22/7ライブ「Fivesta」で活躍したロボ「groovots」開発チームインタビュー メンバーの思いを顕現させた新装置の裏側とは?

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声優アイドル「22/7」(ナナブンノニジュウニ、通称ナナニジ)は5月24日、東京都足立区の西新井文化ホールにて音楽ライブ「Fivesta」を開催した。

出演者は、2期生となる相川奈央、麻丘真央、椎名桜月、月城咲舞、望月りのの5人。メンバーたちで曲や演出を決めたという今回のライブは、朗読劇で始まり、ユニットパートあり、地元の子供ダンサーとの共演あり、急遽2曲増えたダブルアンコールを含めて全21曲という盛りだくさんな内容だった。特にデビューから4年の思いを詰め込まれたMCパートにを心を打たれた人も多かったはず。


その中で今回、バーチャル領域の表現を取材してきたPANORAとしてピックアップしたいのが、ソニーが開発したエンタテインメント向け群ロボットシステム「groovots」(グルーボッツ)になる。

機体下部にタイヤを備えた動くLEDともいうべき存在で、現時点では、表裏2面の等身大サイズLEDパネルを搭載した大型(groovots 6D)と、4面にLEDを搭載した中型(groovots 5D)の2機種が存在している。今年1月の「如月千早単独武道館公演『OathONE』」で大々的にアピールされたので、なんとなく認知しているという方もいるはず(もちろん現地や配信で見たという人なら、概念色の演出などに強烈にやられただろう)。

如月千早単独武道館公演『OathONE』でのgroovotsくんたち

今年2月には、同じ西新井文化ホールで実施した「ナナニジライブ inジャパンフェスタ」では大型タイプが登場。さらに今回は、中型も5体も投入して、ステージを大いに盛り上げていた。

ナナニジといえば、生身とキャラクターの両方の姿で活動しているのが特徴のグループだ。今回、追加された中型のgroovotsは、今回新たに登場したちびキャラの姿を映し出し、5人と5体の「10人」でフォーメーションを組んで踊ったというのがトピックになる。

さらに、5人のキャラクターがそれぞれの過去をモノローグで振り返るシーンでも、大型のgroovotsが現れてその姿を映し出していた。このシーンも、先のMCと一緒でとても心を動かされた。ものすごくざっくり言えば、リアルのメンバーが積み重ねてきた成長に、キャラクターの生い立ちなどの設定も重ねてタレントをより魅力的に見せる……という話なのだが、すべての思いが合わさった先に全員が精一杯パフォーマンスするこの場がとても「尊く」て、客席からすすり泣きが聞こえるほど感動を呼んでいた。

groovotsという新しい技術があったからこそ、ナナニジメンバーの思いがリアルに顕現できて成立したこのステージ。実はそのロボットの向こう側にいる裏方もリアルタイムでまさにライブしていたのだ。本記事では、終演後にソニーの開発チームにインタビューを実施し、このコラボが実現した経緯や制作の裏側などをまとめた。


ナナニジメンバーが考えてくれたgroovotsのフォーメーション

──ナナニジと協業するきっかけは何だったのでしょうか?

groovotsチーム ソニーグループ横断の技術交換会にgroovotsを出していた際、ナナニジのスタッフからコンセプトに合っているので何かやりましょうとお声がけいただき、2月の西新井のライブで初めてタレントさんとキャラクターが一緒にステージに出演することが実現しました。今回は、演出でちびキャラを出したいというメンバーさんの思いがあるのでご協力しましょうという流れになりました。

 
──ひとくちにロボットを出演させるといっても、メンバーに合わせてどう動くのかという演出を考えるのはとても大変そうです。演出家などが入っているのでしょうか?

groovotsチーム 特殊なケースだとは思うのですが、実は今回groovotsが出演した3曲とも、メンバーのみなさんが5人と5体のフォーメーションを考えてくれたのです。ロボットって演出をつくるのがまず大変で、いかにクリエイターさんが思い描いている通りに落とし込むかというのが毎回の課題です。いつもは「この辺にgroovotsがいてほしい」という草案をいただいて、こちらで演出をつくって、先方に見てもらって微修正する流れですが、今回メンバーのみなさんのおかげですぐにイメージに近づけられました。

