必要なのは変化を受け入れる”覚悟” 『メタバース進化論』のバーチャル美少女ねむ&編集者に突撃インタビュー

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VRデバイスの低価格化、コロナ禍による巣ごもり需要の拡大、Metaの社名変更と様々な要素から、現在注目を集める「メタバース」。最近では、2月26日に「VRChatガイドブック~ゼロからはじめるメタバース」、3月にThirdverse代表取締役CEO 国光宏尚さんによる「メタバースとWeb3」、「お金2.0」の著者の佐藤航陽さんによる「世界2.0」、4月にはクラスター代表取締役CEO 加藤直人さんによる「メタバース さよならアトムの時代」などメタバース関連書籍の出版ラッシュが起きている。

そんな中、3月19日に世界最古の個人勢VTuber、メタバース文化エヴァンジェリストとして活動するバーチャル美少女ねむさんが、技術評論社より書籍「メタバース進化論」を発売した。価格は1980円(税込)だ。

バーチャル美少女ねむ、技術評論社より単著「メタバース進化論」を3/19発売 予約スタート&序文先行公開

今回は、ねむさんと、本書「メタバース進化論」の編集を担当した技術評論社の石井さんにメタバース空間上にて突撃インタビューを敢行。お二人に出版企画の裏話や、メタバースとねむさんの活動コンセプト「人類美少女計画」の関係性、そして本書で最も強く伝えてた読者に求める「覚悟」について聞いた。

出版のきっかけは「ソーシャルVR国勢調査」

──「メタバース進化論」発売おめでとうございます! さっそく読ませていただきました。

かなり読み応えがありましたね。ねむさんらしい主張と、それを裏づける「メタバース原住民」1200人以上へのアンケート調査結果。いま現在のソーシャルVR・メタバース文化を俯瞰して、かつそれが人類にとっていかに革命的なのかを語る。「メタバースについて知りたいんだけど」と言われたらまずお勧めできる本だなと思いました。

ねむ ありがとうございます!今日は、技術評論社の担当編集者・石井さんにもVRゴーグルを被ってこちらの世界に来てもらいました。出版側の意見も聞けると思うので、ぜひ色々と聞いてください!

石井 本日はよろしくお願いします。技術評論社の石井です。取材もこうしてメタバース上で行えるというのはすごいですね。まだ少し慣れないです。

インタビューは本書でも紹介されている代表的なソーシャルVR「VRChat」にて行った

──よろしくお願いします。それではお話をうかがっていきたいと思います。今回、内容のベースになっているのはねむさんが昨年発表された「ソーシャルVR国勢調査2021」ですよね。そもそも、この調査はどういったきっかけで行ったのでしょうか?

ねむ まず、「ソーシャルVR国勢調査」というのは、本書でも紹介している4大プラットフォーム(VRChat、cluster、NeosVR、バーチャルキャスト)を始めとするソーシャルVRサービスで、生活している「原住民」を対象にしたアンケート調査です。

「ソーシャルVR国勢調査2021」レポート公開 「VRで恋に落ちたことある?」→Yesが40%

もともと、スイス・ジュネーブ大学の人類学者Milaと一緒にやろうかと企画したものです。ちょうど、コロナ禍でソーシャルVRサービスのユーザーが増えてきた背景があったので実施しました。アシュトンさんも感じていたと思いますが、コロナでユーザーは絶対増えたのに、ほかの人がソーシャルVR内でどう生活しているかというのは住人でも意外とわからないものです。

現実世界であれば、渋谷とか人が多いところに行けばなんとなく傾向って掴めたりするかなと思うのですが、メタバースの場合みんな自分の小さなコミュニティーに閉じこもりがちなので、海外ユーザーの動向とか、日本人ユーザー間でも、自分の半径5メートルを超えた人の動向って把握しにくいんです。それを、データとして数字で分析したら、色々と見えてくるんじゃないかと思って調査を実施しました。

──ちなみにソーシャルVR国勢調査を行ったのはいつ頃ですか?

