
KAMITSUBAKI STUDIOに所属するバーチャルシンガー・花譜(かふ)は5月30日、香港にて音楽ライブ「宿声 in Hong Kong」を開催した。
今年3月、ぴあアリーナMMにて実施した5thワンマン「宿声 / 深愛」の「宿声」パートをベースに、ゲストに同じKAMITSUBAKI STUDIOに所属する理芽(りめ)、ヰ世界情緒(いせかいじょうちょ)を迎えて約2時間40分で全29曲を熱唱。うち2曲は中国語で歌うというサプライズを見せて、現地の「観測者」(花譜ファン)を熱狂させていた。
内容としては、歌に極振りしたような印象だった。というのも、KAMITSUBAKI STUDIOのライブでお馴染みの映像演出パートは冒頭だけ、衣装替えもなし、MCも最低限で、その分、時間のほとんどを曲に当てており、まさに歌に全集中で観客の心を動かしにきた感じだ(ついでにいうと左右のサービススクリーンもなしだった)。
そんな現場で心に残ったのは、観客の昂り具合だ。花譜が本当に好きで、自分たちのところに来てくれて、目の前で歌ってくれてることの嬉しさがずっと伝わってきた。ライブ中、客席はペンライトなどで応援するだけでなく、日本語で歌っている声が何度も聞こえてきて、多くの人の気持ちが重なっているのがとても心地よかった。いいライブは言葉の壁も飛び越えて届いて、きちんと心を震わせるのだなと改めて実感した。
花譜にとっては、翌日の31日にタイで開催する「AFA Thailand 2026」に出演するために、香港からバンコクに移動しなければならなかったというハードスケジュールだった本公演。配信なしの現地のみだった貴重なライブの様子をレポートしていこう。
開演前から昂る現地ファンたち
会場は日本のアーティストが海外ツアーで利用することも多く、この日は花譜のほか、日本のKing Gnu、韓国アイドルの「CLOSE YOUR EYES」がライブを実施していた。花譜のコスプレをしたり「ぬい」を身につけたファン、King Gnuのラフな格好でツアータオルを巻いた若者、CLOSE YOUR EYESのバッチリおしゃれした女子たちと、普段は交わり合わなそうな3つの客層が通路を歩き回っていて、まさに「混迷を極めていた」ような多様性がなんだか面白かった。
「宿声 in Hong Kong」の開場は現地時間の18時、開演は20時とちょっと遅めなスタートだった。会場に入ると、会場前部はフラットで、後部はなだらかな雛壇のように段差がついている。すべてに座席を用意しており、体感としては4000人ほどの収容人数に感じられた。来場者は20代男性が中心と、日本でのKAMITSUBAKI STUDIOのライブと変わらない印象を受けた。
開演15分前、花譜の影ナレが始まる。日本語で飲食持ち込み禁止などを説明したあとに、「今日はきてくれてありがとう。みんなの気配をバッチリ感じとっています。今すぐに会いにいきたいところですがが、もうちょっと待っててね」とコメント。すでに「かふかふ」していた客席はたまらず雄叫びを上げて、サイリウムを掲げる。
開演5分前にも彼女の影ナレが入り、「みなさん盛り上がる準備はできてますかー!」と日本語に続いて、簡体字中国語や繁体字中国語、英語でも呼びかけて、「やっと会えますねー! みんなー!」と気持ちを伝える。いよいよの時が迫った期待と興奮で、客席全体からは「ウォー!」と大きな歓声が上がる。

暗転して始まったのは、不協和音から入るオープニングムービーだった。花譜ファンにとってはお馴染みである渋谷の風景などがステージ上部に用意した横長の映像用LEDに映し出されて、次々とシーンが切り替わっていく。
徐々に盛り上げていくBGMのリズムに合わせてペンライトを振る客席。最後に「宿声」のロゴが現れると、「ついに来た!」という大歓声と拍手に会場が包まれる。
そしてステージ左右のバンドメンバーにライトが当たり、中央に向けて下手から歩いて花譜が登場。衣装は、2025年6月の「KAMITSUBAKI WARS 2025 神椿後楽園戦線 KAMITSUBAKI XPERIENCE」でお披露目した「梟」だ。そして「それでは始めます!」と歌い出したのは「糸」だった。
ド頭1曲目からアップテンポ、しかも8発のレーザーが荒れ狂う中で、「始まりの曲」である初オリジナル曲を歌うというシチュエーションに客席の感情も爆発して、全力でペンライトを振っているのが伝わってきた。
余談だが、香港会場は日本でのライブのときよりペンライトを持っている率が低く、素手で応援しているファンも多いように見受けられた。あとは全員が立って応援すると思いきや、最初は着席して見ていたのも日本と異なるところだった。
そのままの疾走感で2曲目の「過去を喰らう」に突入。いつもの叫ぶ感じではなく、ちょっと楽しそうな雰囲気で「過去を喰らうー!」と曲名を呼び上げていた花譜が新しかった。ステージ上部に映し出される日本語のモーションタイポとMV、間奏のギターのリフに合わせて頭を左右に振る花譜、客席の「ハイハイ!」の大声。そこには、日本でのライブと同じ光景が存在していた。

