米国ネバダ州ラスベガスで開催中の「CES 2025」。会場からはこれまでにSONYブースのXYNやLBE体験展示についてお届けしてきたが、本稿ではVRChatユーザー向けの最新情報をお届けしたい。
Indexコンの次の覇権は? 最新の入力デバイス
2019年にValve Indexコントローラーが正式発売されてから早6年。「Indexコン」の略称でSteamVRユーザーに愛されて来たが、そろそろ次のコントローラーを検討したいというユーザーも多いはずだ。CES2025会場で展示されていた、日本で未展示のPC向けVR入力デバイスを紹介したい。
●Shiftall GripVR
既報の通り、ShiftallはCES2025で3種類の新デバイスを発表&展示している。その中でもGripVRのプロトタイプを体験できたので動作の模様をレポートしたい。
Valve Indexコントローラーと形状が良く似ているこのコントローラーだが、大きな違いは握り部分にタッチセンサーが入っていない点だ。CES2025で展示されているプロトタイプがSteamVRトラッキングを含め動作していたので、トリガーボタンとグリップボタンを押し込んだ際の挙動を確認してみた。何も押し込まない状態では後ろのデモ画面の手はパーだが、トリガーボタンのみ押し込むと、画面の手がグーになった(写真左)。グリップボタンのみ押し込むと、中指から小指までが握りとなり、人差し指だけ伸びる(写真右)。なお、これらの挙動は量産版で変更になる可能性があるのでご了承頂きたい。
●UDCAP
グローブ式のSteamVR用入力デバイスはDiver-Xをはじめ様々なスタートアップが取り組んでいるが、中国のUDEXREAL社がKickstarterでクラウドファンディングを行い話題になった、UDCAP(ユーディーキャップ)グローブの実機も展示されていた。
UDCAPグローブのサイズ表によると筆者の手はSサイズだが、現地ではM/L/XLしか用意がなかったため、Mサイズでキャリブレーションから入力の確認までを体験した。キャリブレーションは「グー」「指を伸ばして揃える」「パー」の3ポーズだけなので簡単だ。指の折り曲げはもちろん、指を広げる動きにも対応しているが、グローブのサイズが大きすぎたためか、精度は今ひとつだった。
また、人差し指に装着するミニコントローラーにはトラックバッドとして動作するジョイスティック、Aボタン、Bボタン、そして振動フィードバックが搭載されており、問題なく動作していた。ただしジェスチャーで発動するトリガーボタンとグリップボタンは誤爆が多く、例えば人差し指のジョイスティックを触ろうとして手を動かすとトリガーボタンを押した判定が出てしまう。最適なサイズのグローブを装着したり、ツール上の微調整で解決するかは現地で確認出来なかった。
なおUDCAPのKickstarterページでは1060人のうち70人が日本からのバッカーであることが確認できるが、担当者によると「近日中にMakuakeでもクラウドファンディングを行う」とのことだった。
EOZ Immersive Glove
東京ゲームショウ2024ではIntoFreeブースの一角でデモ展示されていた、中国EOZ社とBrad Lynch氏(@SadlyItsBradley)の共同開発プロジェクトImmesive Glove。CES2025ではDiver-Xブースの一角で最新のプロトタイプが展示されていた。IMUを指の関節に固定する方法がTGS2024から大きく変更されているのが見て取れる。グローブタイプに限らず入力デバイスは「動く」だけではなく「毎日使っても壊れない」点が重要だが、量産バージョンまでにどのように進化するか見守りたい。なお、ボタン入力としてDiver-X社のMagnetra2が採用されている。
PCVRの解像度とフレームレートの上限が上がる!? HDMIの最新規格HDMI2.2
ゲーミングPCで動作する現行のVR/MRヘッドセットはDisplay Port (DP) ケーブルでグラフィクスカードに接続するケースが多いが、今回のCES2025ではHDMIフォーラムよりHDMIケーブルの最新規格「HDMI2.2」が発表された。HDMI2.1の最大のデータ転送帯域は48Gbps、DisplayPort2.1では80Gbpsだが、HDMI2.2では96Gbpsに拡張されるという。
CES2025の会場ではHDMI Licensing AdministratorのCEO ロブ・トバイアス氏に、この最新規格HDMI2.2がVR/MR/ARのヘッドセットにどのように影響するかをインタビューできた。
トバイアス氏によると、「XRヘッドセットでは2画面分のデータ転送が必要になるので、公表されているスペックの半分が適用されると考えて欲しい。つまりHDMI2.2ではDSC圧縮で解像度8K、フレームレート120fps(*非圧縮では8K@60fps)のデータをXRヘッドセットに転送できるようになる。HDMI2.2は今年中に対応のチップセットが完成し、最終製品に搭載されるようになるのは2026年以降の予定だ。どのようなデバイスやグラフィクスカードがHDMI2.2に対応するかは現時点ではわからないが、CES2026ではHDMI2.2に対応したデバイスを展示できると思う」とのことだった。
2026年以降のPCベースのxRヘッドセットがHDMI2.2に対応してより高解像度&高フレームレートになっていくのか、今後の展開に期待だ。
フルトラに使える!? 電磁トラッキングのAMFITRACK
スタートアップが出展するEureka Parkでは興味深いトラッキングソリューションが展示されていた。デンマークのスタートアップAmfitechによる電磁トラッキングシステム (electromagnetic tracking system)の「AMFITRACK」だ。
BS2.0と同じくらいの大きさの「Source TX3」と呼ばれる箱を設置すると電磁場が展開されるので、「Sensor RX3」と呼ばれるUSBメモリくらいの大きさのデバイスで電磁場のポジションを計測し、「Hub H3」というパソコンに接続されたドングルへ座標を送信する仕組みだ。
以下のビデオでは腰、腕2個所、足首2個所にセンサーを取り付け、Unity上でフルボディトラッキングを行う様子を確認できる。(※マグカップにもセンサーがついている)
特筆すべきは、2.4Ghz帯を含めた様々な電波が大量に飛び交うCESのEureka Parkでトラッキングが飛んだりドリフトする様子がなく、安定して動作していたことだ。AmfitrackのツールはUnity、Unreal Engine、SteamVRに対応しているが、ブースの担当者にVRChat(PCVR版)で動作するかを質問したところ「それはなんのソフトですか?」と真顔で聞き返されてしまった。
「Source TX3」1個、「Hub H3」1個、「Sensor RX3」3個が入った開発キットは公式ストアで3,500ユーロ(約57万円)なので法人需要を想定しているようだが、この「電磁トラッキング」が気軽に購入できる価格帯になる日を楽しみに待ちたい。
(TEXT by にしかわ)
●関連リンク
・Shiftall
・UDEXREAL
・EOZ
・HDMI2.2プレス発表資料