【詳報】ホロライブのアイドルVTuber・湊あくあ、涙の卒業ライブ約1万字レポート 「私は今日、伝説になりますから、ね」

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VTuber事務所・ホロライブの2期生である湊(みなと)あくあは8月28日、自身のYouTubeチャンネルにて無料の卒業オンラインライブを開催した(以降、彼女の愛称である「あくたん」と記載する)。

VTuber業界に詳しくない人に彼女をざっくり説明すると、公式では「マリンメイド服のバーチャルメイド。本人は頑張っているがおっちょこちょいでドジっ子」というプロフィールで、ゲーム実況や歌ってみたなど中心に活動していたVTuberだ。

YouTubeでのデビューは2018年8月。6年間で積み上げたチャンネル登録者数は225万人で、この数値はユーザーローカルのVTuberランキングにおいて全VTuberで11位というポジションになる。直近の生配信のアーカイブがどれも数十万再生を超えるほど熱心なファンを数多く抱えており、間違いなく大人気バーチャルアイドルと言える存在だ。

8月上旬、そんな彼女がホロライブを卒業するというニュースが発表されて、業界内外に大きな衝撃を与えた。そのインパクトは、今回の卒業ライブの数字にも反映されており、通常、VTuberの生配信においてYouTubeの同時接続者数が10〜20万まで伸びると「異常値」とみなされるところ、筆者が確認した限りで76万、Xの投稿によれば96万という瞬間もあったという数字だった。

この70万超えという数、筆者が知る限りVTuberの同時接続数においてぶっちぎりの1位で、日本のみならず海外からも多くの人が時間を割いて彼女の卒業を見守ろうとしてここに集まったものと思われる(ちなみに国内1位は、2023年12月31日にSnow Manが配信した大晦日ライブの133万超えと言われている)。

生身のアイドルで例えるなら、「欅坂46」や「AKB48」、「乃木坂46」のようなアイドルグループでトップ層が卒業コンサートを開催したレベルだろう。しかもVTuber業界では、あまりポジティブではない理由でいきなりグループから去っていくケースも目に付く中、あくたんの卒業は発表後にさまざまなコラボを重ねるなど十分な準備期間を設けた上で、最後はライブできれいに巣立っていくというまさに「有終の美」な流れだった。


そんな彼女が最後に残したものは何だったのか。

(自分でも言及しておいてなんだが)70万超えという同接ばかりが注目されがちなところ、実際、筆者が生配信を見て印象に残ったのは、1時間15分ほどのライブの最中、ものすごい流速のコメント欄で常に流れていた「ありがとう」の言葉だった。コメントの向こう側の涙も見えてくるようような、数字では測れない感情の昂りが伝わっててきたのが「いい卒業ライブだな」と感じさせた。

VTuberの歴史で絶対に外せない、まさにレジェンドというのに相応しかったこの卒業ライブ。オーディションの当初から彼女を追ってきたPANORAだからこそ、約1万字のレポートとしてきちんとまとめていきたい(本当は簡単にニュースにしようと思っていたのだが、書いてるうちにとてもそんな扱いで済ませてはいけないと感じて、1万字弱にまで膨らんでしまった)。


職業は「アイドルです」

20時にスタートした配信において、まず流れたのがムービーだった。

この見覚えのある室内……。ウェブアニメ「ホロのぐらふぃてぃ」でお馴染みの親の顔より見たホロライブ事務所だ。

その事務所の入口からを四つ足で進んでいるのは、彼女が生み出したキャラクター「NEKO」。そして、女性の声でナレーションが流れ出す。一瞬、「あくたんかな?」と勘違いしたが、Xの情報によれば佐倉綾音が声を当てたらしい。

「ここは、一人の女の子が、夢を、追いかけた場所
ここは、一人の女の子が、夢を、掴んだ場所」

次いであくたんの声で伝えられたのは、

「私、湊あくあは……
2024年……8月……28日をもって……
ホロライブを
卒業します」

という宣言だった。

すかさず挿入される過去の映像に、いやがおうにも彼女を追いかけてきた年月が想起される。冒頭から感情たっぷりの映像に、スーパーチャットも含めてコメント欄が見たことがないレベルの勢いに加速していく。


この前説ムービーを終えて、歌を歌い出すと思いきや、始まったのがインタビューパートだった。例の事務所に座るあくたんにインタビュアーとして質問を投げかけるのは、ホロライブを初期から支えてきた1期生でホロライブゲーマーズ出身の白上フブキだ。

