#10 HIMEHINA「愛包ダンスホール」【Pop Up Virtual Music】

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たった1曲のバズが、それまでの活動を一変させるケースは多々見られる。

新人・中堅・ベテランに変わらず、それまでの活動は激変。いままでのファンとはまるで違う一見さんがファンとなり、アーティストの魅力に引きずり込まれていくキッカケとなる。

ここ数年において、VTube~バーチャルタレントシーンからはシーンを飛び越えるようなバズを生む楽曲が生まれていることは、以前本連載のなかで記したとおり。今回はHIMEHINAについて、そして「愛包ダンスホール」について触れてみようと思う。

HIMEHINAは、2018年5月25日にYouTubeチャンネルを立ち上げ活動をスタート。田中ヒメ鈴木ヒナによる2人組デュオとして活動してきた。

ピンクの髪の毛をお団子にしてチャイナドレスを着た田中ヒメ、ブロンドの髪の毛に青い短めのトップスとショートパンツで着飾った鈴木ヒナ。笑いとしゃべりが止まらない田中ヒメ、おっとりとしたムードながらも天然気味なノリの鈴木ヒナ、つねに楽しげなムードを発している2人はこれまで多くの生配信・企画動画を生み出し続けてきた。

さまざまなゲーム、ASMR動画、スタジオを使った企画と、その内容は様々、6年近いあいだに500本以上(!)の動画を投稿してきた。

実は、こういったバラエティ系動画の多くは現在限定公開動画となっており、YouTubeチャンネルからそのまま見つからない状態となっている。もちろん視聴できないように引っ込めたのではなく、再生リスト「元気が出る動画」「手元が震える動画」「ヒメヒナ集会シリーズ」などから順々に見ることができる。


なぜこれら500本近い動画を限定公開動画にし、リスナーから見えづらいようにしているのだろうか。そこには、彼女らが歌や音楽に対してよりフォーカスして活動していこうというスタンスが現れている。

2019年1月9日に初のオリジナル楽曲「ヒトガタ」をリリースし、音楽活動をスタートさせたHIMEHINAは、その後も堅調な活動を続けていった。2020年からは田中ヒメ・鈴木ヒナが年1曲のペースでソロ曲をリリースしており、コロナ禍という大きな奇禍にあっても活動を停滞させること無く突っ切ってきた。

2024年7月中旬現在、オリジナルアルバム3枚、カバーアルバム1枚、シングル14枚をリリースしており、オンライン・オフライン問わずライブ・イベント出演もかなり多い。おまけにライブ配信を行ない、企画動画を制作するのだから、かなり体力を使うのはいうまでもない。特に2人の場合、トークのテンションが高く楽しげなムードが常だから、特に喉を酷使してしまう。

そのため、2023年8月ごろから「アーティスト活動の本格化」と銘打ち、それまでの活動から方向性を一新した。先程のバラエティ動画の限定動画化も含め、喉を酷使しないよう守っていくと公式サイトでしっかりとアナウンスがされている。

ヒメヒナ大変身と今後のポリスィについて by中島

2023年10月31日にはHIMEHINAが所属する株式LaRaが、Brave groupとの経営統合を発表。ここPANORAでも2社の代表に直接話しを聞いている(インタビュー記事)。

RIOT MUSICやぶいすぽっ!を傘下にして両プロジェクトを伸ばしているBrave groupの下、「クリエイティブ至上主義」を曲げること無く継続していくことを語っているが、このなかで大きな目標として掲げられたのが、「武道館公演を目指す」宣言だった。

「武道館公演を目指す」宣言は、2023年8月に大宮ソニックシティにて開催されたライブ「提灯暗航、夏をゆく」のなかで、音楽活動の本格化とともにMCされた言葉だ(ライブレポート)。このMCを聞いたことがキッカケでBrave groupとの経営統合へと至ったというのだから、影響力・注目度がいかに高かったかが分かるはずだ。

「アーティスト活動の本格化」「武道館公演を目指す」「経営統合」2023年夏から秋にかけてHIMEHINAの周囲は大きな変化が訪れていたわけだが、そんななかで起こった大爆発が、2023年12月15日に音源・MVリリースされた「愛包ダンスホール」だった。

KEYTONE所属の作曲家・涼木シンジによる作曲・編曲、HIMEHINA活動初期から作詞に携わってきたGohgoが作詞に携わったこの曲。MVではおめがシスターズの2人、因幡はねる、犬山たまき、.LIVEからもこ田めめめや花京院ちえり、にじさんじから緑仙・ドーラ・シスタークレア・樋口楓など、HIMEHINAを古くから知る19人の女性VTuberらが揃い、一斉にダンスするラストシーンがファンの注目を集めた。

