#9 VESPERBELL「Noise in Silence」【Pop Up Virtual Music】

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RK Music所属のバーチャルガールズデュオ・VESPERBELLが、新曲「Noise in Silence」をリリースした。この曲は、ワーナーミュージック・ジャパンからのメジャーデビュー曲となり、彼女らにとっては新たな門出となる曲だ。

現在所属するRK Musicは、REALITY Studiosとキングレコードによるバーチャルアーティストにフォーカスした音楽レーベルであり、同社に所属する先輩にはKMNZ、同社内の別プロダクション・ライブユニオンには、キングレコードからメジャーデビューをはたしたHACHIなどが所属している(昨年のツアーレポート)。

先日にはNEUN、CULUA、MEDAと3名のシンガーがデビューし、KMNZは3人となって新体制がスタートを切るなど、ネクストブレイクを果たそうとノリに乗るRK Music。そんな上昇ムードのなかで、彼女らはメジャーデビューすることとなった。

今回Pop Up Virtual Musicでは、VESPERBELLについて、そして最新シングルとなったメジャーデビュー曲となった「Noise in Silence」について書いていこう。


VESPERBELLは、ヨミとカスカの2人で構成されるバーチャルシンガーデュオであり、2020年6月7日にYouTubeにて活動をスタート、先にも書いたように7月24日にワーナーミュージック・ジャパンよりメジャーデビューを果たした。

ヨミ・カスカ2人個々人のYouTubeチャンネルはなく、ごくたまにVESPERBELLのチャンネル内で歌枠や記念配信を開くことがある。その後配信枠を非公開状態にしてしまうため、あとで見直そうとしてもチェックすることができないこともままある。

ともすれば”ファンフレンドリーじゃない”とも見えるかもしれないが、告知もそこそこに歌を唄い、あとを残さずにサッと立ち去るような様は、まるでストリートライブのよう。歌枠のなかで披露したところ好評なコメントが多く、その後カバー動画として投稿された曲もあるなど、彼女らとしてもファンとしても一期一会の大事な場所となっているのだ。

実は筆者は、最近配信されていたヨミのゲリラ歌枠を見ていた。自身のキャラビジュアル、それに被せるようにコメントが下から上へと流れていく、よくある配信レイアウトで彼女は歌っていた。

リスナーに(その多くはVESPERBELLのファンである)冗談込みでアッポテンポに話しかけるヨミ。「じゃあこれで、終わりますね~」とエンディングロールを流すと、別れを告げるコメントが次々と投稿されていった。

ところが数分ほどエンディングロールが流れたところで、画面は元に戻り、「サプライズで1曲」とピアノ伴奏の楽曲をセンチメンタルに歌い上げた。7月中旬、雨模様だった深夜に歌った一瞬はとても心地よく、「じゃ、おやすみ」と一言を残して歌姫は配信を閉じたのだった。

VESPERBELLとしてこれまで様々な歌ってみた・カバー動画を投稿しており、その曲数は優に100曲を超えている。VTuberはネットカルチャーと近しいところにいる存在なのでアニソン・ボカロ曲がメインとなりがちだが、彼女らの選曲はそこにとどまらず、ONE OK ROCK、RADWIMPS、KANA-BOON、米津玄師と現在の邦楽ロックシーンで活躍するバンドが目につく。

2022年7月31日にリリースされたアルバム「革命」やEP「EX MACHINA」、カバーアルバムを1枚リリースしているが、その楽曲コンポーザーにはWONKの井上幹を皮切りに、ボカロP・柊マグネタイト、岸田教団&THE明星ロケッツの岸田、ゲスの極み乙女。メンバー・ちゃんMARIによるソロ名義・FUKUSHIGE MARIなどが参加してきた。

溌溂としたボーカルで可愛らしさすらを感じさせるカスカのボーカルと、太めな声にハスキー成分がまじったローボイスで歌い上げるヨミのボーカル。両者が混ざりあうVESPERBELLの一体感は、ロックサウンドのなかで光り輝いてきた。

それは今回紹介する「Noise in Silence」でも同じだ。

出だしから前にツンのめるようなバンド隊のアンサンブルに始まり、ドッタッタ・ドッタッタと刻まれるリズミカルなフレーズから、細かくスネアとタムを入れ込んだフレーズへと移っていくゆーまおのドラミングが軸となり、非常にハイエナジーな1曲に仕上がっている。

ギターにオカモトコウキ(OKAMOTO’S)、ドラムにGOTO(DALLJUB STEP CLUB/あらかじめ決められた恋人たちへ/礼賛)、ベースにはバンビ(アカシック)と名うてのバンドメンが参加しており、マスタリング・エンジニアにテッド・ジェンセン……音楽ファンからすれば「マジかよ?」と思わず言いたくなる陣容である。

そんなサウンドのなか、ヨミとカスカの2人のボーカルは切迫さを訴える。ゆーまおの叩くラウドなドラミングに盛り立てられながら、2人は交互にメインを歌い、サビに入って一斉に唄うのは新たに固めた「歌への決意」だ。

僕ら、必ずこの声で切り拓いてゆく
己を何より愛する者に
僕らの夢を奪う権利はない
全てを捧げて守り続けてく
誰もを阻む茨の道の
険しさに決して絆砕かれぬよう

「Noise in Silence」

まるでロボットアニメ・ゲームの主題歌のごとき激アツなメッセージ。「この声で切り拓いてゆく」とVESPERBELLとしてのプライドやステートメントをハッキリと宣言する曲は、今後の彼女のディスコグラフィでも印象的な輝きを放つはずだ。

メジャーデビューという門を叩いたことで、彼女らには今まで以上の重責が担われるだろう。その責務を跳ね除けるようなアクティブな活動・成長曲線が描けるのか、今後を期待して見守っていこう。

(TEXT by 草野虹

*連載一覧はこちら → Pop Up Virtual Music

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