鴻池組とインフォマティクスは、「MR技術を活用したトンネル施工管理システム(トンネルMR)」の新機能の実証実験を行い、有効性が確認されたと発表した。
この実証実験は、近畿地方整備局兵庫国道事務所の協力のもと、名塩道路城山トンネル工事において行いわれた。今回検証した「トンネルMR」の新機能は、マーカー設定の効率化・高精度化を実現する「空間アンカー機能」と、現場での立会検査をオンライン化する「遠隔臨場システム」の2点。
■空間アンカー機能
一般的にMRデータを現実空間に表示する場合、マーカーを正しい位置に設置して表示させるなど、原点となる位置情報が必要だった。これに対し「空間アンカー機能」では、一度MRデータを表示して登録することで、次回からはその周辺を見回すだけで、クラウドサーバーから情報を呼び出して自動で表示することが可能となる。また、従来方式では、マーカーから離れるほど現実空間と仮想空間にギャップが生じるが、「空間アンカー機能」ではトンネル坑内の所々に設けた空間アンカーにより、リアルタイムで位置修正を行い、精度よくMRデータを表示することが確認された。
■遠隔臨場システム
トンネルMRで使用するMRデバイス「HoloLens 2」は、工事現場でBIM/CIMモデルや図面を見るだけでなく、複数のカメラによる映像撮影や計測、インターネット通信など幅広い機能を備えているため、発注者による現場での立会検査をオンラインで会議化する「遠隔臨場」のデバイスとしても活用できる。
今回開発された「遠隔臨場システム」は、リモート機能、オブジェクト配置、計測値や変状調査の記録を帳票に自動入力する機能など、トンネルMRを活用する工事現場のニーズが反映された各種機能を実装。点検者はこのシステムを使用することで、現地でMRにより作図したひび割れラインや漏水箇所などのマーキングが可能となる。また、写真や音声データを事務所側のPCに送信して帳票に自動で記録する、現実空間のピンポイントな位置情報を、受発注者間で共有するといった機能も備える。今回の実証実験では、事務所側から確認すべきポイントを送り、トンネルMRを装着した点検者がそのポイントを確認する際の良好な操作性も確認された。
8月23日には、城山トンネル工事において、「遠隔臨場システム」による切土法面の岩判定を実施。受発注者が岩判定の現場と約20km離れた会議室にそれぞれ分かれ、遠隔判定を行ったところ、現場検査員の映像や岩盤をロックハンマーで打つ音が、一般的なTV会議システムでも十分に遠隔臨場を実現する品質であることが確認された。また、トンネルMRを使用した場面でも、城山トンネルの構造や法面、国道など周辺施設のMRモデルを重畳させた映像が、「遠隔臨場システム」により十分な品質の映像や音声で伝送されることが確認された。
鴻池組は、今回機能向上が図られたトンネルMRや遠隔臨場システムについて、実運用に向けたさらなる機能改良を行い、建設現場の生産性向上や安全性向上に寄与していきたいとしている。
●関連リンク
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