LIVE UNION、初めて4人揃った1stライブ「Looking 4 The Sparkle!」レポート 5年分の想いが歌声、笑顔、涙で届いた

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2025年3月30日に、バーチャルアーティストプロダクションのRK MUSIC・LIVE UNION所属の4名が、池袋harevutaiにて「Looking 4 The Sparkle!」を開催した(アーカイブ配信)。

LIVE UNION発足5周年にして、焔魔るりHACHI瀬戸乃とと水瀬凪の4人が揃って初めて開催される現地ライブということもあり、長きにわたって彼女らを追いかけてきたファンなら大きな期待を寄せていただろうが、それは出演側の4名にとっても同じだったはず。

思いの丈をこれでもかと詰め込んだ濃厚な約2時間を、ここに追いかけてみようと思う。


和やかな雰囲気からディープなムードへと進んでいく

開演直前の17時50分、焔魔、HACHI、瀬戸乃、水瀬の4人によるライブ中の注意喚起のアナウンスが始まった。事前に収録されているようなものではないらしく、「え?待って、ここ早口言葉みたいなんだけど」とたどたどしいアナウンスをし、観客の笑いを誘っていた。カメラ撮影が入っている関係上、PA付近は観客が入れないような形となっていたが、それでもフロアはかなりすし詰め状態。彼女らの登場を心待ちにしていた。

4人を紹介するオープニングムービーが流れ終わると、暗転していたステージが明るくなり、4人がズラっと並んだ状態でお目見えする。1曲目はEP「Looking 4 The Sparkle!」の冒頭を飾る「One Sky」だ。紫(赤)・黄・青・水と4人それぞれのモチーフカラーを灯したペンライトに、クラップと合唱が合わさる。

ライブ冒頭にしてはあまりにもキレイに観客らが彼女らのパフォーマンスにレスポンスしたのだが、実は注意アナウンスを終えてからライブが開始する少しの間に、会場内にはちょうど「One Sky」が流れて、サビに合わせて軽く合唱しているファンがいたのだ。

はやる気持ちから生まれた行動に観客同士で笑いが起きていたのだが、まさかこんなに早いタイミングでその気持ちが表に出せるとは……「いくよ!!」と焔魔の煽りもあって、会場の観客が一瞬で気持ちをひとつにできた奇跡的な瞬間だった。

そんな1曲目を終えるとすぐMCパートに入り、1人ずつ自己紹介をしていく。いつも以上にはしゃぐ4人の姿におもわず笑いが漏れる。

2曲目となる序盤から早速ソロパートへと突入。トップバッターを務めたのは、HACHIとともにLIVE UNION発足から活動をつづけている焔魔るりだ。

観客たちペンライトが赤やピンクに染まるのは彼女のモチーフカラーが赤色であるからだが、彼女は4人の中でもっとも声色が高く、どことなく可愛らしさをまとっており、”赤色系”なイメージにピッタリ。

「RED EYES」「棘宵」「Hope Song」の3曲を焔魔は披露したが、どの曲でもピンと張りあげた声色で堂々としたボーカルをみせつけていく。特にライブ開催の2週間前に公開し、この場で初披露となった「Hope Song」では、スローナンバーをハイトーンな声にファルセットを混ぜながら歌い上げて、壮大さを感じさせる楽曲をさらに魅力的にしていた。

MCパートに入ると、観客への感謝の言葉をのべて、水瀬を呼び込む。「るりちゃん、ライブ最高でした」と褒める水瀬と「凪ちゃんきて安心しちゃった(笑)」という焔魔、次に2人はEPでデュオ歌唱した「Miniature Garden」を披露した。穏やかでクリーンなイメージを与えてくれる優しげな曲を、水瀬と焔魔のソフトタッチなボーカルがより彩りを添える。

2人がメインメロディをユニゾンで歌う部分もあれば、メインボーカルとは別にハミングや別のメロディーを添えるオブリガードもあり、しかもバックの音源からは同じパートを追いかけていくコーラスも入り込む。まるで2人の優しげな歌声で会場を満たしていくようだった。

