全員の個性がステージで輝いた! ななしふぇす第2部「ブイアパとどぅーいっと!」レポート

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19日、VTuber事務所「774inc.」が開催したオンライン音楽フェス「ななしふぇす どぅーいっと!」。単独のVTuber事務所が主催する音楽イベントとしては最大規模となった8時間以上の公演は全4部構成で、所属するグループの「有閑喫茶あにまーれ」「ハニーストラップ」「ブイアパ」「シュガーリリック」がすべて参加。20名の人気VTuberが、歌とダンスとトークなどで、多くのファンを楽しませた。

第1部あにまーれとどぅーいっと!に続いて行われた第2部「ブイアパとどぅーいっと!」には、VTuberやクリエイターが暮らすアパート「ブイアパ」のゲーマー組、杏戸ゆげさん、季咲あんこさん、不磨わっとさん、小森めとさんが出演。シャッフルユニットのメンバーとして「あにまーれ」の因幡はねるさん、風見くくさん、白宮みみさん、「ハニーストラップ」の堰代ミコさんも参加し、ステージをさらに盛り上げた。

ここでは、オリジナルソングを含む全11曲が披露されたブイアパ初めての音楽ライブの模様をレポートする。


ライブは開幕からクライマックスのような空気に

5つの円形ステージが浮かぶライブ会場をカメラが映すと、中央のステージで輪になって立つ四人の姿が。ブイアパ誕生時からのメンバー杏戸さんの「行くぞーブイアパ!」という掛け声に、季咲さん、不磨さん、小森さんが「おー!」と応えてライブが開演した。1曲目は嵐のラブソング「Love so sweet」。四人のゲーマーとしての姿しか知らない人だと驚きそうなほど、優しい歌声を響かせていく。そのパフォーマンスと選曲や演出の妙も相まって、ライブは一曲目からいきなりクライマックスのような空気になっていた。

2曲目では「涼宮ハルヒの憂鬱」の挿入歌「God knows…」を四人で披露。鉄板で盛り上がる超人気アニソンがクライマックス感をさらに増幅させていく。1曲目では、季咲さんのソロパート中に後ろで他のメンバーがユーモラスな動きをしたりするような場面もあったが、この曲では4人ともクールに決めていく。と思っていた矢先、ラストのギターソロが始まると全員が一斉にエアのバンド演奏を開始。杏戸さんと小森さんは全身を激しく動かしながらギターを弾き、小森さんはドラムを連打。季咲さんだけは何の楽器か特定できない不思議な動きをしていたが、その謎は続くMCで明かされた。

最初のMCでは一人ずつ名前を名乗った後、完全にフリートーク状態。仲良く楽しく突っ込み合うブイアパらしいトークが展開していく。ちなみに、季咲さんが演奏していたのはリコーダー。他の三人が「なぜリコーダー?」と尋ねると、当たり前のように「かわちい(かわいい)から」と答える季咲さん。そこには誰も突っ込まず、なぜか「四人ともリコーダーで良かったかも」という結論になってしまった。

その後は、第1部と同じ「774inc.のメンバーをどぅーいっとせよ!」のコーナー。一人ずつ、774inc.メンバーの名前が書かれたクジを引き、出たメンバーの物まねをして、他の三人は誰のまねをしているのか当てるという企画だ。全員、仲間の特徴をつかむのがなかなか上手く、次々と正解していった。


ソロコーナーでも全員が歌えるゲーマーぶりを発揮

ライブパートはソロ曲コーナーから再開。まずは、杏戸さんがヨルシカの「花に亡霊」を披露した。囁きかけるような優しいメロディから始まるこの曲は、ハスキー気味な歌声が魅力の杏戸さんにぴったり。バーチャル空間も、杏戸さんの歌声が作り出す優しい世界観に合わせるように静かな夜空に変わっていた。

ソロコーナーの二人目は、「こんにちわっとー」と元気な挨拶とともに登場した不磨さん。「『せーの!』って言ったら、コメントで「ラララ」って書いて欲しいです」とリスナーにお願いした後、歌ったのは緑黄色社会の「Mela!」。西洋人形のような美しい顔の不磨さんが艶のある歌声で、「君」のヒーローになりたい「僕」の曲を歌うという少しミスマッチな組み合わせが逆に魅力的だった。

