えのぐの革命宣言など、今年もVTuberたちが爪痕を残した! 「バーチャルTIF」 レポート

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夏のアイドルの祭典「TOKYO IDOL FESTIVAL 2022」(TIF2022)が8月5~7日に開催。2020年に始まったオンライン限定のステージ「バーチャルTIF」には、今年も数多くのバーチャルアーティストらが出演した。VTuberファンにとっても夏の恒例イベントとして定着してきた世界最大級のアイドルフェスの模様を、ダイジェストでレポートする。


えのぐがお台場のステージで「VRアイドルの革命の日」宣言!

バーチャル勢の中で最も早く「TIF2022」のステージに立ったのは、えのぐ。「バーチャルTIF」が始まる前年の2019年に、バーチャル勢としては初めて「TIF」に出演したVRアイドルは、「バーチャルTIF」の6日・DAY2に加えて、5日・DAY1には、お台場で現地開催した「HOT STAGE」にも登場。Zepp DiverCityのステージで6曲を披露した。

1曲目に自己紹介曲「e☆Jump!→Dream!!」を歌った後のMCでは、メンバーの鈴木あんずさんが客席に向かって「私たちのこと『知ってるよ』って方、どれくらいいらっしゃいますか?」と質問。元気に手を振るファンもいて、メンバー全員で「嬉しい! ありがとうございます!」と感謝を伝えたが、手を上げた観客は半数以下。その現状をしっかりと受けとめた鈴木さんは言葉を続ける。

「これが私たちVRアイドルの現在地点です。アイドルが大好きで、アイドルに詳しい皆さんでも、私たちのことはあんまり知らないっていうのが現実です。だからこそ、私たちはその現実に革命を起こしたいと思っています。今よりもっと、いろいろなアイドルの形が認められて、さらに多くの方がアイドルっていう素敵な文化を好きになる。そういう未来の可能性をこの『TIF2022』でご覧いただくために、私たちはこの場所に来ました! VRアイドルのことを全然知らないという人も、今から20分ちょっと楽しんでいただけると嬉しいです!」

自分たちやバーチャルアイドルの活動を知らない観客も多い会場にも関わらず、力強く堂々としたメッセージを発信した後は、初公開の和ロックな新曲「鏡花水月」など5曲を披露。歌とダンスの中にも込められた熱い思いは、きっと「えのぐ初見」のアイドルファンにも届いたはずだ。

午後からは、屋外ステージの「ENJOY STADIUM」にも初めて出演したえのぐ。鈴木さんのMCは「HOT STAGE」よりもさらに熱く、改めて「革命」を宣言した。

「VRとかバーチャルとかそういう見た目は関係なく、アイドルとして、他の尊敬するアイドルの皆さんと純粋にパフォーマンスで勝負したいと思って、このステージに来ました。今日はVRアイドルの革命の日です! その目に焼き付けていってください!」

真夏の屋外で、「BRAVER」「フラストレーションガール」「Defiant Deadman Dance」と、熱い3曲を披露。筆者は残念ながらオンラインでの取材だったが、おそらく会場はますます暑くなっていたことだろう。


ちゃんまり、めぐちゃんもTIFに初出演!

3回目の開催となる「バーチャルTIF」では、全9組のバーチャルアーティストが「TIF」への初出演を果たした。その中の一人がDAY1に登場した「ちゃんまり」こと、かしこまりさん。VTuber黎明期の2018年2月から活動を始め、6月にはライブハウスでの1stソロライブを開催するなど、歌系VTuberを代表する存在の一人として長く活動してきたシンガーソングライターだ。現在は、バーチャルタレント事務所「Re:AcT」に所属している。

