
2024年12月14日~15日、バンダイナムコエンターテインメントがゲームを始めとする様々なメディアで展開する「THE IDOLM@STER」(アイドルマスター、以下「アイマス」)の”あらゆるものが集まる”イベント「THE IDOLM@STER M@STER EXPO」が幕張メッセにて開催された。
「プロデューサー」(シリーズのファン)による制作物の頒布エリア、キャスト・スタッフのステージや関係各社によるブース出展など、様々な立場の人々が様々なイベントを行ったのだが、「様々な立場の人々」の中には当然アイドルも含まれる。
本稿では、ライブパフォーマンスを披露する「LIVE SHOWCASE」エリア8公演の中から、12月14日に実施した天海春香さん(765[ナムコ]プロダクション所属)のソロライブ「HARUKA AMAMI SOLO LIVE ”START”」をピックアップしてレポート。ほかの演目にも触れつつ、別の「EXPO」エリアでステージに立った配信アイドル「PROJECT IM@S vα-liv」(ヴイアライヴ)のソロも紹介していこう。
・アイマス「MRプロジェクト」は技術だけでなく、プロデューサーさんと紡いできた世界観があってこそ 波多野ゼネラルマネージャー インタビュー
ゲームの歌唱シーン2分がライブで10曲50分に
身体に刻まれる生まれるリアリティー
アイマスのイベントといえば、アイドルの声を担当している声優によるライブやトークイベントなどが盛んにおこなわれていて、近年ではアイドル自身が出演する配信番組も増えてきた。さらにライブ会場でアイドルが歌唱するライブやイベントも開催されるようになり、2024年を通して、765プロダクション、315[サイコー]プロダクション、876[バンナム]プロダクションのアイドルが現地会場でパフォーマンスを見せ*1、2025年1月には283[ツバサ]プロダクションのアイドルのライブも予定している。
*1そのほか、961[クロイ]プロダクションプレゼンツによるライブも開催され、2025年2月にも予定されている
そうした流れの中で開かれたのが、今回の天海さんの「HARUKA AMAMI SOLO LIVE ”START”」だ。12月14日、全ライブのトップバッターとして午前10時30分から始まるソロライブを見るために、幕張メッセホール3には彼女の法被を着ているファンが並んでいた。それだけではなく、765プロや他の事務所のアイドルが描かれたアイテムを身に着けた人々も多く見られた。今回は「LIVE SHOWCASE」として様々な事務所に所属するアイドルがライブが行われるため、自分の応援するアイドル以外のライブを見る人々もいたようだ。期待が高まる中、天海さんはどのようなライブをするのだろうか。
出演者紹介の映像が流れた後、暗転しているステージにせり上がる一つのシルエット。イントロが流れて、照明が点いたときに手を挙げて現れたのはもちろん天海春香さんだ。

待望のソロステージ1曲目は、ライブタイトルにもなっている「START!!」から始まった。いきなり転んでも失敗しても、マイペースに進もうとポジティブに応援してくれる楽曲を、天海さんは観客のボルテージを上げるがごとく朗らかに歌ってくれる。サビで手を左右に手を揺らす振りにあわせて、客席の赤いコンサートライトが揃って揺れるのを見ると、その目論見はうまくいったようだ。

2曲目の「乙女よ大志を抱け!!」では「急がばまっすぐ進んじゃおう」「一石二鳥じゃ物足りない」とセリフの後に天海さんが客席にマイクを向けた。同じセリフをコールしてくれということであり、客席はきちんと対応したのだが、客席の後方部にいた筆者には少し遅れてコールが聞こえた。つまり、音が遅れて聞こえるくらい広い会場だというのを実感した次第である。