ねむ 去年の8月末にアンケートをスタートして、レポートとして発表したのが10月28日です(関連記事)。実は、その日の深夜に「Connect 2021」があったんです。そこで、旧FacebookがMetaへの社名変更を発表して、翌朝から大ニュースになりました(関連記事)。

#Connect2021 Facebook、社名を「Meta」に変更 メタバースに注力も新VRゴーグル「Project Cambria」詳細は来年以降へ

そんなタイミングもあって、「じゃあメタバースって何なんだ」と調べたときに私の「ソーシャルVR国勢調査」も想像以上に注目を集めました。ほんとに不思議なくらいタイミングが良かったです(笑)

──めちゃくちゃタイムリーですね(笑)。確かに、VRメディア以外にもかなり取り上げられてましたよね。

ねむ そうですね。かなり幅広い層に注目してもらえました。一番注目を集めたのは恋愛の話です。「メタバース内での恋愛経験率は〇%」みたいな。あと、男性も女性も女性アバターを使っているとかは結構取り上げられた印象です。

──なるほど。本書の執筆にもソーシャルVR国勢調査の反響がきっかけだったんでしょうか?

ねむ 一番最初は、担当編集者の石井さんからTwitterにDMがありました。その時の経緯については石井さんからどうぞ。

石井 そうですね。ちょうど、ソーシャルVR国勢調査がさまざまなところで取り上げられて、note主催でメタバースについて知るみたいなイベントがあったんです。それに、ねむさんが出演されていて。

ねむ 「いまこそ知りたいVRとメタバース 〜これから起きる未来とは〜」ですね。note・CXOの深津さんがメタバースにとても興味を寄せられていて、それで11月頭頃に実現したイベントでした。

石井 そう。それをTwitterだか何かで知りました。そこで、「ソーシャルVR国勢調査」やねむさんの話を聞いて、「なんじゃこりゃ」と衝撃を受けたんです。ちょうどそのころ、Metaの社名変更を受けて「メタバースって最近流行ってるよね」みたいな話は社内でもよく上がっていて、「これは本になるかもしれない」とねむさんに連絡を取ったんです。

──具体的にはどういった層をターゲットに捉えてたんでしょうか?

石井 やはり、メタバースとかソーシャルVRとかといったものは、ここ最近急激に注目を集めています。そこで、普通は「ビジネス分野でどう活用できるか」みたいな見方をされがちです。ただ、必ずしも全員がビジネスだけに興味を持っているわけではない。私自身もそうですが、ビジネス以外の部分、例えば人と人とのつながりやアイデンティティーなど、そういった話題に対してシンプルに面白そうと興味を持ってくれる人、そういう人たちに読んでほしいなと思っています。

イメージとしては、TwitterとかFacebookみたいなSNSがちょうど日本に上陸してはやり始めたくらいの時に、我先にと飛びついていたような人たち。そういった層を想定しています。

ねむ アシュトンさんはご存じだと思いますが、私は「VRの人」というより、「一般の人」にバーチャルの楽しさを届けるというコンセプトで活動しています。なので、私の主張したい内容は、本書の中でも特に後半の部分です。

前半は、メタバースの定義や各ソーシャルVRの特徴、周辺技術などマイルドな話、入門的な内容がメインですが、後半になると「アイデンティティー」「コミュニケーション」「経済」「感覚」と4つの軸における「コスプレ」で起こる人類の革命という核心的な内容に入っていきます。

ただ「メタバースってこういうものなんだよ」という内容だけではなく、もう一歩踏み込んだ本質的な可能性に気付いてほしい。二段構えでウケるといいなと思って、本書を執筆しました。

石井 ちょっとしたネット記事やテレビでの報道などだと、どうしてもそうした深い情報というのは抜け落ちてしまいます。しっかりと前提知識を共有したうえで、深い議論に入る本になったかと思います。そこに魅力を感じていただけると嬉しいですね。

1章3日で執筆!? 著者・編集者に聞く制作のウラ話

インタビューに答える技術評論社・石井さん。まだ「Visitor」のためパブリックアバターでの登場となった

ねむ 進行はかなりギリギリでしたよね(笑)。11月末くらいに連絡が来て、昨年内に企画が通って、年末年始をメインに一気に執筆を進めました。あれはもう泣きそうなくらい大変でした。

1日2万字くらい書いて、1週間缶詰め状態みたいな。1日で構成を考えて、1日で書き上げて、1日で石井さんに見てもらって修正という具合で、3日で1章書き上げるペースで執筆を進めました。

──3日で1章!? 年末年始忙しそうにされているのはなんとなく伝わってきていましたが、そこまでだったとは。ちょっと考えにくいスピードですね。普通そんな速さで書くものなんでしょうか?