3曲目は「雛鳥」。静謐なシンセサイザーのイントロで「尊さ」が爆発し、何かを言って崩れているファンが筆者の付近にいて、「わかる」と共感してしまった。4曲目の「心臓と絡繰」では、アウトロで花譜が両手を左右に揺らして促すと、客席も合わせて左右にペンライトを振り会場の一体感を高めていた。
5曲目は「そして花になる」。ライブで歌うのは2020年3月の「不可解(再)」以来の6年ぶりというレアな選曲だったので、現地でとても驚いてしまった。当時の緊張してサビにかけて激情を込めていく歌声と異なり、とても優しい歌い方だったことに、なんだか昔を懐かしんでいるような雰囲気が感じられてとても満たされた気持ちになった。ここまでが1stアルバム「観測」からの選曲だ。
「お弁当の麻辣湯が美味しかった」
続くMCでは、「ありがとー! 改めまして花譜です!」と伝えた後に、簡体字中国語で「ウォー・シー・ファープー」、繁体字中国語で「ダイガーホウ、ンオハイ、ファーポー」、英語で「アイム、カフ」と挨拶して歓声を集める。
「みんないる。やっほー! 『宿声』にようこそ。みんな日本語で喋って伝わるのかな」と問いかけると、客席から「大丈夫ー!」との声が返ってくる。
続けて「初めてじゃない人ー!」と聞いたところ、ざっと半分ぐらいがペンライトを振っていた。言葉がわからずなんとなく反応してしまった人がいたことを差し引いても、会場の多くが日本でのライブに参加したことがある「猛者」なのだろう。長ければ、初めて花譜が注目された2018年末頃から待っていたわけだ。
「みんなに会えることを、とっても、とっても楽しみにしてきました」
そう呼びかけてくれる花譜の言葉を、「自分たちもだ」と素直に喜んだ来場者も多かったはず。その後、花譜は香港に初めて降り立ったこと、建物が細くて長いという印象のこと、日本で「譚仔三哥」(タムジャイサムゴー)で食べて本場の香港が気になってた麻辣湯がお弁当で出て、辛くて痺れたけど美味しかったことなどを伝えて、観客の笑顔を引き出していた。
「今日、香港に来れて嬉しいです。私と一緒に楽しもう」
そう伝えた後に2ndアルバム「魔法」から選ばれた「畢生よ」、「彷徨い」、「景色」、「戸惑いテレパシー」、「私論理」の5曲につないでいく。
例えば、「畢生よ」における、「じゃあ僕は何してんだ?」「見失ったものばかりだ 守り損なったものばかりだ」の感情がほど走る歌い方。「景色」における、吐息成分多めの前半から、力強く感情を込めて「僕らはー」と歌い上げるダイナミズム。
そう、可愛い姿から発される、この声のギャップに我々は魅了されたのだ。まさしくここからすべてが始まり、経験を積み重ねてなお美しさを増す花譜の歌声の凄さを再確認したパートだった。
前述のように観客はずっと着席で見ていたのだが、花譜本人だけでなくバンドメンバーからのリードもあり「景色」では全員が立ってしまうという、とにかく何かをやらなければいけないと思わせるような気迫だった。
続けて、曲調がガラッと変わりノリのいい「戸惑いテレパシー」だったため、立って動きやすくなった客席の熱気がさらに高まっていく。会場内を暴れるレーザーも相まって、ペンライトを振る手に力が入り、最後の「何もかも全部届いてよ」で手を掲げて心を一つにしていた。
さらに「みなさん、まだまだいけますかー?」に「おー!」と観客が返して、ダンサブルな「私論理」に突入。元気のいい「ワン ツー スリー カモン!」の煽り、韻を踏んだ小気味いい歌詞、合いの手を入れる気持ちよさなどを存分に味わった上で、花譜の「せーの!」に合わせて全員で「私論理 論理」と大合唱に至る。客席から「サイコー!」の声援が飛ぶぐらいに大きく盛り上がったパートだった。