ここでMCパートに。天海さんも「LIVE SHOWCASE」のトップバッターで、しかもソロでのライブということで緊張していた模様。
さらに、今回のライブのための新衣装を紹介し、後ろ姿も見たい会場からの「回ってー」の声に嬉しそうに回転する天海さん。一回転したところで転びそうになるが、なんとか踏み留まり「天海春香、転びませんでした。イェイ!」と胸を張ると、客席からは拍手と歓声が沸き起こった。転んだり、あるいは転びそうになるが耐えたりする姿は、もはや持ちネタになるくらいファンには馴染んでいるのだろう。
3曲目の「GO MY WAY!!」、4曲目の「私はアイドル♥」では明るく前向きに進む天海さんを、5曲目の「ステキハピネス」ではみんなに幸せを届けようとする天海さんを体現したような曲を披露していく。
そんな歌を繋いでいく姿を見ていると、あることに気付いた。天海さんは、歌唱中、それなりの頻度でウインクしてくれるのだ。これがプロのアイドルのファンサービスなのか、それとも大勢のファンの姿を見て高揚しているのか、ともあれ見ているこちらまで楽しくなってくる。

その勢いでアイを繋げていくという発言の後に披露された楽曲は「I Want」。天海さんの歌の中では異色で刺激的な言葉が並ぶ、インモラルな恋愛感情をデンジャラスに歌うミステリアスなナンバーだ。ステージが照明で真っ赤に染まる中、髪を揺らしながら踊り、そして時には少し顔を上げつつ目線は客を見下ろす形で不敵な笑みを浮かべる天海さん。その姿に観客は陶酔し、「そこに跪いて!」という歌詞に信者が如く「I want!I need!」とコールをいれていく。この曲の中ではウィンクだって媚薬のように酔わせてくる。
続く曲は「ストレートラブ!」。曲名どおりにストレートに愛を伝える歌詞に、ステージ場をスキップしたり駆け寄ったりで会場中に笑みを届ける天海さん。かなりレアな楽曲の披露であったが、先ほどの「I Want」とは異なる、照れるような愛を受け取ったのであった。
8曲目の「The world is all one !!」では、天海さんが手を広げながら仲間との団結を歌うと、765プロの仲間であるアイドルそれぞれのテーマカラーに染まった13本のライトが会場を照らした。

続く9曲目「CRYST@LOUD」は「LIVE SHOWCASE」に出演する各事務所のアイドルたちとの合同ライブのテーマ曲。今回は天海さんソロ歌唱ではあるが、他のアイドルのファンも聞き覚えがある曲というのもあって、合図がなくても客席からのクラップがばっちり決まっていた。
最後のMCにて「はじまりの想いを込めて」と紹介された、本日の天海さんのソロステージのラストナンバーは、天海さんがデビューした時期に公開された、アイドル楽曲としては一癖ある「THE IDOLM@STER」だ。ファンにとっては無意識にコールが入れられるほど馴染みの曲でもある。

そんなはじまりの「THE IDOLM@STER」を聞きながら、今回のライブが「ショーケース」と名付けられていることを思い返すと、本日披露された楽曲群が天海さんのアイドル活動の紹介だったのではないかと思える。明るく前向き、時々転ぶ。みんなに幸せを届け、時に刺激的な、時にストレートな愛も魅せる。仲間とも、他の事務所のアイドルとも団結して歌を届ける。天海春香さんはそんなアイドルなのだろう。