石井 いや、尋常じゃないですね。以前、この本の半分くらいの書籍を4、5人の共著で担当したときに、ちょうど同じくらいのスピードでした。300ページ超えの内容をこの速度で書いてもらうのは私も初めてで、実を言うと最初は本当に書き上がるのかも半信半疑だったほどです。

もともとは10万字くらいの予定で、ゴールデンウイークまでには出したいねと話していたのですが、想定以上にねむさんの筆が早くて、結果17万字超えで今のタイミングで出せました。うれしい誤算ですね。

──ゴールデンウイークというのは何か理由があったんでしょうか?

石井 やはり他社さんもメタバース関連の書籍は出してくるだろうという予感はありましたし、社内の営業部からも「書店でメタバースコーナーが作られつつあるから、早くここに売り込む本が欲しい」みたいな要請もありました。

ちょうど私も、新宿の紀伊国屋などでそういうコーナーを見かけていましたし、「これは早く出さなきゃ」という思いがありました。出版業界的にもそういう空気感はあるかなと思います。

──なるほど。やはり、流行には乗っておきたいという空気感や要請はあったんですね。その中でも、「技術評論社からバーチャル美少女ねむの本を出す」となった決め手はあったんでしょうか?

ねむ それは私も気になります。ちょっと技術評論社っぽくないというか、異色ですよね。結果的に、「技術評論社」×「バーチャル美少女ねむ」というミスマッチがいい味を出したのかもしれないですが。

石井 そうですね。今回は特に、「メタバース」というテック系の話題を扱いつつも、その中身は「住人の動向・文化」といったような人文系の内容で、技術評論社の中でも少し変わった切り口でした。社内では、「面白い著者捕まえてきたんじゃない」という声はありつつ、「これはどういう人が読むのか」という部分は慎重に精査したところです。

メタバースとバーチャル美少女ねむ「人類美少女計画」の関係

インタビューに答えるねむさん。2017年デビュー当初より「人類美少女計画」を活動コンセプトとしている

──なるほど。先ほど、「アイデンティティー」「コミュニケーション」「経済」「感覚」と4つの軸における「コスプレ」というお話も出ました。本書の後半部分というのは、ねむさんが2017年のVTuberデビュー当初から掲げている活動コンセプト「人類美少女計画」の主張そのものですよね。この「人類美少女計画」と「メタバース」ってどういう位置づけなんでしょうか?

ねむ まさか私の○○コスプレシリーズが書籍の章立てになるとは思ってなかったです(笑)。私が「人類美少女計画」と言っている、「アイデンティティー」「コミュニケーション」「経済」(+「感覚」)の三大コスプレでなりたい自分になろうという概念は、私が言い始めたころは単なる仮説にすぎなかったんです。

VTuberとして活動を始めたのも、この仮説を自分自身を実験体にして検証してみようというのが動機でした。「おまえは誰だ」という決め台詞も人体実験のようなものです。ここの詳細はぜひ、私が以前執筆した小説「仮想美少女シンギュラリティ」に詳しく書いてあります。3月24日17時までAmazonで無料キャンペーンをやっているので、ぜひ読んでみてください。

ただ最初の頃は、その仮説が私以外の人にも転用できるのかというのはわからなかったんです。ところが、コロナ禍で暇な時間が増えたときに、ちょうどVRChatをはじめとするメタバースの世界に来てみたら、まさに私が仮説として描いていた「人類美少女計画」が一部実現されたような世界が広がっていました。

そこで、「これが私だけではなく人類にとっての革命なんだ」ということに確信が持てたんです。今回、ソーシャルVR国勢調査で、それをデータとして証明できて、かつ「メタバース進化論」において「ホモ・メタバース」という呼称で改めて本にまとめることができた。私の活動コンセプトが単なる仮説ではなく、実現しつつある未来だということを示せて、かつそれを世間に発信することができたんです。

──まさにそうですね。活動コンセプトとして掲げていた「人類美少女計画」に時代がようやく追いついてきたというのは本当にすごいことです。

ねむ すごいですよね。私自身、こんなことになるとは夢にも思っていなくて、正直驚いています(笑)。

石井 やはり、ねむさんの活動に(「人類美少女計画」という)一貫した主張があったからこそ、章立てもそうですし執筆も、ブレがなく芯の通った内容をスピーディーにまとめられたんだと思います。

タイトルの元ネタはハラリとジャレド 文化人類学の影響

──今回、本書のタイトルが「メタバース進化論」、英題で「Homo Metaverse」(ホモ・メタバース)という造語も使われていました。このタイトルはどうやって決まったんでしょうか?

