世界最大のアイドルイベント「TOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)」が今年も夏のお台場に帰ってきた。8月4日(金)から6日(日)まで、お台場・青海周辺エリアの8つのステージなどで「TOKYO IDOL FESTIVAL 2023」が開催されている。
新型コロナ禍による影響で完全オンライン開催された2020年に生まれたバーチャルタレントメインのステージ「バーチャルTIF」は、残念ながら今年の開催はなし。しかし、2019年にバーチャルタレントとして初めて「TIF」のステージに立ったVRアイドルえのぐは、5年連続5回目の出演。昨年から始まった企画「TIFアイドル総選挙」にも2年続けて出馬している。
鈴木あんずさん、白藤環さん、日向奈央さんの3人が初日の屋外ステージ「DREAM STAGE」で披露した、熱い魂とメッセージのこもったパフォーマンスをレポートしていく。
鈴木あんずの熱すぎるほどに熱いMCで開幕!
「DREAM STAGE」があるのは、球体の展望室でお馴染みフジテレビ本社ビルの1階広場「ロッテ ふ~せんガム ステージ」。予想最高気温36℃の猛暑日、太陽が高くなってきている朝11時5分からの屋外ステージの取材には、若干の恐怖すら感じながら会場に来たのだが、ステージの場所はフジテレビ本社ビルの北西。完全に日陰になる時間帯で、思いの外、快適な気温下でライブを堪能することができた。
えのぐのステージの時間が迫り、入退場自由な観覧エリアに一目見て「えのぐみ」(えのぐファンの愛称)と分かるシャツやアイテムを持った人が増えてくる。その中に人気アイドルグループ「Appare!」のTシャツを着たファンを見つけて、少し心が温かくなった。Appare!は、2マンライブを行うなど、えのぐにとって特に交流が盛んなアイドルの一つ。4日の「DREAM STAGE」には「Appare!」も出演するが、それは約4時間後の15時10分からで場所取りとは思えない。きっと、過去の共演で観たパフォーマンスをきっかけに、同時開催されている数多くのアイドルのステージの中からえのぐを選んだのだろう。
開演時間になり「DREAM STAGE」奥のスクリーン内のバーチャルステージにえのぐの3人が登場。パフォーマンスを始める前に、鈴木さんがこのステージに対する熱い思いを叫んだ。
「今日、私たちはアイドルとしての誇りをかけてこの場所に来ました! ご覧のとおり、私たちの見た目は他のアイドルの皆さんとは違います。この見た目だからアイドルとして認めてもらえないこともあって、それをコンプレックスに思ったこともありました。でも、このバーチャルな見た目も私たちの個性です。それを引っくるめて私たちなんだって自信を持って活動しています。他のアイドルさんと同じように、平等に観て下さいとは言いません。それでも『えのぐはすごかった』って言っていただけるようなライブをします。今から25分間、私たちから目を離さないでください!」
自信と決意の込められたMCからの1曲目は、壮大な夢を見るアイドルの思いを歌った「LIVE Ⅳ LIKE」。1曲目からキレキレの3人の全力パフォーマンスが道行く人の興味を引いたのか、気が付くと「DREAM STAGE」観覧エリアの人口密度がさらに高まっていた。
夏にぴったりの新曲を初披露
最初の曲を歌い終えてキャッチフレーズ付きの自己紹介をした後には、初めてえのぐを観るという人に向けて白藤さんが「歌もダンスも生だし、みなさんのこともばっちり見えてまーす」と簡単な説明。リアルとバーチャルという姿の違い以外は、他のアイドルと何ら変わりがないことを改めて伝えていた。そして、2曲目はこのステージで初披露となる新曲「SUN HIGH SUMMER!!!」。
