていう生放送をやっていて、そこでユーザーさんにご意見をいただいたりとか、あとは普通にサポートに来ている意見をたくさん見させていただいたりとかですね。


──現状、ユーザーも国内が中心ですか?

MIRO はい。そういう意味では、N高・S高のVR授業コースで連携しているので、国内のユーザー数はかなり多いです。教育向けのカスタマイズバージョンとかじゃなくて、そのままのバーチャルキャストを授業で使っています。


──バーチャルキャストってtoB(ビジネス向け)が強すぎて、toC(消費者向け)のイメージがあんまり表に出ていない印象があります。VTuber業界でもライブや3Dのコラボ配信でもよく活用されていますし、今出た教育もそうです。toCももっとアピールしたほうがいい気がするんですが……?

MIRO アピールしたいですね。高校生数千人が実はバーチャルキャストユーザーだったりするので、ユーザー数は結構すごいんです。

せこいあ 現状、VR業界における10代の割合って機材が高くて参入しにくいこともあって低いんです。だから、N校・S校でVRとともに10代が育ってきたら、今後の世代がどうなってくるかっていうのはすごい楽しみです。「VRネイティブ」って言われるような世代になると思うので。そういう世代が新しい文化とか物を作っていってくれるんじゃないかと期待しています。


アバターファッションの盛り上がりとVRM

──新しい文化というと、今でもアバターのファッション業界が盛り上がっています。その動きについて、バーチャルキャストで考えていることはありますか?

MIRO アバターで色々なファッションが盛り上がるのはいいことだと思っていて、VRMもそのために作ったシステムなんです。今「カスタムキャスト」さんと「Vカツ」さんと我々バーチャルキャストの関係がそうで、アバターのクリエイトツールで色々なファッションが提供されて、それを使ってアバターを自分好みのファッションに着替えて、そのアバターがさまざまな世界を旅する──。そんな体験を実現できる中間フォーマットとしてVRMがある、というのが理想のパターンです。

そのうえでバーチャルキャストでは小物とかをVCIで入手して、身体に装着することができる。これが1つの枠組みになります。さらに理想を言うと、バーチャルキャスト側で服を買ってすぐ着替えるとかになると思うんですけど、そこはまだもうちょっと時間がかかります。


──アバターのファッションについて、さまざまなクリエイターがBOOTHで膨大な数のアイテムを販売している。バーチャルのファッションで、生計を立てる人が出てくるような時代が来ている。

MIRO その辺は言うのが難しいところというか、語り出したら話はいくらでもあって、インターオペラビリティーの話も関係してきます。例えば、ゲーム内だったらカッコイイ武器とかもファッションになり得るし、ゲーム外の世界でも使いたいというニーズもある。

でも、ゲームの中での価値とゲームの外でのブランドとの関係を考えて、あえてゲーム以外には持ち出せないようにするとか。あるいは、現実のスニーカーのブランドをメタバースに持ち込めるようにするのかどうかとか。そのときマネタイズの仕組みはどうするのかとか、色々考慮すべき課題があるんですよね。理想と現実、向かっていく世界がどこかみたいなのは、結構いろんな見方があると思います。


──最後に、これからバーチャルキャストとしてはどういう世界を作っていくのか、改めて未来の話をお聞かせください。

せこいあ 何度か出ましたが、これからのVRの中の体験って、その場その場で終わりじゃなくて、自分がしたことが時系列として残っていくという方向になると思っています。メタバースという非日常の体験を持ち帰ってきてみんなで分かち合って、また非日常に出かけていくっていう大きなサイクルを表現できたらと思っています。今の日常に退屈とか寂しさを抱えている人に対して、そういうものを提供していきたいなと。なのでこれからの開発の方向性としては、記録できるものを1個1個増やして、新しい体験につなげるっていう部分をどんどん拡張していければと思っています。


──今日インタビューしていて、なんとなくバーチャルキャスト設立時の「ちょっと間違った未来をつくる」というキーワードを思い出してしまいました。あの標語はまだ生きてるんですか?

MIRO 生きてますよ。ちょっと尖りすぎてる気がするので、今はもう少し柔らかく言い換えていますけど。


──それが2018年7月。3年間も突っ走ってくるって相当大変ですよね。

MIRO いや本当に。作り続けてるとここまでいくんだなって改めて思うぐらい、バーチャルキャストもすごくなってます。あとはそのでき上がった器をどううまく生かしていくかというフェーズにようやく入ってきたので、改めて我々がやりたいことはをわかりやすくまとめたのが、「非日常で楽しみ、日常で分かち合おう」というタグラインですね。


──なるほど。VRを日常にうまく持ってこられる未来を作っていきたいですね。

MIRO VRの日常と、VRの非日常をつなぐサイクルっていうのはようやくできつつある。フィジカルの日常にどう持ち込むかっていうのは次のテーマだと思っています。色々とやりようはあるので、今仕込んでるネタもありますが、まだ秘密です(笑)。そんな現在進行形で未来をつくっている職場で、人材が全然足りていないので、バーチャルキャストを一緒に作りたい方も募集しています。ぜひご応募ください。


(Reported by Minoru Hirota

 
 
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