ねむ やはり、かっこいいタイトルにはしたかったです。今、メタバースってある種、現実に居場所が見つけられなかったり、心身の不一致であったり、ネガティブなものを理由にメタバースをやっているという見られ方をされがちです。ただ、私はそれだけではいけないと思ってます。それでは人類にとってもったいない。

そうではなく、普通の人からすると不思議に思われてしまう「美少女キャラクターになる」みたいなもの、もうそれが最高に新しくてクールなんだよ、人類の最先端なんだよというメッセージを伝えたかったんです。それが「ホモ・メタバース」というコンセプトです。

かっこいい、目指したいと思えるものでないとメタバースに対して希望が持てないと思うんです。だからどうポジティブなのかを、細かく解説するというものもありつつ、「進んでてすごい」「自分もそういう未来に行きたい」と思ってもらえるように「進化論」というテーマを付けました。

石井 初めは、「今はまだ何もないメタバースの荒野から」というタイトル案もありましたね。サブタイトルに「荒野」という単語は入れているのですが、そういう可能性はあるけどまだ何もないとか、ここから生まれていくんだというメッセージも伝えたいものでした。

──思い切ったタイトルワークですよね。「ホモ・メタバース」と聞くと、どうしてもあの本が頭をよぎるのですが、本書を執筆するうえで参考にした本などはあるんでしょうか?

ねむ そうですね。お察しの通り、「ホモ・メタバース」はユヴァル・ノア・ハラリ「ホモ・デウス」が元ネタです。

実は、表紙のデザインも少し「ホモ・デウス」を意識してるんです。これは私が勝手に言っているだけなので真に受けないでほしいんですが、「ホモ・デウス」の書影ってカプセルの中に赤ちゃんが入ってますよね。今回の「メタバース進化論」では、その赤ちゃんが成長したのが私だという裏設定があります(笑)。

──それは面白いエピソードですね。

ねむ あと、本書の中でも引用しましたがジャレド・ダイアモンド「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」や、平野啓一郎「分人主義」などにも影響を受けています。文化人類学とかがすごい好きで、ジャレド・ダイアモンドとかは私の愛読書なんです。

「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」で面白い話があって、人間が恋愛をするのは、子供を育てるためにお互いを思いやる感情というのを発達させる必然性があったからという説明がされてるんです。要するに、恋愛感情というのも人類の進化の過程で生まれた通信プロトコルなんですよという。

その一方で、メタバースというのは人間の本能までもを上書きできる可能性があると思っています。私たちが今まで当たり前だと思っていた、恋愛観や人間関係みたいなものを根本的に作り替える力がある。そこが本質的には一番すごいところです。人類の思想や価値観そのものをアップデートさせる可能性を秘めている。この本質的な可能性に気づいて、面白さを共有してくれる人が増えたらなと思っています。

──そうですね。この本の非常に面白いなと感じたところは、そうしたメタバースを軸にした思想の部分にまで踏み込んでいる部分です。

メタバースがある種バズワードのようなかたちでブームになっているこのタイミングで出やすい本というのは、入門書やガイドブック的なものだと思います。そうしたブームに乗った通り一遍の解説書ではなく、中長期、それこそ10年、20年、50年、100年といった単位で見たときにメタバースがどう人類の思想や価値観に影響を与えていくのか、そうした大局的な視点に立っているのがとても面白いなと思いました。

ねむ そこの感覚を伝えるというのが今のメタバースのミッションだと私は思っています。ぶっちゃけ、本を読んだ人がメタバースに実際に来るということだけが正解ではないんです。技術的な課題は時間が解決します。そこではなく「価値観」。これまでの価値観が一変する可能性があるというのを知ってもらって、その相転移に心の準備をしてもらう。それが本書の目的です。

ブームは一過性? 普及のカギは「覚悟」

──なるほど。必ずしも現時点でメタバースに来なくてもいいというのは面白いですね。最後あとがきにおいても、「メタバースの普及に必要なのは受け入れる覚悟だ」という文章がありました。ねむさん、石井さんから見て、今のメタバース・ブームというのはどうなっていくのか、展望をお聞きしたいです。