ちびキャラの動き自体も、メンバーの動きをキャプチャーしたデータを元にしています。ご本人のモーションなので、特に同じ舞台に立って同じ振りをされているシーンでは、人間とキャラクターの動きがピッタリ合うので見ていてプロだなと感じます。

 
──スゴい。フォーメーションというと、groovotsの動きは人間よりも遅いと思うのですが、その辺の調整が面倒そうです。

groovotsチーム そこはやはり結構大変で、もちろん人間のほうがクイックに動けますが、ただ人間と同じ速度で動くというのだけがダンスの要素ではないんです。個人的な考えかもしれませんが、一体のロボットがキビキビ動くというよりも、やはり群体でフォーメーションを組んで切り替わっていく方が有機的な感じがします。この辺、他のアイドルグループさんや社内的なPoC(概念実験)も含めて何度も実施してきたことから得られた我々チームの知見です。

 
──今回はメンバーも交えて、リハーサルを何度もやって本番に臨んだ感じでしょうか?

groovotsチーム いや、実機を使ったリハは一回です。

 
──一回でよくあんな息ピッタリに。

groovotsチーム キャラのモーションを撮影前後で、リモートでの打ち合わせは複数回実施いたしました。タレントさんとgroovotsが動く範囲を一番初めに明確に決めて、それを守るように演出をつくっていったので合わせやすかったという理由もあります。逆にタレントさんとgroovotsが交差するような動きは今回はトライできてないのですが、そうした細かいところをやっていくならもう少し練習が必要だったと思います。

 
──ステージでの位置は、どういう仕組みで検出してるのでしょうか?

groovotsチーム 普通の人間が立ち位置がわかるようにする「バミリ」と同じで、複数のマーカーが床に貼ってあって、そのテープにあるタグから位置を検出しています。それ以外はタイヤの回転数やジャイロセンサーから位置を予測して、またタグが見えたら位置をリセットということをすることで、床全体にタグを貼らなくても位置がわかるようになっています。

 
──今年1月の武道館や2月の西新井文化ホールから機能的に進化しているのでしょうか?

groovotsチーム 機能よりはどちらかというと運用面の最適化が大きいです。やっぱり多くの人に使ってもらうためには、いかに手軽に利用できるかが重要になります。例えば、運用人数も今後コンパクトにしていきたいです。

 
──そもそも、エンタメにロボットを使おうと企画したきっかけはなんだったのでしょうか。元々、エンタテイメントロボットの「aibo」やドローンなどを手掛けてきたメンバーと聞きましたが……。

groovotsチーム 大元は10年後のソニーのありたい姿を描いた長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」(CEV)が掲げられて、ロケーションベースエンタテインメント(LBE)という現地に来た人たちの体験価値を上げることについて会社全体で注力しようという動きがあったことです。そして2025年に入るちょっと前ぐらいに我々がこうしたライブでの活用を考えました。1年前は舞台の上手/下手(客席から向かって右/左)という言葉すらもわからなかった

 
──ということは、ゼロから始めて1年ぐらいで2026年1月の武道館を成功させたという。

groovotsチーム そうですね。群制御という、たくさんのロボットを一つのシステムでプラットフォーム化して動かしていこうと考えたのが元々で、会社の方針が発表されたこともあって色々トライしてみようとなり、それこそソニー・ミュージックエンターテインメント(SME)さんとかとも話をして企画を進めていました。

当初は1mぐらいのサイズのLEDを載せて走らせていて、SMEさんもすごく新しいと褒めてくれていましたが、サイズが小さいのと、LEDのピッチが粗いものだったので、そのまま本番で使うのは難しいと感じました。それで急遽、2025年の5月ぐらいに本体を一回り大きい1.3mサイズにし、ピッチもより高解像度のものに変えました。

