生放送アニメ「直感×アルゴリズム♪」3rd seasonに登場するLilia（リリア）とCiel（シエル）の2人組ユニット「Tacitly」（タシットリー）は2日、2ndワンマンライブ「Shangri-La.」を東京・池袋のharevutaiにて開催。全17曲を約1時間20分にわたって熱唱して、集まったファンを大いに楽しませた。
dTVにて生配信した様子は1月2日まで見逃し視聴が可能だ。本レポートでは、会場にて取材した様子をお届けしよう。
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現地は激ムズのクイズ大会からスタート
イベント自体は、18時から若干押してスタート。オールスタンディングの客席は、新型コロナウィルスの感染拡大防止のために適度に距離を離れて立つように床にマーカーが付けられていたが、それでも会場全体を埋めるほど観客が集まっていた。
ニコニコ超会議や米国ロサンゼルスのAnime Expo 2022、バーチャルTIFなど、今年もさまざまな舞台にゲスト出演してファンを増やしてきた彼女たちだが、単独では昨年11月の1stライブ「夢を見て生きている」以来のイベントとなる。さらに事前のクラウドファンディングでは、目標金額の159％となる318万円を集めて期待も高まっていたこともあってか、客席に立つファンたちも「祭りの前」のようにそわそわしていて、開始を今か今かと待っている空気が感じられた。
ライブは18時30分からとされていたため、「18時からの30分は何をやるのかな」と思っていた中、始まったのは「Tacitlyクイズ 真のPEACHESを決めよう！」と題したクイズ大会だった。観客が手元のスマホでステージのQRコードを読み取り、2人の進行に合わせて、彼女たちに関する10問のクイズを解いていくという内容だった。
初めて配信で歌った曲や楽曲タイトルの正式な表記など、かなりマニアックな質問だったにも関わらず、なんと全問正解の猛者が1人だけいたとのこと！ ステージに招かれて、優勝賞品として今回のライブのキービジュアルをあしらったキャンパスアートが進呈された。
みんなの気持ちが十分にあったまったところで、いよいよ本番だ。オープニングムービーが映し出された後に流れ出したのは、「Wake Me Up」のアップテンポでコーラスが印象的なイントロ。スピーカーから発される音の振動、そしていつも通りな美声で交互に歌い合い、サビで2人で「Wake Me Up」と繰り返す流れに、「いよいよ現場に来たんだ！」と体の目覚めを覚える。そのまま間髪入れずに「夢を見て生きている」に突入。今度は四つ打ちでダンサブルな曲調に体を揺らして楽しめた。
ちなみに今回のライブは、NTTドコモ改めNTTコノキューのライブシステム「Matrix Stream」を利用している。ひとつのライブをVRやARなど複数先に同時に配信できるというシステムになっており、今回、harevutaiのステージでは彼女たち2人が立つ真正面の様子を、生配信では複数台のカメラを切り替えての放送用の映像をそれぞれ流していた。
2曲歌い終わると、「コンチー！ 改めてコンチー！」「コンニチー、ワニワニー」といつもの挨拶でMCパートが始まる。中英日のトリリンガルで流暢にMCをこなす姿に「さすが」と驚く一方で、「こんなに広いよー」とステージを無邪気に駆け回る様子にかわいい印象も受け、そのギャップが彼女たちの魅力なんだと改めて感じた。
MCパートでは、VTuberのライブでも珍しい、バーチャルのお客さんがステージに映し出された。「ゲストでノートママが来てくれてるのー」と客席にカメラが向けられると、そこにいたのは2人をデザインし、今回のライブのキービジュアルも手がけた竹花ノートさん。「二人の晴れの舞台、しっかり見届けさせていただきます」とエールを送っていた。
静・動が際立ったソロパート、なつかしカバーにも感銘
ここからソロパートに入る。まずはシエルさんの番で、蝶々PのGUMI曲「心做し」と、映画「君の名は。」から「なんでもないや」をカバー。いずれも歌声をじっくり聴かせるスローテンポな楽曲で、掠れが美しい低域やパワフルに伸びる高域のビブラートなどシエルさんの美声を堪能できた。
歌い終わった後にリリアさんが「泣いちゃいそうですよ」と声をかけ、間髪入れずシエルさんが「泣いちゃダメ（笑） リハーサルで見たでしょ」とつっこんでいたのも面白かった。ちなみに現地では、歌わない方が舞台そでに歩いて行った後、緑色の紋様に囲まれて消えていくという演出が入っていたのが印象的だった。
対してリリアさんは、TVアニメ「NANA」のOPの「rose」と、Vaundyの「怪獣の花唄」というロックナンバーをチョイス。ときおりこぶしを利かせ、最初から最後までパワフルに歌い上げる姿に熱くなり、手に持ったペンライトを力強く振っていたという人も多かったはず。
続くMCでは、クラウドファンディングで贈られたフラワースタンドをステージで紹介したり、客席後方にコメントを花火として打ち上げたりと、バーチャル空間を生かした演出でファンの想いを具現化。2人は口々に感謝の言葉を伝えていた。
