2024年12月14日~15日、バンダイナムコエンターテインメントがゲームを始めとする様々なメディアで展開する「THE IDOLM@STER 」(アイドルマスター、以下「アイマス」)の”あらゆるものが集まる”イベント「THE IDOLM@STER M@STER EXPO」が幕張メッセにて開催された。
本イベントでは「みんなで”アイ“を集めて みんなでつくる、みんなのための 一大アイマスイベント」というコンセプトのもと、関係各社の展示・物販やコラボ飲食、キャストによるミニライブやトークショー、制作スタッフによるDJを含む各種イベント、謎解きイベントなどが展開。
特徴的なのは、プロデューサー(シリーズのファン)による自主制作物の展示・頒布やコレクション類の展示されたサークルエリアや プロデューサーが作成した応援幕の展示コーナー、”アイ ” 車(いわゆる痛車)展示の野外エリアなど、ファンも出展側に回って参加することができたこと。2日歩き回っても体験しつくせない、文字通りの一大イベントであった。
「M@STER EXPO」は、プロデューサーや制作陣だけのものだけではない。「アイマス」の各シリーズに登場する30名以上のアイドルたちもライブを実施。
ライブの様子は別途レポートするとして、今回はそんなアイドルたちの活動をライブやタレント活動などゲーム外にも広げることを目的とした「“MR”-MORE RE@LITY(モア リアリティ)-プロジェクト」(以下、MRプロジェクト)の現在について、バンダイナムコエンターテインメント AE事業部 765プロダクションのゼネラルマネージャー、波多野公士氏にインタビューを行った。
──「MRプロジェクト」で面白いなと思っているのは、MR・XRやモーションキャプチャといったの技術面とは別に、アイドルの「タレント活動」として自治体や各企業とのお仕事コラボもあわせて挙げてらっしゃるところです。MRというと技術について語られることが多いですが、「アイマス」の「“MR”-MORE RE@LITY-プロジェクト」では「技術」と「お仕事コラボ」を両輪としてあげられています。そのきっかけや、そのどういう狙いがあるのかっていうのをお聞かせください。
波多野氏 ありがとうございます。MRプロジェクトを私たちは「MORE RE@LITY-プロジェクト」という言葉に掛けている通り、アイドルたちのマルチなタレント活動を広げられる、活躍できる未来を作るのであるというふうに定義しています。
ご存知の通り、技術的な課題の部分がここ数年でめちゃくちゃに進歩して、かなり解決しました。具体的にはモーションキャプチャーにかかる工数やモデルデータの精細さ、処理がしやすくなってる環境構築など、技術的課題がクリアになったというのはすごい素晴らしいことだと思ってます。
一方で「アイマス」自体の強みとしては、アイドルたちが20年、プロデューサーさんと一緒に紡いできたストーリーがあるので、そこの部分をどういうふうに現実世界にアイドルたちを活躍してもらうのかということと、掛け算するのが大事かなと思っています。
アイドルのタレント活動の側面においては、食べるのが好きなアイドルは実際のラーメン屋とコラボレーションしたりとか、それぞれのアイドルがゆかりがある地域の観光大使に就任させていただいたりとか、そういう意味合いを持って、現実世界で活躍してくれるとよりいいなと思ってますし、そういう活動が少しずつできるようになってきたかなというふうに思っています。
──できるようになってきたというのは、「アイマス」が20年続いてきて、知名度、実力がついてきたってことですか?
波多野氏 どちらかというと、「アイマス」の物語は、制作陣が作ったお話と、さらにそこにプロデューサーさんたちが解釈を与えてくださることによって、より世界観っていうのを作っていきます。その世界観を現実の場に持ってくるように発想できるようになってきたというのが近いかなって思ってます。
そして、MIRAIKEN studioなどで技術課題を突破していっている側面もあるかなと思います。
──お仕事コラボでアイドルが観光大使になって、その地域でアイドルのポスターやポップが並んでコラボメニューが出たりしていますが、それにXR技術が組み合わさって効果を上げた事例というのはありますでしょうか?
波多野氏 例えば、バンダイナムコアミューズメントの運営するアイドルマスター公式ショップで、実際にアイドルたちがここのショップにはこういうのがあってと紹介したり、namco TOKYO(東京都新宿区歌舞伎町のアミュースメント施設)で765プロのアイドルたちが説明をしたりとか、そういう事例は始まっていますね。そしてそうした事例は力を入れて広げていきたいなというふうに思ってます。
──バンダイナムコグループ以外の案件でも、MRでアイドルに活躍してもらうということはありそうですか?
