今月7日に国内での出荷を発表した一体型MR(拡張現実)ゴーグルの「HoloLens 2」(関連ニュース)。PANORAでも今年3月のMWC19でレポートを公開し、今年5月の開発者向けイベント「de:code 2019」において日本国内でもお披露目していたのだが、発売のタイミングで日本マイクロソフトが報道陣向けに体験会を開催したので改めて記事にしていこう。
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身に着けるコンピューターの最新系
HoloLensは2015年1月に発表し、米国では2016年、国内では2017年より開発者や企業向けに発売してきたMRゴーグルだ。パソコンやスマートフォンをつながずに単体で動作する一体型というのがポイントで、OSがWindows 10なのでWindowsソフトも動作する。ようするにウェアラブルコンピューターの一種だ。
かぶると何が見えるかといえば、目の前の風景にCGが重なって表示される。目の前の風景とCGを合成するというとAR(拡張現実)ゴーグルもあるものの、Hololensが新しかったのはCGが出現する位置をQRコードなどのマーカーなしで固定できたという点だ。
ゴーグル前面に備えたカメラで周囲の環境をスキャンして空間のマップをつくり、CGの位置を決めた上で、顔を寄せて近づいたり、体で回り込んだりといった直感的な操作を実現してくれる。例えば、机の上に置いたデジタルフィギュアに近づいて細部を見たり、手で持って好きな角度で鑑賞できるといった具合だ。
今までコンピューターというと、パソコンならマウスやキーボードを使ってデスクトップから、スマホなら手でホーム画面から操作していたわけだが、HoloLensをはじめとするMRゴーグルなら現実空間をディスプレーにして体と手で操作できる。そうした機械のルールを覚えずに直感的に扱えるという点で、今まで「なんだか面倒臭そう」と避けていた方々でもコンピューターの恩恵を受けられるのがHoloLensの真価だ。
現状、HoloLensで「ファーストラインワーカー」、つまり店舗や流通、建設、製造、病院といった現場の最前線で働いている方々向けのソリューションが目立っているのも、そうした背景があるかだろう。活用事例としては下記4つのシナリオが多いとのこと。
・遠隔支援
・トレーニング&作業支援
・視覚化&共同作業(工場でCGの重機を実寸で置き使い勝手を確かめるなど)
・コンテキストデータアクセス(リアルタイムで空間を把握し工場の危険区域を赤く照らすなど)
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装着感・操作性ともに大幅改良
HoloLens 2は、名前の通りそんなHoloLensの2代目となる。初代から主に進化した点といえば……
・快適性が3倍
・視野角が2倍
・両手と10本指を認識
・アイトラッキング
あたりが主な特徴だ。
快適性については、かぶってみてまずわかったのが頭の中心にバランスが来るようになった点だ。初代は未来的なデザインが目を引くものの、そのおかげで重心が前側にきていた。頭を固定するリングが細かったこともあり、長時間つけていると首に負担がかかっていたのだ(ついでに鼻も痛くなっていた)。
一方、2では額と後頭部でしっかり挟み込み、ダイヤルで締めるというHTC VIVE ProやVALVE INDEX、PlayStation VRなどと同じ機構に変わっている。最終的にみんなこの方式に落ち着くのは、やはり多くの人が疲れにくいからだろう。また、メガネユーザーにとっては、メガネをつけていても装着しやすくなったというのが大きな快適性アップとなる。
続けて、視野角が広がったことを実感した。感覚的には初代のホロレンズはちょうど左目の先に左端、右目の先に右端が来ているような見え方だったが、その表示範囲がぐっと広がった。例えば、手にCGを持って近づけた場合でも、見切れる範囲が狭くなった(見切れないわけではない)。
操作性では、10本の指を認識するようになり、アイトラッキングが加わったことでかなり印象が変わっている。例えば、アプリを起動する場合、初代では五本指を上に向けてグーからパーにする「ブルーム」ののち、目でポインターを動かしてアプリを選んでから、人差し指を直立させた状態から前に落とす「エアタップ」でアプリを立ち上げるという流れだった。
それが2では手を認識できるようになったので、左手の手首あたりにあるメニューボタンを右手で押してメニューを開き、あとはアプリを見て人差し指で選べばOKだ。
特にキーボードの操作性アップが著しく、初代ではパスワードを打つために「小さなバーチャルキーボードに目を合わせて……あっ、ずれた!」という入力ストレスが発生しがちだったところ、2は両手の人差し指でバーチャルキーボードを普通にポチポチ押せるので非常に快適になった。デモで現れたピアノでも、鍵盤を人差し指で押して弾くことができた。
3DCGの拡大/縮小も、その周囲に表示される立方体のフレームを掴んでできるようになった。筆者の感覚としては、Oculus TouchのようなVRゴーグルのハンドコントローラーを使っているものに近いと感じた。
アイトラッキングについては、装着後、ターゲットが動くところに目線を合わせてキャリブレーションを実施する。その際、IPD(瞳孔間距離)も自動で調節してくれるのが便利だ。デモアプリのひとつに視線検出がわかるものがあり、試してみたところ自分が今見つめているところをヒートマップとして表示してくれた。この辺、ベテランがどこをどんな順番で見て作業しているのかなど、今まで視覚化しにくかったところをトレーニングアプリに持ち込めそうだ。
まとめると、見た目は質実剛健に変わったものの、初代をベースに体感を大幅に改良してきた印象だ。
あとは買えるかどうかという点が問題で、現状では初代のようにネットで気軽に注文できない。事前に営業担当者に申し込んだにも関わらず連絡がなかったというケースも聞かれる。まず料金体系が若干ややこしい。下記写真を見ていただければわかるように、3種類の料金体系があり、現在は世界的に左の2つしか提供していない。
このうち一番左の「HoloLens 2 with Dynamics 365 Remote Assist」は、スマートフォンを割賦で買うような支払い方法で、リースのように借りた月だけ払うわけではない。付属するDynamics 365 Remote Assistは、遠隔の専門家とリアルタイムで視線を共有してハンズフリーでサポートを受けられるようなソリューションだ。
日本マイクロソフトによれば、世界で需要が高まっており3桁の大口導入もあるとのことで、そうした在庫の関係も影響してそうだ。デバイス自体は非常にいいものなので、今のところは流通面が改善が求められるところだろう。
(TEXT by Minoru Hirota)
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