最初の最初の「ご職業は」という問いには、「アイドルです」と力強く答える。「あ、アイドルなんですね。見た目はすごくメイドさんな感じですが」と否定するフブキに、首を横に振って「アイドルです」と答えるあくたん。

このアイドルに固執する受け答えが、実は後半のMCにもつながっていてとてもいい。

筆者の偏見でいえば、そもそも業界が広がり始めた2018年頃、VTuberはキャラクターの姿をしたネット芸人的な切り口でまず注目を集め、そこから歌やゲームといったジャンル特化のタレントが出てきたり、メインストリームが動画から生配信に移っていくという激動の変革を見せていた。

その黎明期を受けての2019年7月、ホロライブでは「ホロライブサマー」という水着を前面に出した夏イベントを打ち出し、一丸となってアイドル事務所に取り組んでいく姿勢を見せた。その後、2019年末までに3期生、4期生と新人がデビューしていき、止まらなかった勢いが2020年1月の1stフェス「ノンストップ・ストーリー」の興奮につながっていく。一連の流れを盛り上げてきた一人であるあくたんが発する「アイドルです」という断言は、相当に重みがある。


続く質問において、好きな食べ物は「オムライスだったんだけど、最近卵になりました」、チャームポイントは「後頭部」、好きな色は「あくあ色です。やっぱ自分の色なので、ピンクと水色でアクア色、いいです」と答えていくあくたん。

「ホロライブプロダクションに所属して成長したことは?」という問いに対しては、「成長、でもやっぱり、人と円滑にコミュニケーションがとれるようになりました」と回答する。

「これまで活動してきた中で一番の思い出は何ですか?」という言葉には、「色々あるんですけど、やっぱり一番と言ったらソロライブと全体ライブです。ソロライブをすることは、デビューした当時からの目標で、ステージに立った時はすごく緊張したけど、みんなの応援のおかげでがんばれました。みんなが照らしてくれたあくあ色のサイリウムの景色は今でも忘れません」と「あくあクルー」(湊あくあのファンネーム)との思い出を挙げた。


湊あくあにとって、ホロライブは「居場所」

ここから驚いたのは、「今一番腹を割って話したい人は?」という質問に「ああ……YAGOO社長(カバー社長の谷郷元昭氏)」と答えて、場面が切り替わってインタビューパートに突入したことだ。

カバー社内の会議室とおぼしきシーンに切り替わり、画面左に谷郷氏、右にあくたんという構図で、「お久しぶりです」という挨拶から唐突に対話がスタート。その質問も、内部にいるあくたんだからこそズバズバと聞けるものだったのがよかった。

まず、あくたんは「たくさん聞きたいことがいっぱいあるので、今日はお話ししていければと思います。いっぱいしゃべってくださいね。苦手なんでしゃべるの」と遠慮しつつ、「まず、簡単なものから、社長としての責任感で、胃が痛くなったりとか、うわーってなったりすることはありますか」と初手から豪速球を投げてくる。

これに谷郷氏は真っ向から受け止めて、「あんまり緊張するタイプではないかなと思いますかね。ただまぁ、基本日々、いろいろ課題を抱えているので、これを今日やらなきゃと言う感じで朝早く起きちゃう感じはありますかね」と語った。


2球目は「どうしてホロライブをつくろうと思ったんですか」という質問だ。

「なんていうか、もともと初音ミクさんというか、ああいうキャラクターで海外の人も含めて楽しませるようなコンテンツっていいなと思っていましたと。でも初音ミクさんって、初音ミクさん以外の人がいるわけじゃないので、たくさんの人が人気になれるわけじゃないなって思っている中で、何かVTuber的なシステムっていうのを自分たちで開発して、そういう色々な配信者さんだったりとか、そう言うクリエイターの方が初音ミクさんのようなバーチャルタレントとして活動できるとすごく世界中のファンの方を喜ばせるかもしれないなと思ってホロライブのシステムを開発して、こう言うサービスを始めようと思いました」

VTuber業界の始祖であるキズナアイが爆伸びしていたまさに2017年、VR卓球アプリをリリースした後に、VTuberになれる「ホロライブ」アプリを開発して、のちに0期生となる「ときのそら」と共に歩み出し、今につながる栄光の歴史の始まりだ。


「まさかこんな大所帯になるとは思ってなかったと言う感じですか、最初は」という質問には、「最初はこんなに大所帯になるとは……。まぁある程度はやっぱり海外の方にすごくたくさんのファンの方に届けていきたいと思っていたので、もちろんその規模としては大きいものを目ざしてましたけど、予想以上に順調に成長しているのかなと思います」と答え、「なんか……ちゃんと社長ですね! これ失礼なのかな」と驚きを引き出していた。