だが、この曲でもっともヒットしたのはその部分ではない。サビへと入っていく際の「パパッパッパッパパ!パーイ!」から「愛包!愛一杯!で惚れ惚れよ」へと繋がっていく印象的なメロディライン・シンセサウンド、そこからキュートにダンスしていく流れは、HIMEHINAの2人というMV映像とともに強烈なワンツーパンチとなった。

年が越えた2024年以降、TikTokやInstagramを中心にしてこの部分を導入にした多くの踊ってみた・ダンス動画が生み出されるようになった。ヒメ・ヒナ2人とゲストによるダンス動画を皮切りに、ユーザーが3Dキャラを使って踊らせたダンス動画だけでなく、多くのTikTokerらがさまざまな動画を投稿。

ダンス動画に留まらず、お料理動画から愛らしいペット動画にも使われ、何でもないBGMとしても使われるほどとなり、その勢いは次元・国・言語を飛び越えたのだ。

@re_na1111

この曲と振り付けなんか可愛い💓 振り間違えた😛💦 #田中れいな

♬ 愛包ダンスホール – HIMEHINA
@dor8d0

“We did it guys, we’ve saved this nation🦅🇺🇸” #supremecourt #usgoverment

♬ 愛包ダンスホール – HIMEHINA

その勢いはもちろんHIMEHINAがプラットホームとしているYouTubeにも及び、MVと同じく彼女らを知る多くのVTuberを中心に、多くのダンス・踊ってみた動画が投稿された。「愛包ダンスホール 踊ってみた」で検索すれば、ホロライブ・にじさんじ・あおぎり高校・個人勢と彼女らと親交のあるなしに関わらず多くの面々がズラリと並び、一様にこの曲を踊っているのだから壮観の一言に尽きる。

そんなこともあり、YouTubeの再生数は半年ほどで2000万再生を超え、チャンネル登録者数増加へと繋がった。2024年1月に80万人を突破したかと思いきや、わずか3ヵ月後の4月19日には90万人を突破。リリースしてから半年ほどで20万人近いチャンネル登録者が集まった。

SpotifyやYouTube Musicなどでもプレイリスト入りしたことで再生数が大幅に伸び、さまざまな音楽チャートでバイラルヒット。その後、海外でのJ-Popチャートの上位にランクインするほどの勢いを見せた。いままでとは比べ物にならないレベルで視聴者・ファンが増えつつあるいま、活動6年目にしてHIMEHINA史上最大級の追い風が吹いている状況なのだ。

そんななか、HIMEHINA LIVE 2024「涙の薫りがする」が8月2日(金)、3日(土)と開催される(ライブ公式ペページ)。場所は彼女らがこれまで何度もライブを催してきた豊洲PIT、「藍の華」「希織歌と時鐘」「アイタイボクラ」につづき4度目となる”ホーム”でのライブである。

Day2はYouTubeで無料視聴ができるが、それは彼女らが”広く知られること”に重点を置いている何よりの証左である。冒頭で書いたように、たった1曲のバズが、それまでの活動を一変させるケースは多々見られる。この追い風をHIMEHINAがどのように乗っていくか、この2日間のライブで見せてくれるはずだ。


(TEXT by 草野虹

*連載一覧はこちら → Pop Up Virtual Music


●過去のライブレポート
待ち望まれたVTuber界の「歌姫」が降臨 HIMEHINA初のワンマンライブ「心を叫べ」レポート(2019年)
ヒメヒナ「HIMEHINA LIVE 2021『藍の華』」ライブレポート 「オンラインでも現地」を願った仕掛けと演出に涙(2021年)
ヒメヒナ「希織歌と時鐘」レポート ライブ氷河期に希望の鐘を響かせた名ステージ(2021年)
ヒメヒナ「HIMEHINA Live2Days『アイタイボクラ』」レポート 「やっと会えたね」に涙し、決意の2億円借金に驚く(2022年)
HIMEHINA LIVE 2023「提灯暗航、夏をゆく」レポート 会場を包んだ声援と笑顔、やっとボクらはひとつになれた(2023年)

●関連リンク
「涙の薫りがする」公式サイト
X(田中ヒメ)
X(鈴木ヒナ)
YouTube
公式サイト