そのまま水瀬へソロパートへとバトンタッチ。自身のソロ楽曲「ボイジャー」「ノスタルジー・ステップ」「アオハル進化論」を披露していった。

鍵盤とギターサウンドによるクリアなサウンドが印象深い「ボイジャー」、ホーンサウンドとギターのワウサウンドによるグルーヴィな「ノスタルジー・ステップ」、ギターリフが前に前に引っ張っていくポップな「アオハル進化論」と別々のタイプの楽曲を、水瀬は持ち前の透明感ある声で生き生きと歌い上げていった。

自身のソロパートを終え、水瀬は続くメンバーとして瀬戸乃を呼ぶ。笑いながらトークしていく2人は、そのまま「Shine like stars…」へ。クラブライクなエレクトロポップにノッて、青色と水色のペンライトが揺れていく。ウィスパーな声色から張り上げた声と振り幅をみせながら2人は声を重ねていった。

そのまま瀬戸乃は自身の楽曲「TRUST」「Hyped Deal」「Goodbye, Azure」とアップテンポ&ハードな楽曲を次々と投下する。茶目っ気あるトークとクールな見た目を兼ねている瀬戸乃だが、歌うとなると凛とした佇まいやクールな歌声を保ち、過剰に声を荒げることはなく、そのまま観客を盛り上げていったのだ。

MCパートに入るとHACHIを呼び、2人とも笑顔でトークを進める。この2人は、新作EPでデュエットした「Be I, Be Shine」を披露。LIVE UNIONの中でも太めの声をしている2人が、穏やかなバラードで共鳴していく様に観客も惚れ惚れとしていた。

「とと様がバチボコに盛り上げた空気をエモで締めるね」と笑いながら言葉をかけると、彼女は「万華鏡」「Rainy proof」「まなざし」の3曲を歌った。元来彼女はミドルテンポでしっとりしたグルーヴの楽曲を多く揃えているが、この日も深く沈み込むようなサウンドのなかにウェットな歌声を響かせ、観客を虜にしていた。

HACHIが呼び込んだのは、デビュー時からの同期・焔魔るり。「念願叶って初めての(2人デュオでの)オリ曲ですね」と語り、EPに収録された「二つの軌跡」を披露した。

そのタイトル通り、焔魔とHACHI2人のプロフィールや活動をうまく引用・表現した楽曲で、静かなスローバラードの中で2人の声が重なっていく。終盤には焔魔とHACHIがお互いを見合いながら歌い合っていくシーンがみられ、これまでの道程がアリアリと見えてくるような重厚感が、白い照明に照らされながら会場へと滲んでいった。歌い終わった瞬間、観客のだれも声をあげず静寂がスッと生まれたのが、その証拠だった。


思わずホロリと流れる涙 願いや想いを込めた「薫習」「Stellar Place」へ

再び4人がずらっと勢揃いし、喋りだすと序盤のような和やかなムードが生まれる。この日のライブを迎えた心意気を4人が話していくが、話していると込み上げる想いを抑えきれず、涙を流してしまうメンバーも。LIVE UNIONが設立されて今年で5年目、それに合わせて開催されたこの日のステージに4人は相当な想いを秘めていただろう。

だからこそ、「今日の本編、最後の曲は初披露する新曲です」といわれたときには驚かされた。え?まだEPで1曲歌っていない曲があって、当然その曲で締めるものではないか……などと邪推していたところを裏切られたからだ。

新曲の名前は「薫習」(読み:くんじゅう)。さてどんな曲だろうかと思い聞いてみると、とても驚かされた。

焔魔、HACHI、瀬戸乃、水瀬4人は、声色にもちろん違いがあるし、ボーカリストとしてスタンスが違う4人である。だが不思議と、ミドルテンポ~スローテンポな穏やかな曲を歌うのを不得手にせず、HACHIのようにむしろ得意ゾーンにしているメンバーもいる。