言語を超えた感情のやり取りの神々しさ
MCでは、「お水を飲みます」から「お水美味しいー?」と客席からの声が飛び、「美味しいです」と返すいつもの茶番(?)が成立してて、「中国でもこれやるんだ」と驚いた上で、3rdアルバム「狂想」からの5曲に続いていく。
11曲目の「それを世界というんだね」と、12曲目の「世迷い子」は、中国語版の歌詞での歌唱だった。「次の曲は私の新しい挑戦です。中国語で歌います」と宣言すると、MCで座っていた客席が再び総立ちになる。
自分たちの言葉で歌ってくれたことにより、歌詞がより多くの人に響いていたように感じた。「それを世界というんだね」では、
「君と出会う
君は述べる
君のノベル
世界は動く
君と繋がる
勇気が混ざる
そして世界を願う
奇跡を願う
僕ら繋がる」
その後の「la la la la……」の大合唱が巻き起こる。この日、一番熱がこもっていたように感じられた部分だった。
「世迷い子」では、
「僕らこの先の未来なんてわからないから
ルールなんてどこいんもないんだから
好きなことを好きと言っていいんだよ
好きなことを好きにやっていいんだよ」
のあたりだろうか。客席は、間奏では歓声を上げてペンライトを力強く振り、終わった後には「ウォーアイニー」と叫ぶ人も出ていた。とにかく中国語になってからのざわめきがすごくて、この花譜というパッケージは国境を超えてきちんと世界に響くのだなと身をもって実感した。そして筆者としては、中国語で歌われて意味がわからないからこそ、それでも声のよさが際立っていたのが印象に残っている。まさに「宿声」だ。

続けて13曲目の「海に化ける」、14曲目の「人を気取る」と、「過去を喰らう」から連なる3部作を披露。ここから日本語の歌詞に戻ったのだが、先ほどのパートを受けたせいか客席の興奮は止まらない。「海に化ける」で気持ちが最高潮に昂ったことを表す「UOグルグル」(高輝度なウルトラオレンジのサイリウムを両手で持って頭の上で回すこと)で応える人が出てきたり、「人を気取る」で「気取って気取って気取って気取って気取った」と大声で一緒に歌うなど、気持ちが一層強く入っていくのが伝わってくる。
そこからの15曲目の「邂逅」だ。イントロが流れると「おおお……!」と会場全体から、魂から漏れたため息が伝わってくる(過去の「宿声 / 深愛」で流れを知ってる筆者でも思わず「おおお……!」と漏らしてしまった)。
「君の目には喜びしか見えないのなら
同じ暑さで喜びしか歌わないなら
出会いばかり安寧ばかり大切でもいいよ
孤独じゃ無いよ 目を閉じれば 僕がいるよ」

気づけば、日本語での合唱が当たり前になっている。
「皆一人ぼっちだ!」
思いをぶつけるような全員の叫びが忘れられない。そして曲が終わった後には、「うぉー!」という興奮だけでなく、「わぁー」というとても優しい声が聞こえてきた。この光景を見れただけでも現地で取材した価値があったと感じた。
「中国語バージョン、発音が難しくてたくさん練習したのですがちゃんと伝わったかな」というMCを挟んで、また水を飲んで珍しく「らーらー」と発声練習する花譜。
本編最後は、4thアルバム「寓話」からの5曲だ。事前に「歌って欲しいパートがあるから」と、「ダンダラ ダ ダ ダンダラ」と客席に練習させてから、満を持して始めた16曲目の「ダンダラボッチ」。「どっかーん」の可愛さにやられながら、間奏で必死にクラップした17曲目の「ゲシュタルト」。サビで必死でペンライトを振った18曲目の「何者」。口上パートの熱さ、最後の「生きて 生きて 生きて」の絶叫に打たれて「うぉー!」と叫んだ19曲目の「カルペ・ディエム」。