続いて登場したのは、11月の3Dお披露目配信でキレキレのアイドルダンスを披露し、ファンを驚愕させた小森めとさん。今回も、戸松遥さんの人気曲「Q&Aリサイタル!」を歌いながら、ステージ上を可愛く元気に動き回った。しかし、体力を使い果たしてしまったのか、曲が終わると、その場に寝っ転がって「ブイアパの引きこもりニート担当」らしい姿勢になり、そのまま初のソロステージを終えた。

ソロコーナーの最後に登場したのはゲーマーアイドルの季咲さん。こんなに広いステージに立つことが夢だったと語った後で歌ったのは、Honeyworksの定番アイドルソング「ファンサ」。季咲さんを応援してきたリスナーにとっては、このステージに立つ推しの姿を見られるだけでも最高のファンサだったことだろう。可愛く激しく踊りながらも、安定し芯のしっかりした歌声も非常に印象的だった。


二つのシャッフルユニットは好対照のパフォーマンス

続いては、シャッフルユニットのコーナー。まずは、杏戸さん、「ハニーストラップ」の堰代さん、「あにまーれ」の風見さんがEGOIST「名前のない怪物」を披露した。それぞれが別のステージに立ち、振り付けも手振り程度という完全に三人のボーカル勝負という方向性のパフォーマンス。三人とも普段の配信などではあまり見られないクールな雰囲気でファンを魅了した。

続いては、季咲さん、小森さん、「あにまーれ」の因幡さん、白宮さんが並んで登場。「みなさーん、お待ちかね! 私たちスーパーアイドルでーす! 『どぅーいっと!』ここからも盛り上がっていきましょう!」と元気にアピールした後、AKB48の代表曲の一つ「大声ダイヤモンド」を歌った。四人のダンスやフォーメーションも綺麗に揃い、季咲さんの宣言通り、完全にアイドルとしてパフォーマンスを見せる。また、歌い終えた後のMCでは、小森さんを中心に大はしゃぎ。グループの枠を越えた仲の良さも伝わってきた。

小森さんだけを残して三人が退場した後、「どもども~」と言いながらステージに登場したのは杏戸さん。お笑い芸人的なノリで登場した二人だったが、歌ったのはキュートなボカロ曲「drop pop candy」。イントロでの左右にリズミカルに体を揺らすステップからすでに可愛い。また、話し声を聴いている時にはあまりそのような印象はなかったのだが、二人の歌声は同時に聴くと非常にバランスがよく、自然なハーモニーを響かせていた。

杏戸さんと小森さんがステージを去り、次は、季咲さんと不磨さんの出番。一人ずつ別のステージに立ち、THE BINARY「花に雨を、君に歌を」をデュエットする。二人の伸びやかで綺麗な歌声にもぴったりの選曲だ。ラスサビの途中には、二人が同じステージにテレポート。手を繋ぎながら歌うという演出も美しく、曲と二人を含めた世界観がステージ上にできあがっていた。歌い終えた後は、いつもの二人の雰囲気に戻ってトーク。不磨さんの「あんこちゃんのかっこいいところなんて、もう観られないよ。たぶん、最後だよ絶対」という言葉に頷いたリスナーも多いはず。また、季咲さんから、「わとちもかっこ良かったよ」と最後の振りを褒められた不磨さんは、嬉しそうにその振りを何度も繰り返した。

ツッコミ不在のまま二人の感想トークが続いていると、「長い、長い」とツッコミながら杏戸さんと小森さんが登場。最初は物申す態度で季咲さんと不磨さんに絡んでいくが、季咲さんから感想を問われると、「正直、めちゃくちゃかっこよかった」と絶賛。季咲さんと不磨さんも、杏戸さんと小森さんに「正直、めちゃくちゃ可愛かった」とお互いのデュエットを褒め合う。そして、最後の曲を前に一人ずつ感想とリスナーへのメッセージを語っていった。