さらに「私、湊あくあは、ホロライブプロダクションに貢献できていましたかズバリ教えてください」と内角ギリギリの球を投げ込んでいく。

「貢献できていたと思いますね。ホロライブプロダクションというよりは、やっぱり湊あくあさんというタレントさんがTiktokとかで流行るような楽曲を提供するような活動ができて、色々な若い人にとっての憧れの存在になれたんじゃないかなって思っています」

「どんな印象を持たれているんですか、湊あくあに」

「基本的にすごく芯の強い方だなっていうふうに思っています。活動としてはアイドル的な側面もあると思うんですけど、配信のゲームが上手いってところが、ギャップっていうとアレですけど、ギャップになる部分なのかなと思いました」

「最後は社長から私に伝えたいことはあったりするでしょうか?」

「そうですね、やっぱり6年という長い期間活動していただいて、本当にありがとうございました。本当にお疲れ様でしたと言いたいですという形ですね。僕としてもまだまだ心残りの部分もあるんですけど、本当にこの6年ご一緒できたことがすごくよかったと思います」

そんな核心に迫るトークのあとに、「本当にホロライブに入れていただいてありがとうございました」「めっちゃ緊張しました。なんか生きてるんだなって実感しました」「YAGOOは妖精みたいな存在だから、一生会えない天然記念物みたいな存在だと思っていました」と、笑いも交えて感謝を伝えていたのが印象的だった。

 
場面がまた事務所に戻り、今度は手紙を読み上げるシーンに入る。「今、一番感謝を伝えたい人はいますか」という問いかけに、「いっぱいいますけど、一番はマネージャーさんです」と口にして、感謝をふんだんに盛り込んだ文章を読み始める。

特に

「第1の母はくみこ
第2の母はマリン(ホロライブ3期生の宝鐘マリン)
第3の母はマネージャーさんです

この4年間、たくさん愛情を込めて湊あくあをサポートしてくださり、本当にありがとうございました。私の担当でいてくれて本当によかったです」

というパートが、言葉の美しさを感じさせた。本人も「私が泣くわこれ!やだ!」と口にするレベルだ。


まだまだ質問は続く。「あくあさんご自身において変わらないものはなんですか?」という投げかけには、「変わらないもの……」と口にして「ッスー」と一息置き、体重計に乗って「44.5kg」という数字を見せつける。実はこの数字、過去にNintendo Switchの「リングフィット アドベンチャー」を実況した際、意図せず画面に映って体重バレしたという「事件」がルーツになる。卒業の大舞台で、たびたび話題になってきたネタを回収していくことに配信者魂を感じさせた。

 
インタビューを終えて、画面は再び事務所の映像に戻る。


「ここは、一人の女の子が、夢を、追いかけた場所
 ここは、一人の女の子が、夢を、つかんだ場所
 そしてここは、一人の女の子が、新たな道を、歩み出す場所」

最後に「湊あくあさんにとってホロライブとは?」と問いかけられて答えたのが

居場所

という一言だった。

「コミュ障」を自称し、年月を重ねてホロメン(ホロライブメンバー)と打ち解けてきた彼女が口にするからこそ重みがある言葉に、「よかった……」と共感した「あくあクルー」も多かったのではないだろうか。


ホロメンとのキズナにも涙

中盤からは、ようやくライブパートがスタート。ライブについては、配信を見てもらうのが一番早いため詳細は割愛するが、ざっくり前半はホロメンとのコラボ、後半はオリジナル曲のソロというセットリストだった。

 

選曲もとてもよく、前半で言えば、じん/自然の敵Pが生み出した物語「カゲロウプロジェクト」の最後の曲「サマータイムレコード」の

「泣かないように吸い込んで
『さようなら』しよう
秘密基地に集まって
笑い合った夏の日に
『また何処かで思い出して出逢えるかな」って
何度でも描こう」

という部分。

ホロメン1〜6期生+ゲーマーズの全員が代わる代わる出てきて歌った「キズナトキセキ」の

「サヨナラはキズナの
いつか辿り着く終着点
昇る陽が沈む様に
夜に染まる様に
だから永遠を願う」

というパート。

彼女とホロメンのつながりを随所に感じさせる歌詞に、彼女とホロライブを推してきた自分の過去を重ね合わせて、ジーンときた人も多かったはずだ。


後半も「あくあクルー」の心を揺さぶりっぱなしの内容だった。

「みなさんどうもー。こんあくあー、ホロライブ所属の湊あくあです! ということでマイクが変わってる、ここからは生パフォーマンスでお送りします! 湊あくあは今日で伝説になる! 銀河一のアイドル、湊あくあを目にしっかりと焼き付けてね、絶対だよ!」