同時に、バンダイナムコさんから武道館のお話があって、やっぱりキャラクターを顕現させたい、等身大のものがほしいとなり、7、8月ぐらいに大きい方に着手して、武道館の1、2ヵ月前ぐらいに大型の方ができたんです。

 
──ニーズベースでどんどん改良、追加していったんですね。

groovotsチーム はい。ハードが完成する前は、群体制御のフォーメーションを見るためにソフトウェア上でずっとシミュレーションしていました。ソフト上では大きいのも、小さいのも動かしていて、新しいハードがきたら実物に切り替えた感じです。

 
──大変です。一般化したドローンショーとかと異なり、多分、どこにもノウハウがないものですよね。

groovotsチーム 社内でも、あれだけの大きさのものを群体制御するというのはなかなかない話です。やっぱり実際の大きいサイズでつくってみないと出てこない問題もあったりして、急ピッチで制作しつつ、ちょっとずつ直していたりします。

 
──出演者やお客さんがいる中で使うものなので、倒れるなどの、万が一の安全面も気にしなければいけなそうです。

groovotsチーム 大型は下部がだいぶ大きいので倒れることはないですが、中型は今日も見ていただいたように、ロボット同士をピタッと近づけて一つの画面になる演出を実現するために、LEDと下の台車を同じサイズでつくらなければいけなかった。

そうすると、LEDを乗せたときに重心が高くなって不安定になりがちなのですが、ドローンなどで培ったソフトを含めた駆動やモーターの制御などの知見を生かして、倒れないギリギリを攻めています。スリップしそうになったらこういうふうに動かそうとか、LiDARを活用してぶつかりそうになったら減速させるとか、気を遣いながら運用しています。

177cmの筆者と比較。ステージで見るとかわいい中型も、間近で見ると結構大きい
ステージだと照明を落としがちなので見えにくいが、壁上のほうの土台はかなり大きい

 
──LEDを組み合わせただけに見えて、センサーも多く含まれているんですね。

groovotsチーム そうですね。ただ箱が動いてる風に見えるようにしてるんですが、中は演出には関係ない安全性などを確保するために複雑なコンポーネントも入っています。

 
──見えないところで相当気を使っているのですね。

groovotsチーム 何かあったときのために、通常のコントロール画面の方でもすぐ止められるようになってますし、リーダーも緊急停止スイッチを握りしめながら演目を見ています。安全対策は二重三重にしていますね。それはうちのグループだけでハードとソフトのすべてを全部開発できるメンバーが揃っているから、例えばハードの細かいところまでどう動くか把握できるのだと思います。

 
──面白い。MCコーナーで、演者さんと触れ合ったり、頭をなでたりするシーンがありました。あそこでgroovotsに命が吹き込まれたように錯覚しました。

groovotsチーム その通りだと思います。我々はインタラクションも重要視してて、MCで使ってくれるときにはできるだけロボットに近づいていただいて、親しみやすく声をかけていただくことで、ある意味お客さんも感情移入できるようになると考えています。

 
──今回のように特に生身のタレントさんとの相性がよさそうですし、ライブ中、ナナニジメンバーが舞台を降りて客席の間を駆け回るシーンがありましたが、同様にVTuberさんが客席を回るみたいなことにも活かせそうです。それで香りを出す装置を付けて、ちょっといい匂いがしたらリアリティーに打ちのめされそう。本当に可能性を秘めた機器だと感じました。

groovotsチーム それでいうと、一番やりたいのはリアルタイム伝送ですよね。今は事前に収録したものをタイミングを合わせて映しているのですが、VTuberさんなどに活用していただくなら、その場で取ったモーションを出したいというこだわりにも応えていきたいです。

あとはロボットの6Dの動きです。ちょっと技術的な話になってしまうのですが、大きい方のロボットは差動二輪車といって現状は車のタイヤがついている方向にしか動けないので、今後、解決していきたいです。

実際のステージを積み重ねることで、ワークフローがどんどん洗練されてきていまして、「ああいうこともできる」「こういうこともできる」と表現のアイデアもどんどん出てきています。もっと広げられるプラットフォームなので、ぜひ今後もご注目ください。


(TEXT by Minoru Hirota

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