まずは、引きこもりニート担当の小森さんが「久しぶりに家から出て練習して、毎日がすごくすごく楽しかったです。皆さん、家から出してくれて、ありがとうございました」と感謝を語ると、不磨さんや杏戸さんが「毎日、家からは出て欲しい」「普通に外には出なよ」と突っ込み。しかし、小森さんは「『どぅーいっと!』が終わったら、絶対に出ない!」と力強く宣言した。

季咲さんの「私、アイドルになれてたかな?」という問いかけに、「アイドルだったよ!」「可愛かった」と、ファン代表のように大絶賛する三人。小森さんは、「ファンサ」のサビの「約束ー」が可愛かったと、右手を突き上げる振りも真似しながら語った。「アイドルとして、また一つ夢をかなえられて、すごく嬉しくて。でも、これからももっともっと頑張りたいなと思う機会でした」と語る季咲さん。その前向きな貪欲さもまさにアイドルだった。

三人目の不磨さんは、フェスに向けてのハードな練習の日々を振り返り、「2日くらい寝てない日があったと思う」と語ったが、杏戸さんの厳しい追及により「まあ……寝たよね」と告白。なぜ寝てないと嘘を言ったのかとさらに突っ込まれる。しかし、そう言いたくなるほど練習を頑張ったことはパフォーマンスからも伝わってきた。不磨さん自身も「寝る暇も惜しんで練習を頑張った甲斐があって、めちゃめちゃよいステージをみんなに届けられたかなと思ってます」「練習を含め、楽しかったよ~最高です」と語った。

最後を締めるのは、ブイアパ最古参メンバーの杏戸さん。「毎日、ゲームをして過ごしてきた私たちが、こんなにかっこよくて可愛い774inc.の他のメンバーと一緒に、こんなに大きなステージに立って、歌って踊ることができるなんて、誰が思いましたか? 私は、こんな日が来るとは全然思っていなくて。それがかなったのは、私たちのことをいつも応援してくれているみんなのおかげです。本当にありがとう。『ななしふぇす どぅーいっと!」まだまだ、この後も続きますが、『ブイアパと どぅーいっと!』は次の曲で最後になっちゃいます。私の感想は、みんなにありがとう。とっても楽しい時間を過ごせました。みんなもそうだったら嬉しいです」。その言葉に、横に並んだ三人も大きく頷いていた。

「ブイアパと どぅーいっと!」、最後の曲は、もう一人のブイアパメンバーでバーチャルベーシストの花奏かのんさんが作曲、MIX、ベース演奏を担当し、ブイアパの5人全員で歌詞を考えたブイアパ初のオリジナルソング「マーブルルーム」。ショートバージョンのMVは先行公開されていたが、フルバージョンはこのステージで初披露だ。ちなみに、フェスのステージには立たなかった花奏さんだが、その音楽的才能やスキルをいかして裏方として大活躍。歌唱用音源の演奏や製作などでも774inc.の仲間たちの晴れ舞台をサポートしていたそうだ。

バラバラの個性を持ったメンバーが支え合いながら仲良く暮らす「ブイアパ」の様子が思い浮かぶような曲「マーブルルーム」を4人で熱唱。そのパフォーマンスからは、個々の歌声の魅力はもちろん、何をしていてもにぎやかで楽しそうな「ブイアパ」というグループ全体の魅力も伝わってくる。ラストの決めポーズが4人バラバラなのに、並んだ姿はきっちりハマって見えるのも、ブイアパらしさを感じさせた。最後に全員で声をそろえて、「ありがとうございましたー」と叫び、ブイアパの新たな魅力を大量発信した初の音楽ライブは幕を閉じた。

●セットリスト
M1.Love so sweet
M2.God knows…
M3.花に亡霊
M4.Mela!
M5.Q&Aリサイタル!
M6.ファンサ
M7.名前のない怪物
M8.大声ダイヤモンド
M9.drop pop candy
M10.花に雨を、君に歌を
M11.マーブルルーム

●イベント概要
・イベント名:ななしふぇす どぅーいっと!
・開催日:2020年12月19日
公式サイト

(TEXT by Daisuke Marumoto)

●関連リンク
イベントグッズ販売ページ
「ななしふぇす どぅーいっと」公式サイト
774.inc公式サイト