えのぐには、8月26日(土)にKT Zepp Yokohamaでのワンマンライブ「大絶響祭 2023 SUMMER -轟々爛々-」も控えているだが、その前に新曲を披露することからも「TIF」にかける思いの強さが伝わってくる。イントロが流れた瞬間に夏曲だと分かる熱さと爽やかさを兼ね備えたメロディの「SUN HIGH SUMMER!!!」。青春感があり、可愛くて、どこかコミカルさもあるというえのぐのさまざまな魅力を感じさせながら、新鮮さも感じさせるという希有な曲だった。
新曲に続いては、40曲を超えるえのぐのオリジナル曲の中で治安ワーストなメタルコア「Defiant Deadman Dance」を熱唱。日向奈央さんのシャウトからのロングトーンをはじめ、新曲で見せた姿とはまったく異なる激しい一面を見せつけていく。
一気に高まった熱気は、疾走感ある「フラストレーションガール」にあおられてさらに加熱。そして、鈴木さんの最後のMCもそれに拍車をかける。
「私たちは何度も何度も高い壁にぶつかって、跳ね返されてきました。今でも上手く行かないことばっかりです。それでも、私たちは絶対に諦めません。私たちみたいな存在がもっともっとたくさんアイドルとして輝ける未来を目指して、何度でも瞬きます!」
「DREAM STAGE」でのパフォーマンスの最後を締めくくったのは、自分たちの不屈の思いを歌いつつ、みんなへの応援歌でもある「星は三度瞬く」。
結成メンバーの一人である夏目ハルさんのアイドル活動引退という大きな変化により、2023年からは現在の3人体制で活動しているえのぐ。4人体制最後の曲「LIVE Ⅳ LIFE」で始まり、異なる方向の熱さを持った3曲で会場を盛り上げた後、3人体制最初の曲「星は三度瞬く」で締めるセットリストからは、25分と短いながらも、ワンマンライブのような密度の濃さを感じた。
えのぐ最後の「TIFアイドル総選挙」の結果は?
パフォーマンス後は、白藤さんが「今日のライブが皆さんの心の真ん中に届いたら、ぜひ私たちに投票してくれると嬉しいです!」と「TIFアイドル総選挙2023」での投票を呼びかけて、3人で「よろしくお願いします!」と挨拶。数多くの応援に感謝しながら退場した。
2018年の結成以来、「VRアイドルが当たり前な存在なること」と、その世界において「世界一のVRアイドルになること」を目標に掲げて活動してきたえのぐ。出馬できるのは結成5年目までのグループだけという縛りはあるが、世界最大のアイドルフェス「TIF」で実施される「アイドル総選挙」での好成績は、その夢を現実に大きく近づけるための一歩になるはずだ。
現在開催中なのは、20組が出馬している予備選挙。予備選挙の投票は、4日(金)と5日(土)の2日間で、投票方法は3種類。現地会場でスマホから投票する現地投票と、会場に設置された缶バッジのガチャガチャを回すと投票できるカプセル投票。そして、現地に行けない人も、オンライン配信「TIFコミュニティ」でオンライン視聴チケットを購入者した人が投票できる配信投票で投票可能だ。
20組中8組がパフォーマンスを終えた、4日(金)21時時点の中間結果では3位のえのぐ。最終結果でも3位に残ることができれば、「TIF 2023」の最終日に「HOT STAGE」で行われるグランドフィナーレに進出。「TIFアイドル総選挙2023」の1位の座を賭けて、再び「TIF 2023」のステージに立つことができる。
昨年は、予備選挙4位という惜しい結果で本選挙に進出できなかったが、今年が結成5年目のため、勝っても負けても最後の挑戦となる「TIFアイドル総選挙」において、昨年越えられなかった壁を乗り越えることはできるのか? えのぐの出演ステージは、すでに終了しているため、アーカイブ視聴も可能なオンライン視聴チケットでの配信投票で、どれだけ票を伸ばせるかが鍵となる。まずは、5日(土)の夜に発表される予備選挙の最終結果を楽しみに待ちつつ、きっとその先にあるはずの「TIF 2023」最後のステージにも期待したい。
(TEXT by Daisuke Marumoto)
●関連リンク
・「TIF 2023」 公式サイト
・「TIFアイドル総選挙2023」詳細
・TIFコミュニティ(オンライン視聴チケット販売サイト)