最初に披露したのは、7月15日発売されたミニアルバム「MARIAGE」の収録曲で、自身が作詞作曲の「ススメ!」。爽やかでポジティブな元気をもらえる楽曲だ。

MCでは、嬉しそうにステージ上を駆け回った後、憧れの「バーチャルTIF」へ出演できた喜びをハイテンションに語ったかしこまりさん。力強くエモーショナルな歌声と、ほろ酔い配信などで見せる明るく楽しいキャラクターのギャップという持ち前の魅力を「バーチャルTIF」のステージでも発揮していた。MCの後も、最新ミニアルバム収録曲の「Dear…」と「ユビキタス」を熱唱。3曲のステージではあったが、クライマックス感あふれる「ユビキタス」を聴いていると、まるで長いソロライブのアンコールのような感覚に。間奏での「もう終わっちゃう! やだ!」という言葉には、激しく同意した。


DAY2に登場した東雲めぐさんも、ブームの初期から、聴いているだけで心がほっこりと癒される朝配信で人気のVTuberながら、「バーチャルTIF」は初出演。オリジナル曲「FUNKY MONKEY LOVE feat. キツネDJ」を歌った後のMCでは、「TIF」の会場にお客さんとして来たことがあるほどのアイドルファンで、そのフェスに自分が出演できたことへの喜びと驚きを語った。

MCに続いては、オリジナル曲「ぼくらのワンダーランド」と、「thirsty thirsty」を初披露。新曲は今年の4月6日に二十歳になった記念に作ってもらったお酒がテーマの曲ということで、キャッチーなメロディと可愛らしい歌声とダンスに惹きつけられると同時に、「毎日、登校前に朝配信をしていためぐちゃんがもう二十歳で、お酒の曲を……」という謎の感慨もあった。


人気VTuber神楽めあが王道アイドルに!

DAY3に登場したNHOT BOTは、ソニー・ミュージックエンタテインメントとbilibiliが主催する「バーチャルシンデレラプロジェクト」が生み出したバーチャルアイドルグループ。1年間限定で活動しているため、「バーチャルTIF」への出演は、当然、今年が最初で最後だ。人気VTuber神楽めあさんが参加しているアイドルユニットということで筆者も存在は知っていたのだが、ステージでのパフォーマンスを観たのは今回が初めて。制服テイストのある揃いのアイドル衣装や、6人でのフォーメーションダンスなど、想像以上に完成度の高い王道アイドルぶりには正直、驚かされた。

最初に歌った1stシングル「明日君の手を握れたなら」と、ドタバタ感も楽しかったMCの後に初披露された2ndシングル「NHOT BOT」は、どちらも非常にライブ映えする楽曲。限られた活動期間の中で、できるだけ多くパフォーマンスを観たいと思うような魅力を感じるグループだった。

同じくDAY3で「バーチャルTIF」初出演を果たしたのが2人組のバーチャルアーティストTacitly。「生放送アニメ 直感×アルゴリズム♪」から生まれたユニットで、1曲目には、40mPさんの「からくりピエロ」をカバーし、リリアさんとシエルさんは美しいハーモニーを響かせた。自己紹介を挟んだ2曲目は、オリジナル曲のメドレー。日本語、中国語、英語の3か国を操りながら、幅広いテイストの楽曲を次々に歌っていくことで、二人の高いボーカル力がより伝わってくる。

最後の曲は、ドイツ在住のボカロP、KIRAさんが作詞、作曲を手掛けた新曲「VOICE」。キャッチーなリズムに乗った切ないメロディは、二人の歌声と相性抜群。2曲目がメドレーだったこともあってか、わずか3曲とは思えない充実感を感じるステージだった。今年4月の「VTuber Fes Japan 2022」に続く大型フェスへの出演となったが、今後もさまざまなVTuberイベントで二人のステージを観られそうな予感がした。

ライブステージだけでなく、リアルアイドルを含めたさまざな顔ぶれによるバラエティステージも楽しかった「TIF」。短いダイジェストのレポートでは、その魅力は到底書き切れないほどの濃密な3日間だった。

(Text by Daisuke Marumoto

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