ここで敢えて、これまで天海さんが活躍してきた媒体について触れると、「ゲーム」で彼女の歌唱シーンが画面に映し出されても、多くはせいぜい2分強である。「アニメ」でも彼女ひとりが歌うシーンは長くはない。「CD」ならばフルで聴くことができるが、当然トラックに分かれている。
しかし今回のライブでは、10曲の歌唱とトーク、観客の煽りも含めて53分間ずっと彼女のパフォーマンスと様々な表情を見ることができた。しかも途切れることなくだ。
当然立ち続け、ライトを振り、声をあげているので疲れもある。しかし、音速の遅さを感じられる広さの会場で、疲れを感じながらも数千人が同時に彼女を見続けたという経験は、2分間の歌唱シーンを繋げても得ることが難しい、「天海春香」が存在するという証拠を身体に刻み込んだのである。
それぞれの演出とパフォーマンスで魅せる、他のアイドルたちの「SHOWCASE」
「LIVE SHOWCASE」で実施した他のアイドルのライブも簡単に触れていこう。
●{ “THE CUBE” } (283プロダクション)
283プロダクション*2からは、ユニット「アルストロメリア」(大崎甘奈さん、大崎甜花さん、桑山千雪さん)と「ノクチル」(浅倉透さん、樋口円香さん、福丸小糸さん、市川雛菜さん)の計7名が出演し、 { “THE CUBE” ( 6151851920 ) }(12月14日)、 { “THE CUBE” ( 1535114 ) }(12月15日)というライブを行い、「アルストロメリア」「いつだって僕らは」などの楽曲が披露された。「映像と音楽が融合した、実験的ライブ空間」をテーマに、キューブ状の映像投影装置に映し出されるアイドルのパフォーマンスと、舞台奥の大型スクリーンの映像との組み合わせを楽しむというステージを繰り広げた。
*2いわゆる「アイドルマスター シャイニーカラーズ」の舞台となるアイドル事務所
●CINDERELLA STAGE
「ミステリアスアイズ」(高垣楓さん、速水奏さん)、「しゅがしゅが☆み~ん」(安部菜々さん、佐藤心さん)、「miroir」(久川颯さん、久川凪さん)の3ユニット *3 が両日に渡りパフォーマンスを行った「CINDERELLA STAGE」では、それぞれのユニットや各メンバーのソロ曲を歌唱しつつ、他事務所との合同プロジェクト「プロジェクト ルミナス」の衣装を身に付け、そして「KAWAII ウォーズ」「ダンス・ダンス・ダンス」といった「プロジェクト ルミナス」の楽曲も披露。舞台も楽曲にあわせて変わり、キュートに、荘厳に、ダンサブルに、そしてコミカルなアイドルのパフォーマンスを彩っていった。
*3いわゆる「アイドルマスター シンデレラガールズ」のアイドルによるユニット
●Side P@SSION!!!(315プロダクション)
男性アイドルが所属する315プロダクション*4からは、天道輝さん、大河タケルさん、眉見鋭心さん、鷹城恭二さん、黒野玄武さん、古論クリスさん、都築圭さん、蒼井悠介さん、舞田類さんという、ユニットを超えた9名が、「Side P@SSION!!!」と題するステージを12月14日に実施。
今回のライブでは、男性アイドルらしいダンスショーケースと彼らの普段の活動を踏まえたトークコーナーで彼らの魅力をアピール。舞田さんが所属するユニット「S.E.M」の楽曲「Study Equal Magic!」がSNSでバズっているという話題から会場全体でタケノコダンスとも呼ばれる振りをしてみたり、他の事務所の女性アイドルと一緒にリリースした楽曲「VOY@GER」を男性ボーカルだけで聞かせるなど、彼らだけでは閉じない活躍も伝わってきた。
*4いわゆる「アイドルマスター SideM」の舞台となるアイドル事務所
●RITSUKO AKIZUKI SOLO LIVE “Let me hear”(765プロダクション)
12月15日の「LIVE SHOWCASE」のトップバッターは、天海さんと同じ765プロダクションの秋月律子さんが「RITSUKO AKIZUKI SOLO LIVE “Let me hear”」に登場。冷静沈着な策士というイメージながらライブ盛り上げ隊長でもある彼女は、”Let me hear”=「声を聞かせて」というライブタイトル通り、様々な楽曲で観客のコールを浴びながら歌唱。
彼女がプロデュースも行うユニット「竜宮小町」の楽曲「SMOKY THRILL」をソロで歌うというサプライズや、最初に披露した楽曲「いっぱいいっぱい」を最後にも歌いコールで観客の声を枯らしていくなど、秋月さんの術中にハマりながらも大盛り上がりのライブであった。
●MILLION STAGE(765プロダクション)
「LIVE SHOWCASE」の最後は、765プロライブ劇場*5から「ストロベリーポップムーン」(春日未来さん、最上静香さん、伊吹翼さん)、「miraclesonic★expassion」(舞浜歩さん、福田のり子さん、島原エレナさん、高坂海美さん)の元気あふれる子が多めの2ユニット7名が「MILLION STAGE」に登場。
*5いわゆる「アイドルマスター ミリオンライブ!」の舞台となる、765プロ所有の常設劇場
ユニット曲と各人のソロ曲メドレーの後、まだ時間があるぞというタイミングで披露されたのは、まさかの事務所の枠を超えたカバー曲メドレー。先述の「Study Equal Magic!」や「LIVE SHOWCASE」には出演していない初星学園*6の花海咲季さんの楽曲「Fighting My Way」などの歌唱の後には、「Do the IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~」でステージを爆破するなど、「M@STER EXPO」の後夜祭のようなノリで各事務所の「LIVE SHOWCASE」は幕を閉じた。
*6いわゆる「学園アイドルマスター」と舞台となる学校
ヴイアライヴのアイドルも新曲を披露
「LIVE SHOWCASE」とは別に、「EXPO」エリアのステージでは、876プロの「ヴイアライヴ」メンバー3名(灯里愛夏さん、上水流宇宙さん、レトラさん)のソロライブステージも両日開催された。