波多野氏 もちろんやりたいですね。お菓子メーカーさんとのコラボレーションの中で、実際にゲーム中のコミュ(会話シーン)でこのお菓子は私が今宣伝していますというストーリーを紡ぐという事例をどんどん力を入れてやっていっているので、そこにMRという技術が掛け算されるのも、もう間もなくかなと思います。必ずやります。
──「PROJECT IM@S vα-liv」(以下、ヴイアライヴ)についてお伺いします。765プロやシンデレラガールズなどの既存のシリーズでは、ファンが巻き起こすムーブメントがあったとしても、最初のベースは開発者、クリエイターが作ったアイドル活動の物語を提供してからという形ですが、ヴイアライヴの場合は形が異なりました。ライバー活動から始めるアイドル候補生といったお披露目から一年半以上が経ちましたが、3名のアイドルとプロデューサー(ファン)、制作陣の関係について教えてください。
波多野氏 ヴイアライヴに関してはノンフィクションのIPなので、プロデューサーさんたちのご意見や、(灯里愛夏さん、上水流宇宙さん、レトラさんの3名の)本人たちの意思、あとは制作陣がまあこういう方向に描いていきたいという方針が混ざることによって、今の形があります。3名がデビューできた*のは、私としては本当によかったと心の底から思っているぐらい、ノンフィクションな部分でやっております。その点が100%描き切ってきたこれまでのIP作品と一線を画す部分なのかなというふうに思っています。
*アイドル候補生としての最終審査で票を得たものだけがアイドルデビューができるというルールのもと1年間活動を行い、2024年3月の審査にて無事3人とも規定以上の票を得てアイドルデビューをすることができた。
さらに、私たちはあくまで作品の作り手なので、やっぱりこういう風な世界にしたいのかという方針などが出る中においては、VTuberさんのノンフィクションさとも違う、ライバーアイドルって独自のなんか存在なんだろうなっていうふうに考えています。ヴイアライヴはヴイアライヴとして、ヴイアライヴの制作陣がこういうふうになってほしいんだっていう想いも入っているかなっていうふうに思います。
──ヴイアライヴの取り組みについて、バンダイナムコエンターテインメント社内での反応がどうであったかについてお聞かせください。
波多野氏 社内の反応に関してはすごく良くて、バンダイナムコエンターテインメントの各ゲームのプロデューサー陣から、それぞれのゲームの初出のタイミングが迫ってくると、「このゲームをヴイアライヴでプレイしてくれない?」といったコミュニケーションがヴイアライヴプロジェクトにお話いただいたりもして、すごくみんな好意的に受け止めてくれてて嬉しい限りだと思ってます。
──それはアイドルマスターのゲームの宣伝もあるのですか?
波多野氏 それは実はやってないことはないのですけど、世界線が混ざってくる部分もあるじゃないですか。なので、この話はよく議論してますね。
他の(アイドルマスターの)アイドルとヴイアライヴのアイドルは同列と捉えてますので、それが崩れるようなことは基本的には「PROJECT IM@S」としては考えてないっていうのがまず一つ。もう一つが、ヴイアライヴの立ち位置に関しては、二次元というゲームコンテンツと三次元というリアルの場の間をつないでくれる非常に重要な存在だと捉えていますので、そういった活躍をしてくれてて本当にありがたいなというふうに思っていますね。
──ヴイアライヴの3人のトークでもアイドルマスターのアイドルは「先輩アイドル」と呼んでいますね。同じ世界にいるから親しみがあるし、だからこそプロデューサーもほかのアイドルマスターのアイドルと同じように応援していますね。そういう意味で言うと、自分も(取材日にライブを行った)天海春香さんたちも、ゲームのキャラクターとして捉える時もあれば、実際にいるアイドルとして捉える時もあります。
波多野氏 基本的にはそうですね。私たちの気持ちとしても、実際のアイドルの天海春香さんとしてライブをやっていただいているつもりでもちろん作ってます。なるべく「天海」と苗字で呼ぶようにしています。
──そういったアイドルたちがスマートフォンゲームアプリの中で「これからライブのお仕事をしてきます」というチャットをライブ当日や前日に送ってくると、現実世界と作品世界がくっついたぞというのを実感してますし、それを楽しみにしてます。本日はありがとうございました。
THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
(TEXT by tabata hideki)
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