石井 私は正直、こうしてワッとブームになったタイミングで、それに乗っかって盛り上げていくという立場ではあります。この手のブームというのは、DXであったりAIであったり定期的に出てくるんです。誰かがそれを流行らせてお金を稼ぎたいんでしょという冷めた見方もできます。

メタバースというアイデア自体は、以前も「Second Life」などで話題になっています。AI・人工知能というのも、何度か波があった中で、徐々に社会に定着していったと聞きます。今のブームがいつまで続くかというのは正直わかりません。ただ、人工知能のように、今回のブームが終息してしまったとしても、時代の流れとともにこうしたアイデアは形を変えて何度も出てきて、長期的に見ると本書で書かれているような方向に社会が向かっていくのではないかなと思っています。

ねむ そうですね。私の結論としては、まだ一般人に受け入れられるレベルにはメタバースという概念は完成していないと考えています。10年・20年というスパンで見れば、当たり前のように広がっていくと思いますが、ぶっちゃけ、いま普通の人がメタバースに入ってくる必然性ってあまりないんです。「なりたい自分になる」とか言われてもなんのこっちゃというのが正直な感想だと思います。

技術自体、まだ揃ってきていないですし。いまのVRゴーグルとかもまだまだ発展途上で、私やアシュトンさんは毎日平気で何時間も被ってますけど、普通の人が毎日これを被ってVRをやるかと言われればまだまだ無理です。そもそも、ソーシャルVRを含め、メタバースプラットフォームに経済性がまだ整っていないというのも課題です。システムを見ても、デバイスを見ても、普通の人がそれこそiPhoneのようなレベルで使うようになるにはまだまだ時間がかかりそうだなというのが私の肌感覚です。

とはいえ、技術の部分は投資が回ればすぐに解決するものです。一番ネックなのは、「考え方」の部分です。メタバースっていう新しい世界が生まれたときに、そこで私たちはどういう世界を作るのか、そこが大事なんです。今は、そうしたメタバースの持つ「価値観」というのを、想像力を掻き立てて理解してもらって、受け入れる心の準備をしてほしい。その心の準備の事を本書では「覚悟」と言い表しました。

原住民がデータで語る「メタバース進化論」

──受け入れる心の準備、「覚悟」が必要だという話はとても刺激的でした。最後に、読者の方へ向けて本書のアピールポイントを改めてお聞かせください。

ねむ 自分で言うのもなんですが、やはりほかの本とは説得力が違います。「原住民がデータに基づいて書いている」というインパクトは大きいと思います。本を書くとなったときに、あまりふわふわした内容は書きたくなかったんです。「私がこう思いました」みたいなものではなく、「実際にデータを見てください!」「ほんとにファントムセンスはあるんです!」みたいな、有無を言わさない説得力を出したかったし、そこに特に力を入れました。メタバース原住民のリアリティーみたいな部分をぜひ感じ取っていただけたらなと思います。

石井 そうですね。原住民がデータを基に書いた本というのは、今後もなかなか出てこないだろうなと思います。メタバースなんてバズワードでしょみたいに斜に構えて受け止めている人にこそ、ぜひ読んでいただきたい。

私も、実はもともとはメタバースに前のめりで期待していた人間ではなかったんです。「流行らせてお金を稼ぎたいだけでしょ」という気持ちがありました。ただ、ソーシャルVR国勢調査を見て、本書をねむさんと一緒に作っていく中で、その可能性というものにどんどんのめり込んでいきました。

単なる流行言葉という枠を超えて、そこには本当に全く想像のつかないような別世界が広がっていて、コミュニティーが生まれていて、新しいカルチャーが生まれている。そうしたリアルな部分を少しでも感じてもらえると、面白いかなと思います。

インタビューを終えた両氏 左:技術評論社・石井編集者 右:著者・バーチャル美少女ねむ

単なる流行本にとどまらず、実際にメタバースで日々を暮らす原住民が、1200件以上ものアンケート結果を基にデータで語る「メタバース進化論」。もうすでにメタバースプラットフォームで日々を過ごしているホモ・メタバースも、そうでなく最近なんとなく耳にするメタバースという言葉に興味を持った人も、ぜひ書店で本を見かけたら一度手に取ってみてほしい。そこには、あなたの知らない新しい世界が、人類の進化の可能性が広がっているかもしれない。「メタバース進化論」は、3月19日よりAmazonほかネット通販、および全国書店にて販売を開始している。Amazon Kindleにて電子版も発売中だ。

(TEXT by アシュトン

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