実際この日のライブでも、ここまでの16曲で大半の曲がミドルテンポ付近の楽曲であり、アップテンポかつアッパーなサウンドの曲というと焔魔と瀬戸乃がそれぞれ披露した5~6曲ほど。実はこの4人、得意としている(もしくは好みとしている)楽曲やサウンドが重なっているのだ。

ここで披露された「薫習」は、ストリングスや鍵盤楽器をうまく使った音数の少ないスローバラードで、4人にとっての得意な楽曲。しかも、ストリングスや鍵盤楽器らはシンプルな8ビートを基軸にして弾かれていくのではなく、リズミカルに響かせるニュアンスで弾かれ、まるで”音抜け”のように緩急を感じさせる一面もある曲だ。

スローテンポな曲だけども工夫を凝らした楽曲。だからこそ、4人のボーカルがより印象的に響く。むしろそこにバックコーラスも加わると、まるで4人の声で組み上がっていく建築物かのよう。

とくにサビで「わたしたちは今」という歌詞に対し、4人それぞれが歌っていくパートは、特にインパクトを持って刺さる。先程までこれまでの活動を振り返って涙を流していた彼女らが、”これから先のLIVE UNION”を願うような、象徴的なワンフレーズとして心に刺さった。

この曲は、今後CD版としてリリースされると発表されたEP「Looking 4 The Sparkle!」に特別収録される予定という。


アンコールに歌われた本日最後の楽曲は「Stellar Place」、4人はボーカルをリレーし、ユニゾンで声を重ねれば豊かな響きになって会場へ広がっていく。

星間 音のない世界で
僕らは叫ぶ 守りたい場所がある 絆がある
それは大事な僕らの軌跡
点を繋いで 浮かび上がる物語だ

(中略)

あのね 此処は僕らの寄る辺
その手を握り 逃げ込んだ 愛しい場所

壊れない思い出が眠る
一緒に歩こう ずっと ずっと

この日にかける積年の想いはメンバー4人の口から何度となく言葉にされていたが、「LIVE UNIONは居場所である」ことを「Stellar Place」で歌う。こちらが想像するよりもはるかに、”LIVE UNION”という結束が重い意味を持っているのが伝わってきた。

2025年3月30日、LIVE UNIONにとって初めてのライブとなった「Looking 4 The Sparkle!」は、ある種では達成されてしかるべき目標として、ある種では理想的なゴールや通過点として、さまざまな意味を求められていたようにみえる。4人は充実したパフォーマンスをしっかりとみせつけ、二度はないこのチャンスを完璧なステージにしようと努め、応えていたように見えた。

HACHIが「(LIVE UNIONとしてのライブが)次はもっともっとデッカイステージでできるんじゃないかなと。むしろやるつもり満々なんですけどね。1回だけで終わらせるつもりはございません」とストレートに切り出したあたり、今後は4人が揃ったライブステージが多く見られるかもしれない。

これは筆者の想像だが、もしかすれば今回のような年に1回行なわれる”周年ライブ”という形ではなく、例えば焔魔・HACHI・瀬戸乃・水瀬の4人がボーカルグループ”LIVE UNION”などと名乗って活動をしていくような、そんなような姿になればベストじゃないだろうか。

そうして5周年という新たな節目を迎えた達成感やセンチメンタルさを漂わせつつ、4人それぞれのボーカルやハーモニーをこれでもかと響かせてくれた。

終演後、舞台袖からマイクを通さず彼女ら4人の生の声で、開場へ集まったファンに温かい感謝の声が飛んだ。なんとも濃厚な一夜であった。

●セットリスト
M1.One Sky
M2.RED EYES
M3.棘宵
M4.Hope Song
M5.Miniature Garden
M6.ボイジャー
M7.ノスタルジー・ステップ
M8.アオハル進化論
M9.Shine like stars…
M10.TRUST
M11.Hyped Deal
M12.Goodbye, Azure
M13.Be I, Be Shine
M14.万華鏡
M15.Rainy proof
M16.まなざし
M17.二つの軌跡
M18.薫習

*アンコール
M19.Stellar Place

(TEXT by 草野虹

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●関連リンク
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