米国ネバダ州ラスベガスで開催中のCES (Consumer Electronic Show) 2025。本稿ではソニーブースで展示されていた空間コンテンツ制作支援「XYN」(ジン)と「The Last of US」コンセプトのロケーション型エンタテインメントの展示についてレポートをお届けする。
グループ横断でのソリューションを全面に打ち出したブース展示
今年のソニーブースでは、カテゴリー別の製品の紹介ではなく、グループ会社やハードウェア・ソフトウェアの垣根を横断した各種ソリューションをアピールしていた。ステージでは「10年後のコンテンツ製作」に関するコンセプトをショー形式で紹介。CG製作、サウンド製作、キャラクターデザイン、モーションアクターなど様々な分野のクリエイターがリアルタイムで協働し、リッチなコンテンツを短時間で完成させる……という未来像を提示していた。
ブースではいくつかのソリューションが紹介されていたが、本校ではXRに関連する展示に絞って紹介したい。
空間コンテンツ制作支援「XYN」(ジン)
既報の通り、ソニーはCES2025で空間コンテンツ制作支援「XYN」を発表している。CES2025のブースでは広いスペースを使って、「XYN ヘッドセット」、モーションキャプチャー機器「mocopi」を活用した「mocopiプロフェッショナルモード」&「XYN Motion Studio」、3Dスキャナーの「XYN 空間キャプチャーソリューション」を紹介していた。
注目の「XYN Headset」プロトタイプは2台展示されていたが、残念ながら試遊は出来なかった。説明文によると「4K Micro OLEDパネル」「ビデオシースルーによるMR機能」が搭載されているとのこと。現地の説明では「SRH-S1はシーメンス経由での販売だが、XYN Headsetはより幅広いエンタープライズユーザーとクリエイターに届けたい」とのコメントがあった。より詳細なスペック、価格、発売日、対応ソフトウェアなどの続報を待ちたい。
mocopiプロフェッショナルモード/XYN Motion Studioは、mocopiを2セット(12個)装着したスタッフによる実演が行われていた。劣悪な電波環境で無線デバイス泣かせのCES会場だが、トラッキングが飛ぶことなくモーションキャプチャーが出来ていた。画面のキャラクターにポーズが反映されるまで1秒弱の遅延があったが、ソニーが想定している「コンテンツ制作時のプレビズでの活用」では許容範囲内だろう。
XYN 空間キャプチャーソリューションでは、一眼ミラーレスカメラαをスマホに接続したキャプチャの様子が参考展示されていた。カメラが3台展示されているが、実際には1台でスキャンを完結できるとのこと。αからのメタデータを活用して自社開発のスマホアプリで3Dデータを生成する。フォトグラメトリ泣かせの「透明で反射する素材」を使用している点に、キャプチャ結果のクオリティへの自信が伺える。
「The Last of Us」 コンセプトのロケーションベースエンタテインメント(LBE)体験
ソニーブースではその他に、 「The Last of Us」 コンセプトのロケーションベースエンタテインメント(LBE)体験 が展示されていた。Sony Picturesと、Playstation向け人気タイトル「The Last of Us」シリーズを開発するSIE傘下のNaughty Dogスタジオが共同開発したコンテンツだ。残念ながら内部は撮影不可だったが、部屋の3面に設置した大型スクリーン、振動床、スモーク、空間音響、トラッキング用のマーカー付きの懐中電灯とショットガン(リロード用のタッチセンサーとトリガー搭載)の組み合わせで、VRヘッドセットを使わない形での没入型エンタテイメント環境が構築されており、4人で協力して寄生菌の感染者を倒すストーリーも含めて、文字通り「ゲームの中に入り込む体験」が実現されていた。
開発チームによると、実際のThe Last of UsのゲームアセットをUnreal Engineに持ち込み、大型スクリーンやゲームコントローラーではないデバイスと連動させてのコンテンツ開発はNaughty Dogスタジオとしても初めての試みで、The Last of Usの監督によるユーザーエクスペリエンスの最終調整に時間がかかったそうだ。このコンテンツの開発を通じてロケーションベースエンタテインメントの知見をソニーグループ内で蓄積しているとのことなので、こちらも今後の展開に期待したい。
(TEXT by にしかわ)
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