「VOICE」「存在アピ」とオリジナルを2曲歌った後は、ちょっと懐かしいカバー曲のパートだった。具体的には、10月に彼女たちのカバーバージョンを各種音楽配信サービスでも公開したブラックビスケッツの「Timing」、坂本龍一の「Ballet Mécanique」、TVアニメ「少女革命ウテナ」のOP「輪舞-revolution」、mihimaru GTの「気分上々↑↑」と、’80〜00年代の人気曲を4曲歌い上げた。
個人的に印象的だったのは「Ballet Mécanique」。岡田有希子の「WONDER TRIP LOVER」、中谷美紀の「クロニック・ラヴ」と同じメロディーで歌詞を変えたバージョンが存在し、最近（といっても2018年だが）では、やくしまるえつこと砂原良徳のカバーが映画「ANEMONE 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション」に採用されるなど、形を変えて歌い継がれてきた曲になる。
時代の最先端でバーチャルの存在として生きている彼女たちが、そんな曲を「僕には始めと終わりがあるんだ」と歌う姿だけで、なんだかエモくならないだろうか？ ちなみにカバーの選曲は、彼女たちのプロデューサーであるバニーPとのこと（ナイスチョイスです）。
「また繋がった遺伝子受け継いで」
ライブも終盤戦というタイミングで公開されたのが、新曲のダンスポップナンバー「Know Your Heart」だった。全編英語の歌詞を流れるように歌い上げる2人に、サイリウムを振る手にさらに力が入る。
畳み掛けるように、2ndオリジナル「オルビット」、1stオリジナル「直感オーバーライト」と自分たちの歌の原点を熱唱。「直感オーバーライト」では、「『直感へー』のところで一緒にこの振り付け（手を挙げる）をしましょう！」との呼びかけに応じて、観客が客席でペンラインとを高々と掲げていた。
いよいよ本編の最後、「最後はこの曲、また会いましょう」と流れたイントロは「フタリセカイ」。今のリリアさんとシエルさんの前、麒麟さんと犀（シー）さんがTacitlyとして活動していた「直感×アルゴリズム♪」の2ndシーズンの代表曲で、原点のさらに原点ともいうべき存在だ。
ライブで歌ったのは日本語と中国語の歌詞が混ざったバージョンだった。リリアさん、シエルさんが言語を変えながら交互に歌い、いつしか混ざってハーモニーを奏でるという流れは、まさに美しいの一言。会場のステージでは見えなかったが、生放送では背景の巨大スクリーンに麒麟さん、犀さんが踊るMVも映し出していた。そんな「受け継がれるもの」を目の当たりにして、前シーズンから応援してきたファンなら熱いものが込み上げてきたかもしれない。
その後、クラウドファンディングの出資者やスタッフが流れて、観客からの拍手の呼び込みがあり、アンコールとしてラストに歌ったのが、クラウドファンディングのストレッチゴールにも設定されていた「直感オーバーライト～Remix～」だった。YUC’eさんがリミックスしただいぶ踊れるアレンジもインパクトが大きいが、筆者は
「また繋がった遺伝子受け継いで何回も自分を上書きしていくんだ」
「手のひらに受け渡された記憶 優しく握りしめた その矛盾さえも自分なんだ 自分なんだ」
……といった「直感オーバーライト」の歌詞に今の彼女たちが置かれた状況が重なり、改めて2人がTacitlyとして活動していく決意を深めるように歌っているように感じられたところがグッと来た。終演後もそのことが深く心に刺さり、余韻がいつまでも残るライブとなった。
楽曲中心で1時間半という濃い時間で、観客を完全燃焼させた今回の「Shangri-La.」。会場だけで見たという方は、生放送では見え方と体験が違うので、ぜひdTVでのアーカイブを視聴することをお勧めしたい。そして3rdシーズンから彼女たちの歌声やトークに惹かれて見始めたという方は、2ndシーズンのアニメ全編がYouTubeに上がっているのでチェックしておくと、改めてこの「直感×アルゴリズム♪」というプロジェクトに愛着が湧くだろう。
●セットリスト
M1. Wake Me Up
M2. 夢を見て生きている
M3. 心做し（シエルソロ）*
M4. なんでもないや（シエルソロ）*
M5. rose（リリアソロ）*
M6. 怪獣の花唄（リリアソロ）*
M7. VOICE
M8. 存在アピ
M9. Timing*
M10. Ballet Mécanique*
M11. 輪舞-revolution*
M12. 気分上々↑↑*
M13. Know Your Heart（新曲）
M14. オルビット
M15. 直感オーバーライト
M16. フタリセカイ
＊アンコール
M17. 直感オーバーライト～Remix～
曲末に*がついているものはカバー曲
（TEXT by Minoru Hirota）
●関連リンク
・Shangri-La.アーカイブ（dTV）
・直感×アルゴリズム♪ （公式サイト）
・直感×アルゴリズム♪ （YouTube）
・直感×アルゴリズム♪ （Twitter）
・リリア（Twitter）
・シエル（Twitter）