と宣言。まず一曲、直前にアニメMVも公開した軽快なテンポの「あくたんのこと好きすぎ☆ソング」を歌い上げ、さらに自身のオリジナル11曲をメドレー形式で駆け抜けた。

終わったあとに「めっちゃ息やばくて、とんでもないことになってる。コメント早すぎて読めません」と触れつつ、このライブにかける思いをMCで語る。

「最後だからオリ曲全部歌いたいなって思っていて、全部歌うには24時間必要だということで、激長のメドレーにさせていただきました。ありがとうございますー。6年間ね、こんなたくさんのオリジナル曲をつくったんだなと、本当に、たくさんの歌を歌えて幸せでした。携わってくださったみなさん、聞いてくださってみんな、どうもありがとう。本当にどうもありがとう」

そんな感謝を口にして、

「次の曲はですね、このライブの直前に動画が上がった曲です。えー、ちょっと緊張してきた。ちょっと水飲も。やばい、水飲み過ぎ!? 人は緊張すると喉が渇くから、水が飲みたくなるらしいですよ、噂によると。……ということですね。よし!。みんなへ、6年間の感謝を込めて歌います。次の曲聴いてください、今日初めて歌います、『#きみいろプリンセス』」

と新曲につなぐ。この「#きみいろプリンセス」は、「#あくあ色ぱれっと」のアンサーソングとしてボカロPのJunkyが手掛けた楽曲で、一部、彼女も作詞したとのこと。

「キミと歩いたキセキ
絶対だよって約束 覚えてる?
私ひとりじゃ キミがいなくちゃ
輝かないわ

嘘みたいな程
キミを大好きな私
ぱれっとみたいに彩って
ホントだけの物語
未来はどうなるのかな
暗闇もない不安も消える
ずっと進んでいこう
これからも私を見てて」


まさにこの卒業ライブのためにつくられた、アイドルであるあくたんとファンとの関係性をふんだんに盛り込んだ歌詞だ。心に響かないといったら、嘘になるだろう。


「この奇跡が、積み重ねてきた思いが、私のこれからを支えてくれる」

楽しい時間は、本当にあっという間だ。「今来たばっかりー!!!」とコメント欄で声を上げる間もなく、刻一刻とお別れの瞬間が迫ってくる。

「ええー、もうここまできちゃったのか。ヤバい。ちょっと待ってね水飲も。ここまで来ちゃったの。え、やばいどうしよ。ここまで歌っちゃったんだ。まじか。やっと実感が湧いてきたやばい、やばいしか言ってないな」

そんな言葉を口にして、両手で自分を扇ぐあくたん。

「泣きそうなんだけど。泣いちゃうかも、本当に次の曲ボロボロでも許してくれますか。まぁちょっとお話をさせていただきたいと思うんですけど、いいですか」


続く彼女のMCに、またしても心を揺さぶられる。

「えー。泣いても笑っても、これで……卒業、ということで、アイドルにとって、死っていうのは、みんなに忘れられることだと私は、思っています。

これからも、私は、私で、いるよ。

卒業しても、まだまだ生きていくんだから、だからみんなも、私のこと忘れないでね。ああ、忘れないで、本当、忘れないで…おおお……。

ええ……。何かを始めるときって、必ず終わりも一緒に、考える、タイプなんですけど、私は、ホロライブに入ったときから、最後は輝いて終わりたいって、思ってました。漠然とね、そう思うと、ある意味、この卒業も、私のひとつの夢だっだなと思います。

物心ついたときから、ずっとアイドルになりたかった。

私、保育園のときの夢がアイドルだったんですよ。あはは、恥ずい! 本当になんか、本当はスカして、ケーキ屋さんとか、おもちゃ屋さんとか、親に言ってたりしたんですけど、キラキラ輝くアイドルになりたいなって、歌って踊れるアイドルになりたいなって、みんなに愛されるアイドルになりたいなって思ってました。