3名とも彼女たちのソロ1曲目と、今回がステージでの初披露となるソロ2曲目、(2024年デビューの彼女たちにとって他事務所であっても先にデビューしている)「先輩」アイドルの楽曲カバーと3曲を歌唱。

灯里さんのソロ2曲目「あっちこっちプリンセス」は「まなカワイイ」という歌詞から始まり「L・O・V・E MANAKA!!」で終わる、コールも含めて可愛くてぶっ飛び楽しい楽曲。
上水流さんのダンスも光る「クライヤ」は、観客と一緒に手を揺らすのも含め自ら振りの多くを決めたそうだ。
レトラさんの「きみの一等星」からは、寄り添ってくれるやさしさとその意思を叶えるための強さを歌声から感じられた。

一方でトークパートでは、観客の多さに驚きつつ、ゲームの実況配信の宣伝で「パリィ」を決めたり、大好きな先輩アイドルと共演したいという愛と夢を語ったりなど、いつもの配信と地続きな姿を見ることができた。これはライバーアイドルとしての彼女たちの特徴であろう。

各アイドル事務所の「LIVE SHOWCASE」やヴイアライヴのステージを通して見てみると、セットリストや構成、舞台演出、照明やスクリーンの使い方、モニターに映るアイドルのカメラワーク(や、アイドルのモデルやレンダリング)がそれぞれのライブによって異なっているのが感じられた。この違いは、今回のイベントが「SHOWCASE」、つまり各事務所のアイドルやその売り出し方を観客にデモンストレーションする場であったからであろう(技術のデモの場でもあったであろう)。
そうであっても、モニターを超えてアイドルが輝こうとする、あるいは関係者がアイドルを輝かそうとしているのは共通しているはずだ。今後のアイドルたちの活躍が楽しみになった2日間であった。
なお 「LIVE SHOWCASE」 の各ライブについて、アーカイブ配信が視聴できるチケットが2025年1月14日まで販売されている(ヴイアライヴのソロステージが視聴できる「EXPO AREA エキスポステージ」チケットは2024年12月30日までの販売)。
THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
(TEXT by tabata hideki)
●関連記事
・アイマス「MRプロジェクト」は技術だけでなく、プロデューサーさんと紡いできた世界観があってこそ 波多野ゼネラルマネージャー インタビュー
・PROJECT IM@S 「ヴイアラ」初の単独現地リアルイベントレポート 「プロデューサー」との絆が生み出したエール交換とレスの応酬
・いよいよ5/2本日から初個人配信! アイマスライバーアイドル「PROJECT vα-liv」のチュートリアルを振り返る
・アイマス・星井美希・四条貴音・我那覇響「Re:FLAME」全曲ライブレポ プロジェクトフェアリーと961プロ社長は何を夢見たのか?
・アイマス・菊地真&萩原雪歩「はんげつであえたら 」レポート 「アイ」があふれる3つのライブの解釈が定番曲の聴き方も変える
・アイドルマスター、ゲーム領域に閉じないアイドルの活動を拡大する「“MR”-MORE RE@LITY-プロジェクト」始動 XR技術も活用
●関連リンク
・THE IDOLM@STER M@STER EXPO