そしてバンドメンバーの紹介が入って「次の曲が最後の曲です」と、20曲目「代替嬉々」へとなだれ込む。それにしても花譜の歌声のスゴさだ。わずか2、3分のMCを3回挟んだだけで、ほぼ2時間ぶっ通しで歌っているにも関わらず、衰えるどころかより感情が込められていく。曲終わりに両手を可愛く振ってステージを去っていく彼女を見て、近づく宴の終わりを悟って寂しさを感じてしまった。

アンコールどころではない、ゲスト2人への熱狂
本編終わりから、余韻もまったくなく即、「アンコール!アンコール!」の声が客席から上がる。そう、事前に告知されていた理芽とヰ世界情緒という2人のゲストが未登場なのだ。「我々はまだ完全燃焼していない!」と熱が入るアンコールの声。
その期待に応えるように、花譜がステージに戻ってきて、さらに「Dr.Futurity」の衣装をまとった理芽が登場すると客席から大声が上がる。
歌い始めたのが21曲目の「飛翔するmeme」。オリジナルは花譜と「たなか」で歌っている曲だが、2024年9月の花譜と理芽のツーマンライブ「Singularity Live Vol.3」にて披露した組み合わせになる。それぞれが歌うパートから、徐々に重なる部分が増えていき、サビで溶け合う流れがとても心地よく、自然と音楽に体を任せて動いていた。

続けて、22曲目の「魔的」。2021年5月、理芽の1stワンマン「NEUROMANCE」でお披露目した楽曲で、曲名が読み上げられると「うぉー!」と歓声が上がった。ピアノの静謐なリフと相反した猛るベース、そこに2人の声が合わさってまとまっていく。「次はあなたも花になれる 次はわたしも芽吹き出せる」の歌詞もそうだが、時代を経て歌い重ねるごとに、改めて二人の関係性と音楽の面白さを感じさせる名曲だ。

そこから続けて、23曲目の「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」に突入。元はMAISONdesの企画でツミキと歌っていた楽曲だが、先の「Singularity Live Vol.3」で理芽とのデュエットも披露していた。
YouTubeでもうすぐ8000万再生と花譜の楽曲の中でも知られている存在で、普段からカラオケなどで歌っているのか、「嘘っぱちのファンデーションも全部」あたりから客席の歌声も一段と大きくなり、「冗談じゃあないわ トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」のサビでは大合唱になっていた。さすが有名曲だ。
アンコールから怒涛の3曲で大盛り上がり。「みんなありがとー! 理芽でしたー!」の挨拶で舞台袖にはけていく理芽。

入れ替わりで今度は「Sunflower」衣装をまとったヰ世界情緒が入ってくると、こちらもものすごい歓声が上がった。
ヰ世界情緒とのセットリストは、24曲目「暗闇」、25曲目「深淵」、26曲目「再会」と、今年3月で充電期間に入ったバーチャルアーティストグループ「V.W.P」から選ばれた楽曲だった。
「暗闇」はスマートフォン向けゲーム「アーテリーギア-機動戦姫-」のイメージソングとして2022年7月に、「深淵 feat」はスマートフォン向けゲーム「ブラック・サージナイト」イメージソングとして2021年6月にそれぞれ公開。5人で歌う「系譜曲」ではなく、2人がデュエットする「派生曲」という位置付けで、オリジナルでも花譜とヰ世界情緒が歌っている。どちらも中国に本社があるbilibiliが手がけたゲームに関係した曲で馴染み深いのか、みんな歌っていたのが印象的だった。


「再会」は、2022年12月にリリースしたV.W.Pの「系譜曲」。こちらもTVアニメ「マブラヴ オルタネイティヴ」で2期のエンディングというタイアップ曲になっていて、いつもはヰ世界情緒をメインに5人で歌うところ、今回は2人で歌い分けるバージョンとなっていた。
V.W.Pが充電期間に入った直後ということもあってか、「再会」の曲がわかると客席がざわつく。そして、徐々に盛り上げていき曲のハイライトであるラスサビ、ヰ世界情緒の「会いたいと思うほどに 鉄の味が心を舐める」という激情を込めた声に合わせて、気持ちを添えるように黄色いペンライトを合わせていたのが美しかった。
最後、「ヰ世界情緒でした。また会おうね」と帰っていく彼女に、「また会おうねー!」と返す客席。「かわいー!」と心の声が漏れた野太い絶叫も聞こえて、ニコニコしてしまった。