アハハ、すごくない? 夢を……叶えたんだよ、みんなのおかげで。自分の……部屋と……1台のパソコン。暗い部屋で、ただパソコンに向かってしゃべっていただけの私が、私の環境が、みんなのおかげで、どんどんどんどん変わっていって、本当にこんなことって、あるんだねー。この奇跡が、積み重ねてきた思いが、きっと私のこれからを、支えてくれると、思う。

そういう風に、今思っていることを、誇りに思います。

だから改めて、みんな本当にありがとう!」

涙声で伝えつつ、頭頂部が真正面に見えるぐらいに深々とお辞儀する。

「これさぁ、なんかさ、お辞儀した、お辞儀した秒数だけ(思いが込められている)みたいななんかあったりするかな。なんかもっとお辞儀しといたほうがいいかな。本当にみんなありがとう。

ああ……。それでは、ちょっと、名残惜しいんですけども、私は今日、伝説になりますから、ね、よし……。歌えるかな? 次が最後の曲になります。それでは、最後の曲、聴いてください。

『あくあ色ぱれっと』」

同曲は彼女の初めてのオリジナル曲で、2020年8月の1stソロライブ「あくあ色すーぱー☆どり~む♪」でも最後に披露した、この場に集まったみんなにとって宝物のような存在だ。

「何をしても不器用で
 何かとミスしてばっか
 ダメダメな私だって
 できる事があるの
 凹んで悲しくったって
 笑顔にしてあげるんだ
 ここにいるから早く私を見つけてね」

「これで本当に本当のラストでーす!NEKOだー! これに乗りまーす!」と、アリーナのライブで客席の間を回るゴンドラのように、NEKOに乗ってバーチャルライブ会場を飛ぶあくたん。

「ワガママで朝も苦手だし
ドジだしダメダメだけど」

という部分では、思いが募ったのか泣き出して、言葉を詰まらせてしまう。

「今日が本当に最高の日になりました。この景色を見せてくれて、本当に本当にありがとう。世界中、あくあ色に、染まれっー!」

そんな曲中のMCでは、間髪入れず、配信画面に過去のステージに立つあくたんの姿が回想ムービーとして映し出されて、視覚でもこれ以上ないくらいに彼女との思い出を煽ってくる。

「キミがいるから私がいるの
 こんな私を愛してくれる?
 ねぇもっと、ねぇもっと、まだもっと」

またしても感情が昂って「ああ……」と歌えなくなってしまうあくたん。たまらず右手で目を覆う仕草の先に、「あくあクルー」全員が画面には映らないバーチャルの涙を見出して、彼女の純粋な想いに共感したはずだ。

「ずっとずっと好きがいいの
こっち向いててよダーリン
あぁもう離さないから
絶対に 絶対ね 絶対よ
約束だよーーー!!!」

「ここまで応援してくれたファンのみんな、仲良くしてくれたホロメン、支えてくれたスタッフのみなさん、本当にありがとう……!ホロライブ最高」

絶唱とMCののち、感謝を口にして「愛しちゃうもっと」のフレーズでライブを終えた。


最後の最後を飾ったのは、ショートアニメだった。

大歓声のスタジアムのステージに立つあくたん。髪飾りを外してツインテールを解き、深くお辞儀をして、顔を上げる。悲しそうな表情を振り払うように、最後は満面の笑みを浮かべる。

最後は涙の「さようなら」ではなく、笑顔の「いってきます」で。

6年間、最後まで「湊あくあ」というアイドルを貫いてきた彼女の美しさを感じた卒業ライブだった。


●セットリスト
M1. 帰り道は遠回りしたくなる/ホロライブ2期生
M2.ロケットサイダー/湊あくあ、兎田ぺこら
M3. ラブポーション/湊あくあ、宝鐘マリン
M4. Little Busters! 〜 TV animation ver. 〜/湊あくあ、白上フブキ
M5. サマータイムレコード/Startend
M6. キズナトキセキ/ホロライブ

M7. あくたんのこと好きすぎ☆ソング/湊あくあ
M8. きらきら/湊あくあ
M9. あいわな/湊あくあ
M10. ヨーコソ!Sweet Carnival!/湊あくあ
M11. エイムに愛されしガール/湊あくあ
M12. プリンセス・キャリー/湊あくあ
M13. 恋愛ストラテジック/湊あくあ
M14. 君の最推しにしてよ!/湊あくあ
M15. 未だ、青い/湊あくあ
M16. uni-birth/湊あくあ
M17. For The Win/湊あくあ
M18. 海想列車/湊あくあ
M19. #きみいろプリンセス/湊あくあ

M20. #あくあ色ぱれっと/湊あくあ

(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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