「どうかあなたの明日が少しでも優しいものになりますように」
ステージに立つシンガーは再び花譜一人に戻って、27曲目はバラードの「アンサー」。
「何度だって悔やんで
何度だって歩く
その度に突き放されるから
正解のない旅をしよう
変わっていくことに怖がる必要はないから
正解のない日常へ
そこではきっと一人じゃない」
Bメロからサビにかけて、歌詞をしみじみと噛み締めて(?)歌っている客席から優しさが伝わってきた。
さらに「みんなー! まだいけますよねー!」と煽って28曲目の「未観測」に繋いでいく。
「いつか泥になる
そして未観測だった花が咲く
その時はどうせ全部
曝け出し合ってるんだから
今は泥臭く
不可解な意味を歌おうよ
われら未完成
されどやすやすと負けはせぬ」
どの時代、どの国に住んでいても、生きづらさを抱えてしまう人は決していなくならない。失敗ばかりの選択肢で、自分の力ではどうにもならないことも多くて、綺麗に生きれないかもしれない。それでも、一生懸命に生きて、希望を失ってはいけない──。この後の花譜のMCも含めて、そんな強いメッセージを最後に持ってきたように感じた。

MCでは今回、香港でのライブを実現できたことが嬉しかったことを語って、来場者に深い感謝を伝えていた。その上で、心にの奥に深く突き刺していく。
「今この瞬間にも、ここだけじゃなくて、いろんな場所でそれぞれの気持ちを抱えながら、私たちの音楽を聴いてくれている人がたくさんいると思います。遠くから応援を届けてくれてる一人一人に、この歌が届くようにと思いながら歌いました。
私とあなたの距離は、普段は海の向こうと向こうだったりで、バーチャルとリアルだったり、言語とか文化が違ったり、いろんな壁があると思うんですが、それを超えて私のことを知ってくれたり、好きになってくれたり、歌を聴いてくれたりすることはとても嬉しくて、今日みなさんに会えて本当に幸せです。
上手くいかなかったり、ダメなことも、今沢山一緒に生きているけど、今日みたいな刺激いっぱいな日をみんなの力があればつくり出せるって知ってること。それがみなさんと私の今の希望です。だからどんなときも負けないで生きていきます。みんなのことが大好きです」
「大好き」という言葉に、客席から大歓声が上がる。
「どうかあなたの明日が少しでも優しいものになりますように。そして、またどこかで会えますように。絶ッ対、また会おうね。ありがとう。この曲で最後になります。聞いてください」
そうして、ラストの29曲目「魔女」が宣言されると、力強い喜びの声が再び上がる。「今己を証明する言葉に魂はあるか?」の叫びに合わせて、これが最後とばかりに暴れるレーザー。「ウォーウォーオー、ウォーウォーオー」と一緒に歌ってペンライトと拳を掲げる客席。最高の一体感を実現して、「花譜でした、またね。シェイシェイ。サンキュー。ありがとう。またね」と鳴り止まぬ拍手と大歓声の中、花譜はステージを去っていった。

この後、恒例のスタッフロールが流れるのだが、日本とはまったく違う中国企業のロゴが並び、多くのローカルスタッフが尽力してきたのが伝わってきた。その後に海外でも「information」のコーナーがあって、日本と同じように「おおー!?」と掛け合いしていたのが面白かった。
様々な壁を超え、日本とまったく変わらない熱狂を会場で実現して、音楽の可能性を示した「宿声 in Hong Kong」。日本初のネット文化であるVTuberが世界各地に知られ、ローカルからも続々とタレントがデビューしていくほど広がっている今、花譜とKAMITSUBAKI STUDIOも様々な地域でどう受け入れられて、どう人々の心を動かしていくのか。引き続き観測していきたい気持ちが強まった。
●セットリスト
1.糸
2.過去を喰らう
3.雛鳥
4.心臓と絡繰
5.そして花になる
6.畢生よ
7.彷徨い
8.景色
9.戸惑いテレパシー
10.私論理
11.それを世界というんだね
12.世迷い子
13.海に化ける
14.人を気取る
15.邂逅
16.ダンダラボッチ
17.ゲシュタルト
18.何者
19.カルペ・ディエム
20.代替嬉々
*アンコール
21.飛翔するmeme
22.魔的
23.トウキョウ・シャンディ・ランデヴ
24.暗闇
25.深淵
26.再会
27.アンサー
28.未観測
29.魔女
(TEXT by Minoru Hirota)
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